言葉に出せません

used

文字の大きさ
上 下
13 / 46
第三幕

6踏目

しおりを挟む
 そして僕は、相当頑張りすぎてしまったらしい。
 
「……初心者相手に5回も6回もするとか信じられん」
「えー。でも、直人さん、セックス自体は慣れてるじゃないですかー」
 
 マジ殴りされた。でも力が抜けているせいかダメージはあまりない。残念……。
 
「確かに俺は精力はある方だし、慣れてもいるがな、ネコはこの前のアレが初めてなんだぞ」
 
 初めて……。いい響き。
 
「えー、でも僕だって直人さんで童貞きっちゃいましたよー」
 
 僕は直人さんが初めてで凄い嬉しかったのに、何でか嫌そうな顔をされた。
 直人さんは力尽きた様子で俯せになりながら僕を見ていたけど、顔まで枕に埋めてしまった。
 
「う、嬉しくないんですか? 僕は貴方が初めての人なんですよ!?」
「お前が後ろの初めても捧げてくれるなら、喜んでやってもいい」
 
 それでも、嬉しい……じゃなく、喜んでやってもいい、なんだ……。
 
「そういうつれないところも大好きです」
 
 うなじにキスをすると、びくりと身を竦ませて、手の平で顔を張ってくる。
 
「そういうのやめろ」
「え、発言ですか? うなじちゅーですか?」
「両方だ」
 
 もうっ、照れ屋なんだからぁ、直人さんってば!
 
「カッコイイのにそういうとこ、可愛いです」
「本気で一度死んでおくか?」
「だって本当、可愛いです。大好き」
 
 直人さんは深く溜息をついて、僕を抱き寄せた。
 
「お前を好きになったのは、本当に一生の不覚だ。可愛いなんて言われるのも心外だ」
 
 なんかそんな、僕を好きになったらいけないみたいな。よく判らないけど、でも僕のこと好きだって思ってくれてるならいい……。いい、のかな……?
 
「後悔するはめになるぞ」
「しません、後悔なんて」
「今のは自分に言い聞かせた」
 
 それどういう意味?
 
「複雑そうな表情をするな。一応愛の告白だぞ」
「もっと甘いのがいいです。セックスの時以外は優しくしてくれるって言ったのに」
「それじゃ物足りないくせに」
「そんなことないです。それに、言葉はきちんと欲しいです」
 
 直人さんは僕を腕に抱きながら、じいっと顔を見つめて、ふっと笑った。
 
「悔しいが気持ち良かった。惚れた相手とだからな。好きだ、望」
 
 甘い言葉と一緒にキスが落ちる。
 なっ、直人さん……。あぁ、もうメロメロすぎる。
 腰とかお尻とか今散々痛いだろうにそんなそぶりも見せないし!
 
「……人に言わせておいてお前は無言か? 何か言えよ」
 
 どこか照れたように言う貴方がとても愛おしい。
 凄いたくさん愛を紡ぎたいけど、今はちょっと無理です。
 言葉と一緒に心臓が出てしまいそうな勢いなんで。
 
 言葉にならないくらい、貴方のことが大好きです。
しおりを挟む

処理中です...