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旅立ちのホール
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中は黒い幕で覆われていた。四角に区切られたスペースが並び、その一つ一つによくジムで見るような、ランニングマシーンのベルト部分みたいなものがついている。
そこに足のマークが書かれていて、それに乗るといきなり空中に映像が飛び出してきた。ここにチケットをかざしてね! と遊園地のキャラクターだろうかがニコニコしている。チケットを当てると賑やかな音楽が鳴り出し、キャラクター達も踊り始めた。
ベルトが動くと黒い幕が開き、勝手にその先へ連れて行かれた。
「な、なんだこれ……」
円形型の大ホールは一階、二階、三階……と続き、吹き抜けになっていた。手すりはバラのつるが巻きつけられたような凝ったデザインで、これも金なのだろう。
天井には教会にありそうな天使の絵が描かれていた。ここから下を見ると、オペラの会場を思わせるような豪華さと華やかさがあり、素直に目を奪われた。単純な広さもそうだけど、入り口からすぐにこんな場所を用意する辺りはさすがと言える。あれだけの謳い文句も、あながち嘘ではないらしい。
真ん中には天井付近まで届きそうな高さの女神像が立っている。何のためのオブジェかは分からないが。
壁に手をついて気がついた。カーテンや本棚だと思っていたが、これはペイントらしい。だまし絵って奴か。変に感心してしまい、手すりにもたれながら観察していると、どこかで音がした。
視線を右に向ける。カプセル型の薬を大きくしたような見た目のものに、車輪がついた車らしき物体がのろのろと走ってきた。俺の前で止まり、透明なカバーが開く。中は一人分の椅子と、ミニテレビ的なものが付いていた。
「乗れってことか?」
ロボットのように答えてくれるわけではないらしい。仕方なく中に入ると、以外と広く感じた。上のカバーが自動で閉まり、テレビの電源が入った。画面には言語を選んでくださいと書いてある。見たこともない国の言語にも対応しているらしい。
タッチパネルになっていて、音量やフォントなどを設定していたら、周りが動いていることに気づいた。外を見ると、像の足元まで来ていたようだ。もう道はないのでどこに行くのかと思ったら、絵のような扉が開き、迷うことなくそこへ入っていった。
自動運転で、決められた道に向かうようになっているらしい。試しに一応用意されてるハンドルを握ってみたら、これでも動いた。壁にぶつかりそうになると、勝手に戻される。
扉の向こうに広がっていたのは……宇宙? 先ほどまで部屋にいたのに、そんなことを忘れさせてしまうほど圧倒的な世界が広がっていた。
自分が浮いてるのかと、そんな錯覚を起こしてしまうほどリアルな映像で、時折流れてくる惑星や星をつい避けてしまう。少しずつ映像は変化していき、オーロラに包まれた景色は神秘的だった。吸い込まれそうな星空は、プラネタリウムでも見たことがない。
だんだんと辺りは白く染まり、眩しい中でも扉が開いたのが何となく見えた。
気がつくと地上に着いたみたいだった。ここが本当の入り口なのか? 後ろを振り返っても、今来た道は周りの景色と同化して見えなくなってしまった。
「ん、何だろうこのボタン……」
一番大きいスイッチを押すと、カバーが開いた。車を降りて、周りを観察する。ちょっとした広場のようなところだ。
中心に置いてある噴水からは音楽が流れている。紫色の空が広がっていて、おもちゃのような星が輝いていた。月は三日月と満月のが二つ。それに顔まで書かれているのが、なんともメルヘンだ。絵本の世界をそのまま持って来たような場所だった。
なるほど、だからドーム状の建物なのか。空や景色はいつでも思い通りというわけだ。
車に再び乗り直し、地図をタッチして確認する。ここは一番下の入り口の部分で、この先は大きく六個のブロックに分かれている。その先もまだまだあるらしい。これは絶対一日じゃ回りきれない。とりあえずどこから行けばいいんだろう。
より詳しく確認しようと、パネルに触れようとした。ガツンと音がして車へ強い衝撃が与えられる。
「……え?」
突然のことに、中でバランスを崩した。なぜ襲われてるのか分からないまま攻撃は続く。車を壊してやろうという明確な悪意が感じられる。
「と、とにかく逃げないと!」
慣れていないハンドルを無理やり動かし、必死に逃げる。後ろからガッガッと何かが当たっている。
「一体何がどうなってんだ……っ」
目の前が暗くなった。前を見ると、車の上に何かが立っていた。
「……クマ?」
テディベアみたいなものはボロボロで、恐らく血であろう赤い液体を全身にべっとりとつけていた。その手にはよく切れそうな鋭い鎌を持っている。なんだこれ、どこのホラー映画だ。恐怖で体は動かなかった。鎌を振り下ろす瞬間がスロモーションに見えて……。
「あ……ああ……」
思わず目を閉じ、何かに祈った。
そこに足のマークが書かれていて、それに乗るといきなり空中に映像が飛び出してきた。ここにチケットをかざしてね! と遊園地のキャラクターだろうかがニコニコしている。チケットを当てると賑やかな音楽が鳴り出し、キャラクター達も踊り始めた。
ベルトが動くと黒い幕が開き、勝手にその先へ連れて行かれた。
「な、なんだこれ……」
円形型の大ホールは一階、二階、三階……と続き、吹き抜けになっていた。手すりはバラのつるが巻きつけられたような凝ったデザインで、これも金なのだろう。
天井には教会にありそうな天使の絵が描かれていた。ここから下を見ると、オペラの会場を思わせるような豪華さと華やかさがあり、素直に目を奪われた。単純な広さもそうだけど、入り口からすぐにこんな場所を用意する辺りはさすがと言える。あれだけの謳い文句も、あながち嘘ではないらしい。
真ん中には天井付近まで届きそうな高さの女神像が立っている。何のためのオブジェかは分からないが。
壁に手をついて気がついた。カーテンや本棚だと思っていたが、これはペイントらしい。だまし絵って奴か。変に感心してしまい、手すりにもたれながら観察していると、どこかで音がした。
視線を右に向ける。カプセル型の薬を大きくしたような見た目のものに、車輪がついた車らしき物体がのろのろと走ってきた。俺の前で止まり、透明なカバーが開く。中は一人分の椅子と、ミニテレビ的なものが付いていた。
「乗れってことか?」
ロボットのように答えてくれるわけではないらしい。仕方なく中に入ると、以外と広く感じた。上のカバーが自動で閉まり、テレビの電源が入った。画面には言語を選んでくださいと書いてある。見たこともない国の言語にも対応しているらしい。
タッチパネルになっていて、音量やフォントなどを設定していたら、周りが動いていることに気づいた。外を見ると、像の足元まで来ていたようだ。もう道はないのでどこに行くのかと思ったら、絵のような扉が開き、迷うことなくそこへ入っていった。
自動運転で、決められた道に向かうようになっているらしい。試しに一応用意されてるハンドルを握ってみたら、これでも動いた。壁にぶつかりそうになると、勝手に戻される。
扉の向こうに広がっていたのは……宇宙? 先ほどまで部屋にいたのに、そんなことを忘れさせてしまうほど圧倒的な世界が広がっていた。
自分が浮いてるのかと、そんな錯覚を起こしてしまうほどリアルな映像で、時折流れてくる惑星や星をつい避けてしまう。少しずつ映像は変化していき、オーロラに包まれた景色は神秘的だった。吸い込まれそうな星空は、プラネタリウムでも見たことがない。
だんだんと辺りは白く染まり、眩しい中でも扉が開いたのが何となく見えた。
気がつくと地上に着いたみたいだった。ここが本当の入り口なのか? 後ろを振り返っても、今来た道は周りの景色と同化して見えなくなってしまった。
「ん、何だろうこのボタン……」
一番大きいスイッチを押すと、カバーが開いた。車を降りて、周りを観察する。ちょっとした広場のようなところだ。
中心に置いてある噴水からは音楽が流れている。紫色の空が広がっていて、おもちゃのような星が輝いていた。月は三日月と満月のが二つ。それに顔まで書かれているのが、なんともメルヘンだ。絵本の世界をそのまま持って来たような場所だった。
なるほど、だからドーム状の建物なのか。空や景色はいつでも思い通りというわけだ。
車に再び乗り直し、地図をタッチして確認する。ここは一番下の入り口の部分で、この先は大きく六個のブロックに分かれている。その先もまだまだあるらしい。これは絶対一日じゃ回りきれない。とりあえずどこから行けばいいんだろう。
より詳しく確認しようと、パネルに触れようとした。ガツンと音がして車へ強い衝撃が与えられる。
「……え?」
突然のことに、中でバランスを崩した。なぜ襲われてるのか分からないまま攻撃は続く。車を壊してやろうという明確な悪意が感じられる。
「と、とにかく逃げないと!」
慣れていないハンドルを無理やり動かし、必死に逃げる。後ろからガッガッと何かが当たっている。
「一体何がどうなってんだ……っ」
目の前が暗くなった。前を見ると、車の上に何かが立っていた。
「……クマ?」
テディベアみたいなものはボロボロで、恐らく血であろう赤い液体を全身にべっとりとつけていた。その手にはよく切れそうな鋭い鎌を持っている。なんだこれ、どこのホラー映画だ。恐怖で体は動かなかった。鎌を振り下ろす瞬間がスロモーションに見えて……。
「あ……ああ……」
思わず目を閉じ、何かに祈った。
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