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02 Fashion Plate
Fashion Plate 5
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そういえばみっこは、学校やちょっとしたショッピングのときは、麻とか綿のジーンズとか、パッと見ふつうっぽい服を着ていることが多い。
なのに、誰とも違う個性が光っているのは、そんな格好の中にもどこか必ず、おしゃれな要素が入っているから。
シンプルなシャツやパンツでも、形が綺麗だとか、ディテールのデザインが凝っていたりとか、色や柄や素材が違うアイテムを、大胆にさらりと組み合わせたりしているからだ。
いつかも、講義の空き時間にファンシーショップで買った安いレースの端切れを、ジーンズのスカートにザクザク縫いつけて、綿シャツに合わせて着てたりしたこともあったな。ジーンズとレースの組み合わせなんて考えつかなかったけど、みっこがやるととたんにおしゃれになってしまう。(作者註:1990年頃はまだ、異なるテイストの組み合わせはコーデの常識からはずれていた)
うちの大学にもそれなりにお嬢様っぽい女の子はいるけど、他の子たちがどんなに高級なブランド服を着てきたって、みっこの方がさりげないけど、ハッと目を惹きつけられるおしゃれをしている。それが森田美湖の個性で、ファッションに対する哲学なのかもしれない。
みっこの『羽』は、人から借りたものじゃなく、自分自身のものなんだ。
彼女からは自分の築いてきたスタイルに対する自信を、いつだって感じられる。
羨ましい。
ちょっとしたことで自信がぐらついて、すぐに不安になってしまうわたしとしては。
「いらっしゃい、美湖ちゃん。お待ちしてましたよ」
奥から出てきた五十がらみのオーナーらしい、品のある綺麗な女性が、そう言ってみっこに会釈した。
『美湖ちゃん』って…
ここはみっこの知り合いのお店だったのか。みっこも親しげな微笑みを返した。
「お久し振りです伊藤さん。今、こちらの方の店舗の視察中だなんて、ラッキーでした」
「ええ。明後日までいて、そのあとは東京に戻りますよ。でもびっくりしましたよ。美湖ちゃんが福岡の大学に進学しているなんて。よくお母様がお許しに…」
「ママのことはいいです」
みっこは彼女の話を遮った。
「それより今日は話したとおり、よろしくお願いします」
「はいはい。美湖ちゃんにはかないませんね」
伊藤さんはニコニコ微笑みながら答えた。
ふたりはしばらくなにか話していたが、「決まったら呼びますね」と言って、みっこはまた服を見はじめた。
なんか場慣れしてるんだな~。
サングラスたちと行ったフレンチレストランでも感じたけど、みっこはこういう高級っぽい場所でも、品よく堂々とふるまえる。自分の身の丈に合ってなくて、ビビってるわたしとは、なんだか距離を感じちゃう。
「このお店って、ノスタルジックな雰囲気のワンピースが多いのよ。生地や細部に凝っていて、今じゃほとんど見られない様なアンティークな素材とかを、探し出してきて使ったりしているの。あまり派手さはないけれど、その分いくつになっても着られるようなデザインと素材だから、値段よりお得なのよ」
そう解説しながら、みっこは店内を回る。
『ブランシュ』は10メートル四方のこぎれいなブティックで、通りに向いたフランス窓と、二階へ上がる螺旋階段が洒落ている。ショー・ウインドにはシルクのローズピンクの豪華なドレスが、ダウンライトにほんのり照らされて浮かんでいる。
トルソーに飾られた服も、確かに派手さはないけど、どこかレトロ調で懐かしい。襟元や袖のレースの使い方が絶妙。ボタンの形もハート型とか貝殻型とか凝っていて可愛い。服にはあんまり詳しくないけど、こういうのは好みかなぁ。わたしだって女の子だから、こんな素敵な服は欲しくなる。でも簡単に買えるような値段じゃないだろうし、怖いから値札は見ないことにした。
「美湖ちゃんのお友達の方ですね」
螺旋階段を登ってみっこが二階の服を見に行っている間に、伊藤さんが声をかけてきた。
「みっ… 森田さんの。はい、そうですけど」
彼女は微笑みながら、丁寧に挨拶をして下さる。
「これを機に、以後おつきあい下さいね」
「あっ、はい…」
「なにしろ、美湖ちゃんがお店にお友達を連れてきたのは、小学生の時以来ですもの」
「小学生? そんなに古いつきあいなんですか?」
「ええ。森田さんとはお母様がモデルをされていた頃からのつきあいですから、もう30年になりますね。もちろん美湖ちゃんはまだ生まれてなかったですよ。あの頃の私達は洋裁学校のデザイナー志望と、モデルの卵でしたの」
「森田さんのお母さんって、モデルだったんですか!?」
はじめて聞いた。
みっこのお母さんがモデルやってたなんて。
つづく
なのに、誰とも違う個性が光っているのは、そんな格好の中にもどこか必ず、おしゃれな要素が入っているから。
シンプルなシャツやパンツでも、形が綺麗だとか、ディテールのデザインが凝っていたりとか、色や柄や素材が違うアイテムを、大胆にさらりと組み合わせたりしているからだ。
いつかも、講義の空き時間にファンシーショップで買った安いレースの端切れを、ジーンズのスカートにザクザク縫いつけて、綿シャツに合わせて着てたりしたこともあったな。ジーンズとレースの組み合わせなんて考えつかなかったけど、みっこがやるととたんにおしゃれになってしまう。(作者註:1990年頃はまだ、異なるテイストの組み合わせはコーデの常識からはずれていた)
うちの大学にもそれなりにお嬢様っぽい女の子はいるけど、他の子たちがどんなに高級なブランド服を着てきたって、みっこの方がさりげないけど、ハッと目を惹きつけられるおしゃれをしている。それが森田美湖の個性で、ファッションに対する哲学なのかもしれない。
みっこの『羽』は、人から借りたものじゃなく、自分自身のものなんだ。
彼女からは自分の築いてきたスタイルに対する自信を、いつだって感じられる。
羨ましい。
ちょっとしたことで自信がぐらついて、すぐに不安になってしまうわたしとしては。
「いらっしゃい、美湖ちゃん。お待ちしてましたよ」
奥から出てきた五十がらみのオーナーらしい、品のある綺麗な女性が、そう言ってみっこに会釈した。
『美湖ちゃん』って…
ここはみっこの知り合いのお店だったのか。みっこも親しげな微笑みを返した。
「お久し振りです伊藤さん。今、こちらの方の店舗の視察中だなんて、ラッキーでした」
「ええ。明後日までいて、そのあとは東京に戻りますよ。でもびっくりしましたよ。美湖ちゃんが福岡の大学に進学しているなんて。よくお母様がお許しに…」
「ママのことはいいです」
みっこは彼女の話を遮った。
「それより今日は話したとおり、よろしくお願いします」
「はいはい。美湖ちゃんにはかないませんね」
伊藤さんはニコニコ微笑みながら答えた。
ふたりはしばらくなにか話していたが、「決まったら呼びますね」と言って、みっこはまた服を見はじめた。
なんか場慣れしてるんだな~。
サングラスたちと行ったフレンチレストランでも感じたけど、みっこはこういう高級っぽい場所でも、品よく堂々とふるまえる。自分の身の丈に合ってなくて、ビビってるわたしとは、なんだか距離を感じちゃう。
「このお店って、ノスタルジックな雰囲気のワンピースが多いのよ。生地や細部に凝っていて、今じゃほとんど見られない様なアンティークな素材とかを、探し出してきて使ったりしているの。あまり派手さはないけれど、その分いくつになっても着られるようなデザインと素材だから、値段よりお得なのよ」
そう解説しながら、みっこは店内を回る。
『ブランシュ』は10メートル四方のこぎれいなブティックで、通りに向いたフランス窓と、二階へ上がる螺旋階段が洒落ている。ショー・ウインドにはシルクのローズピンクの豪華なドレスが、ダウンライトにほんのり照らされて浮かんでいる。
トルソーに飾られた服も、確かに派手さはないけど、どこかレトロ調で懐かしい。襟元や袖のレースの使い方が絶妙。ボタンの形もハート型とか貝殻型とか凝っていて可愛い。服にはあんまり詳しくないけど、こういうのは好みかなぁ。わたしだって女の子だから、こんな素敵な服は欲しくなる。でも簡単に買えるような値段じゃないだろうし、怖いから値札は見ないことにした。
「美湖ちゃんのお友達の方ですね」
螺旋階段を登ってみっこが二階の服を見に行っている間に、伊藤さんが声をかけてきた。
「みっ… 森田さんの。はい、そうですけど」
彼女は微笑みながら、丁寧に挨拶をして下さる。
「これを機に、以後おつきあい下さいね」
「あっ、はい…」
「なにしろ、美湖ちゃんがお店にお友達を連れてきたのは、小学生の時以来ですもの」
「小学生? そんなに古いつきあいなんですか?」
「ええ。森田さんとはお母様がモデルをされていた頃からのつきあいですから、もう30年になりますね。もちろん美湖ちゃんはまだ生まれてなかったですよ。あの頃の私達は洋裁学校のデザイナー志望と、モデルの卵でしたの」
「森田さんのお母さんって、モデルだったんですか!?」
はじめて聞いた。
みっこのお母さんがモデルやってたなんて。
つづく
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