はりぼてスケバン

あさまる

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近くで見たことで、華子には彼の顔がはっきりと見えた。
世辞抜きにしても整っており、異性に好かれるような顔立ちをしている。

心臓の音が激しい。
顔が熱くなる。
華子自身、確認することは出来ないが、耳まで真っ赤になっているだろう。

「橘ちゃんが言った通りだね。本当に君、初日と印象ガラッと変わったよねー。」

華子のように、彼もまた、華子と飛鳥のやり取りを聞いていたようだ。
初日と印象が変わった。

初日の華子を知っているということだ。
しかし、彼女は尾谷のことを知らない。
今回が初対面のはずだ。

「え?わ、私達……初対面……ですよね?」
意識を過去に巡らす華子。
しかし、彼の顔に心当たりなどない。
正真正銘初対面のはずだ。

「あぁ、そういえばそっかー。」
納得した様子。

「……?」

「知らなくて当たり前と言えば当たり前だったね。俺、実は入学式の時に君のこと見てるんだよ。」

「……え?」 
何を言っているのだろう?
一瞬思考が停止する華子。

見ていた。
彼の口振りから、一方的なものであったことが分かる。
つまり、彼女の意識外から見ていたということなのだろう。

「体育館で椅子の片付けの手伝いしようとしてたでしょ?」

「……は、はい。」
確かに手伝おうとしていた。
しかし、あの時にいたのは数人の新入生だけであったはずだ。
なぜ彼は知っているのだろう?
華子にはそれが疑問であった。

「実は俺、その時に見てたんよー。」

「そ、そうだったんですか……。すみません、私全然気づきませんでした……。」
全く知らなかった。
きっと気づけたのかもしれない。
しかし、それどころではなかった彼女は、ただ単純に見逃していたのかもしれない。

「あぁ、大丈夫よ大丈夫。俺、隠れて双葉と見てたから分からなくて当然だよ。」
ヘラヘラと言う。

少しでも気にした自分が馬鹿だった。
苛立つ華子。
そして、それと同時に気になることが一つ出来た。
「双葉って……私が倒しちゃった人ですか?」

「うん、そうだよー。……と、詳しくはこの中で話そうか。」
扉を開ける。

生徒会室に到着した。
尾谷が入り、華子がそれについていく。

「あっ!鼬原さん!」
部屋の中で元気に華子を呼ぶ声。
まるで飼い主を見つけた柴犬のよう。
シバマルこと丸雄だ。

「藤柴君!」
華子が驚きながら返事をした。
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