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「できちゃったって、、、 相手はだれですか?!」

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「ふぅん。まあだいたい、予想はついてたけどね」

 数日後、思いあまったわたしは、兄の恋人の大友優花さんと近くのカフェで落ち合うと、ヨシキさんとのいきさつを話した。
カフェのテーブルに肘をつき、ホットレモネードを飲んでいた優花さんは、こともなげにそう言った。
優花さんとは、ネット匿名掲示板の件で誤解があって以来、微妙にギクシャクした関係。
いちおう仲直りはしたものの、以前みたいに遠慮なく話をすることがなく、お互い少し、他人行儀なところがあるような気がする。
まあ、わたしの気にしすぎかもしれないけど。

「そう言えば、、、 以前優花さんはそういうの、『いい男とつきあう税』とか言ってましたよね」
「そんなこと言ったっけ?」
「ええ」
「そうね。まあ、ヨシキさんクラスの男になれば、彼女候補はそれこそいくらでも寄ってくるだろうから、ヤツに『手放すのが惜しい』と思われる女にならなきゃ、凛子ちゃんもいずれ、彼女の座から引きずり下ろされちゃうわよ」
「あんまり脅かさないで下さい」
「ははは。なんだかんだ言って、凛子ちゃんもこの半年の間にずいぶんいい女になったから、心配ないんじゃない?」

軽く笑って、優花さんはまたレモネードのストローに口をやる。
しかし、すぐに気分悪そうに眉間にしわを寄せると、すっくと席を立ってトイレへ駆け込み、戻ってきたあと打ち明けるように、小さな声で言った。

「ごめん。あたし実は、、、 できちゃったんだ」
「え? でき、、、 って。まっ、まさか」
「そう。その、まさか」
「だっ、だれなんですか、相手は?!」
「だれって… あなたのお兄さんに決まってるじゃない」
「あっ。そ、そうですよね」
「凛子ちゃんったら、天然ね~」

思わず放ったわたしのトンチンカンな問いに、優花さんはケラケラと笑い出す。
一時は優花さんとヨシキさんの仲を疑ったりしたから、咄嗟とっさにそんな台詞が出たのかもしれない。
それにしても、『できちゃった』って、、、
いったい優花さん、どうするつもり?
うっとりとした表情で、優花さんは続けた。

「忠彰さんにはもう話したわ。そしたら言ってくれたの。
あと二ヶ月もしたら安定期に入るし、わたしの大学卒業と同時に、式を挙げようって」
「じゃあ、優花さん、いよいよ兄と」
「永久就職ね」
「ほんとに?!」
「ええ。順番がちょっと逆になっちゃったけど、ついに結婚よ!」
「おめでとうございます!」
「ありがと! これで凛子ちゃんも晴れて、あたしの妹ね」
「うるさい小姑になると思いますけど」
「あは。まだ男か女かもわかんないけど、凛子ちゃんも可愛がってあげてね」
「もちろんです!」

そう答えると、優花さんは幸せそうな微笑みを見せた。
今までに見せたこともないような、ふんわりとした満足げな表情。
優花さん、なんだかいきなりお母さんになったみたい。

つづく
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