Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
57 / 300
07 Carnival Night

Carnival Night 3

しおりを挟む
「被服科3年の小池先輩っていえば、1年生で学内のファッションコンクールでグランプリ取って以来、三連覇中の方なんですよ。
あの『毎日ファッション・コンクール』にも上位入賞するくらいの天才で、もうアパレル系の会社からオファーがあって、服作ってるって聞きましたのよ。わたしの尊敬する大先輩なんです」
「だいたい西蘭女子大のファッションショーってぇ、ほとんどミスコンなんだって。全キャンパスからきれいな子選んでるのよぉ」
「それに小池先輩はモデル選びが特に厳しくって、去年だって自分でオーディションしたって話ですのよ。そんな人から選ばれて、森田さんってほんとにすごいなって、思ってましたのに」
「おまけに今年のショーは、東京のモデルクラブの人が見にくるんだってぇ。
えへ! スカウトされるチャンスじゃない!」
ミキちゃんとナオミはかわるがわるみっこに言う。特にナオミの方は、なんだか口調がはずんでいる。
「えへ。あたしファッションショーに出るんだ。みこちゃんにさつきちゃんも見にきてね。あ~あ。モデル! モデルになりたいっ!」
そう言いながらナオミはコロコロと笑う。
無邪気っていうか、天然っていうか、その独特の鼻にかかったようなしゃべり方と相まって、ナオミってどこか『マリリン・モンロー』っぽくって、男の人との噂も絶えないらしい。
「モデルって『派手』なイメージあるけど、本当はとっても地味な仕事なのよ。そんなに甘いものじゃないわ」
浮かれているナオミに水をさすように、みっこは冷ややかに言った。
「そうぉ? きれいな服着てパチパチ写真撮られてりゃいいんじゃん。簡単よぉ」
「パチパチ写真撮られるようになるには、いろんなことをガマンしなきゃいけないわ。特に新人モデルってのは、クライアントには絶対服従なのよ。『もっとやせろ』だの『腹の肉を減らせ』だの、『髪を切れ』だの『笑顔が暗い』だの、さんざん注文つけられて。結局、『他にイメージに合う子が見つかった』なんて、簡単に切り捨てられたりして。
そうやって潰れていった新人モデルを、あたし、たくさん見た」
「ほんとですの? 森田さん」
ミキちゃんが驚いて聞き返す。
「ええ」
みっこは続けた。
「それに、舞台に立ったり写真撮られたりしているのって、ほんのわずかの間よ。そのわずかな時間のために、ふだんからちゃんと自己管理して、スタイルや美容に気をつけて、汗だくになってダンスやウォーキング、ムーブメントの練習をするのよ。
自分のからだだけが資本だから、なんの保証もないし、友だちと夜更かししたり、自由に遊ぶことだってできなくなる。
モデルって名前だけに憧れているのなら、絶対続かない。本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ」

あ…
みっこの最後のせりふ。

『本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ』

この言葉がわたしの中で、なにかをかすった。
みっこはモデルって仕事を憎んでいたの?
それとも愛していたの?

「そんなの平気。すぐ慣れるわよぉ。それよりモデルになって、いつもきれいなカッコして、パリとかニューヨークに仕事で飛び回るのって、カッコいいじゃない!」
あまりにもあっけらかんとしたナオミの答えに、さすがのみっこもあきれた様子。立ち上がったみっこは、教科書を入れたバインダーをナオミの頭の上に乗せながら言った。
「じゃあナオミ。このバインダーを乗せたまま、教室のはしまで行って、戻ってきてみて」

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

処理中です...