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「男の人からこんなに求められたのははじめてです」

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「…って、それはオレのワガママだから、真剣マジに受け取らなくていいよ」

戸惑うわたしを素早く見てとったのか、おどけるような調子でヨシキさんは言った。

「え?」
「オレとしたことが、つい熱く語っちまったな。
いや、悪い。
写真のこととなると、つい力が入っちゃって。
美月ちゃんにしても、いきなりモデルなんてハードル高いだろし、ましてオレは、作品撮りとなったら鬼畜入るたちだから、軽く流してくれといていいよ。
まあ、その気になったらよろしくな。オレはいつでもOKだから」

さっきまで真剣な目をしていたヨシキさんは、一瞬にして会話の流れを変え、軽い笑顔を作ると、またとりとめのない世間話に戻っていった。

だけど、わたしの心には、しっかり焼きつけられた。
一瞬垣間見れた、ヨシキさんの本気の顔が。

ふだんはニコニコしていて、ノリも軽くて、チャラくも見えることがあるヨシキさんの内側には、こんなにも真面目で真剣な思いがあったんだ。
意外な一面だけど、それが逆に、わたしの心をぐいぐいと引きつけてしまう。
それに、自分の心のなかを見せてしまったことを照れるように、慌てて話を逸らすヨシキさんも、なんだか可愛い。
わたし、この人から目が離せない。



“ピロピロピロ~♪”

携帯メールの着信音で、わたしは我に返った。
それはヨシキさんからだった。
急いでメール画面を開く。

『今日はお疲れさま&ありがとう。
美月ちゃんといろいろ話せてよかったよ。遅くまでつきあわせてゴメンな。おやすみ』


机に伏せて、携帯を目の前にかざしながら、何回も何回も、わたしはそのメールを読み返した。
さりげない文章のなかに、わたしへの気遣いが込められているのが嬉しい。

この人は心から、わたしのことを望んでくれている。
わたしを求めてくれている。
モデルとはいえ、こんなに力強く、自信に溢れた言葉で、男の人から求められたのは、はじめてだった。
確かに、まだ出会って間がなく、ヨシキさんのこともわからないことだらけだけど、わたしの魂が『この人だ』と叫んでいる。
ヨシキさんのことを考えるとき、心臓がドキドキと高鳴り、気持ちも高揚してくる。
こんな気持ちははじめてだ。
ヨシキさんになら、わたしの想いを受け止めてもらえるだろうし、この人なら信じることができる。
『新しい世界の創造』がわたしにできると、ヨシキさんが言うのなら、きっとその期待にも応えることができるだろう。

『凛子。これはチャンスよ。思い切って挑むべきよ。あなたならできる!』

自分に強く言い聞かせ、わたしはメールの返信ボタンを押した。

その夜、ヨシキさんとの個撮を決心した。

つづく
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