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くちのなか
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食事を終えて、ルルが食器をお湯につけてから僕の隣に座った。
「では、小さくなります」
「牙にさわるだけだし、そのままでいいよ」
「え……」
嘘っ。何これ、恥じらってる? あのルルが……!
や、やばい、ショタな姿じゃないけど、なんか凄い萌えるというかドキドキするというか。
もちろん僕は、純粋な好奇心で牙にさわりたいと言ったわけじゃない。そこにはあからさますぎる劣情があった。人の粘膜に触れるのはとてもイヤラシイことなのだと理解している。
「こういう時は幼い姿のほうがよろしいのでは?」
「僕がショタコンじゃないって言ったのはルルのほうだろ。何か不都合でもある?」
「いえ……。では、どうぞ」
すぐに元の冷静なルルになってしまった。
でも。うん。冷静でいられないのは僕のほうだよね!
口内を触るなら、自然唇にも触れることになる。相手の唇や歯、口内に触れたりする機会なんて歯科医でもなければありえない。あとはセックスの時くらい。僕は童貞だけど、とりあえずエロゲーやエロ漫画ではそんな感じだ。
ルルが無防備に口を開けて赤い粘膜を僕に晒す。普段大口を開けるようなタイプではないから、僕が探りやすいように開いてくれてるってだけで、もう興奮する。
「さ、さ、触るよ……」
指の甲に触れた唇は冷たいのに、内部に侵入した指先は熱かった。
じっとりと湿ってる。なんか気持ちいい気がする……。ルルは悪魔だけど、人の口の中もこんな感じなのかな。
歯を指先で磨くように擦ってみると滑らかでつるつるすべすべしてて、かなり触り心地がいい。もっと尖ってると思ったのに、牙の先は割りと丸みがある。そして赤い舌。ルルはいつもこの舌で、僕のを……。
触らせてって言ったのは牙だったけど、たまらず紅い塊に触れていた。
「ッ……」
ルルがびくりとみじろいで、僕の手を甘噛みする。いつぞやのように、ガブッではなくて、カプッて感じに。少し痛痒いくらい。多分傷はついていないだろう。
「ん、ん……」
苦しそうな声が聞こえたけど、もう片方の牙にも触れる。そのまま歯茎へ指先を滑らせると、ルルの吐息に艶めいたものが混じった気がした。なんか、めちゃくちゃやらしい。
そっ、そうか。口の中もセーカンタイだっていうもんな。
どうしよう、もっと触りたい。触ってもらったことなら数あれど、外見ショタに手を出すのは躊躇われてこんなふうに触ったことないし。おっきいルルに関しては手を出そうとも思わなかったし。……今までは。
それが今は口の中をどう弄ったら感じさせられるのかとか考えてる。
こう、本能の赴くままに指先で舌を挟んで……! とかまあ、できるわけないよね。童貞だからね。
「ありがとう」
僕はお礼を言っておとなしく手を引いた。唾液の分泌は人より少ないのか滴ることはないけど、突っ込んでいた部分はてらりと濡れている。
さすがに唾液を舐めたら引かれるかな。
「いえ……」
ルルが軽く咳をしながら口を閉じた。おさまりが悪いのか、もごもごさせている。
「満足しましたか?」
してないって言ったら、もっと触らせてくれるのかな。とは思ったけど、素直に頷いておいた。
「とりあえず手を洗ってください」
漂っていたいやらしい空気はルルの有無を言わさない感じの物言いに霧散した。
さっきはちょっと恥じらってる感じで可愛かったのに。
僕は素直に手を洗ってから、ルルの元へ戻った。
「洗ってきた」
「はい」
さっきと同じ椅子に座ってルルと向き合う。背筋がぴんと伸びていてとても綺麗だ。サムライのような佇まい。
水色の髪をしたサムライなんていねーよという突っ込みは重々承知だけど、僕の歴史知識は戦国TAWARAとかのゲームやアニメ程度なのでそういうふうに映ってしまう。
牙を触らせてもらったのに、ありがとうと言っただけっていうのもなんだから感想をのべたいと思って目の前に座った。
そして今、言葉が出て来なくてお見合い状態になっている。こうなるとコミュ症の僕からはとても話しかけられない。
そもそも『温かくてぬるぬるしてて、ルルが声をあげるとちょっと興奮したよ』とかセクハラっぽすぎて言えない。見合ってないで、さっさと部屋へ戻ればよかった……。
「牙を触ってみて、どうでしたか?」
よかった。ルルから話を振ってくれた。これで、きちんと答えられる。
さっきの感想はさすがにそのまま言えないから。えっと。
「い、意外と、先は鋭利じゃなかった」
「楽しかったですか?」
「うん」
よく考えれば、していた行為が変態気味だから何をどう言おうとアレな感じだ。
「僕の幸せメーターかなり上がった?」
「……ええ、かなり」
安すぎるな、僕。
「気も済んだし、部屋に行って一緒にごろごろしよう」
「結局体調が良くなっても、横になられるんですね」
「まあ……」
そう言われると身も蓋もないんだけど。
「ぐーたらする生活が僕は一番幸せだから」
「では、またしばらくは寝てゲームして寝ての繰り返しでしょうか」
「し、しばらくはそうなるかな。外はバケモノがいっぱいいるし、小学校にはもう行く気になれないし」
ただでさえ外が怖いのに、あんなのトラウマレベルだ。ルルが言うには僕が怖がりすぎるからああなったらしいけど。でもあんなホラーゲームも真っ青な事態に巻き込まれたら余計に外へ出るのが怖くなるよね、普通は。つまり、悪循環。街中じゃなければ大丈夫そうな気もするんだけどな……。
行ってみたい場所といえば期間が限定されるけど、コミケとか。ただあの人混みに揉まれて生きて帰れる自信はまったくない。
「ではまた、何かありましたらなんなりとお申し付けください。それまではご主人様の望むまま、お側におりましょう」
なんなりと。なんて言われるとエロイことしか浮かんでこなくなるんだけど。
どうやら大人のルルにも欲情できるようになってしまったみたいだし。今の姿のルルになら、アレコレしても罪悪感覚えずに済むしなあ……。
ルルは仕事だから仕方なくしてくれるだけという事実を考えると申し訳ないような気になるけど、僕はその代償を渡すんだから料金が命という風俗だと思えばいい。
唯一問題があるとすれば。
「じゃ、あの……今日も膝枕、してて」
僕が一線を越えるセリフは中々言い出せないヘタレってことくらいで。
うん、わかってる。ここ一番大事なとこだよね。
実際今までにあったエッチな体験も僕がおっ勃ててしまいルルが申し出てくれるというパターンばかり。
最近は慣れてきて、ようやく手でシテって言えるようになった。
「かしこまりました」
「あ、待って、やっぱり」
「はい」
よし。なんかちょっとエロイお願いをするんだ。さっき口の中触らせてもらったの楽しかったし、今度は身体とか。同じ男の身体だけど、ルルのなら楽しいはず。
……そうだ。何も男でなくてもいいのでは? 僕はルルなら大丈夫なんだから女の姿になってもらえば!
「た、たまには女の子のルルと色々したいな……」
「構いませんが……。男よりはまだマシ。なるべく近寄らないで。くらいの反応をしてたのに、大丈夫なのでしょうか」
「そ、そんな失礼な態度、とって……ましたよね。ごめんなさい」
姿形が変わるだけで態度もホイホイ変えていたから、ルルが躊躇うのも無理はない。
「でも、今は平気だよ。ルルはルルなんだってわかってるし。その、見た目だけじゃなく、ちゃんと好きだから」
「わかりました」
大きいルルに対して好きだって言ったのはコレが初めてなのに薄い反応……。
まあ、僕からしてみれば見た目は全然違うけど、ルルからしてみればいつも好き好き言ってた奴が今日もまたほざいてんなくらいにしか思わないのかもしれない。
「……裸エプロンなどのほうがよろしいですか?」
「ふ、普通でいいよ」
ちょっとよろめいたけど、刺激が強すぎそう。
「では」
目の前でルルが女性の姿に変わる。
相変わらず、抜群なプロポーション。男なら誰でも惚れてしまいそうな美人。
でも。僕はヘビに睨まれた蛙みたいに固まってしまった。汗がドッと吹き出てくる。
「あ、なんか……。ダメ、ダメかも。ルルはルルなのに。なんでだろ。ごめん、戻ってくれる?」
「はい」
ルルが男の姿に戻ってくれて、やっと息がつけた。
「ふ、ふうー。どうしてかなあ。ショタじゃないなら、女性の姿のほうが平気だったのに」
「慣れではないでしょうか。最近はずっと、こちらの姿でいるか、子供の姿でいるかでしたから」
「それだ!」
確かに今のルルに欲情しだしたのも、慣れて怖くなくなってきてからだ。
「ご主人様が望むのであれば、慣れるためにしばらく女性の姿でいますか?」
「え? うーん……そうだな」
童貞を捨てるなら女性相手のほうがいいに決まってる。もちろんベストはロリショタだけど、現実じゃ罪悪感が勝ってどうにもならないし。
でも、どうしてだろう。男のルル相手のほうが、興奮するような気がする……?
それならショタになれるまでの時間が長くなるというデメリットをおしてまで、女性の姿になっていてもらう理由はない。
「いいや、そのままで」
「はい」
簡素に返すとルルも短く返してきた。
なんだ。割りとどうでも良さそうだな……。
「……では。女性姿の私とデートをするというのはいかがでしょう?」
そうでもなかった。また僕にとって難易度の高い提案を。だから緊張するんだってば。
でも、モデルみたいな女ルルを連れて歩いたら、確かにスッゴイ気分がいいかも。
小さいルルと歩いたら逮捕されそうだし、男のルルと並んだら僕が引き立て役で卑屈な気分にしかなれない。当然どちらとも、デートには見えっこない。
デート。美人なルルを見せびらかしてイイ気分になることを除いても、普通にしてみたくはある。
ただ、外は怖い。また襲われたらと思うと、女ルルが目の前に現れた時の比じゃないくらい冷や汗が出る。
「一瞬ぐらりとしたけどさあ、外はバケモノだらけじゃん。怖いよ。やだ」
「この前は外を歩く恐怖が形となって現れただけですし、私がすぐ隣にいれば大丈夫では? 小学校へ行った時も、バケモノなどいなかったでしょう?」
「それは! ロリショタがあんなバケモノになるはずないから! 天使だから!」
「つまりは、気のもちようひとつということです」
「う、うーん」
確かにそう……。そうなのかも?
「じゃあ、今度ね」
「はい」
「とりあえず今日は、膝枕で」
結局振り出しに戻ってしまった。
女性の柔らかい膝より男の膝を所望するなんて、僕もたいがい終わってる。
デートは、本当……。そのうち、一度。ルルと手を繋いでお日さまの下を歩くのは、悪くないかも……。
「ルルは、ぼ、僕と……デートしたい?」
「いえ。特には」
「…………」
この案はなかったことにしよう。
おうちで二人っきり、ゆっくりできるだけで僕には充分です。
「では、小さくなります」
「牙にさわるだけだし、そのままでいいよ」
「え……」
嘘っ。何これ、恥じらってる? あのルルが……!
や、やばい、ショタな姿じゃないけど、なんか凄い萌えるというかドキドキするというか。
もちろん僕は、純粋な好奇心で牙にさわりたいと言ったわけじゃない。そこにはあからさますぎる劣情があった。人の粘膜に触れるのはとてもイヤラシイことなのだと理解している。
「こういう時は幼い姿のほうがよろしいのでは?」
「僕がショタコンじゃないって言ったのはルルのほうだろ。何か不都合でもある?」
「いえ……。では、どうぞ」
すぐに元の冷静なルルになってしまった。
でも。うん。冷静でいられないのは僕のほうだよね!
口内を触るなら、自然唇にも触れることになる。相手の唇や歯、口内に触れたりする機会なんて歯科医でもなければありえない。あとはセックスの時くらい。僕は童貞だけど、とりあえずエロゲーやエロ漫画ではそんな感じだ。
ルルが無防備に口を開けて赤い粘膜を僕に晒す。普段大口を開けるようなタイプではないから、僕が探りやすいように開いてくれてるってだけで、もう興奮する。
「さ、さ、触るよ……」
指の甲に触れた唇は冷たいのに、内部に侵入した指先は熱かった。
じっとりと湿ってる。なんか気持ちいい気がする……。ルルは悪魔だけど、人の口の中もこんな感じなのかな。
歯を指先で磨くように擦ってみると滑らかでつるつるすべすべしてて、かなり触り心地がいい。もっと尖ってると思ったのに、牙の先は割りと丸みがある。そして赤い舌。ルルはいつもこの舌で、僕のを……。
触らせてって言ったのは牙だったけど、たまらず紅い塊に触れていた。
「ッ……」
ルルがびくりとみじろいで、僕の手を甘噛みする。いつぞやのように、ガブッではなくて、カプッて感じに。少し痛痒いくらい。多分傷はついていないだろう。
「ん、ん……」
苦しそうな声が聞こえたけど、もう片方の牙にも触れる。そのまま歯茎へ指先を滑らせると、ルルの吐息に艶めいたものが混じった気がした。なんか、めちゃくちゃやらしい。
そっ、そうか。口の中もセーカンタイだっていうもんな。
どうしよう、もっと触りたい。触ってもらったことなら数あれど、外見ショタに手を出すのは躊躇われてこんなふうに触ったことないし。おっきいルルに関しては手を出そうとも思わなかったし。……今までは。
それが今は口の中をどう弄ったら感じさせられるのかとか考えてる。
こう、本能の赴くままに指先で舌を挟んで……! とかまあ、できるわけないよね。童貞だからね。
「ありがとう」
僕はお礼を言っておとなしく手を引いた。唾液の分泌は人より少ないのか滴ることはないけど、突っ込んでいた部分はてらりと濡れている。
さすがに唾液を舐めたら引かれるかな。
「いえ……」
ルルが軽く咳をしながら口を閉じた。おさまりが悪いのか、もごもごさせている。
「満足しましたか?」
してないって言ったら、もっと触らせてくれるのかな。とは思ったけど、素直に頷いておいた。
「とりあえず手を洗ってください」
漂っていたいやらしい空気はルルの有無を言わさない感じの物言いに霧散した。
さっきはちょっと恥じらってる感じで可愛かったのに。
僕は素直に手を洗ってから、ルルの元へ戻った。
「洗ってきた」
「はい」
さっきと同じ椅子に座ってルルと向き合う。背筋がぴんと伸びていてとても綺麗だ。サムライのような佇まい。
水色の髪をしたサムライなんていねーよという突っ込みは重々承知だけど、僕の歴史知識は戦国TAWARAとかのゲームやアニメ程度なのでそういうふうに映ってしまう。
牙を触らせてもらったのに、ありがとうと言っただけっていうのもなんだから感想をのべたいと思って目の前に座った。
そして今、言葉が出て来なくてお見合い状態になっている。こうなるとコミュ症の僕からはとても話しかけられない。
そもそも『温かくてぬるぬるしてて、ルルが声をあげるとちょっと興奮したよ』とかセクハラっぽすぎて言えない。見合ってないで、さっさと部屋へ戻ればよかった……。
「牙を触ってみて、どうでしたか?」
よかった。ルルから話を振ってくれた。これで、きちんと答えられる。
さっきの感想はさすがにそのまま言えないから。えっと。
「い、意外と、先は鋭利じゃなかった」
「楽しかったですか?」
「うん」
よく考えれば、していた行為が変態気味だから何をどう言おうとアレな感じだ。
「僕の幸せメーターかなり上がった?」
「……ええ、かなり」
安すぎるな、僕。
「気も済んだし、部屋に行って一緒にごろごろしよう」
「結局体調が良くなっても、横になられるんですね」
「まあ……」
そう言われると身も蓋もないんだけど。
「ぐーたらする生活が僕は一番幸せだから」
「では、またしばらくは寝てゲームして寝ての繰り返しでしょうか」
「し、しばらくはそうなるかな。外はバケモノがいっぱいいるし、小学校にはもう行く気になれないし」
ただでさえ外が怖いのに、あんなのトラウマレベルだ。ルルが言うには僕が怖がりすぎるからああなったらしいけど。でもあんなホラーゲームも真っ青な事態に巻き込まれたら余計に外へ出るのが怖くなるよね、普通は。つまり、悪循環。街中じゃなければ大丈夫そうな気もするんだけどな……。
行ってみたい場所といえば期間が限定されるけど、コミケとか。ただあの人混みに揉まれて生きて帰れる自信はまったくない。
「ではまた、何かありましたらなんなりとお申し付けください。それまではご主人様の望むまま、お側におりましょう」
なんなりと。なんて言われるとエロイことしか浮かんでこなくなるんだけど。
どうやら大人のルルにも欲情できるようになってしまったみたいだし。今の姿のルルになら、アレコレしても罪悪感覚えずに済むしなあ……。
ルルは仕事だから仕方なくしてくれるだけという事実を考えると申し訳ないような気になるけど、僕はその代償を渡すんだから料金が命という風俗だと思えばいい。
唯一問題があるとすれば。
「じゃ、あの……今日も膝枕、してて」
僕が一線を越えるセリフは中々言い出せないヘタレってことくらいで。
うん、わかってる。ここ一番大事なとこだよね。
実際今までにあったエッチな体験も僕がおっ勃ててしまいルルが申し出てくれるというパターンばかり。
最近は慣れてきて、ようやく手でシテって言えるようになった。
「かしこまりました」
「あ、待って、やっぱり」
「はい」
よし。なんかちょっとエロイお願いをするんだ。さっき口の中触らせてもらったの楽しかったし、今度は身体とか。同じ男の身体だけど、ルルのなら楽しいはず。
……そうだ。何も男でなくてもいいのでは? 僕はルルなら大丈夫なんだから女の姿になってもらえば!
「た、たまには女の子のルルと色々したいな……」
「構いませんが……。男よりはまだマシ。なるべく近寄らないで。くらいの反応をしてたのに、大丈夫なのでしょうか」
「そ、そんな失礼な態度、とって……ましたよね。ごめんなさい」
姿形が変わるだけで態度もホイホイ変えていたから、ルルが躊躇うのも無理はない。
「でも、今は平気だよ。ルルはルルなんだってわかってるし。その、見た目だけじゃなく、ちゃんと好きだから」
「わかりました」
大きいルルに対して好きだって言ったのはコレが初めてなのに薄い反応……。
まあ、僕からしてみれば見た目は全然違うけど、ルルからしてみればいつも好き好き言ってた奴が今日もまたほざいてんなくらいにしか思わないのかもしれない。
「……裸エプロンなどのほうがよろしいですか?」
「ふ、普通でいいよ」
ちょっとよろめいたけど、刺激が強すぎそう。
「では」
目の前でルルが女性の姿に変わる。
相変わらず、抜群なプロポーション。男なら誰でも惚れてしまいそうな美人。
でも。僕はヘビに睨まれた蛙みたいに固まってしまった。汗がドッと吹き出てくる。
「あ、なんか……。ダメ、ダメかも。ルルはルルなのに。なんでだろ。ごめん、戻ってくれる?」
「はい」
ルルが男の姿に戻ってくれて、やっと息がつけた。
「ふ、ふうー。どうしてかなあ。ショタじゃないなら、女性の姿のほうが平気だったのに」
「慣れではないでしょうか。最近はずっと、こちらの姿でいるか、子供の姿でいるかでしたから」
「それだ!」
確かに今のルルに欲情しだしたのも、慣れて怖くなくなってきてからだ。
「ご主人様が望むのであれば、慣れるためにしばらく女性の姿でいますか?」
「え? うーん……そうだな」
童貞を捨てるなら女性相手のほうがいいに決まってる。もちろんベストはロリショタだけど、現実じゃ罪悪感が勝ってどうにもならないし。
でも、どうしてだろう。男のルル相手のほうが、興奮するような気がする……?
それならショタになれるまでの時間が長くなるというデメリットをおしてまで、女性の姿になっていてもらう理由はない。
「いいや、そのままで」
「はい」
簡素に返すとルルも短く返してきた。
なんだ。割りとどうでも良さそうだな……。
「……では。女性姿の私とデートをするというのはいかがでしょう?」
そうでもなかった。また僕にとって難易度の高い提案を。だから緊張するんだってば。
でも、モデルみたいな女ルルを連れて歩いたら、確かにスッゴイ気分がいいかも。
小さいルルと歩いたら逮捕されそうだし、男のルルと並んだら僕が引き立て役で卑屈な気分にしかなれない。当然どちらとも、デートには見えっこない。
デート。美人なルルを見せびらかしてイイ気分になることを除いても、普通にしてみたくはある。
ただ、外は怖い。また襲われたらと思うと、女ルルが目の前に現れた時の比じゃないくらい冷や汗が出る。
「一瞬ぐらりとしたけどさあ、外はバケモノだらけじゃん。怖いよ。やだ」
「この前は外を歩く恐怖が形となって現れただけですし、私がすぐ隣にいれば大丈夫では? 小学校へ行った時も、バケモノなどいなかったでしょう?」
「それは! ロリショタがあんなバケモノになるはずないから! 天使だから!」
「つまりは、気のもちようひとつということです」
「う、うーん」
確かにそう……。そうなのかも?
「じゃあ、今度ね」
「はい」
「とりあえず今日は、膝枕で」
結局振り出しに戻ってしまった。
女性の柔らかい膝より男の膝を所望するなんて、僕もたいがい終わってる。
デートは、本当……。そのうち、一度。ルルと手を繋いでお日さまの下を歩くのは、悪くないかも……。
「ルルは、ぼ、僕と……デートしたい?」
「いえ。特には」
「…………」
この案はなかったことにしよう。
おうちで二人っきり、ゆっくりできるだけで僕には充分です。
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