ブラックアウトガール

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
31 / 70
6th sense

6th sense 5

しおりを挟む
<あたしだってわけわかんない。
なに? なんでこんなに手足が重いの。
全然思い通りに動かないじゃない!?>
<それはわたしのからだだからです。いきなり入ってきた酒井さんがコントロールできないのは、当たり前です。それより早く、出ていってくれませんか!>
<出ていけって、どうやればいいのよ?!
せっかく自分の言葉でしゃべれるようになったんだから、しばらくこのからだ貸してよ。自分で告るから。あなたじゃ話にならないわ!>
<それはダメです。人間に憑依するのは、あなたにとっても危険なことなのですから>
<どう危険だっての? ちょっとくらいいいじゃない。すぐに終わらせるから>
<ダメです。勘弁して下さい>
<ケチッ! どうしてもダメだっていうなら、このまま川に飛び込んで死んでやるっ!>
<ううっ… 仕方ありません。少しの間だけお貸しします。
だけど本当に、できるだけ早く憑依をやめて下さい。
自分以外の肉体に入るのは、霊にとってリスクが高いことなのです。
このままではあなたは、どんどん現世に執着してしまいますから>
<わかったわよ。用事が終わったらさっさと出てくから、説教はあとにして!>

わずか2~3秒くらいのやりとりだったろうけど、あたしたちはひとつのからだのなかで言い争ってた。
が、如月はようやく観念して、そのからだをあたしに使わせてくれることになった。
だけど、他人のからだを動かすのって、すっごく変な気分。
まるで、ぎゅうぎゅうの満員電車のなかで二人羽織でもやってるかのように、窮屈で思うように動かせない。
しかも久し振りの重力のせいか、からだが重すぎる。
如月って痩せてて背も低いから、体重だって40kgもなさそうなのに、今のあたしには40tもあるような巨大怪獣のように感じる。
指一本動かすことさえ、ままならない。
なのでとりあえず、あたしはしゃべることにだけ、意識を集中した。

「航ぺー、ふんっ。あらし、、、さ、酒井、あずさらの。
あたし、夜らべしし、、して、ラブレラー、、かっかっ、書いた、ろよ!」

ええっ?
なに、この、、、 酔っぱらいみたいなしゃべり方は。
呂律が回らない。

「航平くんに、こっこっ、、の想いを、知っれも、らいらくれ、、、
航平くんらって、あたしのころ、好きらって、言って、くれたじゃない。
ほんとに、嬉しかったんだから!」

それでもあたしは諦めずに、しゃべり続けた。
次第にコツがわかってきて、流暢に言葉が出てきはじめた。
久しぶりに人としてしゃべれるのが嬉しくて、あたしは調子に乗ってまくし立てた。

「あたし、、、
ずっと航平くんと話したかった。
なのにあたしはもう死んじゃって、航平くんとはいっしょにいられない。
あたしずっと、航平くんの隣にいたかった。
なのにもう、永遠にその望みはかなえられないの。
だからせめて、あたしのこの気持ち、航平くんに忘れないように覚えてもら、、」
「やめろよっ!!」

航平くんが絶叫して、あたしの言葉を遮った。
なんで、、、?!

「如月さん。それって、酒井さんになったつもりか?
、、、ふざけるのもいい加減にしろよ!
それ以上、死者を冒涜するなよ、、、、、、、」

航平くん、、、
手が、グーになって震えてる。
ヤバっ。
なんか、ミスったかも、、、

「嘘じゃないのよ!
あたしは正真正銘の酒井あずさなんだから」

とにかく信じてもらうしかない。
あたしは必死に訴えた。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いていく詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...