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しおりを挟む運命がこちらに傾いた。ただ僅かな、小さな出来事。それだけなのに、どうしてこんなに心を掻き乱されるのか。約束などなかったことにして破ってしまえばいい。
もうすぐ終わる。もうすぐ貴方に会える。こんなものは消えるのだと、無くなってしまうと知っているのに……それなのになんだろうこの感情は……。どうして……ここまでは予定通りなのに。
これは……水? 私の目から……私は、泣いている……? フフ……ハハハッ……どうしてこんな機能をつけたのですか。道化師が何を言っているのでしょう。私は感情を表に出してはいけない。これが私の存在意義であり、これが守れないのなら……私は私ではないのだ。
……大丈夫だ。今は、まだ目覚めていないから……心の拠り所がなくなっているから弱くなっただけ。そう、大丈夫……私私私俺俺は僕僕僕は大丈夫……。
さて、最期のステージになりました。愛しの我が主に忠誠を……。
【昼下がりのボート】
鳥の鳴き声が遠くから聞こえた。ここは森の中の小さな湖。
葉が風に揺れる、水が流れる。静かな、僕たちだけの場所。僕と君だけの秘密を閉じ込める世界。
「アリス、次はどんなお話がいい?」
寝転びながら僕が聞く。
「そうだわ!」
パチンと手を叩いて立ち上がった。
「私そろそろ行かないと。今日はママがマフィンを焼いてくれるのよ!」
そう言って、彼女は笑った。
ボートから飛び降りて、僕に手を振りながら遠くへ行くアリス。
いつもと同じはずなのに、なぜかそれがとても寂しいことのように思えて……僕はその方向に手を伸ばしていた。
彼女が喜ぶ話をもっと考えないと。どうしたら僕の側にずっと、いてくれるんだろう。
君もいつか気づくはずだ。僕の想いに……この関係が普通ではないことに。
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