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14 Summer Vacation
Summer Vacation 2
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アイスクリームのスプーンを持つ手が止まって、思わず聞き返す。
意外な言葉。
「モルディブでのCM撮影で、星川先生といっしょに仕事をしただろ?」
「ええ」
「実は先生から、『夏休みにこちらでバイトしないか』って、誘われたんだよ」
「星川先生から?」
「すごいと思わないか? あんな一流の先生から、直接電話貰ったんだよ!」
「…」
「今回の受賞は、いいおみやげになったよ」
「バイトって、どのくらい行くの?」
「夏休みの間中だよ」
「ええ~っ?! 一ヶ月半も、東京に行っちゃうの?」
思わず大声を出してしまったものだから、川島君は驚いて弁解した。
「ごめん、さつきちゃん。だけどぼくはどうしても行きたいんだよ。こんなチャンスは、もう二度とないかもしれないんだ」
「…」
「星川先生は一流の写真家だから、その先生の元で一ヶ月以上も働けるのは、ぼくがカメラマンになる上での、とっても貴重な経験になると思うんだ」
「そんな経験なら、モルディブでできたじゃない?」
「そうだけど… わかってくれないかなぁ」
「そりゃ、川島君の言いたいことはわかるけど…
でも、川島君は東京でバイトできていいかもしれないけど、わたしはどうなるの?
せっかくの夏休みなのに、ずっと放ったらかしにされるの?」
「それとこれとは、話が別だよ」
「どこが別なのよ? ずっと会えないのはいっしょじゃない。それとも川島君は、わたしと会わなくても平気なの?」
「平気なわけがないじゃないか。ぼくだって夏休みの間、さつきちゃんに会えないのは寂しいし、随分悩んだんだ。だけど、こんなチャンスは絶対活かさなきゃと思うから、仕方ないんだよ」
そう言いながら川島君はちょっと考えるように黙ったが、なにかひらめいたかのように、瞳を輝かせて言った。
「じゃあ、さつきちゃんも、いっしょに東京に行こう!」
「一ヶ月半も? そんなの無理よ」
「向こうでバイトすればいいじゃないか?」
「住む所はどうするのよ」
「ぼくはマンスリーマンションかコーポを借りるつもりだから、いっしょに住めばいい」
「無理よ! うちの親厳しいから、そんなの許してくれるわけないわ」
「じゃあ、一ヶ月半が無理なら、何日かだけでもいいじゃないか」
「川島君、どうせ向こうで仕事三昧なんでしょ? 何日もわたしとデートしたりできるの?」
「そりゃ、さつきちゃんが来てる間ずっと休む、とかはできないけど、休日はいっしょにいられるだろうし」
「休日だけ?!」
「それは仕方ないじゃないか」
「さっきから『仕方ない、仕方ない』って、川島君はわたしよりも仕事を優先するのね」
「さつきちゃんだって、『無理、無理』って、ちっとも歩み寄ろうとしないじゃないか」
そのあとはふたりとも,押したり引いたりで、会話は平行線。
こんなとき、女の子がよく口にするような台詞、
『わたしと仕事と、どっちが大切なの?』
ってのを、つい言ってしまい、川島君を困らせてしまった。
だけど、川島君の決心は固く、
『夏休みの間に、さつきちゃんが東京に来れる間だけでも、来てくれよ』
という彼の提案を、わたしは呑むしかなかった。
だって、それこそ仕方ないもん。
川島君が抱いている夢がわたしは好きだし、だれよりも、そんな夢を持っている川島君が好きなんだもの。
そのわたしが、彼の夢の妨げになるようなことは、できるわけないし、絶対したくない。
つづく
意外な言葉。
「モルディブでのCM撮影で、星川先生といっしょに仕事をしただろ?」
「ええ」
「実は先生から、『夏休みにこちらでバイトしないか』って、誘われたんだよ」
「星川先生から?」
「すごいと思わないか? あんな一流の先生から、直接電話貰ったんだよ!」
「…」
「今回の受賞は、いいおみやげになったよ」
「バイトって、どのくらい行くの?」
「夏休みの間中だよ」
「ええ~っ?! 一ヶ月半も、東京に行っちゃうの?」
思わず大声を出してしまったものだから、川島君は驚いて弁解した。
「ごめん、さつきちゃん。だけどぼくはどうしても行きたいんだよ。こんなチャンスは、もう二度とないかもしれないんだ」
「…」
「星川先生は一流の写真家だから、その先生の元で一ヶ月以上も働けるのは、ぼくがカメラマンになる上での、とっても貴重な経験になると思うんだ」
「そんな経験なら、モルディブでできたじゃない?」
「そうだけど… わかってくれないかなぁ」
「そりゃ、川島君の言いたいことはわかるけど…
でも、川島君は東京でバイトできていいかもしれないけど、わたしはどうなるの?
せっかくの夏休みなのに、ずっと放ったらかしにされるの?」
「それとこれとは、話が別だよ」
「どこが別なのよ? ずっと会えないのはいっしょじゃない。それとも川島君は、わたしと会わなくても平気なの?」
「平気なわけがないじゃないか。ぼくだって夏休みの間、さつきちゃんに会えないのは寂しいし、随分悩んだんだ。だけど、こんなチャンスは絶対活かさなきゃと思うから、仕方ないんだよ」
そう言いながら川島君はちょっと考えるように黙ったが、なにかひらめいたかのように、瞳を輝かせて言った。
「じゃあ、さつきちゃんも、いっしょに東京に行こう!」
「一ヶ月半も? そんなの無理よ」
「向こうでバイトすればいいじゃないか?」
「住む所はどうするのよ」
「ぼくはマンスリーマンションかコーポを借りるつもりだから、いっしょに住めばいい」
「無理よ! うちの親厳しいから、そんなの許してくれるわけないわ」
「じゃあ、一ヶ月半が無理なら、何日かだけでもいいじゃないか」
「川島君、どうせ向こうで仕事三昧なんでしょ? 何日もわたしとデートしたりできるの?」
「そりゃ、さつきちゃんが来てる間ずっと休む、とかはできないけど、休日はいっしょにいられるだろうし」
「休日だけ?!」
「それは仕方ないじゃないか」
「さっきから『仕方ない、仕方ない』って、川島君はわたしよりも仕事を優先するのね」
「さつきちゃんだって、『無理、無理』って、ちっとも歩み寄ろうとしないじゃないか」
そのあとはふたりとも,押したり引いたりで、会話は平行線。
こんなとき、女の子がよく口にするような台詞、
『わたしと仕事と、どっちが大切なの?』
ってのを、つい言ってしまい、川島君を困らせてしまった。
だけど、川島君の決心は固く、
『夏休みの間に、さつきちゃんが東京に来れる間だけでも、来てくれよ』
という彼の提案を、わたしは呑むしかなかった。
だって、それこそ仕方ないもん。
川島君が抱いている夢がわたしは好きだし、だれよりも、そんな夢を持っている川島君が好きなんだもの。
そのわたしが、彼の夢の妨げになるようなことは、できるわけないし、絶対したくない。
つづく
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