Campus91

茉莉 佳

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05 Love Affair

Love Affair 15

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   affair6

「それって、牽制じゃない?」
耳にかかった髪をくるくる指先で巻きながら、みっこはいたずらっぽく笑った。
学校帰りのいつもの喫茶店。
みっこと話す、川島君とのできごと。
なにか事件が起こるたびに、わたしはみっこに聞いてもらっていた。
もうずいぶん、みっこには川島君のことを話したおかげで、わたしたちの事情をよくわかってくれているし、わたしが思い至らないようなことも、指摘してくれる。
今日も、先日のミーテイングで交わした蘭さんとの会話や、そのあとの川島君との様子を、事細かにみっこに打ち明けた。

「牽制?」
「自分が優位に立って、あなたを近づけまいとしてるんじゃないの?
おもしろくなってきたじゃない」
「おもしろくって… そんな、笑いごとじゃないわよぉ」
「ごめんごめん。でも、今はさつきの方が有利かもね」
「ほんとに?」
「だって、あなたにそういう風に言うってことは、焦ってる証拠じゃない?
えみちゃんも感じてるのよ。さつきと川島君が親しくなってるって」
「そうかなぁ?」
「これみよがしに、ボディタッチとかしてるんでしょ?
一気に逆転をねらって、えみちゃんもいよいよ、女の武器を使いはじめたんじゃない?
でも、そんな手に引っかかるようじゃ、川島君も平凡な男ってことね」
「わたし、川島君にそんな特別なものは求めてないんだけど」
「まあ、そうよね」
「でも、川島君が好きな人って、だれなんだろ…」
「また、そこでループしてるの?」
「だって、蘭さんって、川島君に水着姿まで見せてるのよ。いくら作品のためとはいっても、女の子のそんなカッコを目の前にしてたら、男の人ってムラムラくるものじゃないの?
やっぱり、蘭さんの言うとおり、川島君も本当は、彼女のことが好きなのかも」
「まぁ… いいポートレートを撮るには、エッチするのがいちばんっていうしね」
「エ、エッチぃ?! ほんとに?」
「だいたい、ポートレート撮影なんて、疑似恋愛みたいなものじゃない。
エッチして男女の垣根を取っ払えば、カメラマンはより相手に踏み込んで撮れるし、モデルだって心を開きやすくなるし、魅力的な表情が出しやすくなるわ。
『恋人の撮る写真には巨匠もかなわない』って言われる理由わけね」
「そっ、そうなの? みっこ、詳しいのね」
「まあ、一般論として、ね。
川島君とえみちゃんは、そこまではいってなさそうだけど」
「う~・・・ ますます不安になってきた」
「だったらさつきも、川島君のモデルすれば?」
「わたしが? モデルに?! そんなの無理よ!」
「そう? 夏にさつきの水着姿撮って思ったけど、さつきって可愛いし、胸もおっきいし、女としてすごく魅力的よ」
「だからって、川島君の好みに合うとは限らないし。
そんな『女の武器』に引っかかるような人だったら、なんか、イヤだし」
「まあ、どんな理性的な男だって、結局、女の子のフェロモンにはあらがえないものよ。それがオスの本能じゃないの?」
「そうよね~… 人間もしょせん、動物の一種なのね」
「だとしたら、いちばん警戒しないといけないのは、天然フェロモン系の志摩さんの方かもね」
「天然フェロモン系かぁ。確かに」
「そういう人って、本人は意識してなくても、フェロモンの罠に男の人がうっかり吸い寄せられてしまうものよ。川島君に恋愛感情持ってないって言ってても、いつどうなるか、わかんないわよ」
「おっ、脅かさないでよ」
「脅しじゃないわよ。恋愛って、物理的な距離もけっこう大事よ。
川島君とみさとさんって、学校でいつも会ってて、お昼をいっしょに食べたりしてるんでしょ?
そのくらい親密な仲なら、恋に発展することだって、じゅうぶんありえるわ」
「だけどみさとさん。わたしのこと『応援してる』って言ってくれたし、協力だってしてくれるって」
「恋は戦争よ。そんな言葉を真に受けちゃダメ」
「みっこ、厳しい~」
「先手必勝。グズグズしてると先を越されるわよ。もう短期決戦で行こ!」
「えっ?」
「えみちゃんが女の武器で川島君を落とす前に、みさとさんのフェロモンの罠に川島君が落ちる前に、さつきの方からアタックするべきよ」
「まあ、それがいいとは思うけど…」
「勇気を出して! ドンとぶつかって華々しく散る方が、気が楽になるって」
「そんな、縁起でもないこと言わないでよ!」
「うそうそ。あたし、なんだかうまくいく気がしてるのよ」
「そ、そう?」
「今まで聞いた話なら、川島君って、さつきに気があるんだと思うわ」
「ほんとに?!」
「いったん友達としての仲が深まってしまうと、逆に恋には発展しにくくなるものよ。
関係がまだ固まってない今が、チャンスよ。
思い切って、川島君の胸に飛び込めば?」
そう言って、みっこはウインクしてみせた。
その言葉に、勇気が出てくる。

今度こそ。
今度川島君に会ったときこそ、わたしの想いを伝えよう!

つづく
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