はりぼてスケバン

あさまる

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武蔵野双葉。
黒龍高校の頭。
現三年生であり、二年生の頃からその圧倒的な力で校内を掌握していた。
彼の名前と力は、他校の不良にも知られていた。

そんな彼に対して不名誉な噂が流れるようになった。
一人の女子生徒に一撃で倒されたというものだ。

黒校屈指のビックネーム。
そんな彼の噂だ。
瞬く間に広がっていき、翌日には生徒達の大半が知ることとなっていた。

最初は皆、そんなものは信じていなかった。
しかし、双葉の周囲がそれを明確に否定をしなかった。
そんな曖昧な態度が反ってこの根も葉もない噂に根拠を加える形になってしまった。
それより、これはただの眉唾ものではないのではと思う者が増えていった。

万が一。
武蔵野双葉が倒されたというのは本当なのではないだろうか?

時計が進み、再び日が昇った頃には皆がその万が一を信じる者が否定していた者達を上回っていた。
そうなれば、一大事だ。

彼の後釜を狙う者達が名乗りを上げることになるのも時間の問題だ。
曲がりなりにも平和であった黒龍高校。
その中で大規模な喧嘩が頻発することは火を見るよりも明らかであった。


「あ、朝……。」
都市伝説と化した女子生徒。
そんな渦中の華子は自室のベッドで布団に包まっていた。
一睡も出来なかったせいだろう。
うっすらと、目の下には隈が出来ていた。

行きたくない。
しかし、初日から不登校になるわけにはいかない。

のそのそとベッドから起き上がる。
そして、眼鏡をかけ、髪を結ぶ。
昨日と同じくおさげだ。

朝の支度をし、そろそろ登校出来るような状態になっていた。
まだ登校時間には早い。
しかし、このまま家にいたらズルズルと時間を浪費してしまうだろう。

重い腰を上げ、玄関の扉を開けようとした。
それは、その時に起きた。

ピンポーン!
インターホンが鳴る。

「うわっ!?」
華子は、驚きでつい声を出してしまった。

「あっ!す、すみません、鼬原さんですよね!?」
扉越しに聞こえる声。
それは彼女が聞いたことのあるものであった。

昨日、彼女を混沌の渦に陥れた張本人だ。
シバマルと呼ばれていた黒龍高校の男子生徒だ。
喫茶店の一件が彼女の脳裏を過った。

「な、何しに来たの!?というかなんで家知ってるの!?」

「……!?……え、えっと、その……お礼をしたくて……。」
一瞬たじろぐシバマル。
しかし、すぐに再び言葉を紡いでいった。
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