61 / 77
9th stage
そういえば、帰りに着る服がない
しおりを挟む
「お兄ちゃん。あたし… うちに帰るね」
「かっ、帰るの?」
「もう、逃げない」
「逃げない、、、」
「うん。逃げたって、前に進めないと思うから」
「だっ、大丈夫?」
「お兄ちゃんがついててくれれば、大丈夫」
「えっ?」
「お兄ちゃんはずっと、あたしの味方でいてくれるよね?」
「う、うん。もちろんだよ」
「お兄ちゃんから見れば、あたしなんてまだまだ子供なのに、あたしの事バカにしたり、年下扱いしたりしなかった」
「…」
「そりゃ、お兄ちゃんって口下手だけど、あたしの話を真剣に、一生懸命聞いてくれて、あたしと同じ目線で考えてくれて、話そうとしてくれた。だからお兄ちゃんのこと、心から、あたしの味方なんだって思えたの」
「そ、そうなの?」
「うん。お兄ちゃん見てて、あたしやっぱり、ガッコの先生になりたいなって思ったの」
「ぼくを見て?」
「お兄ちゃんみたいに、生徒に真剣に接してやれて、いっしょに悩みを考えてやれる先生になりたい。そのためにはあたしもちゃんと勉強しないといけないし、いつまでもふてくされて斜に構えてたって、ダメでしょ」
「…そうだね。それがいいと思うよ。ぼくもその方が安心できるし」
「これからも、時々遊びにくるね」
「う、うん。待ってるから」
「デートもしようね」
「うん」
「あたしの写真もいっぱい撮ってね」
「うん。撮らせて」
「原宿で買ってくれたロリータの服でも、撮ってほしいな」
「そうだね、、、、、、 あっ!」
「え? どうしたの?」
「なっ、なんでもない。なんでもないから、、、」
そう言って誤魔化したけど、なんでもないわけなんかない。
すっかり忘れてた!
例のロリ服は、ネットオークションに出したまんまだった!!
栞里ちゃんの肩越しに、ぼくはそっと時計を見た。
もう、夜の10時半すぎ!
ほとんどの出品に入札が入ってたし、終了時刻は10時に設定してたから、もうだれかが落札したあとだ。
終了前ならヨシキにでも落札してもらって、見かけの取引だけ成立させとくって手もあったけど、もう無理。アウト、、、orz
そのあともしばらく、ふたりはベッドの上で、ダラダラと話しをしてた。
栞里ちゃんの学校や、友達、クラスの事。
ぼくの大学の事や、同人誌の事。
『ぼくも匿名サイトで誹謗中傷された事があるんだよ』って話すと、栞里ちゃんは自分の事の様に考えてくれて、慰めてくれた。
なんか、、、 嬉しい。
この辛さを分かち合ってもらえるなんて。
これが、『味方』って事なんだろな。
でも、、、
これじゃあどっちが年上か、わかんないじゃないか(笑)。
いつまで話してたってキリがないし、早く帰らないと電車もなくなってしまう。
『うちに帰る』という栞里ちゃんの決心も、なんだか鈍ってきてるみたい。
「よしっ」
と気合いを入れる様にして、ようやく栞里ちゃんは立ち上がり、帰りの支度をはじめた。
「あっ」
Tシャツを脱ぎかけて、栞里ちゃんは小さく叫び声を上げた。
「ど、どうしたの?」
「帰りに着てく服がない!」
「え? さっき、栞里ちゃんが窓から捨てた服があるけど、、、」
そう言って、ぼくは窓から降ってきた彼女の服を差し出す。
「お兄ちゃん拾ってきたの? その服、捨てたのに」
「え? どうして」
「もう着たくないから」
「なんで?」
「穢れた服だから」
「穢れた?」
「他の穢れた男が、穢れた目的で買ってくれた服だから」
「…」
「あっ。そう言えば原宿で、お兄ちゃんに普段着も買ってもらったっけ。まだある?」
「あ、当たりまえだよ。ちゃんととってあるよ」
これは安かったので、オークションじゃ値がつかないと思って出品せず、絵の資料用としてとっておいた。ふう、、、
そんなこんなで、ぼくが買ってあげた服を着て、栞里ちゃんは部屋を出た。
ぼくも彼女を送って、駅までいっしょに行く。
夜の街をふたり並んで歩く姿は、他の人からはまるで兄妹みたいに見えるかもしれないけど、たまに指先が触れあって、それを意識するふたりは、なりたてほやほやの恋人同士、、、 だと思う。
そうなのか?
…ほんとにぼくたちって、恋人同士なのか?
恋人って、こんな感じなのか?
彼女いない歴=年齢の自分には、なんかまだ、実感がわかない。
そりゃ、告白っぽい事は言ったし、栞里ちゃんも『バージンあげたかった』って言ってくれたし、ぼくの事好きでいてくれてるんじゃないかとは思うけど、彼女のぼく呼び方は相変わらず、『お兄ちゃん』のまんまだし、、、
もしかして、、、
栞里ちゃんにとってぼくは、『恋人』っていうより、『兄』とか『父』とか、保護者に近い存在で、恋愛感情とは違うのかもしれない。
いったいふたりは、どういう関係なんだ?
「お兄ちゃんに、あやまらなきゃいけないことがあるの」
駅前の交差点で信号待ちをしている時、栞里ちゃんが、思い切った様に話しはじめた。
つづく
「かっ、帰るの?」
「もう、逃げない」
「逃げない、、、」
「うん。逃げたって、前に進めないと思うから」
「だっ、大丈夫?」
「お兄ちゃんがついててくれれば、大丈夫」
「えっ?」
「お兄ちゃんはずっと、あたしの味方でいてくれるよね?」
「う、うん。もちろんだよ」
「お兄ちゃんから見れば、あたしなんてまだまだ子供なのに、あたしの事バカにしたり、年下扱いしたりしなかった」
「…」
「そりゃ、お兄ちゃんって口下手だけど、あたしの話を真剣に、一生懸命聞いてくれて、あたしと同じ目線で考えてくれて、話そうとしてくれた。だからお兄ちゃんのこと、心から、あたしの味方なんだって思えたの」
「そ、そうなの?」
「うん。お兄ちゃん見てて、あたしやっぱり、ガッコの先生になりたいなって思ったの」
「ぼくを見て?」
「お兄ちゃんみたいに、生徒に真剣に接してやれて、いっしょに悩みを考えてやれる先生になりたい。そのためにはあたしもちゃんと勉強しないといけないし、いつまでもふてくされて斜に構えてたって、ダメでしょ」
「…そうだね。それがいいと思うよ。ぼくもその方が安心できるし」
「これからも、時々遊びにくるね」
「う、うん。待ってるから」
「デートもしようね」
「うん」
「あたしの写真もいっぱい撮ってね」
「うん。撮らせて」
「原宿で買ってくれたロリータの服でも、撮ってほしいな」
「そうだね、、、、、、 あっ!」
「え? どうしたの?」
「なっ、なんでもない。なんでもないから、、、」
そう言って誤魔化したけど、なんでもないわけなんかない。
すっかり忘れてた!
例のロリ服は、ネットオークションに出したまんまだった!!
栞里ちゃんの肩越しに、ぼくはそっと時計を見た。
もう、夜の10時半すぎ!
ほとんどの出品に入札が入ってたし、終了時刻は10時に設定してたから、もうだれかが落札したあとだ。
終了前ならヨシキにでも落札してもらって、見かけの取引だけ成立させとくって手もあったけど、もう無理。アウト、、、orz
そのあともしばらく、ふたりはベッドの上で、ダラダラと話しをしてた。
栞里ちゃんの学校や、友達、クラスの事。
ぼくの大学の事や、同人誌の事。
『ぼくも匿名サイトで誹謗中傷された事があるんだよ』って話すと、栞里ちゃんは自分の事の様に考えてくれて、慰めてくれた。
なんか、、、 嬉しい。
この辛さを分かち合ってもらえるなんて。
これが、『味方』って事なんだろな。
でも、、、
これじゃあどっちが年上か、わかんないじゃないか(笑)。
いつまで話してたってキリがないし、早く帰らないと電車もなくなってしまう。
『うちに帰る』という栞里ちゃんの決心も、なんだか鈍ってきてるみたい。
「よしっ」
と気合いを入れる様にして、ようやく栞里ちゃんは立ち上がり、帰りの支度をはじめた。
「あっ」
Tシャツを脱ぎかけて、栞里ちゃんは小さく叫び声を上げた。
「ど、どうしたの?」
「帰りに着てく服がない!」
「え? さっき、栞里ちゃんが窓から捨てた服があるけど、、、」
そう言って、ぼくは窓から降ってきた彼女の服を差し出す。
「お兄ちゃん拾ってきたの? その服、捨てたのに」
「え? どうして」
「もう着たくないから」
「なんで?」
「穢れた服だから」
「穢れた?」
「他の穢れた男が、穢れた目的で買ってくれた服だから」
「…」
「あっ。そう言えば原宿で、お兄ちゃんに普段着も買ってもらったっけ。まだある?」
「あ、当たりまえだよ。ちゃんととってあるよ」
これは安かったので、オークションじゃ値がつかないと思って出品せず、絵の資料用としてとっておいた。ふう、、、
そんなこんなで、ぼくが買ってあげた服を着て、栞里ちゃんは部屋を出た。
ぼくも彼女を送って、駅までいっしょに行く。
夜の街をふたり並んで歩く姿は、他の人からはまるで兄妹みたいに見えるかもしれないけど、たまに指先が触れあって、それを意識するふたりは、なりたてほやほやの恋人同士、、、 だと思う。
そうなのか?
…ほんとにぼくたちって、恋人同士なのか?
恋人って、こんな感じなのか?
彼女いない歴=年齢の自分には、なんかまだ、実感がわかない。
そりゃ、告白っぽい事は言ったし、栞里ちゃんも『バージンあげたかった』って言ってくれたし、ぼくの事好きでいてくれてるんじゃないかとは思うけど、彼女のぼく呼び方は相変わらず、『お兄ちゃん』のまんまだし、、、
もしかして、、、
栞里ちゃんにとってぼくは、『恋人』っていうより、『兄』とか『父』とか、保護者に近い存在で、恋愛感情とは違うのかもしれない。
いったいふたりは、どういう関係なんだ?
「お兄ちゃんに、あやまらなきゃいけないことがあるの」
駅前の交差点で信号待ちをしている時、栞里ちゃんが、思い切った様に話しはじめた。
つづく
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる