甘すぎるのも悪くない

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とけたそのあとで

チェルシー

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 先輩がお気に入りの甘ったるい紙パック入りのコーヒー牛乳を陳列棚から取ろうとして、手を止めた。
 
「あれ……?」
「どうしたんですか? 先輩」
「チェルシーがある」
「チェルシー? 有名なドリンクか何かですか?」
「なんだ。後輩くん、知らないのか。凄く美味しいキャンディなんだぜ」
「ドリンクですけど、これ」
「うん。だから不思議だった。へ~ドリンクになったんだな」
 
 そう言いながら、物珍しそうにそれをカゴに入れた。
 赤いのと緑色のと二種類あって、赤い方だ。バタースカッチ、と書いてある。言うまでもなく、甘そう。
 
「先輩のことだから、その飴って凄く甘いやつなんでしょうね」
「何を言っているんだ、後輩くん。甘くない飴などあるものか」
 
 この人の世界にはハッカとかシュガーレスキャンディは存在しないのか。
 まあ、とりあえず、バタースカッチって時点でもう甘そうだし。それがドリンクになるって、どれほど甘いんだろう。
 他にもチョコだのクッキーだのたくさん買い込んで、会計。先輩は見た目的には甘いものなんて好みそうに見えないから、コンビニのお姉さんからしたら絶対おれが食べる分だと思われているだろう。先輩はそれに付き合う優しい先輩って感じに見えている、きっと。なんか釈然としない。
 コンビニから出た途端、先輩がビニールをごそごそを探って、さっきのチェルシードリンクを取り出した。
 
「えぇ、ここで飲むんですか?」
「気になるだろ、だって」
 
 おれは元々、そのチェルシーっていう飴自体知らないから、気になりどころがあまりよく判らない。
 これが知らない味だからそう思うのであって、ハンバーガー味のドリンクと言われたら、確かに気になるような気もする。でも気になりはするけどチャレンジはしないと思う。あずき味のペプシも飲まなかったし。
 おれは、紙パックの小さなドリンクにストローをさして可愛らしく啜る先輩をじいっと見守っていた。相変わらずギャップが凄くて、そういうところもたまらない。
 
「どうですか?」
「すげー……美味い」
 
 ああ、甘いんだな、相当……。
 
「飲んでみるか?」
 
 先輩の今の表情は、かなり甘すぎる物を食べている時の表情だ。甘い物が嫌いじゃないおれでも噴き出すレベル。危険だ。首を横に振って、丁重にお断りした。
 あとで先輩の唇にキスをしたら、相当甘い。だから、それが味見って感じでいいと思う。
 
「おれにとっては先輩の唇の方が、甘くて美味しいですから」
 
 思わず告げてみたら、先輩が飲んでたチェルシードリンクを思い切り噴き出した。 
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