85 / 106
先輩視点の番外編
逆転劇
しおりを挟む
せっかく俺が遊びにきたっていうのに、後輩くんは床に座り込みベッドに背をもたれさせて、携帯をいじって遊んでいる。
まあ、先にこれ読ませてと、ベッドの上で週刊誌を読みだしたのは俺のほうだけどさ。
「後輩くん、さっきから何をやってるんだ?」
「携帯アプリです。友達が面白いからやってみろって」
異議ありとか待ったとか聞こえてくる。
「どんなゲームなんだ?」
「えっと……。アドベンチャーっていうのかな。裁判のゲームなんですけど、こう、テキストが流れて、相手の証言に矛盾点が現れたところで異議を唱えると、話が進む感じの……」
画面を見せてくれた。凄く綺麗だ。俺はあまりゲームをやらないが、最近のはスマホでも普通のゲーム機みたいに綺麗なんだな。
「不利な状況から逆転していくところがとても面白いんですよ。先輩ならあっという間にクリアしちゃうだろうな」
「ふーん……」
後輩くんは画面に目を戻し、何回かスイスイと操作したあとで、上を向いた。ベッドへ頭を乗せているから、顔が自然俺の目の前にくる。
「先輩も、おれがピンチの時には助けてくれますか? 一発逆転劇、得意そうです」
「そうだなあ。どうかな、俺、後輩くんの困った顔、割りと好きだからな」
「なんですか、それ」
俺の言葉に怒る様子はなく、くすくすと笑ってスマホを置いた。代わりに手を伸ばして、俺の髪を下から撫でてくる。どうやらゲームをやめて俺を構う気になったらしい。
「おれが逮捕されて犯罪者になっちゃったら、キスもできなくなるんですよ?」
「出所してくるまでずっと待っててやるよ。お前が働かなくても済むくらい、すげー稼げるようになっててやる」
「それはプロポーズみたいで嬉しいけど、なんか複雑」
「じゃあ、捕まるようなヘマはしないことだな」
「……そうですね」
唇が重なる。ねっとりとしたキスに、息が上がる。
後輩くん、キス上手くなったよな。俺のキスの仕方、すっかり覚えてる。
見た目は優等生なカワイコちゃんだってのに、反則だぜ。
「ん、んっ……」
舌を噛まれてぞくりとした。快感だけじゃなく、恐怖にも身が竦む。噛むのやめろっていつも言ってんのに……。
指先が下からシャツのボタンを外していく。はだけた胸元をなぞられて、俺はあっさりと快楽に落ちてしまう。
絶対そうとは見せないが、俺は快楽には弱いほうだ。あえて平気な顔をして、後輩くんをベッドの下から引き上げる。
「するか?」
「はい」
嬉しそうに、俺の身体に乗り上げてくる。
男にのしかかられる日がくるなんて、本当思わなかったよな。すっかり慣れてる自分が怖い。
「おれは、先輩がピンチになったら、どんな時でも助けに行きますからね」
「はは。頼りにしてるよ、後輩くん」
後輩くんは俺の頬にキスを落としながら、そっと耳を舐めて囁いた。
「まあ……。先輩がピンチの時なんて、そうですね……きっと、おれが何かしようとした時に、違いないですけど」
「何かって、たとえば?」
駆け引きめいた台詞は嫌いじゃない。笑いながらそう尋ねると、後輩くんも同じように笑顔を返してきた。
満面の笑み。こういう表情の後輩くんには嫌な予感しかしない。……聞かなきゃよかった。
「おれが犯罪者になっちゃう可能性があるようなこと、ですかね」
さっき俺のシャツを外していた指先が、首を緩く締め付ける。痛くも苦しくもないが、後輩くんが笑顔のままなのは、ちょっと怖い。
あー……。俺、いつか一回くらいは、後輩くんに誤解とかで、刺されそうだなー……。
俺は元々執着心が薄いほうだから、お前の強い感情を羨ましく思うこともある。そこに惹かれているとも言えるし、それに。
「俺も、そうかもしれないぜ? 浮気、するなよな」
お前に関してだけは、似たようなもんかなとも思う。
ただ、素直にそれを見せないだけで。
俺に浮気の予定はないからな、早々犯罪者になんかにさせないさ。逆転劇も必要ないぜ、後輩くん。
万が一お前が俺を刺したとしたら、犯罪者にさせる前に潔く死んでやろうじゃないか。
「せ、先輩っ……!」
「っ……がっつくなって」
性急に俺の身体をまさぐるこの手のひらは、どんなことがあろうとも最後の一瞬まで俺のもの。
まあ、先にこれ読ませてと、ベッドの上で週刊誌を読みだしたのは俺のほうだけどさ。
「後輩くん、さっきから何をやってるんだ?」
「携帯アプリです。友達が面白いからやってみろって」
異議ありとか待ったとか聞こえてくる。
「どんなゲームなんだ?」
「えっと……。アドベンチャーっていうのかな。裁判のゲームなんですけど、こう、テキストが流れて、相手の証言に矛盾点が現れたところで異議を唱えると、話が進む感じの……」
画面を見せてくれた。凄く綺麗だ。俺はあまりゲームをやらないが、最近のはスマホでも普通のゲーム機みたいに綺麗なんだな。
「不利な状況から逆転していくところがとても面白いんですよ。先輩ならあっという間にクリアしちゃうだろうな」
「ふーん……」
後輩くんは画面に目を戻し、何回かスイスイと操作したあとで、上を向いた。ベッドへ頭を乗せているから、顔が自然俺の目の前にくる。
「先輩も、おれがピンチの時には助けてくれますか? 一発逆転劇、得意そうです」
「そうだなあ。どうかな、俺、後輩くんの困った顔、割りと好きだからな」
「なんですか、それ」
俺の言葉に怒る様子はなく、くすくすと笑ってスマホを置いた。代わりに手を伸ばして、俺の髪を下から撫でてくる。どうやらゲームをやめて俺を構う気になったらしい。
「おれが逮捕されて犯罪者になっちゃったら、キスもできなくなるんですよ?」
「出所してくるまでずっと待っててやるよ。お前が働かなくても済むくらい、すげー稼げるようになっててやる」
「それはプロポーズみたいで嬉しいけど、なんか複雑」
「じゃあ、捕まるようなヘマはしないことだな」
「……そうですね」
唇が重なる。ねっとりとしたキスに、息が上がる。
後輩くん、キス上手くなったよな。俺のキスの仕方、すっかり覚えてる。
見た目は優等生なカワイコちゃんだってのに、反則だぜ。
「ん、んっ……」
舌を噛まれてぞくりとした。快感だけじゃなく、恐怖にも身が竦む。噛むのやめろっていつも言ってんのに……。
指先が下からシャツのボタンを外していく。はだけた胸元をなぞられて、俺はあっさりと快楽に落ちてしまう。
絶対そうとは見せないが、俺は快楽には弱いほうだ。あえて平気な顔をして、後輩くんをベッドの下から引き上げる。
「するか?」
「はい」
嬉しそうに、俺の身体に乗り上げてくる。
男にのしかかられる日がくるなんて、本当思わなかったよな。すっかり慣れてる自分が怖い。
「おれは、先輩がピンチになったら、どんな時でも助けに行きますからね」
「はは。頼りにしてるよ、後輩くん」
後輩くんは俺の頬にキスを落としながら、そっと耳を舐めて囁いた。
「まあ……。先輩がピンチの時なんて、そうですね……きっと、おれが何かしようとした時に、違いないですけど」
「何かって、たとえば?」
駆け引きめいた台詞は嫌いじゃない。笑いながらそう尋ねると、後輩くんも同じように笑顔を返してきた。
満面の笑み。こういう表情の後輩くんには嫌な予感しかしない。……聞かなきゃよかった。
「おれが犯罪者になっちゃう可能性があるようなこと、ですかね」
さっき俺のシャツを外していた指先が、首を緩く締め付ける。痛くも苦しくもないが、後輩くんが笑顔のままなのは、ちょっと怖い。
あー……。俺、いつか一回くらいは、後輩くんに誤解とかで、刺されそうだなー……。
俺は元々執着心が薄いほうだから、お前の強い感情を羨ましく思うこともある。そこに惹かれているとも言えるし、それに。
「俺も、そうかもしれないぜ? 浮気、するなよな」
お前に関してだけは、似たようなもんかなとも思う。
ただ、素直にそれを見せないだけで。
俺に浮気の予定はないからな、早々犯罪者になんかにさせないさ。逆転劇も必要ないぜ、後輩くん。
万が一お前が俺を刺したとしたら、犯罪者にさせる前に潔く死んでやろうじゃないか。
「せ、先輩っ……!」
「っ……がっつくなって」
性急に俺の身体をまさぐるこの手のひらは、どんなことがあろうとも最後の一瞬まで俺のもの。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?
あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。
……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。
学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。
……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!?
由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!?
・・・・・
乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。
始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる