はりぼてスケバン

あさまる

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「お、お礼!?何の!?恐いよっ!」
お礼参りか?
まさか拙いながらも不良文化の一つが華子の脳裏を過る。

「その……昨日のことを……!助けてもらったので!」

昨日のこと。
思い当たるのはただ一つ。
これはもしかすると聞かなければならないことなのかもしれない。

「……。」
ドアチェーンは付けたままにし、扉を開ける華子。

やはり、彼女の予感は的中した。
そこにいたのはシバマルであったのだ。

「ど、どうも……っす……。」

「どうも……。」

視線が合う。
見つめ合う。
沈黙。
気まずい空気が流れる。

礼を言いに来ただけではないのだろうか?
それならば、早く済ませてほしい。
それが、彼女の気持ちであった。
そして、それと同時に一つ納得してしまうことがあった。

シバマル。
それは彼の見た目から来たニックネームなのだろう。

クリクリと大きな目。
長い睫毛。
やや長い髪。
女子の華子とさほど変わらない体格。

昨日はしっかり見ることが出来なかった。
しかし、可愛らしく、男子の制服を着ていなければ女子に間違えられてもおかしくない。

柴犬のように愛くるしい。
彼にピッタリなものだ。


「やっぱり可愛い……。」

「……え?」

それは、彼女の言葉ではない。
沈黙を最初に破ったのは、件のシバマルであった。

「あっ、いや、な、何でもない……っす……うっす……。」
尻窄みになりながらシバマルが慌てて言葉を紡いだ。

「さ、さいですか……。」
こんなところで人見知りを発動してしまった。
恐らく追及すべき場面だったが、これ以上は彼女には無理であった。

再び流れる沈黙。
目が合うと、互いに逸らす。
そして、再び目が合うと、また逸らす。
以後その繰り返し。
むず痒い空気が漂っていた。


「あの……。」
痺れを切らした華子が口を開く。

「そ、そうだ!昨日はありがとうございましたっす!」

「い、いえ……じゃあ私はこれで……。」
ようやく終わった。
華子は家の奥へ引き返ろうとした。

「ま、待って!」
大きな声を上げるシバマル。

「うわっ!?」
ビックリして声を上げる華子。
そして、変なところに唾が入り込み、咳き込んでしまった。


「きょ、今日はその、注意をしてもらおうと……。」

「注意?」
一体何のことだろう?
少し考え、すぐに華子に心当たりがあることを思い出した。
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