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2nd stage

美少女のおねだりは断りきれない

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「8階か、、、 ここから飛び降りたら、死ぬかなぁ」
「え?」
「8階なら、確実に逝けるよね」

そう言うと彼女は立ち上がり、ベランダのフェンスに両手をかけた。

「あっ!」

思わず声を発して駆け寄ったぼくを、栞里ちゃんは怪訝そうに振り向いた。

「どうしたの?」
「い、いや、別に…」

…飛び降りるかと思ってしまった。ほんとに、、、

栞里ちゃんはフェンスにもたれて、遠くのビル街をじっと眺めるだけだった。
地上からの淡いライトに仄かに照らされ、大きなTシャツが風に揺らめき、華奢きゃしゃなからだがふわりと浮き上がって見える。

違う、、、

『眺める』というのは、正しくないかもしれない。
彼女の瞳には、なにも映ってなかったからだ。

ただ、虚空を漂うかの様な、行き場のない無感情な視線を、彼女は遠くに向けてるだけだった。
そして…
そんな彼女をどう扱っていいかわからず、ぼくもずっとその場に立ちすくんでた。

じれったい時間が過ぎていく。
聞きたい事は山ほどあるのに、どうしても上手く言葉にできない。
頭で考えてる事が、スムーズに言語化されないのだ。
やっぱりゲームと生の女の子とでは、当たりまえだけど、勝手が違う。
こんな時、リアル女性に慣れてるヨシキなら、もっと手際よくやれるだろう。
彼女とももっとすんなり打ち解けて、心を開かせられ、いろいろ事情もサクサクッと聞き出せて、どうしてやればいいのか、すぐに解決してやれるに違いない。
ついでに股も開かせて、、、 って、そんなゲスいこと考えるなよ、自分!

とにかく。
可愛い女の子を前にすると、こんなにもオロオロしてしまう自分が、ふがいない。
しかも厨坊相手だっていうのに、、、
8歳も年下だぞ。


 どのくらいそうしてただろう。
突然、栞里ちゃんはこちらを振り向くと、いきなり訊いてきた。

「ねえ。今日も泊まっていい?」
「え?」
「いいでしょ?」
「で、でも、もう帰らないと…」
「いいじゃん。泊めてよ」
「い、家の人が心配するし」
うちに『人』なんていないから」
「だけど…」
「ねえ。お兄ちゃんって、オタク?」
「はぁ?」
「机の上とかコレクションボードに、エッチなポースの女の子のフィギュアとかいっぱい飾ってるし、本棚はなんかいやらしそうなマンガばかりだし。
萌え絵、っていうの? マンガのポスターとか貼りまくってるし。
マンガとかアニメとか、好きなんでしょ?」
「ま、まあ… そうだけど、、、」
「ロリコン?」
「はぁああっ?」
「あたしくらいの年齢って、どうなの? ストライク?」
「な、な、なにを…」
「あたし、また犯されるのかなぁ?」
「おっ、犯されるって、、、;;;」

唐突な展開についていけない。
栞里ちゃんはクスクス笑って、ぼくの側をするりと抜けて部屋に入り、ベッドに腰を降ろすと、Tシャツの裾からパンツが見えるのもお構いなしに、ポンポンと跳ねながら、冗談めかして言う。

「ただで泊めてもらうなんて、そんなの悪いじゃん。
しかたないな…
いいよ。犯されてあげても」
「そっ、そんな事するわけないよ! 安心して。大丈夫だから!!」
「え? じゃあ、泊めてくれるの?」
「あ? いや、それは…」
「わ~い。ぃやったぁ☆」

栞里ちゃんは無邪気に両手を挙げながら、ひときわ大きくポンと跳ね、ベッドにコロンと転がった。
ん~~、、、
なんか、うまいこと操られてる気がする。

「とっ、とにかく、、、 家に連絡くらいは入れといた方がいいんじゃない?」

パンツ丸出しのあられもない少女の寝転びポーズに、目のやり場に困り、ぼくは視線を泳がせながら栞里ちゃんに言う。
家の事を口にしたとたん、彼女の機嫌はみるみる悪くなっていった。

「別に… いい」
「そうはいかないだろ? 家の人も心配してるだろうし、捜索願いとか出てるかもしれないし…」
「…」

ベッドに顔を伏せたまま、少女はなにも言わない。

「聞いてる?」
「…」
「栞里ちゃん?」
「…」

栞里ちゃんの側に歩み寄り、ぼくは彼女の様子をうかがった。
息をしてるのかどうかさえわからない彼女だったが、しばらくするとむっくりと起き上がって、顔をしかめながら言った。

「ねえ、お兄ちゃん。お風呂入ってないでしょ?」
「え? あ、ああ…」
「臭い」
「えっ?」

彼女の指摘にぼくは慌てて、Tシャツの袖をクンクンと嗅いでみた。
確かに、、、
昼間、書店の支配人に指摘された時より、さらに香ばしさが増してる。

「臭すぎ。近寄らないで。早くお風呂入ってきてよ」
「あ、ああ… ごっ、ごめん」

、、、どうして子供ってこんなストレートに、思ったことを言うんだろうか?
『臭すぎ』とか『近寄らないで』とか、、、

そんな残酷な台詞を美少女の口から聞くのは、殺傷力ありすぎで、辛い。

クルリと寝返りを打って背を向けた栞里ちゃんを、複雑な気持ちで見下ろしながら、ぼくはクロゼットから着替えを出して、風呂に入る準備をする。

「栞里ちゃんは入っ…」
「もう入ったから」

全部言い終わらないうちに、背中を向けたまま、彼女は答えた。

ん~、、、
別になにかを期待してるわけじゃないけど、このドきっぱりとした拒否の態度は、へこむ。

つづく
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