はりぼてスケバン

あさまる

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「……。」
嫌な予感。
さらに厳密に言えば、そんな曖昧なものではない。
いくつもの動き回る証拠を目の当たりにして来た。


黒龍高校。
その校門の正面までやって来ると、華子の足が止まってしまった。
ここは、彼女がこれから三年間通うこととなる場所だ。

怒号、罵声。
掴み合いの喧嘩。
皆どうやらここの学生のようだ。

止めに入る者などいない。
教師は一体何をやっているのだろう?
華子の脳内に、そんな疑問が浮かんだ。
しかし、彼女なりの答えがすぐに導き出された。

校舎にはスプレー塗料で描かれたであろう訳の分からない文字。
窓という窓は全て割れている。

ここはあれか?
所謂世紀末的なあれなのだろうか?

「……あ、あはは……。」
つい苦笑いしてしまう華子であった。

そうしているうちにも彼女の周りで喧嘩が起きる。
大きな声。
そして、無駄に派手な音を鳴らすバイクや車の群れ。

なるほど。
元気でよろしい。
現実逃避をする華子は、そのまま進んで行くのであった。

入学式の会場は体育館だ。
倒されはしていたものの、辛うじて形だけは残していた掲示板が道中にあった。
華子は、その周辺に散らばっていた紙切れを繋げ合わせてなんとか経路を確認し、辿り着くことが出来た。

ここまで来てしまっては、期待するほうが馬鹿なのかもしれない。
しかし、それでも華子は僅かな望みを抱いていた。
もしかしたらここはまともかもしれない。
存外綺麗なのかもしれない。

もちろん、そんなことなどあり得なかった。
それも、すぐに打ち壊されてしまったのだ。

来賓者用、それに新一年生用のパイプ椅子。
きっとそれらは最初、きちんと並んでいたのだろう。
しかし、今は見るも無惨な有り様だ。

「……。」
どうしたものか。
またもや出入口の前で立ち尽くしてしまう華子。


ドカッ!
勢い良く何かが彼女の肩にぶつかる。
そのせいで危うく倒れてしまいそうになる。

フラフラ。
よろめき、二三歩足が前に出る。
しかし、彼女を心配する者はいない。

「邪魔ー。」

「ふふ、どん臭っ。」

「だっさ、何こいつ……。」

ドタドタと何人かの女子生徒が彼女の横を通る。
鼻がひん曲がってしまいそうなほど強い香水。
不快で華子を馬鹿にする声。
それが彼女の元に届き、不快な気持ちを抱いた頃にはもう彼女らは館内の奥へと向かった後であった。
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