ヒロイン系彼氏

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その後の話

温泉旅行編2(R18

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 部屋に運んでもらう、海の幸たくさんな和食……も、それはいいだろう。
 でもぼくはハンバーグとか焼き肉とか、ローストビーフとか、そう、肉だ。味付けも濃いほうがいい。質より量。一般的な男子高校生なら大体こんな感じだと思う。檜垣くんだって例外ではない。

 ということで夕飯朝食共に、好きなものをチョイスできるバイキングにしておいた。部屋に運んでもらうのではなく、決められた時間にこちらから食堂へ出向く形だ。そちらのほうが気兼ねもしなくていい。

 性欲が食欲に変わる瞬間……。食事を前にしたら、ムラムラモヤモヤした気持ちがすっ飛んだ。身体は正直。
 ぼくのお皿は肉だらけ。檜垣くんもそうだろうと思ったのに、意外にもサラダがたくさん乗っている。

「檜垣くん、こういう日でもきちんと野菜摂るんだ」
「美容のためだな。化粧のノリも悪くなるから」
「女子か」

 化粧のノリが悪くなるって、男子高校生の口から出るとパワーワードでしかないな。
 しかも、こんな普通の……。いや、普通ではないか。だいぶ……かなり、顔がいい。サラダ取って食べてるのも、なんか似合うし。

 ぼくを陥落し終わって女装する必要はもうないんだけど、デートらしくしたい時とかは、たまにしてくる。そろそろクセになっているのではと、コッソリ思ってる。

「でも、たくさん食べる。やっぱり、バイキングはテンション上がるな」
「だろー? まあ、部屋に運んでもらって二人でまったりっていうのも、檜垣くんとならアリかと思ったんだけどさ」
「確かにそれも、捨て難い……けど、こういうほうが、オレたちらしくていいか」
「そうそう。分相応。高校生二人で来て部屋で和食はさすがに背伸びしすぎだよな。バイキングなら好きなの取れるし。野菜も食べろって言われないし」
「オレは言うぞ。酒井、もっと野菜も食べろ」
「えー。今日くらいよくない?」

 檜垣くんは綺麗な箸使いでサラダを口に運びながら、ふふっと笑った。

「そうだな。今日くらい、な」

 はあ……。ほんと、イケメンだな。
 ぼくもサラダ食べたら、少しはこんなふうになれるかな?

 と思いつつ、今度はウィンナーを山盛り取ってくるのだった。




 バイキングとくれば、いつもなら動けないくらい腹一杯にするところだけど、グッとこらえて腹八分。檜垣くんにも食べ過ぎないよう念を押した。

「でもやっぱり、少し食べすぎたかも」
「オレも……」
「少し、売店とか見てこうか?」
「そうだな」

 食べて部屋に戻ってすぐセックスっていうのもアレだし、こんな時間も必要だよな。
 普段できなくて、旅行はそんな欲を満たすべく来ている部分もあるから、多少そればかりになってもしかたないんだけど。

「檜垣くん、お土産買おう、お土産」
「オレ、家族にふりかけ買ってこいって言われた」
「華さんへは?」
「お菓子でいいって。酒井の姉さんは何か言ってた?」
「……まあ、適当に」

 二人の土産話が聞ければそれで充分と言われたのは黙っておこう。
 今日こうして旅行できたのも、姉ちゃんの援護射撃あってこそだ。だからまあ、多少はな。

「酒井は……学校の、友達には?」
「あー。買わないけど」

 実を言えば、旅行するってことも内緒にしてある。
 長期休みならとにかく、普通の土日だ。わざわざ言うことでもないだろう。
 そんなことにお金を使うなら、今度は……春休みに、また旅行の予定でも、立てたいし……。

 でも。こう。檜垣くんにナイショで、おそろいのストラップか何か買って、部屋に戻ってから記念だよとか言って渡すのはありかも……。
 ちょっと少女漫画っぽいシチュエーションじゃないか?

 ふりかけを選ぶ檜垣くんの隣で気づかれないようにキーホルダーのコーナーをチラチラ見る。

 イニシャルキーホルダーはありがちすぎて流石にアレかな。
 もこもこ尻尾のは手触り良さそうだけど、長すぎるか。
 なんか温泉まんじゅうとスライムを足して割った感じの、可愛いマスコットストラップが、買ってほしそうにこちらを見ている。
 よし。あれにしよう。

「檜垣くん。ぼく、先にお菓子のほう見てくる」
「あっ! わかった、オレもすぐ行くから」
「いや。ゆっくり選んで、あとでぼくにもオススメ教えて」
「そうか、わかった!」

 相変わらず素直でチョロイ……。
 檜垣くんがふりかけ選びに真剣になっている隙に、ササッとストラップを購入し、何食わぬ顔でお菓子類のお土産エリアに移動した。
 そこでしばらく真剣に選んでいるフリをしていると、選び終わったらしい檜垣くんが近づいてきた。

「酒井、これとこれ、お前が気に入ると思うんだけど……」

 口実でしかなかったのに、ふりかけを両手に持ってウキウキソワソワしてる。
 こんなふうに選んでもらって、やっぱいいやとか、めちゃくちゃ言いづらい。
 せっかくだからぼくも、家族へのお土産はふりかけにするか。
 ぼくは檜垣くんが持ってきたふりかけのうち、梅味のものを手に取った。

「じゃあこっちのほう、買って帰ろうかな」
「ああ!」

 満足気な顔しやがって。かわいいな、ほんと。

「あとは……。温泉まんじゅうでいいか。定番だし」
「オレはイチゴのミルフィーユかな」
「ガッツリスイーツ系だな。こういうの、旅館にも売ってるんだ。確かに女性は好きそう」

 ふりかけは時間をかけて選んでたのに、こっちはアッサリだし……。

「華さん、フワフワした感じだから、食べてるとこ可愛いだろうな」
「お、オレも自分用に……」

 妬かせたくて言ってみたらまんまと。さすがは檜垣くん。
 予想通りすぎて笑いをこらえるのが大変だ。

「檜垣くんがコレ食べたって、どうもしないよ」
「そうか……」
「だって何を食べてても、可愛いって思っちゃうからさ」
「かっ、家族の分だけ……買ってくる」
「うん。ふふふ。ぼくもふりかけと温泉まんじゅう買ってこっと」

 二度目のお会計なのが、少しだけ気恥ずかしい。
 好きな子にあげるお土産を買うところを友人に見られたくない……売店の人は、きっとそれくらいに考えているだろう。甘酸っぱい青春だ。
 まさか隣の友人へサプライズプレゼントするなんて夢にも思うまい。

 順番に会計を済ませ部屋へ戻ると、既に布団が敷いてあった。

「食事中に敷いてくれたみたいだな」
「そうだな……」
「檜垣くん、そんな不安そうな顔しなくても、きちんと換気はしてったから大丈夫だって」
「え? ああ、そ、そうじゃなく……。やっぱりオレたちは恋人同士には見えてないんだなと思って」
「ああ……」

 布団が離してあるからか。
 ぼくは、くっつけて敷かれていたら、逆にいたたまれない気持ちになるけどな……。
 檜垣くん、寂しそうな顔してるし、本気で言ってるんだろうなコレ。
 換気をしないで行ったら、気をきかせてくれたのかも……って、いやいや、さすがにそれはちょっと。

「秘密の恋人も、悪くないと思うぞ、ぼくは」
「秘密の恋人。うん。そうだな」
「愛し合ってることはぼくら二人だけが知ってればいい、みたいな」
「……悪くない」

 機嫌直った。単純でよかった。
 それじゃあ、そんな素直可愛い檜垣くんに、トドメを刺してやるとしますかね。

「あと、これ。あげる」
「え……」
「せっかく一緒に旅行へ来たし、その記念、みたいな?」

 つぶらな瞳に惑わされて買ってしまったけど、男子高校生が持つにはアレなデザインかもしれない。
 それに……。秘密の恋人悪くないとか言った舌の根も乾かぬうちにお揃いのプレゼントという。
 結局のところ、ぼくもどこかで言いふらしたいと思っているのかもしれない。檜垣くんはぼくの恋人なのだと。

「ありがとう。可愛いな。鞄につける」
「一応、お揃い、だったりするんだけど……」

 檜垣くんは何回かぱちぱちと瞬きして、それからとろけるような笑みを浮かべた。

「嬉しいな。なんだか、オレばかり酒井にしてもらってる気がする」
「これまではぼくのほうが、檜垣くんに色々してもらってたんだから、それが返ってきたと思えばいいだろ」
「でも、オレも……オレも、酒井に何かしたい!」

 もう本当に、充分なくらい色々させちゃってるけどな……。
 これはある程度今日発散させておかないと、学校でとんでもないことをしでかす顔をしている。

 いくらぼくが誰に知られてもいい、むしろ知ってほしいほど檜垣くんを好きだとはいえ、実際にバレるとなると話は別。
 器の小さい男だと笑えばいいさ。

 ということで。さて、何をしてもらおうか。
 夜を前にして、檜垣くんのこの台詞。エロ方面に捉えるのはもう当然のことで。

「……その前に、ちょっとトイレ行ってくる」
「あ! オレも、酒井のあとに……」

 一度始まったら、きっと長くなるもんなぁ。
 食欲も満たされて、中途半端になっていた性欲がジワジワと表面に出てくる。
 でもあともうちょっと我慢。勃てたらオシッコが出にくくなる……。

 無心になりながら用を足し、部屋に戻ると何やら違和感が。

「おかえり。は、早かったな」
「うん……」

 わかった。布団だ。さっきまで離れてた布団が、くっつけてある。
 こんなことするのは当然、檜垣くんしかいない。
 いじらしさに思わず、布団の上をゴロゴロと転がり回りたい衝動に駆られた。

「オレもトイレ……」

 そそくさと横を通り過ぎようとする檜垣くんの腕を掴んで、自分のかわりに転がしてやった。

「さ、酒井!?」
「いや。あまりに可愛いこと、してくれるから」
「それでどうして、人を布団の上に投げ飛ばすんだ」
「それはさすがに鈍すぎないか? 理由なんてひとつしか、ないだろ」
「でもオレは先に、トイレへ……」

 よほど我慢でもしているのか、檜垣くんがぼくを押し退けようとする。
 でもその抵抗は酷く弱く、誘っているようにしか思えなかった。
 そもそも、布団くっつけて待ってた時点で、すでに。

「そうだな。じゃ、見ててあげる」
「……何を?」
「檜垣くんが用を足すとこ」
「は!? む、無理無理無理!」
「なんでもするって言ったのに?」
「なんでもとは言ってない」

 可哀想なくらい狼狽えている。
 冗談だったんだけど……。ここまで拒否されると、逆に見たくなってくる。隠されるほど知りたくなる心理だ。
 それに……だって絶対、やらしいし。

「どうしても、だめ?」
「その……。一応、軽く洗ったりも、するし……」
「ああ。なら、尚更見たいなあ」
「ま、前にも無理だって言っただろ……」
「うん。じゃ、待ってる」
「えっ!?」

 アッサリ引くと、檜垣くんは虚を突かれたような顔で固まった。

「やっぱり見てほしい?」
「い、いや! もう少し食い下がられるかと思ったから」
「檜垣くんの緊張をとこうと、冗談で言っただけだよ」
「そうか。確かに驚いて、緊張はとけたかも。それじゃ、ちょっと行ってくる」
「うん」

 檜垣くんが扉の向こうへ消えるのを見守ってから、布団へパッタリと倒れ込む。

 はあああー……。ほんと、ちょろすぎて心配になる。
 というか、可愛すぎだろ、ほんと。
 布団……隙間なく、みっちりとくっつけてあるし……。

 ぼくは今からここで、檜垣くんと3回目の。

 用を足すとこが見たいなんて言ったけど、一応してもらいたいことも決まってる。
 さっきの冗談も、そのお願いごとを言うための布石だ。

 ソワソワしながら待っていると、そんなに間をおかずに檜垣くんがひょっこり戻ってきた。
 ぼくが寝ているとでも思ったのか、息を殺すように近づいてきて、そっと傍に座った。

「酒井……?」

 かけてくる声も、柔らかめで控えめ。問いかけるようなイントネーション。
 ぼくは起きてるよーと言うかわり、獲物を狩るような勢いで首にしがみつき、檜垣くんを布団の海へとご案内。

「びっ……くりした」
「ふふふ。寝たかと思った?」
「少し」
「ぼくが寝てたらどうした?」
「寂しいけど、疲れてるだろうから起こすこともできなくて、隣でずっと座って寝顔を見てるかもしれない……」
「それくらいなら起こしてくれよ」

 ぼくも自分の不甲斐なさから理不尽に怒るだろうし、檜垣くんは寝不足になるしでいいことがなんにもない。寝てしまわなくてよかった。

 最後までするのはこれが3回目とはいえ、スキンシップはそれなりに数を重ねているから、キスや肌に触れたりすることに躊躇いはない。
 お互いに手を伸ばして、身体をまさぐる。隙間なくくっついていたくて、ぎゅうぎゅう抱きしめた。

 はあ……。浴衣、やっぱりいいな。少し乱れただけでヤバイエロさだ。それに、とてもよく似合ってる。女装されるよりずっと興奮する。

 檜垣くん積極的で、唇ぜんぶ、食べられちゃいそう……。
 これなら、ぼくのささやかな望みを叶えるくらい、なんてことはないだろうな。

「ね、檜垣くん。乗ってほしいんだけど」
「こうか?」

 遠慮がちに、檜垣くんがぼくのお腹あたりに馬乗りになる。
 裾がまくれて白い足が丸見えだ。

「うん。そのままの体勢で、あとは自分から挿れて、ぼくが気持ちよくなるように動いてくれたら」
「き、騎乗位か……」
「さすがに知ってた」
「それくらいは……。男子高校生として、普通の知識だろ」

 少し戸惑っている様子だけど、嫌だとは言わなかった。

「ただ、上手くできるかはわからない」
「やってくれるんだ?」
「酒井が望むなら」

 檜垣くんは恥ずかしそうに、ぼくの上で腰を揺すった。
 挿入してはいないけど、服の上から肌で擦られて気持ちいい。

「でも少女漫画のような甘酸っぱさは欠片もなくなるし、淫乱に見えるかもしれない……」
「現実だからなあ。淫乱な檜垣くん、素直に見てみたい」
「が、頑張る」
「頑張って」
「ああ!」

 いつもは頑張らなくていいよと言うぼくが頑張ってと言ったものだから、檜垣くんは俄然やる気。
 いいお返事と共に、ぼくの上に跨がりながら後ろをほぐし始めた。
 パンツ、穿いてなかったのか……。

 すご……。無修正、エロ。でも手の甲で肝心な部分が見えない。
 見えそうで見えないのもやらしさがあるとは思うけど、せっかくだから見たい。

「少し腰を浮かせて、後ろから指を差し込めない?」
「えっ……。で、でもそれ、丸見えになる……」
「だから、それが見たいんだけど」
「あ。そ、そうか……」

 檜垣くんは恥ずかしそうにゆっくりと腰を浮かせ……ぼくの望み通り、すべてを晒した。
 ペニスは緩く立ち上がり、触ってとでも言うように揺れている。
 なんだか、ねだられてるみたいだ……。

 下からすくい上げるように手のひらで持ち上げると、檜垣くんの身体がビクビクと波打った。

「ッ……ん、うッ……。やめてくれ。酒井のお腹、押し潰しそうになる……」

 こらえているのか、腿が震えている。思わず指先で突きたくなったけど、腹の上にドスンとこられるのは確かに厳しい。
 そんなことで続きが不可能になったら、後悔してもしきれない。

「ん。そう……。あと少しで終わるから、おとなしく待ってて……」

 幼子を諭すような言い方で、檜垣くんが指の動きを再開させる。
 ぼくの上でぼくのを受け入れるために、準備をしている。
 これで手を出せないというのも、ある意味生殺しすぎる。
 いや、頼んだのはぼくだし、やらしくてもう最高なんだけどさ。
 ずっと見ていたいような早く終わってほしいような、複雑な気持ちだ。

 ……やっぱ、終わってほしい。だってこのあとは、ようやく。

「酒井が……。凄い、オレのこと欲しいって顔してる。たまんないな」
「それは君のほうだろ」

 そんなやらしい、顔しておいて。
 でも否定はしない。早く挿れたくて、さっきから張り詰めっぱなし。目の前の光景に興奮して、下手すると暴発してしまいそうなほど。

「ん……。もう、挿れる」
「うん」

 檜垣くんは中から指を引き抜いて、ぼくの浴衣と下着を脱がせ、ソレにコンドームをつけてくれた。そしてゆっくりと、入り口にあてがう。
 快感に包まれるのを今か今かと待っていたんだけど……一向に訪れない。

「……こ、これ、体重で一気に沈み込みそうで怖いんだけど」
「そういうもんだろ? それに、別に檜垣くんが下にいたとしても、一気に押し込むから同じようなものだし」
「鬼だな……。ヒロインみたいに優しく扱ってくれないのか?」
「好きすぎて、そんな余裕ないから。なあ、もう……早く」

 先端だけ入り口でぐりぐりっと刺激されて、焦らされてるみたいだ。
 少し……腰を、突き上げたら、入りそうなのに。

「ごめん、酒井。なんだか上手く、できない……」
「ぬめりが足りないのかも。ローションを足せば」
「ん……。あっ!?」

 檜垣くんがぼくの頭あたりに置いてあるローションを取ろうとし、前のめりになった角度が良かったのか、悪かったのか。
 半分ほどズブっと沈み込んで、鋭い快感が訪れる。

「ッ……入った……。けど、もうちょっと、奥まで……、檜垣くん?」

 初めてでもないのに、檜垣くんは何故か死にそうな顔をしていた。

「く、串刺しになってる。絶対に変なとこ入ってる、これ!」
「平気だから。まだ途中だし、全然いける!」
「無理……無理。怖い……」

 可哀想な感じなんだけど、可愛い。唇を噛み締めながら、首を横に振ってる。

「っあ、この状態で、大きくするな……」

 しかもこの、煽ってるとしか思えない台詞。大きくもなるってもんだ。
 檜垣くんが腰を降ろすまいと踏ん張っているからか、ぬかるんだ中は熱くきゅうきゅうとぼくを締め付ける。息をするのにあわせるように。
 ……もう、そのまま最後までいっちゃったほうが、絶対に楽だと思うんだけど。足的にも。
 だけど檜垣くんは、ぼくのお腹に手をおいて、浅い息を吐きながらこらえている。

 先に我慢できなくなったのは、ぼくのほうだった。

「あ、あう……ッ」

 下から緩く突き上げると檜垣くんは割とアッサリ落ちてきて、柔い肉癖がすべてを包み込んだ。

 ……は。気持ちい。久し振りの、檜垣くんのナカ……。
 何度入ったって、慣れない。自分でするのとも、檜垣くんに口でしてもらうのとかとも、また違ってて。何より、ひとつになってるってことに、興奮する。

 檜垣くんは声も出ないみたいで、身体を震わせている。
 痛かったんだったら、どうしよ。檜垣くんに任せたけど、恥ずかしくて慣らし足りないままだったとか……普通に、ありそうだし。

「よ、よかった……。酒井の、ちゃんと入った。オレの、中……」

 あっ。大丈夫そう。というか、可愛い。確認するように、お腹をさすさすしているのはエロイ。
 相変わらず見事なまでに、煽ってくるな、檜垣くんは。無自覚だから怖い。自覚のある煽りは、八割方外してくるくせに。

 はー……と、まるで温泉に浸かった瞬間のような声を出しながら、へにゃっと笑った。

「酒井も、気持ちい?」
「……うん」

 ぼくも気持ちいいかって、訊いてきた。
 それって……君も、気持ちいいってことだよな?
 はああ……。ヤバイ。信じられないくらい、ドキドキする。

 好きだなんて思い知ってるのに、もっと君にはまっていくよ、檜垣くん。
 まあ、実際ハメてるしな。今まさに。

「この体勢、檜垣くんの擦ってあげやすいな」
「や……。うっ。そ、それはまだナシ……」

 少し触っただけで、中が締まって快感が走る。

「どうして? 気持ちいいだろ?」
「いいけど。せっかくこうしてるんだ。オレが酒井を気持ちよくさせてやりたいんだよ」
「檜垣くんを触ると、ぼくも気持ちいいよ」
「で、でも酒井、淫乱なオレの姿が見たいって言ったし! 頑張れって言ったし!」
「ああ、うん……」

 今のでだいぶ、淫乱な雰囲気は飛んだかな……。
 しかし、やる気は見せたものの、上手く動けはしないらしい。ぼくの上で緩く腰を揺すったり、そろりと引き抜いて身体を下ろしたりしてみるものの、中途半端すぎてもどかしい。

「ん……。う……ッ。はあ……ッ。さ、酒井、き、気持ちいいか?」
「い、いいよ」

 でもこれ、あれだ。本当に……可愛いな。
 気持ちいいはいいんだけど、笑いそうになるのが……まずい。

「ぼくを気持ちよくさせようとするより、檜垣くんが気持ちいいように動いてくれたほうが嬉しいかも」
「えっ。そ……そうなのか?」
「ほら、今のままだと……可愛いんだけど、必死すぎて淫乱さが消えてる……みたいな? ぼくに淫乱な姿を見せるために頑張るのに、本末転倒だろ?」
「なるほど……!」

 さすがのチョロさ。
 さて。それでは……アハーンとか言い出さないのを祈りつつ、頑張る檜垣くんを見せてもらおうじゃないか。
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