Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
275 / 300
19 12月のダイアリー

12月のダイアリー 12月1日

しおりを挟む
12月1日(日)雪

昨日から降りだした初雪は、とぎれとぎれに今日も降り続いている。
今日から12月だ。

9月のあの海で、川島君と交わした約束を思い出した。
『12月になって、雪が降ったら、また今日みたいに海を見て、このホテルに来て、暖めあいたいな』って、約束を。
海に降る雪が見たくて、わたしはそんなわがままを言ってみたんだけど、本当は約束で川島君を縛りたかっただけ。
窓の外にチラチラと舞い降りる雪を見ながら、わたしはふと思い立ち、鉄道とバスを乗り継いで、9月に川島君と行った海に、ひとりで出かけた。

もしかして…

川島君はあのときの約束を覚えていて、あの海でずっと、わたしのことを待ってくれているかもしれない。
去年の文化祭のときだって、その前にわたしがお別れの電話をかけたにもかかわらず、川島君はわたしとの約束どおり文化祭に来てくれて、一日中わたしのことを捜してくれた。
そんなやさしさ、情熱が、今でも少しは川島君の心に、残っているかもしれない。
もしそうなら、わたしと川島君は、今日からでもやり直せるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に秘めながら、わたしは海に向かった。


海には、だれもいなかった。

ただ、わたしの心に重くのしかかるように、水平線の向こうに鉛色に低く垂れこめた雲が、あの日、わたしたちの見た海を覆っている。
海に雪が降っているところなんて、少しも綺麗じゃなかった。
せっかく長い時間をかけて地上にまで降りてきた雪は、ただ、波に呑まれて、溶けてなくなるだけ。
そんな惨めな結末も知らないで、雪は降り続ける。
地上に降れば少しは積もることもできるだろうに、ほんのちょっとの運命の違いで、海に降る雪はただ、はかなく虚しく、消えてしまうだけ。
どうしてわたし、こんな景色が好きになりそうだなんて言ったんだろう。
ばっかみたい!


それでもわたしは日が暮れるまで、この寒い海の前に、佇んでいた。
本当は、期待していたのかもしれない。
ありえない運命の再会を。
それが今のわたしの、一縷いちるの望み?
なんだか、惨め。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完結】失恋した者同士で傷を舐め合っていただけの筈だったのに…

ハリエニシダ・レン
恋愛
同じ日に失恋した彼と慰めあった。一人じゃ耐えられなかったから。その場限りのことだと思っていたのに、関係は続いてーー ※第一話だけふわふわしてます。 後半は溺愛ラブコメ。 ◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ ホット入りしたのが嬉しかったので、オマケに狭山くんの話を追加しました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...