はりぼてスケバン

あさまる

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それがさらに大きいものになる。
そして、それがさらに大きくなっていく。
以後、繰り返し。

そんな沼の中、彼女へ向けられる声。
それはまるてま、暗闇の中で唯一見れる光のようなものであった。

「おい!鼬原っ!」
激しく動揺している。
それでいて、彼女へ向けられた真っ直ぐな声。

「え?え?な、なに?」
ハッとする華子。
彼女自身でも分かるほど、その声は酷く動揺していた。

そうだ。
今は一人ではない。
孤独ではない。

隣に亥玄がいるのだ。
それに、今はいないが、丸雄や心司もいる。

「大丈夫か?」
相変わらずぶっきらぼうな言葉。
そして、態度。
しかし、それでも彼が心配しているのは華子にも伝わった。

「う、うん……大丈夫。」

「なら良い。」

「あはは……ありがとう。」
安堵からか。
それとも精神的な疲労から来るものか分からない。
そんなため息をつく華子。

「……どこかで飯でも食うか?」

「……え?ご、ご飯?」
唐突かつ意識外な提案。
なぜ急にそんなことを言うのだろう?
素頓狂な声が出てしまう華子。

「何か思い詰めているだろう?なら飯でも食えば良い。そして、その後で考えれば良い。」
そんな自論を自信満々に言う亥玄。

「ぷっ、あはははは!あはははは!」

「!?ど、どうした!?」
急に笑い出した華子に驚く亥玄。

「うん、そうだね、そう、そう。……お腹空いてたら駄目だもんね。」

「あ、あぁ、そうだ!だから飯を食いに行くぞ。俺が奢る。」

「え、本当?よしっ、なら行こっかなっ!」
ニカッと笑う華子。

彼の言う通り。
今考えていても無意味だろう。
取り敢えず、今はこの小腹を満たそう。
そして、その後にでも考えれば良い。

そうだ。
今考えなくても良いのであれば、無理して考えなくても良いのだろう。

「そうと決まれば牛丼でも食いに行くぞ!」

「おー!レッツゴーだね!」
彼に賛同する。
そして、二人で牛丼屋へ向かうのであった。


今の彼女には、人生経験は圧倒的に少ない。
それもそのはずだ。たかだか十年と数年。
しかし、それに反比例する強みもある。
それは若さだ。
そして、無鉄砲さだ。

きっと、この先も大きな壁にぶち当たるだろう。
しかし、それでも彼女は隣にいる亥玄や、今は寝ている丸雄とともに打開出来るであろう。
彼女は今、この時からそう信じることにした。
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