Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
11 / 300
01 PERKY JEAN

PERKY JEAN 10

しおりを挟む
「はっ、放してよ!」
「いいやない。これくらい」
「いやっ!」
拒むわたしにかまわず、ニキビは腕の力をさらに込めて抱き寄せ、顔を近づけてきた。

ぞっとする。

嫌いな男に触られるのって、生理的にイヤ!
わたしは必死に肩をよじった。
「やめてよっ」
「いいやない」
「いやっ!」
「一回だけ。ね」
「絶対ダメッ!」
ニキビの猫なで声に、かえって恐怖が増してきて、わたしは精一杯拒んだ。
しかし、ニキビは強引にわたしのあごに手をかけて、顔を持ち上げようとする。歯をくいしばってうつむくけど、ちっともかなわない。すごい力。
どうしてこんな野蛮人が、わたしより力があるの?
女の子って理不尽よ。怖いっ!

「放してよっ!」

その時、リンと澄んだ声があたりに響き渡った。
反射的にわたしはみっこを振り返った。
砂浜に座り込んでいるサングラスに向かって、みっこは少し離れて立ち構えている。
「いっ… 今さらカマトトぶるなよ。おまえだって承知でついてきたんだろ」
狼狽したような声で、サングラスはみっこに言った。
突然のことにニキビも思わず手を緩め、声のした方を見る。その隙にわたしはニキビの腕をすり抜け、みっこの方にかけ寄った。
「うぬぼれないでよ。あたし、承知なんかしてない」
「じゃどうしてオレ達の誘いに乗ったんだ!」
「食事おごってもらうためって、最初に言ったわ」
「6万円もしたんだぞ!」
「あなたが選んだお店よ」
「じゃ、夜の海が見たいってのは、なんなんだ!」
「見に来ちゃいけないの? ただそれだけよ」
「誘ってたじゃんか!」
「勘違いしないで」
「勝手なことぬかすな!」
「じゃあどうしてほしいの? 食事のお礼にキスでもセックスでもしてあげればいいわけ? あたしはそんなに安っぽくないわ。バカにしないで!」
サングラスを睨みつけながら、みっこは速い足取りでわたしの方へ歩いてくる。あまりの迫力に気圧《けお》されたサングラスは、呆然と彼女を見ているだけ。

すごい!

まったく毅然としていて、相手につけいる隙も与えない。
「行きましょ。まったくこの人たち、不愉快だわ」
かけ寄るわたしの手をとって、みっこは国道に向かって早足で歩いていく。
「おい、待て。待てって言ってんだよ! おまえら! くそっ!」
我に返ったサングラスは、期待を裏切られた怒りと恥をかかされた悔しさで、顔を真っ赤にして追ってくる。ニキビもこちらに走ってきた。やばいよ、やばい!
「み、みっこ。早く逃げよ!」
わたしは彼女をせかした。
凶暴になったふたりに、なにをされるかわからない。やばいよ!

「ふふ。大丈夫よさつき。ほら」
国道に出たみっこは、微笑んで向こうに手を振った。
ヘッドライトのまぶしい光が近づいてくる。
さっきのバスが来たんだ。海水浴場から!
わたしたちを認めて、バスはスピードを落とした。
「じゃああたしたちはバスで帰るわ。あなたたちも早くクルマに戻った方がいいかもよ。あたしすぐ戻るつもりで、窓もドアも開けたままにしてきたから。あんな素敵なクルマだし、荒らされたりしたら大変だものね」
わたしの背中を押しながら、みっこはバスのステップを軽やかにかけ上がり、ようやく追いついたふたりに向かって微笑んだ。男たちもさすがにバスの中までは追いかけてこれないみたい。
「降りろよ。もう少し話そうゼ」
「いやよ。あなたたちといると、いつ帰してもらえるかわかんないもん」
「すぐに家に送るからサ。な」
「それにあなたたちといても、ちっとも楽しくないの。食事はおいしかったけどね。じゃあさよなら」
心から『してやった』といった顔で、みっこは微笑む。バスはふたりの男を後に走り出した。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完結】失恋した者同士で傷を舐め合っていただけの筈だったのに…

ハリエニシダ・レン
恋愛
同じ日に失恋した彼と慰めあった。一人じゃ耐えられなかったから。その場限りのことだと思っていたのに、関係は続いてーー ※第一話だけふわふわしてます。 後半は溺愛ラブコメ。 ◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ ホット入りしたのが嬉しかったので、オマケに狭山くんの話を追加しました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...