55 / 70
10th sense
10th sense 1
しおりを挟む
10th sense
降霊術での呪いの言葉と、そのあと小嶋未希が階段から落ちて足を骨折したという話は、火の手が燃え上がるように、一気に学校中に広まった。
『酒井あずさの霊が、小嶋未希を呪って怪我させた』
というのは、もう噂レベルじゃなくなって、だれもが信じる真実となってしまった。
だけど、だれもそのことを話題にしようとしない。
みんな、あたしの『祟り』を恐れて、口を噤んでしまったのだ。
今回の事件で、あたしはすっかり怨霊認定されちゃった。
なんか、、、
むかつく。
小嶋未希を突き飛ばしたのは、下級霊だってのに。
コックリさんもどきでの呪いの言葉の数々も、みんな下級霊の仕業。
なのにだれも、あたしのこと、わかってくれない。
あたしの言葉を聞いてもくれない。
あたしはずっと、ひとりぼっち。
航平くん、、、
あなただけでも、あたしの側にいてほしい。
やっぱりあなたに、こちらに来てほしい。
下級霊の言うように、永遠に結ばれるのなら、、、
「航平くん。あのね、、、
今日はいっしょに来てほしい所があるの」
それから数日たった放課後のことだった。
教室に残ってた航平くんに、ミクは声をかけ、いっしょに下校した。
「どこに行くんだい?」
「、、ちょっと」
航平くんが訊いても、ミクははぐらかしてちゃんと答えず、黙って先を歩いていった。
ミクが向かったのは、あたしの家の近く、、、
そう。
あたしの死んだ場所。
交通事故の現場だった。
二車線の道路と、住宅街に入る脇道が交わるその交差点で、あたしはクルマに撥ねられたのだ。
そこは朝夕のラッシュ時の通勤道路で、見通しのいい直線道路でスピードが出しやすいけど、脇道からは自転車や子供が飛び出しそうな、出会い頭の事故が起きそうな場所。
その歩道の道ばたに、花瓶に入った百合の花が活けられている。
猛スピードで駆け抜ける大型車が巻き起こした風で、真っ白な百合の花が、悲しそうに震えてる。
そうだった、、、
ここであたしは、死んだんだ!
そういえば、この事故現場に来たのは、死んで以来初めてかも。
以前、如月摩耶が、『ここに来ればなにかが変わる』って、言ってた気も、、、
と思った瞬間、猛烈な勢いで、そのときの光景が頭のなかにフラッシュバックしてきた。
「わ~~ん。遅れちゃう!
2年になって早々遅刻なんて、カッコ悪ぅ~い!!」
懐かしい、見覚えのある家の玄関先。
制服を着たショートカットの女子高生が、慌ただしく靴を履いてる。
あたしだ!
「お母さん! お母さん!
早く、お弁当!
もう行かなきゃ!!」
そう叫んで、玄関で足踏みをしてるあたしは、見送りに出てきた母の手から弁当箱を引ったくり、勢いよくドアを開けた。
家から幹線道路のバス停まで、300メートル。
バスの時間まで、あと2分しかない。
道に出たあたしはいきなり、全力で走りはじめた。
そうして、制服の胸元に手を当ててみる。
分厚い封筒の感触。
胸ポケットのなかには、半徹夜して書き上げた、航平くんへのラブレターが入ってた。
つづく
降霊術での呪いの言葉と、そのあと小嶋未希が階段から落ちて足を骨折したという話は、火の手が燃え上がるように、一気に学校中に広まった。
『酒井あずさの霊が、小嶋未希を呪って怪我させた』
というのは、もう噂レベルじゃなくなって、だれもが信じる真実となってしまった。
だけど、だれもそのことを話題にしようとしない。
みんな、あたしの『祟り』を恐れて、口を噤んでしまったのだ。
今回の事件で、あたしはすっかり怨霊認定されちゃった。
なんか、、、
むかつく。
小嶋未希を突き飛ばしたのは、下級霊だってのに。
コックリさんもどきでの呪いの言葉の数々も、みんな下級霊の仕業。
なのにだれも、あたしのこと、わかってくれない。
あたしの言葉を聞いてもくれない。
あたしはずっと、ひとりぼっち。
航平くん、、、
あなただけでも、あたしの側にいてほしい。
やっぱりあなたに、こちらに来てほしい。
下級霊の言うように、永遠に結ばれるのなら、、、
「航平くん。あのね、、、
今日はいっしょに来てほしい所があるの」
それから数日たった放課後のことだった。
教室に残ってた航平くんに、ミクは声をかけ、いっしょに下校した。
「どこに行くんだい?」
「、、ちょっと」
航平くんが訊いても、ミクははぐらかしてちゃんと答えず、黙って先を歩いていった。
ミクが向かったのは、あたしの家の近く、、、
そう。
あたしの死んだ場所。
交通事故の現場だった。
二車線の道路と、住宅街に入る脇道が交わるその交差点で、あたしはクルマに撥ねられたのだ。
そこは朝夕のラッシュ時の通勤道路で、見通しのいい直線道路でスピードが出しやすいけど、脇道からは自転車や子供が飛び出しそうな、出会い頭の事故が起きそうな場所。
その歩道の道ばたに、花瓶に入った百合の花が活けられている。
猛スピードで駆け抜ける大型車が巻き起こした風で、真っ白な百合の花が、悲しそうに震えてる。
そうだった、、、
ここであたしは、死んだんだ!
そういえば、この事故現場に来たのは、死んで以来初めてかも。
以前、如月摩耶が、『ここに来ればなにかが変わる』って、言ってた気も、、、
と思った瞬間、猛烈な勢いで、そのときの光景が頭のなかにフラッシュバックしてきた。
「わ~~ん。遅れちゃう!
2年になって早々遅刻なんて、カッコ悪ぅ~い!!」
懐かしい、見覚えのある家の玄関先。
制服を着たショートカットの女子高生が、慌ただしく靴を履いてる。
あたしだ!
「お母さん! お母さん!
早く、お弁当!
もう行かなきゃ!!」
そう叫んで、玄関で足踏みをしてるあたしは、見送りに出てきた母の手から弁当箱を引ったくり、勢いよくドアを開けた。
家から幹線道路のバス停まで、300メートル。
バスの時間まで、あと2分しかない。
道に出たあたしはいきなり、全力で走りはじめた。
そうして、制服の胸元に手を当ててみる。
分厚い封筒の感触。
胸ポケットのなかには、半徹夜して書き上げた、航平くんへのラブレターが入ってた。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。
「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」
「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」
「・・・?は、はい」
いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・
その夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる