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パーティーのあとで
桃白・好きになってね
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家族と過ごさないクリスマスは、今年が初めてだ。
サンタは小学生で卒業しているから、プレゼントが届かなかったことに驚いたりしない。
……まあ、幻影サンタを殺すハメになったのは、驚いたけど。
今回はまたずいぶんと嫌なタイミングで襲ってきたものだと思う。クリパを邪魔するためだとしか思えないもの。
もしかして、敵はただ地球を破壊するだけではなく、司令官サンに恨みでもあるのでは。顔がイイとそれだけ敵も作るからね。身を持って知ってる。
普段はネコをかぶって愛されキャラを演じてるボクでも、妬まれて嫌がらせをされたこともある。
ボクとしては、少し、敵に感謝もしている。だってそのおかげで、尻……司令官サンと出会うことができたから。
イロイロあったけど、無事にパーティーも終わって、ボクは愛しの司令官サンを連れ込むことに成功した。
ボクの部屋で、戦隊モノの上映会してほしいな。って言ったらアッサリ釣れた。本当、ちょろすぎて心配になる。お菓子か何かをちらつかされたら、変態にもついていきそう。
「このシーンがですね。裏切ったように見せかけて、その実! 熱くて」
「うんうん」
身振り手振りで嬉しそうに説明するのが可愛い。
ボクの目の前で形のいい尻がふりふりと揺れる……。
「ピンク! 私のお尻じゃなくて、画面を見てください、画面を!」
「だって、司令官サンがいつボクの贈ったパンツを穿いてくれるのかなと思うと、落ち着かなくって」
「戦隊モノが見たいと言ったのはピンクなのに」
「見てるよぉ」
楽しそうに映像を見る、司令官サンのことを見てる。
好きな人の楽しそうな姿って、見てて幸せになれるじゃない?
だからボクは、戦隊モノが嫌いじゃない。
ただ。ひとつ、気になってることがある。
司令官サンの性格的に、当然と言えば当然なのもしれないけど……。
はしゃぐその瞳に映るのは、レッドばかり……なんだ。
そりゃ、あれは画面の中のレッドであって、赤城サンじゃないのはわかってるよ。それでもボクたちは、現実でヒーローをしているわけだから、やっぱり気になってしまう。
どのシリーズでも、司令官サンはレッドのことが好きらしい。
「ピンクが凄く活躍するシリーズはないの?」
「ありますよ」
「あるの!?」
だったら、それを先に見せてくれても。
それを見たほうが、ボクのやる気が出るだろうとか、そういうの全然考えないんだな。らしいといえば、らしいけど。
その作品なら、司令官サンもレッドではなく、ピンクを見てくれるかな。
「このフラワーレンジャーです。お花がテーマで、とっても綺麗なんですよ。映像も素晴らしくて」
「花って、なんか意外だね。男くさくないというか」
「だからこそ、リーダーがピンクなのでしょうね」
でも男の子にはウケが悪そうだな。
「アレッ!? これ、レッドが女性なの!?」
「そうなんですよー! リーダーであるピンクの補佐的な役割なんですけど、彼女がまたかっこよくて……。ピンクを庇って死にかけるところなんて、最高です。貴方には貴方の役目があるでしょう? 私の役目は貴方を守ることなのよ、って。もう胸が熱くって」
「へ、へー……」
画面の中ではメンバーがちょうど変身するところだった。
花が舞っていて、戦隊モノというよりは女の子が好んで見るような、魔法少女系アニメに近い。妹がよく見てたっけ。
女性でも、結局……。司令官サンの目にはレッドしか、映ってない。
たいぶ、その。気づいてても気づかないフリをしてきたというか、見ないフリをしてきたんだけど。
「司令官サンって、もしかして、赤城サンのこと、好き?」
「もちろん! レッドは初めて見つけた私のヒーローですから」
これはわかってないやつ。
とはいえ、赤城サンと司令官サンの出会いは気になる。
ボクが来るまでは2人だけだったんだもんね。
だからかな。2人の間には何か特別なものがあるような気がするんだ。
「それまでは声をかけても断られ、断られ、また断られ続けて……」
「そ、そうなんだ。ボクならイッパツで仲間になるのにな。先に出会ったのがボクだったら、司令官サンはボクをレッドにしてくれた?」
身を乗り出すように映像を観ていた司令官サンが、椅子にストンと腰をおろした。
「いいえ。だってピンクは、レッドというイメージではありませんから」
レッドが男というイメージは、シリーズをよく知らないボクでも持っている。いや、知らないからこそかもしれない。
女性がレッドという作品があるってことは、かなりイメージの違うレッドもいるんだろう。なのに司令官サンが今まで見せてくれたレッドのイメージには、ブレがなかった。
熱血で、正義で、情に熱いカンジ。司令官サンは、そういうレッドが好きなんだ。
赤城サンはレッドとしてはちょっとオタクすぎるけど、かなりあてはまっている。
やっぱり、赤城サンは司令官サンのタイプってコト?
「ボクじゃ、司令官サンのヒーローにはなれない?」
「何言ってるんですか。ピンクだって私のヒーローですよ」
「尻フェチでも?」
「そこは直してほしいと思ってます……」
直るようなものじゃないんだよなぁ。
「司令官サンの見せてくれた作品の中には、レッドとピンクが付き合ってるモノがあったけどさ、ボクと赤城サンがそういう関係になったら、司令官サンはどう思う?」
「それは……」
司令官サンの瞳が揺れる。戸惑うように視線を逸らし、俯いてから顔を上げ、何かを決心したような顔でボクを見た。
「犯罪……ですよね?」
そうじゃない。いや、それもそうなんだけど。
「それくらいは私でも知ってます」
「うん。そうだね……」
どこか得意気にしてる。ナニコレカワイイ。
実際ボクと赤城サンじゃどう考えても絵面が犯罪的だし、そういう答えが返ってくるのも無理ないか。
でもつまりはコレ、司令官サンにとってボクが対象外って言われてるようなものだよね。付き合ったら犯罪って思ってるならさ。
「でも愛し合ってて、エッチなコトしないなら犯罪にはならないんだよ? だから司令官サンとボクなら大丈夫!」
「え、ええ。そもそも付き合いませんし……」
ナチュラルに胸を抉ってきた。
わかってるよ。愛し合ってるも何も、ボクが一方的に好きなだけだし。
「じゃあ、赤城サンが誰かと付き合ったらどうする? ほら、あの烏丸サンとか」
「どうもしませんよ」
口ではどうとでも言える。明らかに少し、不機嫌になった。
「私がしたかったのはヒーローごっこであって、恋愛ごっこじゃありませんから」
「……恋愛ごっこじゃないよ。ホントに好きなんだよ」
「ピンクの場合、お尻がでしょ」
「お尻も、だもん!」
テレビではいつの間にか、エンディングテーマらしきものが流れていた。
司令官サンはハァと溜息をついて、リモコンで画面を消した。
「見たいと言ってくれて、嬉しかったのに……」
「あ……。ご、ゴメン」
餌でしかなかった。それはホントに申し訳なかった。
でも司令官サンか好きなものをボクも知りたいという気持ちに嘘はない。
ただ今日はせっかくのクリスマスだし、もう少し2人きりでイチャイチャしてたかった。
そうだよ。司令官サンは今日を、赤城サンとじゃなくてボクと過ごしてくれてる。今はそれで満足しなきゃ。
「司令官サンにとってレッドがあまりに特別そうだったから、ヤキモチ妬いちゃったんだ」
「それは……。あくまで、キャラとしてですよ。ブルーだってピンクのことを神かのように崇めていますが、恋人になりたいと迫ったことはないでしょう?」
「あー……それは、確かに。でも、青山サンはヘンタイだと思うけどね」
司令官サンは首を傾げた。青山サンはボクといる時、挙動不審で大体ハァハァしてるのに、アレを見ても普通の人に見えてるのか。それとも、全然興味がないからか。
「はー……。ホントに、脈がなさすぎてツライ」
「脈がなかったら死んじゃいますよ?」
「それ、ギャグで言ってる?」
また首を傾げている。本気だ。やっぱり星が違うと感性が違うのか。これが種族の差。絶対にオトすぞって思ってたけど、これは相当に苦労しそう。
せめてボクがもう少し大きかったら、違う反応してくれたのかな。エッチなこともさせてくれた?
ボクと司令官サンとの仲は、ヒーロースーツを馴染ませる時にお尻を触らせてくれた、そこまでだ。でもボクはもう一歩進みたい。
ボクを子ども扱いしていて対象外だというなら、いっそそこを逆手にとって……。
「司令官サン、一緒にお風呂入らない?」
「な、なんですか、急に。入りませんよ」
「プールみたいな感じで、2人でキャッキャしたいだけだよー! せっかくクリスマスだしね。ねっ?」
「ダメです」
「子どもの可愛らしいお願いなのに」
殊更可愛らしく映るように、唇を尖らせて上目遣いをする。
ボクは自分の顔が他人にどんな影響を与えるかよくわかってる。
それが地球人でない司令官サンにどこまで通じてるかはわかんないけど。
でもボクのことをカワイイカワイイって言ってくれるし、美意識はそう変わらないはずだ。
「ダメですってば」
「あっ。司令官サン、もしかして恥ずかしいんだー?」
からかうように言ってみると、司令官サンはカアッと頬を染めた。
ウソ、ホントに? これ思ったよりも、ボクのこと意識してもらえてるんじゃあ……。
それにしても恥ずかしがる司令官サン、可愛すぎなんですけど!
「……断られたのに、ずいぶん嬉しそうですね」
「えー。ふふ。ちょっとね」
「からかっただけですか?」
「ホンキで入りたいけど? 絶対に楽しいもん!」
「だってピンク、絶対にお尻ばっかり見てくるでしょ」
「そんなことないよぉ」
お尻以外もガッツリ見るよ。それは、お尻は大好きだけど、好きな人のことは全身くまなく見たい。普段隠れてるところは特に。
ボクはそういうお年頃。
「では、この戦いが終わったら……」
「なんかそれ、死亡フラグみたいなんだけど」
「あっ。ふふ、本当ですね」
「でもボクは死ぬ気はないからね。だから約束! 絶対だよ!」
思ったよりも意識されてるのがわかった上、一緒にお風呂の約束までとりつけることができて、大満足。
お風呂上がりにはボクの贈ったパンツを穿いてもらおう。
ああー、楽しみだなー。
「司令官サン、ボク、早く大きくなるよ。その時はレッドよりピンクのこと、好きになってね?」
司令官サンは少し驚いたように目を見開いて、困ったような顔で笑った。
今日のところは……。好きな人とクリスマスを一緒に過ごせただけで満足しておこう。中学生らしく。
おやすみのキスくらいは、許してもらうとして。
色々あったクリスマスの夜。
他のみんなも、幸せな夜を過ごしているといいな。
サンタは小学生で卒業しているから、プレゼントが届かなかったことに驚いたりしない。
……まあ、幻影サンタを殺すハメになったのは、驚いたけど。
今回はまたずいぶんと嫌なタイミングで襲ってきたものだと思う。クリパを邪魔するためだとしか思えないもの。
もしかして、敵はただ地球を破壊するだけではなく、司令官サンに恨みでもあるのでは。顔がイイとそれだけ敵も作るからね。身を持って知ってる。
普段はネコをかぶって愛されキャラを演じてるボクでも、妬まれて嫌がらせをされたこともある。
ボクとしては、少し、敵に感謝もしている。だってそのおかげで、尻……司令官サンと出会うことができたから。
イロイロあったけど、無事にパーティーも終わって、ボクは愛しの司令官サンを連れ込むことに成功した。
ボクの部屋で、戦隊モノの上映会してほしいな。って言ったらアッサリ釣れた。本当、ちょろすぎて心配になる。お菓子か何かをちらつかされたら、変態にもついていきそう。
「このシーンがですね。裏切ったように見せかけて、その実! 熱くて」
「うんうん」
身振り手振りで嬉しそうに説明するのが可愛い。
ボクの目の前で形のいい尻がふりふりと揺れる……。
「ピンク! 私のお尻じゃなくて、画面を見てください、画面を!」
「だって、司令官サンがいつボクの贈ったパンツを穿いてくれるのかなと思うと、落ち着かなくって」
「戦隊モノが見たいと言ったのはピンクなのに」
「見てるよぉ」
楽しそうに映像を見る、司令官サンのことを見てる。
好きな人の楽しそうな姿って、見てて幸せになれるじゃない?
だからボクは、戦隊モノが嫌いじゃない。
ただ。ひとつ、気になってることがある。
司令官サンの性格的に、当然と言えば当然なのもしれないけど……。
はしゃぐその瞳に映るのは、レッドばかり……なんだ。
そりゃ、あれは画面の中のレッドであって、赤城サンじゃないのはわかってるよ。それでもボクたちは、現実でヒーローをしているわけだから、やっぱり気になってしまう。
どのシリーズでも、司令官サンはレッドのことが好きらしい。
「ピンクが凄く活躍するシリーズはないの?」
「ありますよ」
「あるの!?」
だったら、それを先に見せてくれても。
それを見たほうが、ボクのやる気が出るだろうとか、そういうの全然考えないんだな。らしいといえば、らしいけど。
その作品なら、司令官サンもレッドではなく、ピンクを見てくれるかな。
「このフラワーレンジャーです。お花がテーマで、とっても綺麗なんですよ。映像も素晴らしくて」
「花って、なんか意外だね。男くさくないというか」
「だからこそ、リーダーがピンクなのでしょうね」
でも男の子にはウケが悪そうだな。
「アレッ!? これ、レッドが女性なの!?」
「そうなんですよー! リーダーであるピンクの補佐的な役割なんですけど、彼女がまたかっこよくて……。ピンクを庇って死にかけるところなんて、最高です。貴方には貴方の役目があるでしょう? 私の役目は貴方を守ることなのよ、って。もう胸が熱くって」
「へ、へー……」
画面の中ではメンバーがちょうど変身するところだった。
花が舞っていて、戦隊モノというよりは女の子が好んで見るような、魔法少女系アニメに近い。妹がよく見てたっけ。
女性でも、結局……。司令官サンの目にはレッドしか、映ってない。
たいぶ、その。気づいてても気づかないフリをしてきたというか、見ないフリをしてきたんだけど。
「司令官サンって、もしかして、赤城サンのこと、好き?」
「もちろん! レッドは初めて見つけた私のヒーローですから」
これはわかってないやつ。
とはいえ、赤城サンと司令官サンの出会いは気になる。
ボクが来るまでは2人だけだったんだもんね。
だからかな。2人の間には何か特別なものがあるような気がするんだ。
「それまでは声をかけても断られ、断られ、また断られ続けて……」
「そ、そうなんだ。ボクならイッパツで仲間になるのにな。先に出会ったのがボクだったら、司令官サンはボクをレッドにしてくれた?」
身を乗り出すように映像を観ていた司令官サンが、椅子にストンと腰をおろした。
「いいえ。だってピンクは、レッドというイメージではありませんから」
レッドが男というイメージは、シリーズをよく知らないボクでも持っている。いや、知らないからこそかもしれない。
女性がレッドという作品があるってことは、かなりイメージの違うレッドもいるんだろう。なのに司令官サンが今まで見せてくれたレッドのイメージには、ブレがなかった。
熱血で、正義で、情に熱いカンジ。司令官サンは、そういうレッドが好きなんだ。
赤城サンはレッドとしてはちょっとオタクすぎるけど、かなりあてはまっている。
やっぱり、赤城サンは司令官サンのタイプってコト?
「ボクじゃ、司令官サンのヒーローにはなれない?」
「何言ってるんですか。ピンクだって私のヒーローですよ」
「尻フェチでも?」
「そこは直してほしいと思ってます……」
直るようなものじゃないんだよなぁ。
「司令官サンの見せてくれた作品の中には、レッドとピンクが付き合ってるモノがあったけどさ、ボクと赤城サンがそういう関係になったら、司令官サンはどう思う?」
「それは……」
司令官サンの瞳が揺れる。戸惑うように視線を逸らし、俯いてから顔を上げ、何かを決心したような顔でボクを見た。
「犯罪……ですよね?」
そうじゃない。いや、それもそうなんだけど。
「それくらいは私でも知ってます」
「うん。そうだね……」
どこか得意気にしてる。ナニコレカワイイ。
実際ボクと赤城サンじゃどう考えても絵面が犯罪的だし、そういう答えが返ってくるのも無理ないか。
でもつまりはコレ、司令官サンにとってボクが対象外って言われてるようなものだよね。付き合ったら犯罪って思ってるならさ。
「でも愛し合ってて、エッチなコトしないなら犯罪にはならないんだよ? だから司令官サンとボクなら大丈夫!」
「え、ええ。そもそも付き合いませんし……」
ナチュラルに胸を抉ってきた。
わかってるよ。愛し合ってるも何も、ボクが一方的に好きなだけだし。
「じゃあ、赤城サンが誰かと付き合ったらどうする? ほら、あの烏丸サンとか」
「どうもしませんよ」
口ではどうとでも言える。明らかに少し、不機嫌になった。
「私がしたかったのはヒーローごっこであって、恋愛ごっこじゃありませんから」
「……恋愛ごっこじゃないよ。ホントに好きなんだよ」
「ピンクの場合、お尻がでしょ」
「お尻も、だもん!」
テレビではいつの間にか、エンディングテーマらしきものが流れていた。
司令官サンはハァと溜息をついて、リモコンで画面を消した。
「見たいと言ってくれて、嬉しかったのに……」
「あ……。ご、ゴメン」
餌でしかなかった。それはホントに申し訳なかった。
でも司令官サンか好きなものをボクも知りたいという気持ちに嘘はない。
ただ今日はせっかくのクリスマスだし、もう少し2人きりでイチャイチャしてたかった。
そうだよ。司令官サンは今日を、赤城サンとじゃなくてボクと過ごしてくれてる。今はそれで満足しなきゃ。
「司令官サンにとってレッドがあまりに特別そうだったから、ヤキモチ妬いちゃったんだ」
「それは……。あくまで、キャラとしてですよ。ブルーだってピンクのことを神かのように崇めていますが、恋人になりたいと迫ったことはないでしょう?」
「あー……それは、確かに。でも、青山サンはヘンタイだと思うけどね」
司令官サンは首を傾げた。青山サンはボクといる時、挙動不審で大体ハァハァしてるのに、アレを見ても普通の人に見えてるのか。それとも、全然興味がないからか。
「はー……。ホントに、脈がなさすぎてツライ」
「脈がなかったら死んじゃいますよ?」
「それ、ギャグで言ってる?」
また首を傾げている。本気だ。やっぱり星が違うと感性が違うのか。これが種族の差。絶対にオトすぞって思ってたけど、これは相当に苦労しそう。
せめてボクがもう少し大きかったら、違う反応してくれたのかな。エッチなこともさせてくれた?
ボクと司令官サンとの仲は、ヒーロースーツを馴染ませる時にお尻を触らせてくれた、そこまでだ。でもボクはもう一歩進みたい。
ボクを子ども扱いしていて対象外だというなら、いっそそこを逆手にとって……。
「司令官サン、一緒にお風呂入らない?」
「な、なんですか、急に。入りませんよ」
「プールみたいな感じで、2人でキャッキャしたいだけだよー! せっかくクリスマスだしね。ねっ?」
「ダメです」
「子どもの可愛らしいお願いなのに」
殊更可愛らしく映るように、唇を尖らせて上目遣いをする。
ボクは自分の顔が他人にどんな影響を与えるかよくわかってる。
それが地球人でない司令官サンにどこまで通じてるかはわかんないけど。
でもボクのことをカワイイカワイイって言ってくれるし、美意識はそう変わらないはずだ。
「ダメですってば」
「あっ。司令官サン、もしかして恥ずかしいんだー?」
からかうように言ってみると、司令官サンはカアッと頬を染めた。
ウソ、ホントに? これ思ったよりも、ボクのこと意識してもらえてるんじゃあ……。
それにしても恥ずかしがる司令官サン、可愛すぎなんですけど!
「……断られたのに、ずいぶん嬉しそうですね」
「えー。ふふ。ちょっとね」
「からかっただけですか?」
「ホンキで入りたいけど? 絶対に楽しいもん!」
「だってピンク、絶対にお尻ばっかり見てくるでしょ」
「そんなことないよぉ」
お尻以外もガッツリ見るよ。それは、お尻は大好きだけど、好きな人のことは全身くまなく見たい。普段隠れてるところは特に。
ボクはそういうお年頃。
「では、この戦いが終わったら……」
「なんかそれ、死亡フラグみたいなんだけど」
「あっ。ふふ、本当ですね」
「でもボクは死ぬ気はないからね。だから約束! 絶対だよ!」
思ったよりも意識されてるのがわかった上、一緒にお風呂の約束までとりつけることができて、大満足。
お風呂上がりにはボクの贈ったパンツを穿いてもらおう。
ああー、楽しみだなー。
「司令官サン、ボク、早く大きくなるよ。その時はレッドよりピンクのこと、好きになってね?」
司令官サンは少し驚いたように目を見開いて、困ったような顔で笑った。
今日のところは……。好きな人とクリスマスを一緒に過ごせただけで満足しておこう。中学生らしく。
おやすみのキスくらいは、許してもらうとして。
色々あったクリスマスの夜。
他のみんなも、幸せな夜を過ごしているといいな。
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