その身を賭けろ

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微妙だけど

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 葉月の寝室は他の部屋と同じように黒が多めのモノトーンでまとめられていた。
 他人の寝室というのは、どこか特別な感じがする。ワンルームマンションや自室がベッドと一緒になっている学生のうちは別だが、他人の家へ訪れてわざわざ分けてある寝室へ立ち入る機会はそうはない。
 酔った相手を介抱したり、それこそ情事にもつれこむ時くらいだ。
 
「コートはそこにかけてくれ」
「ああ」
「おれのもついでにな?」
 
 旭は自分のコートをかけた後、手渡されたコートを受け取ってハンガーへかける。執事の真似事でもしているような気分になってきた。
 
「さすがに脱ぐと寒いな。今、暖房入れるから」
 
 軽い電子音と共に柔らかい空調の音が聞こえてくる。
 ベッドシーツは寝ていた形跡がないくらい綺麗に整っていて、生活臭を感じさせない。葉月はそこへ俯せに寝転がり、顔だけで旭を見た。
 
「二万円分、誠心誠意、しっかり揉めよ?」
「わかってる」
 
 ラフなシャツ姿になると身体の線が細いのが際立ち、押したら折れるのではないかと怖くなるほどだ。
 会ってすぐの相手に対して、葉月はやはり無防備すぎる。
 もし、旭がこのままのしかかり後ろから首を絞めてしまえば、彼はきっとなすすべもなく死んでしまうだろう。そして葉月はそれを試してみたくなるような、細く白い首筋をしている。普段黒い衣服を着ているせいで、殊更白く見えるのかもしれない。
 殺したいほどかはわからないが人の恨みは買っていそうで、他人事ながら心配になる。たった二日とはいえ何度も会話をし、コーヒーまでご馳走になった。不可抗力とはいえ舌の味も知っている。そんな相手の死体は一般的な思考回路を持つ人間としては見たくないのが普通だ。
 もちろん旭が首を絞めるはずもなく、葉月もそうわかっているからこそ無防備な姿を気にせず見せるのだろうが。
 旭は葉月の後を追うようにベッドの上に乗り上げ、ひとつ大きく深呼吸をした。
 
「オイオイ、おれにマッサージを施術するのは、そんなでっかい溜息をつくくらいイヤなことなのか?」
「いや、力を込めたら折れそうで……」
「安心しな。お前が思うより頑丈にできている。少しくらい強く揺さぶっても壊れたりしないさ」
「あー、ハイハイ」
 
 相変わらず含みのある言葉を聞き流し、旭は葉月の細い腰に手をついて力を込める。
 
「っ……」
「あ、痛いか?」
「いや、大丈夫だ。真ん中辺り、強く押して……あー、そうそう」
 
 いつもの気取った態度と違い漏れ出るどこかオヤジくさい溜息に、色のある雰囲気などどこかへすっ飛んでしまった。
 
「俺なんかより、ちゃんと整体の先生とかにやってもらったほうがいいんじゃないか?」
「通ってたんだけどな」
「うん」
「だんだんと手の動きがやらしくなっていって、それでも腕がいいから我慢してたら、ある日犯されそうになって……」
「病院を変えろよ、途中で!」
 
 無理矢理手を出したほうが悪いのは当たり前だが、露骨な触り方をしても通い続けていたなら葉月にその気があるのだと捉えられてもおかしくない。むしろ男として多少その整体師に同情すらしてしまう。
 途中経過はわからないが、絶対いけると期待させた後で崖に突き落とされたなら、それは相当ショックだろう。
 
「んっ……。あれは本当に、失敗だったな」
「今のストーカー相手にも同じような感想述べてませんでしたか?」
「……まあ」
 
 葉月はどこか気まずそうにしている。
 最初は恋愛経験豊富で手慣れてそうに見えたが、その実そっち方面はからっきしなのかもしれない。
 
「人の心を読むのは得意だ。こいつは絶対に平気だとわかる。なのに気づくと相手を追い込んでいるんだ」
 
 押していた腕を掴まれて、縋るように見上げられた。
 
「なあ、お前もいつか、そうなんのかな?」
「お、俺は……男に興味は」
「今までの奴もみんなそう言ってたな。けど、なんでか旭は平気な気がした。これで見誤ったら、もう二度と人に関わるのはよそうと思った」
「そっ……そんな重要な判断に、勝手に俺を使わないでくれ」
「なんだ? お前は男に興味がないんだから、さすが見る目があるな葉月様って褒め称えるところだろう?」
 
 気づけば身体を反転させられ、旭はベッドへ押し付けられる形で天井を見ていた。
 
「それとも、自信がない? おれにクラッときそうなのか?」
 
 葉月は小さな尻を旭の股間に乗せ、何かを確認するように軽く揺らした。
 
「な、ななな、なっ何……」
「うーん。まあ微妙だけど、ゴーカクかな」
「何がッ!」
「この状態で勃起してたら、家からたたき出そうかと思ってな」
「だからって、こんな確認の仕方があるか! だいたい微妙ってなんだ、微妙って!」
「気色悪いと、おれを跳ね退けないあたりが微妙。あ、大きさのコトだとでも思ったか?」
「おもっ……て、ない」
「お前、本当に顔に出るよな」
「うるさい!」
 
 頭の中がぐちゃぐちゃだった。
 股間に覆いかぶさる重みと温もり。その気がなくても身体が錯覚をしそうになる。
 ここのところ色事はとんとご無沙汰で、人の体温を求めているのかもしれない。さすがに勃起までにはいたらないが、葉月の温かさはひどく気持ちがよかった。熱すぎない体温が、触れ合った場所から熱を帯びていく。どちらかといえば、吸い取られているような気もした。
 葉月は冗談で自分を吸血鬼だと言っていたが、言い得て妙だ。見た目と予想を外さず体温が低く、触れた場所から熱が奪われる。そして何故かそれが心地好く、望んで分け与えたいような気分にさせられるのだ。
 
「そもそも、跳ね退けないくらいで微妙だって言うなら、葉月のほうはどうなんだ」
「おれ?」
「男の胸板を撫で回したり、添い寝しろだのマッサージしろだの」
「おれの場合は妥協だ。女を連れ込むとろくなことにならない。妊娠されるほうが嫌だって言ったろ?」
 
 色々と気になるところはあったが、何を尋ねてもプライベートにかなり踏み込んだ内容になってしまう。旭は知り合いにも満たないような相手に、下半身話題を出すオープンさは持ち合わせていなかった。
 金持ちも大変だなとは思いつつ、やはり金があるのは羨ましい。もし金があれば整体師の真似事だってしなくて済んだ。ギャンブルだってし放題だ。
 
「マッサージはもういい。胸を撫でさせろ」
 
 葉月の身体がそのまま落ちてくる。絡まる足、胸に擦り寄せられる頬。その細さに女を抱いているような気になるのではと思ったが、肉付きの少ない身体は明らかに男のものだった。
 想像よりも細く、そして固い。無駄な肉はまったくついていないが、引き締まっているだけで不健康そうな感じはしない。
 葉月は厚い胸板がよほど羨ましいのか、相変わらず熱心に撫で回している。
 
「まだ始めてから10分も経ってないぞ」
「だってお前、下手なんだもん。余計に腰を痛めそうでさ」
「うっ……。し、仕方ないだろ。マッサージとか、人にしてやったことなんかないし」
「そんなに不器用で、ちゃんと銃が撃てるのか?」
 
 冷たい指先で手を取られて、撫でられる。葉月はからかうようにニヤニヤしているし、色っぽい雰囲気などどこにもないのに、何故か鼓動が速くなった。
 
「銃なんて持ってない」
「ボディーガードだろ?」
「俺は民間だから体術を駆使するくらいだ。そういうのは警察のお仕事」
「じゃ、警備員みたいなもんか」
「そうだな」
 
 友人でもない男のベッドで、手を繋いで見つめ合っている。
 誰にどう話したところで、狙われているから早く逃げろと口を揃えて言われるだろう。
 だが葉月は本人がストレートだと告げる通り、見つめる瞳に欲の色は一切見えない。こうしていることを楽しいと思っているのは伝わってくる。好意を持たれてはいるようだが、それは恋愛感情ではなさそうだ。
 
「はぁ……」
 
 葉月は甘ったるい息を吐いて旭の上から転がり落ちると、額をベッドへ埋めた。
 
「少し眠い。最近よく眠れてなかったから。でもシャワーは浴びたい。一緒に入ろう、旭」
「…………本当に、男に興味はないんだよな?」
「少なくとも自分よりでかい男を抱きたいとは思わないし、突っ込まれんのはどんな相手だろうとごめんだ……って、昨日も言わなかったか?」
 
 そうめんどくさそうに言って、髪をかきあげながら身を起こした。黒い髪がさらりと耳の横を通る。
 整った相貌は、性別を越えてもいいと思わせるほどではない。切れ長の瞳はどこか色気を感じさせるが、女性に見えるわけでもない。
 それでも、金を抜きにしても付き合いたいと思うような魅力をそなえている。葉月には人を引き付ける力があった。見た目は闇なのに、一筋の光りに見えるような引力だ。ストーカーにあっているのも頷ける。
 
「眠れなかったのは、ストーカーに突っ込まれるんじゃないかと怯えていたせいだったり?」
「あぁ……。そ。ここに、ドスンとね」
 
 葉月が自分の脇腹を、手刀で軽く叩く。
 
「そこまで切迫してるなら、本当にボディーガードをつけたほうがいいぞ」
「今はいるだろ、お前が」
「そりゃ、今日はいいけど……。何、明日は3万円分?」
「マッサージもろくなもんじゃなかったし、3万円は何をしてもらったらいいか迷うな。風呂かなー」
 
 今日一緒に風呂へ入るのは諦めたらしい。元々本気かどうか怪しいところだが。
 
「じゃ、ちょっとシャワー浴びてくるけど、逃げたり部屋を物色したりするなよ?」
 
 簡単な忠告だけで、会ったばかりの男を部屋へ残していく危機管理能力の薄さはどうしたものか。
 旭はボディーガードとして葉月を叱り飛ばしたいような気分になってきた。
 クライアントの身を護るのが仕事だが、護られる側にその意識がないのが一番やりにくい。
 狙われているとわかっていてフラフラ出歩くなど、マトの前に自分から踊り出るようなものだ。
 カジノやパチンコへ行き、あまつさえ男を部屋に誘い込むなどもってのほか。今頃ストーカーは逆上しているかもしれない。
 
 主のいない部屋に一人残された旭はどこかソワソワした気分で室内を見渡す。
 寝室もリビングと同じようにモノトーン基調。ベッドは男二人が転がっていたせいで今でこそシワになっているが、入った時はピシッとしていた。割合几帳面なのかもしれない。
 誰かを連れ込むためなのか、キングサイズのベッドは男二人が寝てもゆうに余る。まあ、お金が有り余っているのなら、寝る場所は広いに越したことはない。
 
 それから20分ほどして、葉月が部屋へ戻ってきた。
 バスローブから覗く白い肌がほんのりと色づき、妙な色気を醸し出している。
 
「ずっとそうやって待ってたのか? なんか本でも渡してやればよかったな。暇だったろう? 端末かなんかいじって待ってると思ったからさ」
 
 そういう気遣いをするタイプだとは思っていなかったので、なんだか意外だった。ちらちらと見える肌に旭はなんとなく気まずい気分になり、目を逸らした。
 
「いや、別に……」
「それとも、おれの部屋に何か楽しいもんでもあった?」
「どこも触ってないぞ」
「ホントか~?」
 
 葉月がニヤニヤと笑いながら、大きなベッドへ乗り上げる。軋む音と共に石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。旭は思わず身を引いた。
 
「……お前、その態度は怪し過ぎるだろ」
「いや、本当に!」
「まあいいや。信じよう。おれのカンを」
「信じるのは俺のことじゃなくて、自分の勘なんだ」
「結局はお前を信じるってことだから、別にいいだろ」
 
 葉月はそう言ってベッドに寝転がり、旭を見上げながら袖を引いてくる。
 
「お前もシャワーを浴びてこい。5分だ、いいな」
「ごっ……!?」
「だから一緒に入ろうと言ったのに。おれはもう眠いんだよ」
「このままじゃ駄目……ですよね、ハイ」
 
 ギロリと睨まれて、旭の語尾は小さくなっていった。
 一日の汚れを落とさずに他人のベッドへ潜り込むのは旭としても申し訳ない気はした。
 
「おれは汗の匂いに包まれて寝るなんてごめんだからな」
 
 逃げ道を塞ぐようにそう言われて肩を落とす。
 確かに汗くさい男を抱き枕にするのは罰ゲームのようなものだろう。
 
「えっと……じゃあ、何か換えの服を貸してもらえるか?」
「ああ。来客用の浴衣が脱衣所に置いてある。フリーサイズだから着られるだろう。もっとも袖を通すのは、お前で一人目……だけど」
 
 意味深な間と何かを含むような笑い方。普通に考えれば、お前は特別だという意味なのだろうが素直に喜べない。それもこれも葉月の真意がかけらもわからないからだ。ミステリアスな自分を演出しているのかもしれない。
 
 実のところ、見知ったばかりの他人の家で裸になるのは抵抗があった。
 今はプライベートとはいえ急所をさらけ出しているようなもので、もしその間に何かあれば出遅れるし、自分の身を護るので精一杯になってしまう。2万円分働くのであれば葉月の身を護ることを優先したい気もしたが、葉月本人がそれを望んでいないのだから仕方ない。彼が望んでいるのは身体を清めボディーソープの香りをさせながら、抱き枕になること。
 マッサージもダメ出しをくらった今、なるべくクライアントの意にそうようにしたかった。
 
「じゃあシャワーを浴びてくる。もし何かあればすぐに知らせてくれ」
「心配性だな。ストーカーだってこの時間はグッスリ寝て……」
 
 インターホンの音が寝室まで響く。
 
「管理人さんかな?」
「こんな時間にそんなわけないだろう! 入口はオートロックだったから、マンションの外から聞こえてくるんだよな?」
「そうだな。上までは入り込めない」
 
 葉月がベッドボードからリモコンを取りスイッチを押すと、壁に人の良さそうな青年の姿が映し出される。
 見た目はごく普通だが、こういうタイプが思い詰めると一番やばいことを旭はよく知っている。

「でも下で暴れられても困るし、いっそ部屋にあげてみるか。今はお前もいるし」
「それは絶対にやめたほうがいい」
「おれを護る自信がないのかよ、ボディーガードサン」
「護れる護れないじゃない。その前に、危険に晒したくない」
 
 言いきった旭に、葉月が頬を染めた。
 
「は、恥ずかしいヤツだな、お前」
 
 確かに映画のヒーローにでもなったような台詞だったかもしれないと、旭も恥ずかしくなり、ごまかすように咳ばらいをした。
 
「ともかく、今日は遅いから帰るように伝えて、それでも粘るようなら警察だ」
「結局警察頼みか」
「ボディーガードとはいえ、民間人にできることは限られている。ただ、もしものことがあれば全力で護ってやる。2万円分」
「……そうだな。きちんとガードしろよ。2万円分」
 
 葉月が再びリモコンを操作すると、軽いノイズと共に部屋に風のような音が響き渡った。音声が外部と接続されたらしい。
 
「夜西。こんな時間に何の用だ」
『…………』
 
 相手は何も話さないが、向こうへ音が入っているのは夜西と呼ばれた青年の表情でわかる。温厚そうな二十代半ばの男はどこかうっとりした表情でこちらを見ていた。
 身体は筋肉隆々というほどではないもののガッチリしていて、胸板目当てだろうことはすぐにわかった。
 
『僕に向けた声が聞きたかった。罵声でもいいから。でもできれば顔が見たい。触りたい。あの日みたいに僕の上に乗ってほしい』
 
 思わず、まさか、という顔をした旭に、葉月は慌てたように首を横に振った。
 
「そういった話はやめてくれ。散々言ってるだろ。おれは男には興味がないんだ」
『あんなに、僕の身体を情熱的に撫で回したのに』
「身体だけが目的だった」
『それでも構わない』
「……迷惑だから、とにかく今日は帰ってくれ」
 
 終わりのない押し問答が続くと思われたが、夜西は素直に頷く。相変わらず熱病に浮されたような表情でこちらを見つめてから背を向けた。彼には障害物を通しても葉月の姿が見えているのかもしれない。その障害物の中に、旭の存在はあるのかないのか。
 ほんの少しの会話だったが葉月は酷く疲れたようで、大きな息を吐き出してベッドへ仰向けになった。
 一見おとなしそうなタイプがどこか病んだように切々と愛を訴えてくるのは、想像以上に精神力を消耗する。
 普通よりはそういった人間と対峙することの多い旭でも毎回頭が痛くなるのだから、当事者は相当にきついだろうと思う。
 
「あんな感じなんだよ。なんか宇宙人みたいっての? こっちの言葉が通じてるようで通じてないような、さ」
「素直に帰るなら、言葉は通じてるんじゃないか? 本当に、顔が見たかった声が聞きたかっただけで」
「でも毎日監視されたりするのはなあ。直接何かしてこない分、タチが悪い。そしていつかキレて、刺してきそうなのがな。真綿で首を絞められてるみたいだ」
 
 葉月はもぞもぞとブランケットの中に潜り込み、視線で旭を呼んだ。
 本当に眠いらしく、何度か深く瞼を落としてからハッと軽く見開く。繰り返すそれは、旭がベッドへ入るまで続けられるだろう。
 旭は仕方ないなと腹を括って隣に潜り込む。冷たい指先に反して、中は暖かかった。眠いから体温が上がっているのか、さすがの葉月も羽毛布団の暖かさに負けているのかはわからない。興味を引かれて確かめるように葉月の手をとると、いつものようにひんやりとしていた。
 ベッドの中で手を繋いだことをからかわれるかと身構えたが反応がない。見れば、もう寝息を立てている。
 葉月は雰囲気もあわせて結構な男前だ。それが目をつぶっていると、かなりあどけなく映る。
 
(どう見ても、年上には見えないんだよなあ……)
 
 寝ている姿はどこか擬態にも思えた。気を抜けば見開かれた目が赤く光り、ガブリと噛み付かれる。そんな気がしてくる。
 
「ん……」
 
 葉月が寝苦しそうに小さく呻いたが、目は見開かれることはなく、繋がれた旭の手をぎゅっと握った。
 幼子が母の手を求めるような動作に、思わず笑みがこぼれる。
 旭は庇護欲をそそられて、ブランケットの上から葉月の身体をぽんぽんと優しく叩いた。
 
「おやすみ」
 
 起こさないくらいの声でそう言って、目を閉じる。
 男と同衾することへの抵抗はまるでなく、むしろ他人の体温にホッとする。隣から漂う爽やかなボディソープの香りに結局シャワーを浴びていないことを思い出したが、それについて文句を言う相手はすでに寝てしまっている。動いたら起こすかもしれないしと自分に言い訳をして、旭は睡魔に誘われるまま眠りに落ちた。
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