イケメンと五月病

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本編

ひまわり(R18

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 パズルの柄は支倉に選ばせた。
 奴が選んだのはひまわり畑。普段ラッセンなどを好む俺としては、かなり新鮮だ。
 こういうところにも性格が出るんだな、なんて思う。

 それからファミレスで簡単に食事をして家へ帰って、俺は早速……支倉をベッドへ押し倒した。
 
「あれ? おい、ジグソーは?」
「男の家へ上がり込んでおいて、口実だけで終わると思ってるのか、支倉」
「口実も何も、別にこういう展開が来るのはお互い納得済みで、順序の問題だ」
「ピースより先に、俺のをお前にハメたくなった。それだけだ」
「最低な下ネタだな……」
 
 そう言いながらも抵抗はない。シャツを脱がしながら、肌に口付けていく。支倉も、俺の服を脱がしながら触れてくる。
 
「恋人同士になってから俺の部屋に来るの、初めてだな」
「そういえばそうか……。だから、少し緊張するのかな」
 
 緊張だけでなく興奮もしているのか、俺の身体のあちこちに触れてくる。随分積極的だ。
 やっぱり今からジグソーするかと言って止めたらどんな顔をするか見てみたい気もするが、それは俺にも大ダメージなので止めておく。 
 
「隆弘……、ん」
「っ……」
 
 ねっとりと口の中を熱心に舐められ、唇を吸われて意識がとろけそうになる。支倉が本気を出したら、俺は敵わない。初めての時より、俺も大分上手くなったとは思うが。
 キスで負けるのは、想いで負けている気がしてあまり好きじゃない。だから俺も頑張って応える。
 必然的に激しくなるキスに、身体が熱を上げていく。自分の部屋にくちゅくちゅと水音が響いていくのは想像以上にやらしい。これからこのベッドへ寝転ぶ度に思い出して一人でしそうだ。
 
「なあ、支倉……」
「何だ」
「お前さ、俺がいない日、ベッドで寝て思い出してしたりすんの? 俺の指とか」
 
 怪訝な顔をされた。
 
「する……けど、お前はしないのか?」
「支倉とするようになってから満たされてるから、一人ではしてないな」
 
 元々俺はあまり性欲の強いタイプじゃない。視覚的に煽られはするし普通の男並みにアダルトビデオや動画を見て抜いたりもするが、オカズがなければ週に一回くらい事務的に抜く程度だ。中学高校生の頃は毎日だったけど、それは大体の男がそうだろう。
 
 首筋を甘く噛まれて、背筋を快感が駆ける。今も、お前が思い出すような顔をしてるんだろうか、俺は。

「でも、このベッドでお前と抱き合ったら、俺もしちゃうかもな。今日は挿れるつもりだし」
 
 ローションを指につけて、他への愛撫もなしにいきなり沈み込ませると、支倉が俺にしがみついて呻いた。
 
「うぁっ……。馬鹿、いきなりそっちか」
「大分柔らかくなったよな、と思って」
 
 もう片方の手で身体のあちこちに触れていく。唇で肌を舐めていくのも忘れない。乳首を舐めながら挟み込むと、途端に甘い声を漏らす。
 俺だけだよな。お前のこういう声を聞いてるの。俺が触るまで、こことか、ここも、くすぐったがるだけだったんだから。
 
「お前こそ、大分手慣れた。たどたどしいのが可愛かったのに」
 
 喘ぐ合間に支倉が文句を言う。そんな発言、俺にとっては嬉しいだけだ。それにどうせ今も、可愛いとか思ってるくせに。
 
「もうイイトコも、一発で探れるしな?」
 
 笑いながら支倉の中を押し上げる。歯を食いしばって眉根を寄せる表情にぐっとくる。探った瞬間はいつも、こんな表情をする。
 すぐに甘く溶け出すが、感じてなんかやるもんかって顔を崩すのがたまらないんだよな。
 キスを繰り返しながら指を増やし、奥を探る。中で起こる収縮が、指先を吸い上げるようになるまで続ける。
 こんな狭くて熱いトコに俺の挿れたら、どうなるかわからなくてちょっと怖い。挿れられる支倉はもっと怖いだろうけど。
 それでも……俺を、受け入れたいと思ってくれるその気持ちが嬉しい。
 三本目の指を飲み込んで、支倉が背を仰け反らせる。
 
「ああっ。そこ、やば……っ」
「こことここ、同時に弄られるの好きだよな?」
「……まずいな、隆弘が格好良く見える」
「言ってろ馬鹿」
 
 余裕あり気に囁く支倉の余裕をなくしたくて、前を強めに扱いてやる。勿論前立腺も同時に刺激する。
 
「っ、あ……。や、よせ……っ。まだ、んんっ」
 
 びくびくと跳ねる身体に唇を寄せながらひたすら責め立てると、呆気なく手の中に熱を吐き出した。それでも止めずに、奥を抉る。
 
「たっ、隆弘、それやだって」
「嘘だ。凄いイイんだろ? お前やらしい顔するぞ、これすると」
「うぁっ。あ、あ、あっ……も、なあ、もうっ……。挿れろよっ」
 
 言われた台詞に、俺は思わず目を見開いた。指はもう挿れてんだから、これはつまり……。そういう、ことだよな?
 
「一方的にされてるの嫌なんだ。早く、こ……ここで、隆弘を感じさせたい、から」
 
 奥を探る俺の手首を、支倉が掴む。誘うような視線に射抜かれて、ぞくぞくした。
 
「それに、俺が……隆弘を感じたい、もっと」
 
 受け入れる側だってのに、そう告げる支倉は凄く格好良かった。潔いっていうか、なんていうか。
 なのに俺と来たらここまできて躊躇ってる。今日こそ最後までしようって自分の家へ連れ込んで、パズルをする間も惜しんで押し倒しておいてこれとか、ヘタレにもほどがあるだろ。抱かれる覚悟をしてくれた支倉に対して、あまりにも失礼すぎる。抱きたいのは本当。きっと高校の頃なら突っ走ってた。 
 
「それとも嫌か? やっぱり一線を越えるのは怖い?」
「……俺さ、お前を抱いたらきっと、今より独占欲とかわくと思うし、うざいくらいベタベタしたがるかもしれない。それでもいいか?」
「なら、尚更……抱いて貰わなきゃな」
 
 嬉しそうに笑う支倉を、心から愛しいと思った。
 
「これ、つけてくれ、支倉」
「わかった」
 
 ナマで入れたい気持ちを抑え、コンドームを手渡す。パッケージを破るのは、恐らく慣れてる。落ち着いた言葉と裏腹に支倉の指先は震えていて、つけるまでの時間が凄く長く感じられた。
 今から自分の中へ入っていくものを確認するように触る姿を見て、酷く興奮した。
 
「できたぞ」
「じゃ、いくぞ」
「あっ、ま、待ってくれ」
「さすがにここでの待ったはキツイ」
 
 肉の中に押し入る感覚。狭くて、こんなとこに入るのかと思っていたのにちゃんと少しずつ沈んでいく。支倉が息をつめて、泣きそうになりながら俺を見上げた。手は痛いほどシーツを握りしめている。
 
「ゆっくり……。ゆっくり頼む、隆弘」
「してるだろ、ゆっくり。ほら、もうちょっと足、開いて……」
「無理、無理無理……! 痛い、いた、たっ……」
 
 あんなに慣らしたのに、それでも痛いらしい。
 俺を気遣って痛くても声に出すのを我慢しそうな支倉が呻くんだから、相当なんだろう。
 
「一旦抜いて、もう少し慣らすか」
「……へ、平気だ。きっと角度の問題だ。入る、ちゃんと入る……うぅ」
 
 お前それ、自分に言い聞かせてないか? でも角度か……角度ね。
 俺いつもどうやって指挿れてたっけ。もうちょっと支倉の腰を持ち上げて、下から突くような感じで……。
 
「ひっ……」
「あ、入った」
 
 思った以上にあっさり、ぬるんと入り込んでしまった。
 支倉の痛がる姿にびびって少し縮んだせいもあるかもしれない。
 中、ひくついて凄い。ちゃんといっぱい、飲み込んでる。こんな小さいとこで。
 
「凄い、隆弘が、お腹の中いっぱいだ」
 
 涙声で腹を押さえながらそんな台詞を吐かれ、思わず突き上げてしまった。
 
「っあ、待て、まだ動く、なっ……」
「お前のせいだろ。もう今度こそ我慢できないぞ。責任取れ」 
 
 ローションのおかげか、たっぷり慣らしたからか、入ってしまえば割りとスムーズに動ける。
 それでもキツキツだし、恐らく支倉は相当辛いとは思うが。
 中の粘膜が薄いゴム越しでも判るくらいリアルで、ひだがからみついてくるみたいだった。
 
「っやばい、支倉、気持ちいい……」
 
 俺ばっか気持ちいい。支倉も気持ち良くしたい。
 指先で乳首を押し潰しながら唇にキスをする。
 吸い付かれ、舌を絡められて俺の方がもっと気持ち良くなる。
 でも、そのうちにちゅうちゅう吸い付いてくるだけになって、俺はようやく悟った。多分、舌を絡めてくる余裕がもうないんだ。
 中、凄いひくついてるし、ペニスも萎えてない……。
 
「支倉も、気持ちいい?」
 
 少し動きを止めてそう聞いてやると、支倉は涙目になりながら息を浅く吐いてこくんと頷いた。
 
「奥やばい。ちゃんと、あ、当たっ……、ん!」
「ここ?」
「そこ……」
 
 零れ落ちる涙を拭って、そのまま頬に手をあててやる。
 上気した頬はいつもより熱く、俺の手の平に自分から甘えるように擦り寄せてくる。
 
「好きだ。隆弘。大好きだ。一つになれて本当に嬉しい」
「俺も……あ、愛してるよ」
 
 吃ってしまったのが情けないが、支倉はそのままボロボロと泣き出した。
 ああ、もう。本当に可愛すぎんだよ、お前。こんなに惚れさせて責任取りやがれこのイケメン!
 
「な、もっと喘げよ、支倉。気持ち悪いなんて思わないから。俺ので感じてイッて?」
「っう……。や、そこばっか突くな。も、やばい……」
 
 支倉が感じるごとに締め付けられて俺の方がやばい。
 結合部からも腹の間からも濡れた音がするし、深く突き上げると肌のぶつかる音がする。すげぇやらしい。
 
「あ、支倉ッ……。俺もやばい、もうイキそう」
 
 唇を噛んでこらえようとしたが、今までシーツを掴んでいた支倉が俺の背を抱きしめて腰を揺らめかせた。
 
「隆弘……。隆弘ッ」
 
 何度も囁かれる俺の名前。耳をかぷりと噛まれ、我慢できず支倉の中に熱を吐き出した。
 同時にきゅうっと中がしまって、まるで搾り取るように収縮する。
 びくびくと震える支倉の身体と、肌に飛び散った飛沫を見て、俺は支倉もイッたことにようやく気付いた。
 萎えたそれを引き抜くと、支倉が小さく、んっ……と呻いた。エロイ。
 ゴムの先に精液が溜まってる。こんな風になるのか、と思いながら縛って捨てる。
 セックスってこんな気持ちのいいものなんだ。口でされた時も凄い良かったが、何より同時に気持ち良くなれるのがいい。
 俺ので突かれて感じてイッてくれたんだと思うと愛しくて仕方ないし。 
 支倉とひとつになれて、ようやくこいつは俺の物なのだという実感がわいてきた。
 次々に零れてくる支倉の涙を舐め取りながら、そのまま身体も舐めた。
 少しの汗でさえ、蒸発させてやるには惜しい。
 
「っおい、たかひ、ろ……?」
 
 息を荒くしながらたどたどしく名前を呼んでくるの、可愛い。
 
「俺、本当にお前が好きすぎてしょうがないかも。全身舐めたい。愛しい」
「……たとえそれが、錯覚だとしても、嬉しいよ」
「何だそれ」
「ほら、一応俺はお前の初めての男というか、筆下ろしの相手? な訳だし、特別に思ってくれるなら抱かれて良かった」
 
 釈然としない。する前よりも支倉がずっと愛しく思えるのは確かだが、それは……俺のを受け入れてくれた姿に愛が深まったというか。こいつにしても初めてをくれた訳だからそれが嬉しかったりとか、上手く説明できないがそんな感じだ。
 それを、ヤッたから好きになったみたいに言われるのは心外だった。
 
「じゃ、お前も男は俺が初めてなんだから、特別に思うんだな?」
「俺は……抱かれても構わないと思えるほど、男としてのプライドを放棄できるほど、お前が好きだよ」
「馬鹿。バーカ! お前その言い方は狡いだろう! なら、俺だってお前に抱かれてやるよ。お前に惚れた時点でなあ、とっくにプライドなんて捨ててんだよ!」
 
 支倉の鼻をぎゅっとつまんで、俺はそれからローションを自分の尻に塗りたくって指を入れてみた。
 気持ち悪さ半端ない。これに耐えてくれてたんだと思うとますます愛しさが募るのに、信じようとしない支倉に腹が立って仕方ない。
 
「お、おい、いいよ、隆弘。そんなことするなよ」
「お前は、俺がどれだけお前のこと好きだかわかってない。どんな気持ちを込めて一緒にパズル買いに行っただとか、そういうの、全然」
「隆弘……」
 
 やばい。痛い。妙な体勢だからか?
 支倉にもたれかかるようにして、尻を高く上げればましか?
 
「お前がしろよ。ほら」
「そんな喧嘩腰で来られて、抱ける訳ないだろう」
 
 支倉は大きな溜息をついて、俺を強く抱きしめた。
 ……また泣いてる。
 
「伝わったよ。ごめんな。でも俺、こんな日が来るなんて思ってなくて、本当に今も夢を見てるみたいなんだ」
「うん……」
「いっそお前に彼女ができれば諦めもつくと合コンの話を持ちかけたくせに、お前が乗り気になったらあのザマだ」
 
 何でこいつ、俺なんかがこんなに好きなんだろう。俺相手に本気で怒って泣いて、喜んで。
 せっかくイケメンなのに、趣味だけは悪かったんだな。勿体ない。
 そのおかげで俺は、お前とこうなれて幸せだけど。
 友達とか親友とかいらんって突っぱねてた暗い俺にも優しくて、イケメンで、初めは本気で嫉んださ。こんな人生勝ち組みたいな男もいるのかイケメン死ねってな。
 でもお前は想像以上にいい奴だったよ。どこか気品すらあるように見えるのに、適度に砕けて話しやすく、下ネタだって乗ってくれる。
 そんなお前といつの間にか親友で、気付いたら性別越えて好きになってた。 
 
「なあ、支倉。お前が俺を親友扱いしてくれた時点で、俺には夢みたいな出来事だった。惚れちまって地獄に叩き落とされたような気分になってるところを、また救われた」
 
 支倉の頬にキスをしながら、奥に入れた指を動かしてみる。やっぱ、無理そう……。
 
「へ、平気か?」
「きつ……。な、お前も触れって。それとも抱きたくないか?」
 
 支倉の喉がごくりと鳴る。俺の髪を撫でているが、手を出してくる様子はない。
 
「抱きたいさ。別の意味でもこうなるなんて思ってなかったし、想像じゃ俺が抱かれる側とか絶対ありえない……」
「じゃあ、何で手出さないんだよ」
「お前が俺のこと、抱きたい、欲しい、好きって思ってくれただけで充分だからだ」
 
 支倉は奥を触る代わり、前を扱いてきた。先端を指先で抉られて、妙な声が漏れそうになる。
 
「それとも隆弘は、もう俺のことは抱きたくないか?」
 
 逆に問われ、顎を噛んで舐められて、俺のそれは一気に復活した。
 
「お前狡いな。抱きたいに決まってるだろ」
「じゃあ俺はそれでいい。というか……その、気持ち、良かったし……。また、して……欲しい」
 
 最後の方は本当に、聞こえないくらいの声だった。相当恥ずかしそうなのが判るから、俺のことを気遣ってる訳じゃなく、本音か? やばい、凄い嬉しい。
 こいつのことを好きってことも含め、男として。
 
「そうか。気持ち良かったんだな。俺、上手かった?」
「調子に乗るな。ニヤニヤするな。今日はしないけど、そのうち……お前の後ろも貰うからな。お前のこと、全部貰うんだから」
「いいよ、お前になら全部やるよ」
 
 これは俺の本音。一回くらいは抱かせてやる。俺の初めては全部こいつでありたいから。
 でもそれから先はずっと俺が抱く。俺はやっぱりしたいと思うし、こいつも実は抱かれる方が好きだと思う。なんとなく、そんな気がする。
 何度もして慣れたら、自分からねだってくるんじゃないか? そんなやらしい支倉も、俺は大歓迎だ。
 
「とりあえず、もう一回していい? お前が煽るから、俺限界なんだけど」
「ん……。でも、ほどほどにしてくれよ。あまり喘ぐと、恥ずかしいし」
「よしわかった。思いっきり頑張ってやる」
「おいっ、隆弘っ……!」
 
 二度目の挿入は随分と楽だった。俺にとってはだが。
 
「……や、待て。なんか、身体がおかし……っ」
「凄い、ひくついてる」
「言うな、バ……っ、あ、あ、あっ……」
「支倉、可愛い。好き……」
 
 それから俺は宣言通り頑張って、支倉を散々喘がせた。初めての快楽に夢中になっていたのは、きっと俺だけじゃなかった筈。 
 
 
 
 
 
「お前、飛ばしすぎだ……」
 
 支倉の声が色っぽく掠れてる。さっきまで散々喘いでくれていた唇に、キスを落とす。
 
「悪い。気持ち良くて止まらなかった。何しろ俺、初めてだし」
「俺だって初めてだったのに」
「初めてでもあんなに感じまくれるものなんだな、中で」
 
 ……とはいえ、実際のところ指でずっと慣らしてきたんだし、感じるようになったのを確認してからの挿入だ。だから、当然と言えば当然なんだが、支倉はとにかくそれが恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にして黙り込んだ。
 
「嬉しかった。感じてくれて」
「っお前なんか性格違うぞ。そんな気障なこと、普段言わないじゃないか」
「恋人ができたらイチャイチャしてみたかったんだよ。普段お前と俺で甘い雰囲気は中々出せないんだから、今日くらい存分にべたつかせてくれ」
 
 目をつぶって眠るように抱きしめた。お互いの身体はまだ汗でしっとりしているし、体温もいつもより上昇してる。
 支倉は俺の首筋に、頬を擦り寄せてぽそりと呟いた。
 
「普段から甘くてもいいのに、俺は」
「嫌だね。照れるし」
 
 速攻返してから、頬やらうなじやらにたくさんキスをする。今は頭の奥が痺れたようになってるから、こんな甘いこともできる。
 暫くベッドでいちゃいちゃしたあと、一緒にシャワーを浴びて、俺たちはようやくパズルを開けた。もう夜中だったけど。
 
「小さいな、こんな小さいんだ」
「スモールピースを選んだからな。というか、お前の中でジグソーはこんなでっかい欠片じゃないだろうな」
「いや、さすがにそこまでは……」
 
 子供の頃やったようなサイズを指で表すと、支倉が苦笑した。
 クッションを置いて、二人で寝転がりながらピースをより分けていく。
 ひまわり畑は形状も色も似ていて、何気に難易度がかなり高い。
 
「こういう端っこを先に埋めるんだ。真ん中はこっちの箱、端はこっち」
「なるほど……」
 
 目をこらしながら真剣に頷く支倉が面白い。思わずふふっと笑ってしまった。
 
「何だ?」
「いや。俺、恋人できたらさ、こうやって頭並べて、二人でジグソーするのずっと夢だったんだ」
 
 その恋人が男になるとは、しかもお前になるなんて、夢にも思わなかったけどな。
 でも今凄く幸せだから、お前で良かったと思う。ちゃんと、完成させたい。それまでもそれからも、俺たち上手くやっていけるよな?
 支倉の唇が近付いてきて、俺はそっと目を閉じる。寝転がったままのキスはなんだかくすぐったい。
 
「今年は無理だったけど、来年のゴールデンウィークこそは一緒に過ごそうな、隆弘」
「もう来年の話か。他にも、夏休み、シルバーウィーク、クリスマスに正月とイベントは幾らでもあるだろう。勿論全部、俺と過ごしてくれるんだよな?」
「……勿論」
 
 凄い嬉しそうな顔。お前そんなニヤケ面、イケメン台無しで会社の女が泣くぞ。まあ泣かせておけばいい話だが。
 今まで恋人が居なかった俺こそ、イベントごとを誰かと過ごせるのが楽しみで仕方ない。はしゃぎすぎても、そこは大目に見て欲しい。
 
「浮気はするなよ、隆弘。絶対に俺と過ごすこと」
「それは、お前の方がやばいだろ。もてるんだし」
「でも、俺はこれだから」
 
 支倉はそう言って、パズルの完成図を指さした。
 
「ひまわり?」
「そう。お前だけ見つめてるってこと」
「ああ……それで、ひまわり、ね」
 
 まさか花言葉が出てくるとは思わなかった。やっぱりこいつはイケメンだ。
 ニコニコ笑っちゃいるがな、そんな気障な一面見せつけられたら余計不安になるんだよ、馬鹿。
 
「だから、これからもずっと見つめさせてくれ、隆弘」
「堂々とストーカー宣言するなよ。勝手に見てろ」
 
 面白くなくてつっけんどんに返したのに、支倉はやっぱり嬉しそうだった。
 来年か……。その頃には、このジグソーパズルも完成しているんだろう。そうしたら、二人で二個目を買いに行ってみようか。
 ああ、でもお前となら、明るい空の下を歩いてもいいかもしれない。それこそヒマワリ畑でも、見に行くとかさ。
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