47 / 300
05 Love Affair
Love Affair 15
しおりを挟む
affair6
「それって、牽制じゃない?」
耳にかかった髪をくるくる指先で巻きながら、みっこはいたずらっぽく笑った。
学校帰りのいつもの喫茶店。
みっこと話す、川島君とのできごと。
なにか事件が起こるたびに、わたしはみっこに聞いてもらっていた。
もうずいぶん、みっこには川島君のことを話したおかげで、わたしたちの事情をよくわかってくれているし、わたしが思い至らないようなことも、指摘してくれる。
今日も、先日のミーテイングで交わした蘭さんとの会話や、そのあとの川島君との様子を、事細かにみっこに打ち明けた。
「牽制?」
「自分が優位に立って、あなたを近づけまいとしてるんじゃないの?
おもしろくなってきたじゃない」
「おもしろくって… そんな、笑いごとじゃないわよぉ」
「ごめんごめん。でも、今はさつきの方が有利かもね」
「ほんとに?」
「だって、あなたにそういう風に言うってことは、焦ってる証拠じゃない?
えみちゃんも感じてるのよ。さつきと川島君が親しくなってるって」
「そうかなぁ?」
「これみよがしに、ボディタッチとかしてるんでしょ?
一気に逆転をねらって、えみちゃんもいよいよ、女の武器を使いはじめたんじゃない?
でも、そんな手に引っかかるようじゃ、川島君も平凡な男ってことね」
「わたし、川島君にそんな特別なものは求めてないんだけど」
「まあ、そうよね」
「でも、川島君が好きな人って、だれなんだろ…」
「また、そこでループしてるの?」
「だって、蘭さんって、川島君に水着姿まで見せてるのよ。いくら作品のためとはいっても、女の子のそんなカッコを目の前にしてたら、男の人ってムラムラくるものじゃないの?
やっぱり、蘭さんの言うとおり、川島君も本当は、彼女のことが好きなのかも」
「まぁ… いいポートレートを撮るには、エッチするのがいちばんっていうしね」
「エ、エッチぃ?! ほんとに?」
「だいたい、ポートレート撮影なんて、疑似恋愛みたいなものじゃない。
エッチして男女の垣根を取っ払えば、カメラマンはより相手に踏み込んで撮れるし、モデルだって心を開きやすくなるし、魅力的な表情が出しやすくなるわ。
『恋人の撮る写真には巨匠もかなわない』って言われる理由ね」
「そっ、そうなの? みっこ、詳しいのね」
「まあ、一般論として、ね。
川島君とえみちゃんは、そこまではいってなさそうだけど」
「う~・・・ ますます不安になってきた」
「だったらさつきも、川島君のモデルすれば?」
「わたしが? モデルに?! そんなの無理よ!」
「そう? 夏にさつきの水着姿撮って思ったけど、さつきって可愛いし、胸もおっきいし、女としてすごく魅力的よ」
「だからって、川島君の好みに合うとは限らないし。
そんな『女の武器』に引っかかるような人だったら、なんか、イヤだし」
「まあ、どんな理性的な男だって、結局、女の子のフェロモンには抗えないものよ。それがオスの本能じゃないの?」
「そうよね~… 人間もしょせん、動物の一種なのね」
「だとしたら、いちばん警戒しないといけないのは、天然フェロモン系の志摩さんの方かもね」
「天然フェロモン系かぁ。確かに」
「そういう人って、本人は意識してなくても、フェロモンの罠に男の人がうっかり吸い寄せられてしまうものよ。川島君に恋愛感情持ってないって言ってても、いつどうなるか、わかんないわよ」
「おっ、脅かさないでよ」
「脅しじゃないわよ。恋愛って、物理的な距離もけっこう大事よ。
川島君とみさとさんって、学校でいつも会ってて、お昼をいっしょに食べたりしてるんでしょ?
そのくらい親密な仲なら、恋に発展することだって、じゅうぶんありえるわ」
「だけどみさとさん。わたしのこと『応援してる』って言ってくれたし、協力だってしてくれるって」
「恋は戦争よ。そんな言葉を真に受けちゃダメ」
「みっこ、厳しい~」
「先手必勝。グズグズしてると先を越されるわよ。もう短期決戦で行こ!」
「えっ?」
「えみちゃんが女の武器で川島君を落とす前に、みさとさんのフェロモンの罠に川島君が落ちる前に、さつきの方からアタックするべきよ」
「まあ、それがいいとは思うけど…」
「勇気を出して! ドンとぶつかって華々しく散る方が、気が楽になるって」
「そんな、縁起でもないこと言わないでよ!」
「うそうそ。あたし、なんだかうまくいく気がしてるのよ」
「そ、そう?」
「今まで聞いた話なら、川島君って、さつきに気があるんだと思うわ」
「ほんとに?!」
「いったん友達としての仲が深まってしまうと、逆に恋には発展しにくくなるものよ。
関係がまだ固まってない今が、チャンスよ。
思い切って、川島君の胸に飛び込めば?」
そう言って、みっこはウインクしてみせた。
その言葉に、勇気が出てくる。
今度こそ。
今度川島君に会ったときこそ、わたしの想いを伝えよう!
つづく
「それって、牽制じゃない?」
耳にかかった髪をくるくる指先で巻きながら、みっこはいたずらっぽく笑った。
学校帰りのいつもの喫茶店。
みっこと話す、川島君とのできごと。
なにか事件が起こるたびに、わたしはみっこに聞いてもらっていた。
もうずいぶん、みっこには川島君のことを話したおかげで、わたしたちの事情をよくわかってくれているし、わたしが思い至らないようなことも、指摘してくれる。
今日も、先日のミーテイングで交わした蘭さんとの会話や、そのあとの川島君との様子を、事細かにみっこに打ち明けた。
「牽制?」
「自分が優位に立って、あなたを近づけまいとしてるんじゃないの?
おもしろくなってきたじゃない」
「おもしろくって… そんな、笑いごとじゃないわよぉ」
「ごめんごめん。でも、今はさつきの方が有利かもね」
「ほんとに?」
「だって、あなたにそういう風に言うってことは、焦ってる証拠じゃない?
えみちゃんも感じてるのよ。さつきと川島君が親しくなってるって」
「そうかなぁ?」
「これみよがしに、ボディタッチとかしてるんでしょ?
一気に逆転をねらって、えみちゃんもいよいよ、女の武器を使いはじめたんじゃない?
でも、そんな手に引っかかるようじゃ、川島君も平凡な男ってことね」
「わたし、川島君にそんな特別なものは求めてないんだけど」
「まあ、そうよね」
「でも、川島君が好きな人って、だれなんだろ…」
「また、そこでループしてるの?」
「だって、蘭さんって、川島君に水着姿まで見せてるのよ。いくら作品のためとはいっても、女の子のそんなカッコを目の前にしてたら、男の人ってムラムラくるものじゃないの?
やっぱり、蘭さんの言うとおり、川島君も本当は、彼女のことが好きなのかも」
「まぁ… いいポートレートを撮るには、エッチするのがいちばんっていうしね」
「エ、エッチぃ?! ほんとに?」
「だいたい、ポートレート撮影なんて、疑似恋愛みたいなものじゃない。
エッチして男女の垣根を取っ払えば、カメラマンはより相手に踏み込んで撮れるし、モデルだって心を開きやすくなるし、魅力的な表情が出しやすくなるわ。
『恋人の撮る写真には巨匠もかなわない』って言われる理由ね」
「そっ、そうなの? みっこ、詳しいのね」
「まあ、一般論として、ね。
川島君とえみちゃんは、そこまではいってなさそうだけど」
「う~・・・ ますます不安になってきた」
「だったらさつきも、川島君のモデルすれば?」
「わたしが? モデルに?! そんなの無理よ!」
「そう? 夏にさつきの水着姿撮って思ったけど、さつきって可愛いし、胸もおっきいし、女としてすごく魅力的よ」
「だからって、川島君の好みに合うとは限らないし。
そんな『女の武器』に引っかかるような人だったら、なんか、イヤだし」
「まあ、どんな理性的な男だって、結局、女の子のフェロモンには抗えないものよ。それがオスの本能じゃないの?」
「そうよね~… 人間もしょせん、動物の一種なのね」
「だとしたら、いちばん警戒しないといけないのは、天然フェロモン系の志摩さんの方かもね」
「天然フェロモン系かぁ。確かに」
「そういう人って、本人は意識してなくても、フェロモンの罠に男の人がうっかり吸い寄せられてしまうものよ。川島君に恋愛感情持ってないって言ってても、いつどうなるか、わかんないわよ」
「おっ、脅かさないでよ」
「脅しじゃないわよ。恋愛って、物理的な距離もけっこう大事よ。
川島君とみさとさんって、学校でいつも会ってて、お昼をいっしょに食べたりしてるんでしょ?
そのくらい親密な仲なら、恋に発展することだって、じゅうぶんありえるわ」
「だけどみさとさん。わたしのこと『応援してる』って言ってくれたし、協力だってしてくれるって」
「恋は戦争よ。そんな言葉を真に受けちゃダメ」
「みっこ、厳しい~」
「先手必勝。グズグズしてると先を越されるわよ。もう短期決戦で行こ!」
「えっ?」
「えみちゃんが女の武器で川島君を落とす前に、みさとさんのフェロモンの罠に川島君が落ちる前に、さつきの方からアタックするべきよ」
「まあ、それがいいとは思うけど…」
「勇気を出して! ドンとぶつかって華々しく散る方が、気が楽になるって」
「そんな、縁起でもないこと言わないでよ!」
「うそうそ。あたし、なんだかうまくいく気がしてるのよ」
「そ、そう?」
「今まで聞いた話なら、川島君って、さつきに気があるんだと思うわ」
「ほんとに?!」
「いったん友達としての仲が深まってしまうと、逆に恋には発展しにくくなるものよ。
関係がまだ固まってない今が、チャンスよ。
思い切って、川島君の胸に飛び込めば?」
そう言って、みっこはウインクしてみせた。
その言葉に、勇気が出てくる。
今度こそ。
今度川島君に会ったときこそ、わたしの想いを伝えよう!
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【完結】失恋した者同士で傷を舐め合っていただけの筈だったのに…
ハリエニシダ・レン
恋愛
同じ日に失恋した彼と慰めあった。一人じゃ耐えられなかったから。その場限りのことだと思っていたのに、関係は続いてーー
※第一話だけふわふわしてます。
後半は溺愛ラブコメ。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ホット入りしたのが嬉しかったので、オマケに狭山くんの話を追加しました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる