弟を好きになりました

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小学生高学年編

離れたくない

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 律が小学校五年になって、俺は最後の大学生活を迎える。
 まだ家にいたい。律の傍にいたかった。
 そのつもりでいたけれど、夏を過ぎて就活が始まる頃、両親が俺に住宅情報誌を与えてきた。
 どうやら俺に一人暮らしさせる気満々みたいだ。
 もちろん卒業後になるけど、今からいろいろ調べておいた方がいいって。
 
 確かに俺が家を出れば律を一人部屋にできる。それに、ずっと二人部屋で過ごしていた俺に、自由を満喫させたいんだと思う。
 ……というか、経験させたい?
 しばらくは仕送りまでしてくれるらしい。
 俺の意志を尊重するとは言ってくれてるけど、ここまで提示されて拒むのは不自然過ぎる。
 
 でも、律と離れるなんて……。
 
 俺は親に貰った住宅情報誌をベッドの下へしまっておくことにした。
 ある日大学から帰ると、律がそれを見ていた。
 
「お兄ちゃん、一人暮らしするの?」
「律、何で……その雑誌」
「前から見られたくない物、ベッドの下にしまっておく癖あるでしょ、お兄ちゃん」
 
 いやー……。やっぱ男二人部屋じゃそんなプライバシーないも同然だよな。ははは……。
 
「ということは、その」
「お兄ちゃんが僕のパンツくすねてるのも気付いてました!」
 
 やっぱり……。
 
「去年までは何で僕のパンツを……と思ってたけど、今はなんとなく理由も判るよ……」
「……ごめん。律の匂いが傍にあると安心して」
 
 律がにっこり笑いながら、住宅情報誌を振る。
 
「一人暮らし、したら?」
 
 足元ががらがら崩れていくような感じ。
 何で? パンツくすねてたから?
 そんな、気付いてたら今更だよな……。
 
 やっぱもう年頃だし、律も一人の方がいいんだ。
 離れたくないって思ってるのは、俺だけ。
 
 足元が崩れていくと思ったけど、気付けば俺はその場にへたりこんでいた。
 
「もー。泣き虫」
「だ、だっ……。律、がっ」
 
 律が立ち上がって、上から俺の目元に何度もキスをする。
 何か言いたいけど全然言葉にならない。
 俺は律の胸に顔を埋めてしゃくりあげる。律はそんな俺の背をぽんぽんと叩いてくれた。
 少しだけ背が高くなって、逞しくなった気もするけど同じ年頃の子に比べて華奢な身体。まだ俺の庇護が必要だと、そう思っていたかった。
 離れられないのは俺の方だなんて、そんなことは判っていたけれど。

「別にお兄ちゃんと離れたくて、そんなこと言ってるんじゃないよ。いなくなるのは僕も寂しい」
「本当に?」
「うん」
 
 見上げた俺の頬を律が優しい手つきで撫でていく。
 
「毎日遊びに行くし、週末は泊まりに行くよ。この狭い部屋だけじゃなくて、いろんな場所でいちゃいちゃできるの、いいじゃない?」
 
 確かに……。今だと、キッチンとかでいちゃいちゃするには限度がある。
 俺が引っ越せばどんなことも思いのまま!?
 開放感からダイニングテーブルに律を押し倒したりしてもいいってこと。
 罪悪感も多少は薄れるかもしれない。
 
「でも律は昼間学校で、俺が夜まで仕事になったら全然会えない……」
「合い鍵で入って待ってるから、毎日送ってくれればいいよ。たまに平日でもお泊まりする」
 
 毎晩律を抱きしめて眠れなくなるかわり、完全に二人の空間ができる。
 律がもう少し大きくなって関係を進める時に役立ちそうだ。
 今はさわりっこするくらいだけど、俺の入れるとなったらさすがに声もれたりギシギシするかもしれないし。
 防音がしっかりしてるとこ選ぼう。
 
「お兄ちゃん、今えっちなこと考えてるでしょ」
「えっ、そんなに顔に出てる?」
「……勃ってる」
 
 身体が素直すぎた。律はふれるだけだったキスを深くして、ジッと俺の目を見る。
 
「お兄ちゃん、して欲しい?」
「うん、さわって。律の手で……」
「舐めてもいい?」
「え……」
 
 律が俺のを……舐めっ……。
 去年の遊園地以来してくれたことなかったのに、どうして急に。
 そんな妄想何度もしたけど、やっぱ現実じゃ、こう……犯罪っぽくてなあ……。まあ実際犯罪だしな。
 
「それはまだ早い」
「えー」
 
 律がぷうっと頬を膨らます。
 
「僕にここまで手を出してるんだから、今更じゃない?」
 
 ぐっさりきた。
 
「そう、本当はこれもまだ早い。でも……でも俺、律が好きすぎて」
「っ、お兄ちゃ……」
 
 口唇を重ねて、小さな舌を引き寄せて散々なぶる。
 キスはセーフ? 舌を入れてるからアウトかもしれない。
 でもこうしてふれていると、禁忌なんて忘れそうになる。
 
「ん、だから……。そう思っちゃうから、一度離れた方がいいんだよ。じゃないと、僕が大きくなったことにも気付かない」
「あっ、で、でも、毎日来てはくれるんだよな?」
「行くよ。でも、違う場所で暮らしてるっていうだけで、きっと何か違うから」
 
 いつもと同じ律の指先が、俺の熱をズボン越しに往復する。
 
「痛い、律……ファスナー開けて……」
「ん……」
 
 気持ちいい。
 快感に流される頭の片隅で、律は俺以上にいろいろ考えているのかもしれないなあと思う。
 本当にダメな兄でごめんな。
 
 ずっとずっとこの家にいたい。律の寝顔が見られて、抱きしめて眠って……ここは俺にとって安らぎの場所だった。
 でも新しく住む場所に律が来てくれるのなら、きっとそこも楽園になる。
 
 ……さわるより先も、できるかもしれないし。 
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