Campus91

茉莉 佳

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18 Rip Stick ~before side

Rip Stick 17

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舞台が暗転しても、みんなの興奮はまだ冷めない。
袖に引っ込んだとたん、それぞれのチームのメンバーは歓声を上げた。
混みあったバックステージのあちこちでは、モデルがスタッフやデザイナーと喜びあったり、抱きあったりして、舞台の裏側は、ファッションショーが成功した喜びと安心の色に包まれた。

「ありがとう! みっこちゃん! ほんとにありがとう!」
ウェディングドレスを纏ったみっこを小池さんは抱きしめ、感極まったように、頬にキスをする。
みっこも熱く瞳を閉じてうなずき、小池さんの首にぎゅっと腕をまわした。
「本当によかった」
思わず自分のしたことが恥ずかしいという風に、小池さんはみっこから離れたが、それでも彼女の手をとったまま、頬を赤らめながら言った。
「あなたにわたしの服を着てもらえて、本当に嬉しかった」
「ありがとうございます」
「一年待った甲斐があったわ」
「あたしもです」
「あなたは最高のモデルよ!」
「…」
みっこは瞳を閉じたまま、満足そうに小池さんの最大級の賛辞を聞いている。
「わたし、今日くらい、自分が服を作っててよかったって、思ったこと、ない。
わたし、必ず一流のデザイナーになるから! そして、もっといい服を、たくさん作るから!」
「ええ。期待しています」
「そのときは、もう一度、わたしの服を着てちょうだい。きっと!」
「はい」
そううなづくと、みっこは小池さんの手をぎゅっと握り返して、まっすぐに瞳を見つめて、ニッコリと微笑んだ。
「小池さんの服。とっても素敵でした。着せて頂けてあたし、幸せでした」
「ありがとう! みっこちゃん!」
彼女はもう一度、みっこを抱きしめる。

こうして『1991 Seiran Women's University Fashion Show』は、幕を閉じた。



 スタッフとモデルみんなで、ジュースで打ち上げの乾杯をしたあと、わたしたちは楽屋に散らばったものを、それぞれ片づけにかかった。

「みっこ、すっごいよかったわよ。なんかわたしまで、感動しちゃった」
洋服や靴、小物類を、カバンやポーチに分類して詰め込みながら、わたしはとなりでいっしょに片づけをしているみっこに言う。小池さんの『Misty Pink』は、出場チームのなかでいちばん作品点数が多かった分、荷物も多く、片付けもほかより時間がかかっていた。
本格的な打ち上げパーティは、9時から場所を変えてやる予定だったので、どのチームも片づけが終わり次第会場に移動し、楽屋にはわたしたちだけが残っていた。

「…ん。ありがと」
「みっこがモデルをしてるとこは、モルディブのときしか見てないけど、ファッションショーだとまったく、雰囲気が違うわね」
「…そうね。やっぱりライブだから」
「そうよね~。あの、オープニングのあとのハプニングも、みっこの機転で乗り切れたし。お客さんがいるってだけで、撮影とは違う刺激と緊張感があるわよね」
「…ん。あたしも久しぶりで、とっても充実してた」
みっこは半ば放心状態で、受け答えしている。
ショーの余韻がまだ残っているようで、みっこは気怠い達成感に酔っているみたい。

つづく
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