甘すぎるのも悪くない

used

文字の大きさ
上 下
34 / 106
とけたそのあとで

甘いおねだり

しおりを挟む
 先輩は初めてしたあの日から、一度もさせてくれない。
 手ではするけど、それだけ。舐めさせてもくれない。
 お互いに気持ち良く愛し合えればそれでいいだろって言って。
 俺はもっと深く愛したいのに……。
 でもそれをしつこく言い出すと、おれがやられる側になりかねないから自重。
 手だけでも気持ちいいことはいいけど、先輩の中の熱さを知っているおれとしては、もっと味わいたいと思ってしまうのだ。
 
 舐められることに関しては、自分ができないから申し訳なくなるらしい。
 別にいいのに。おれは先輩の舐めたら興奮するし……。それだけで充分で、させようとか思わない。
 それは、してくれたら嬉しいけど。
 でも、身体を重ねるっていうのは本当に凄いと思う。
 これ以上はないって思うくらい先輩が好きだったのにおれはもっと好きになったし、先輩も多分同じ。
 おれを見る視線が前より熱いし甘いんだ。
 しょっちゅうぎゅーっと抱きしめてくれる。
 
 そしておれは……また先輩を抱きたいなって思ってしまう。
 
 そこでおれは、先輩にお酒を飲ませてほろ酔い気分にさせたところを美味しくいただくことにした。
 せっかくの夏休みだし、多少ははめをはずすのもありかな、なんて。

 ちなみにおれは飲まない。未成年だし。
 先輩はもうあれだけ育ってるから多少飲んでもいいと思う。
 うちに来た時に早速父秘蔵のブランデーを勧めてみた。
 
 けど……。
 
「あ、俺酒飲まないから」
 
 あっさりと野望が砕かれた。
 
「ジュースの方が安くて甘くて美味しいしな。甘いカクテルなら多少はいけるが変な味するし。ちなみに煙草は苦いから嫌いだ」
「両方凄いやってそうなのに……」
「よく言われる」
 
 しかしおれには酒の他にもうひとつ、秘密兵器があった。
 
「あの、先輩……これ使ってみませんか?」
 
 先輩の手にそれをそっと握らせると、ぎょっとした顔で俺を見た。
 
「何考えてんだ、お前」
「先輩に気持ち良くなって欲しいなって」
「……あー、うん。俺自分がする側でもさ、こーゆーのあんま使ってないんだ。基本的にノーマルなのが好きなんだよな」
「手だけで済ませるのがノーマルとは思えませんけど」
「う……」

 実はこれは嘘。先輩とするために調べたら、男同士は身体に負担がかかるから毎回挿入ってことはあまりなく、先輩のように触り合うだけを好む人も多いみたいだ。

「それに平気ですよ! 使われるのは先輩ですから!」
「もっと嫌に決まってるだろ!」
 
 ……まあ、それはそうか……。
 
「あのですね、ぶっちゃけて言ってしまうとおれ、先輩を開発したい……」
「ぶっちゃけすぎだ、馬鹿。お前欲求不満なんだよ。してやるからおとなしくしてろ」
「っ、先輩……」
 
 指先を熱に這わされて、はふ、と息が漏れる。
 確かに欲求不満かもしれないですよ。
 貴方はあれから指すら入れさせてくれなくなってしまった。なのにおれのことを好きだという気持ちは凄く伝わってくる……。
 無意識に誘って、なのに拒んで……おれ、どうにかなりそうです。

「先輩、好きです、好き……」
 
 顔中に甘いキスを落として、甘える。
 先輩の指は凄く巧みで気持ちがいい。
 でもそれでも、欲張りなおれはもっともっとと思ってしまう。
 いつか……この人から欲しがってくれる日はくるのかな。

「そんな、泣きそうな顔するなよ。俺が後輩くんを無理矢理もてあそんでるみたいだろ、この見た目じゃ」
「だって……」
「……そんな、したいのかよ」

 おれがこくりと頷くと、先輩はおれに甘く口付けて指先を止めた。

「いつでも泣き落としが効くとは思うなよ? あと、ソファはもう嫌だからな」
「先輩ッ……大好きです!」
「判った、判ったから」

 身体はまだ全然だけど、心はすっかり開発済み。
 しつこくねだるより引いて甘えられるのに弱いですよね、先輩は。

 卑怯でごめんなさい。でも絶対に、死ぬほど気持ち良くしますから、許してくださいね。




 その日は秘密兵器を用いてついには泣かすまでしつこくしてしまい、怒られて一週間のお預けを言い渡された。
 でもおれはにやけた顔が戻らなかった。
 先輩すっごく可愛かったし、それに……それって一週間経ったらまたしてもいいってことですよね?

 また触らせてくれるなら頑張って待ちますから、たまには甘いご褒美もよろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛され南田くんは、寂しがり屋の甘えたです 〜無自覚甘えたが止まりません〜

葉月
BL
南田優斗 20歳は有名百貨店の男性BA(美容部員)。 女の子顔負けの、可愛い容姿に滑らかな白い肌。 だが、この白い肌、幼少期から日焼けしやすく、毎日のスキンケアは欠かせないものとなっていた。 そんな優斗にはコンプレックスが2つあり、 一つ目はこの可愛らしい容姿。 そして、二つ目は、あるトラウマのせいで、未だかつて彼女がいたことがない。 それが、優斗の悩みだった。 そんな優斗が働く百貨店には優斗と同じく男性BA、長野健(チーフ)がいて……… ある日、長野が仕事から帰る時、優斗は唐突に変な質問をされた。 『南田くんってさ、彼氏いる?』 はたして、優斗の答えは? そこから始まる2人のイチャラブ、ストーリー♡ 無自覚甘えた優斗の、デレが止まりません‼︎ 男性美容部員さんのストですが、私自身は美容部員さんのお仕事に詳しくないんです…… (いつも『綺麗な人達だ〜(//>艸<//)』と眼福させていただいてる…といった状態です…) なので、もし詳しい方から見て、 『え?ここおかしい…』 と、気づかれましたら、教えていただけると直していきますので、嬉しいです! よろしくお願いします(´,,•ω•,,)

ゲームの世界はどこいった?

水場奨
BL
小さな時から夢に見る、ゲームという世界。 そこで僕はあっという間に消される悪役だったはずなのに、気がついたらちゃんと大人になっていた。 あれ?ゲームの世界、どこいった? ムーン様でも公開しています

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

金色の恋と愛とが降ってくる

鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。 引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。 二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に 転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。 初のアルファの後輩は初日に遅刻。 やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。 転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。 オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。 途中主人公がちょっと不憫です。 性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。

【完結】探偵は悪態を吐く

オレンジペコ
BL
俺の理想の彼氏はズバリあいつみたいな奴なんだ。 どうしてなかなかいないんだろう…? by主人公 諦めたいのに諦められない────お前の理想の彼氏ってどんなの? ……え?これって諦める必要なくないか? by親友 ゲイなドS俺様探偵×実は一途な親友。 最初の二話は主人公はこんな性格の奴なんだという紹介的なお話なので、友人は出てきません。 友人の前でだけドSじゃなくなる主人公と、そんな主人公のことが大好きだけどセフレにおさまって悶々としている友人がなんだかんだあってくっつくまでのお話です。 好みの分かれる作品だと思うので、合わない方はそっとブラウザバックをお願いします。 ※このお話は他サイト様にもアップ済みです。

黒衣の魔道士

オレンジペコ
BL
友情裏切りから始まる白魔道士と黒魔道士の価値観の違いによるすれ違いの物語です。 ほのぼのというよりはシリアス寄り。 ※割と早い段階でくっつきますが、ひたすら受けが攻めを煽って暴走させては痛い目に合う…そんな作品だと思います。他の作品とは違ってRはガッツリめ。処女作故に個人的な趣味を詰め込んだ作品となっております。 ※ある意味調教物語なので、行為は段々エスカレートします。それを踏まえた上で何でも大丈夫な方のみお読みください。 ※話の都合上一部NLシーン、一部3Pシーンも含まれます。その他、無理矢理シーンや女装シーン、後半に向かって玩具責め等色々含まれますので、地雷があった場合は速やかにブラウザバックしていただけますよう宜しくお願い致します。 諸々自己防衛してください(>人<;) ※第二部の前半部分が第一部導入部と時系列が被るためちょっと読みにくいですがどうかお許し下さい。 第二部はソレーユのお話で、騎士×皇太子メインとなります。初っ端に死ネタがありますので苦手な方はご注意ください。 ※Pixiv様で第一部(全156話+番外3話)公開済み。b-Love様で第二部(ソレーユ物語全52話+番外20話)まで公開済みです。 こちらに持ってくるにあたり少し見直して手直ししています。 宜しくお願いしますm(_ _)m

凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました!本当にありがとうございました!!書籍化進行中です。  ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは、幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭、ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし、向かった先で待っていたのは……。  不憫展開からの溺愛ハピエン。シリアス中心です。 どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて、最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人。お前だけが私の心を凍らせ、溶かしていく……。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 ◇R18は※回(※微は少々)です。 ◇他サイト掲載済み。アルファポリス版は一部設定変更、適宜改稿しながら投稿します。 🌟Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトルから書いた話です。素敵な表紙はmettaさんが描いてくださいました。本当にありがとうございました!

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

処理中です...