使用人の我儘

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秋尋様の性教育(R15

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 そしてついに、待ちに待ったゴールデンウィークがやってきた。
 秋尋様の勉強の成果が明らかになる時。
 もう何度も夢に見るくらい、毎晩のように妄想をした。

「こ、ここを……。こう、触るんだぞ……朝香」

 そんなことを言いながら、ベッドの上で俺のを弄ってくれたりとか。

「本当は男女でやることだけれど、少しだけ……してみるか?」

 そう言ってまたがってくれたりだとか。
 実際には男同士でどうやるのか、ぼんやりとしかわかってないけど、妄想の中でだけは繋がれる。

 まあ。そんな期待で胸と股間をはちきれんばかりにしていたわけですよ。中学生男子らしく。
 まさか本当に……。本当に、授業みたいに教えてくれるとは思わないじゃない……? ホワイトボードに、教科書まで用意してさ……。
 間違ってはない。むしろ正しい。年長としては、これが正解。

 俺はフカフカのソファへ、これでもかというほど身体を沈ませた。

「きちんとメモを取れ、朝香」
「はい……」
「なんだ。嬉しくないのか? 頑張って勉強したのに……」
「秋尋様が俺にしてくださることで、嬉しくないことなどありません!」
「しかし、始める前は今よりもワクワクして見えたぞ」

 それはそれはもう、未だかつてないほどワクワクしてましたからぁ!
 この勉強だって、秋尋様の口からなんだかやらしい単語が飛び出すのに興奮して、最高といえば最高。それに俺のために性教育の勉強をしてくれたとか、涙で前が見えなくなるレベルに嬉しい。
 ただ、期待が大きすぎただけなんだ。えっちな方向に。
 
「あの。せっ、先生!」
「ん? 質問か? 発言を許可する」

 先生呼びが心地よかったのか、手を挙げた俺に少し弾んだ声で発言を許可してくれた。

「実技は……ないんでしょうか」
「何を言っている。僕とお前で子づくりできるはずがないだろう」

 秋尋様と俺で子づくり。衝撃が大きすぎる字面だ。
 もちろんできることなら、したい。

「マスターべージョンのほうですけど……」
「そんなの、あとでひとりで試してみろ」

 正論すぎてグウの音も出ないよね。
 でも。ここで諦めていいのか? いや。ダメだ。黄金の始まりの日を、自分の手で勝ち取るんだ。

「俺も秋尋様もしたことないから、ひとりでは上手くできないかもしれませんし……」
「ば、馬鹿。こういうのは人に見せるものではないし。は……恥ずかしいだろう」

 秋尋様が可愛すぎて、もう勃ってきた……。
 俺がモジモジしているのがわかった秋尋様は、顔を見事に引つらせた。

「なんでもう、そんなになっているんだ、お前……」
「こ、こういう話してたら、興奮するでしょ。秋尋様が恥ずかしいなら俺が一人でするんで、見ててください」

 ムサイ男ならアレだけど、相手は可愛らしい俺。他人のオナニーを見る機会なんでそうはないし、絶対に興味を持ってくれると思ったのに、秋尋様は勢いよく首を横に振った。

「見ない! 変態か、お前は」

 本当に変態かも。だって、そう言われてますます、身体がマズイ感じになってしまった。

「こういうのもきっと、勉強になりますよ」
「だ、だが……」

 あと少しだ。落とせる。
 俺は縋るような視線を秋尋様に送って、深々とお辞儀をした。

「お願いです、秋尋様……」

 諦めの色がこもったような溜息が、上から聞こえてきた。

「……わかった。見ててやる」

 触ってやる、ではないのが残念だけど、秋尋様は間近で見ようとでも思ったのか、俺の隣にちょんと腰掛けた。
 こんな……匂いのわかる距離で、本人をオカズに抜くとか、ご褒美すぎる。

 はあ……。凄い。パンツ、もうぐしょぐしょだ。もっと見えたほうがいいのかな。
 俺はズボンを下着ごと膝までおろして、いつもするようにソレに手を添えた。
 視線がソコに集中する。俺の、あんまり大きくないけど、秋尋様はこんなにヌルヌルになってる俺のちんちんを、どう思ってるんだろう……。
 見られてるだけで、気持ちいい。視線で舐め上げられているみたいだ。
 ぞくぞくと背を走る快感に押されるように扱こうとすると、秋尋様が俺の額をペシッと叩いた。

「痛っ! な、何をなさるんですか!」

 突然訪れたスキンシップに、うっかりイッてしまいそうになった。

「お前、僕に嘘をついたな?」

 そんなの、重ねに重ねている。いちばんは、俺が貴方を愛していること。
 一瞬ギクリとしたけれど、流れ的にこれは……。

「いくらなんでも手慣れすぎている。初めてだとか言っておいて。白々しい」

 やっぱりそれか。迂闊だった。下半身に血が集まりすぎて、そこまで頭が回ってなかった。
 恋情がバレてなくてホッとしたけど、これも充分なピンチだ。何しろ嘘をついて秋尋様に触ったり、教えを乞うたりした。そして秋尋様は勉強をして、こんな場まで設けてくれたっていうのに。さすがに、馬鹿にしていると捉えられてもおかしくない。

「あの。違う。違うんです! 友達同士で触り合ったりとか、普通にするって聞いて、俺も秋尋様としたかったんです! なので、実地で! 教えてほしくて!」
「だから……。僕が教える必要など、ないのだろう」

 気まずそうにはしてるけど、思ったよりは怒ってなさそうで、血の気の引きかけていたソレが形を取り戻していく。
 秋尋様は、俺の前でキュッと膝を抱えた。ズボンの裾からちらりと見えるおみあしが眩しい。ますます硬くなってきた。

「……その。ひとりでも、したことがない、というのは、僕の年齢では、やはりおかしいのか? 小さなお前ですら、しているし」

 小さいは余計なんですが。しかも今、ちらっと下半身まで見ましたね。確かにソコも小さいですけど。でも、これでも今は大きくなってるんですけど。

 俺もあまり、世間一般での普通を知ってるわけじゃない。それでも秋尋様が遅いというのはわかる。
 知らないところではコッソリしてるんだろうなあとか、見てみたいなあとか、そういう妄想をオカズにしたことだって、何度もある。
 性の匂いがしないなとは思ってたから『初めての快感に咽び泣く秋尋様』というパターンの妄想もあった。

 ……俺のオカズリストに関しては置いておくとして。

「人によるとは思いますが、これだけは確実に言えます」
「な、なんだ」
「秋尋様は損をしていると!」
「そ、損だと?」
「はい。凄く気持ちがいいのです。この前、俺が少しだけ触った時……どうでしたか?」
「……怖かった」
 
 素直な秋尋様、可愛い。やっぱりあの時、慣れない感覚が怖かったんだなあ。でもそれを俺に言っちゃうんだ。いつもならそんなこと口にしないのに。可愛いなぁ……。

「この気持ちよさを秋尋様にも味わってほしくて、こんな騙すような形になってしまったのです。申し訳ありません」

 これで、ついた嘘への言い訳としては、なんとかなるかな……?
 ハラハラしながら秋尋様の表情を窺うと、熱に浮かされたように瞳を潤ませていた。
 いける。これはいけるのでは……。

「秋尋様……」

 俺はそっと、秋尋様の手を包み込むように握った。
 
「朝香……」
「この前、あれから一人でなさらなかったんですか? 勉強してくださっていた時も?」
 
 秋尋様がゆっくりと頷く。俺より大人だし、俺より大きいのに、まるで迷子の子どもみたいに見えた。
 このまま、下からすくい上げるようにキスしてしまいたい。
 さすがにそれはしないから……少し、身体に触れさせていただくくらいなら、かまいませんよね?

「んッ……。な、どこを触っている」
「言ったでしょう。秋尋様にも味わってほしいと」

 柔らかいズボン越し指先で形を確認するようになぞる。少しも反応してない。

「いや待て。これは違うだろう。ひ、ひとりでするって、言わな……」
「秋尋様はひとりでせずともよいのです。その唇で俺に命じてくだされば、何回でも気持ちよくしてさしあげます」
「ば、馬鹿。やっぱりお前、僕を友人だと思ってないんだろう。普通は、そんなこと……言わない」

 元々、純粋な友人というのは、無理がある話。愛してるなんて言葉では足りないほど貴方が愛しいし、不純すぎる想いも抱えている。そして所有物でありたいと願ってしまう。

「貴方に尽くすことが俺の喜びなのです」
「お前、そう言えば全てが解決すると思うなよ」

 さすがにちょっと無理があったか。
 秋尋様は警戒する猫みたいに視線でこちらを威嚇している。

「それに……。触り合いがしたいって言ってたのに、これじゃ、僕が触られるだけだし……」

 話が思わぬ方向に転がってきた。そこを気にする秋尋様、可愛い。俺に触りたいって思ってくれてるわけじゃないだろうけど。
 それに俺のほうも、現実の秋尋様にはそんなことはさせられないという想いがある。
 むしろ、触りたい。とろとろにしたい。俺の手じゃないとイケなくなるようにして、毎回おねだりしてほしい……!

「ですが、秋尋様。ご自身のもしたことがないのでしょう?」
「うっ。そ、それは……。さ、触ろうとしたことくらいなら、僕だってある……」

 自分のを触ろうとする秋尋様を頭の中で想像するだけで、もうヤバイ。
 はあ。早く触りたいなあ。
 気持ちがはやってソコに置いたままの手を軽く動かすと、手首を掴まれた。まだダメか。残念。

「では途中でやめてしまわれたのですね。人に触ってもらうほうが気持ちいいし、怖くもないかもしれませんよ」

 秋尋様が俺をジッと見る。下心が表に出すぎたか。
 でも秋尋様に尽くしたい尽くしたいと飽きられるほど言っている俺が、気持ちいいことを知ってほしいというのは、何もおかし
いことじゃない。うん。……多分。

「確かに……そうかもな。お前に、してもらうほうが……」

 勝利のファンファーレが頭の中に響いた。
 そのままガバッと押し倒して全身舐めたくなる気持ちを、必死で押し殺す。

「では命令してください」
「い、言うのか!? むしろ、お前が教えたがってるのに!?」

 ごもっともです……。まあ、それは単に俺の理想というか、テンション上げるためみたいなところがあるというか。ぶっちゃけて聞きたいだけなんだけど。

「儀式的なものというか……」
「大体、命令してとねだるのがもうおかしいだろう……。だが、まあ……。それがお前の願いなら、言ってやらなくもない」

 そう素直ではないことを口にしながら、掴んだままの俺の手首を遠ざける動きから近づけるものに変えた。手のひらがしっかりと、秋尋様のそこに触れる。身体が震える感触が伝わってきた。

「僕に触れ、朝香」

 満点ですよ。満点。秋尋様。何、この誘い方。コレも勉強でもなさったんです!?
 しかもなんだかんだで俺の願いを叶えようと思って言ってくれたってことも重要。どこまで俺を虜にさせれば気が済むんですか。

「あっ……」
「まだ柔らかいままですね」

 ふよふよした秋尋様の感触、気持ちいい。
 そのまま怖がらせないように優しく揉んでいると、少しずつ硬くなってきた。

「秋尋様……。ズボンとパンツを下ろしてもよろしいですか?」
「だ、ダメだ。その……手を、入れて、できないか?」

 凄いことを言われているような気がする。
 秋尋様のパンツに手を突っ込んでいい日がくるなんて夢のようだ。本当に夢かもしれない。

「わかりました」

 秋尋様が恥ずかしがって、顔を手で覆う。可愛すぎて目眩がした。
 下着の中に手を滑り込ませれば、もうぬるりとした感触がある。
 先端のほうに指を滑らせ、ぬめりを擦りつけるように往復させる。俺の手の中で少しずつ芯を持ち始めるソレが愛しくてたまらない。舐めたい。飲みたい。
 でもやっぱり、勃ちが悪いな。男に触られてるせいか、それとも初めてだからか。……俺が下手とか……。

「ッあぁ、朝香……なんか、変だ」
 
 少し上擦った声を出しながら、秋尋様が手を伸ばして俺のシャツをギュッと掴む。何この可愛い行動。秋尋様大好き……大好き。どうしよう、泣きそう。

「気持ち悪くはないですか?」
「……悪かったら、やめさせてる」
 
 秋尋様は熱い息を吐きながら震える声でそう言ってくれた。
 そうだ。せっかくなんだ。気持ちよくさせることも重要だけど、初めて秋尋様が射精なさる顔を、しっかりと目に焼きつけておかないと。あとで何度でもリピートできるように。

「あ、あまり見ないでくれ、恥ずかしい……」
「でも見ないと、イイのかわかりませんし」
「やっ。ん、んん……。イイ、から……」
「気持ちいいですか?」
「気持ち、い……。ッ……う、や、やあ……」

 お腹の底がゾワゾワする。いつもと違う秋尋様の高い声。舐めたのか唇が湿っていて、それを自分の唇で塞ぎたいと思った。
 でも……。塞いじゃったら、この甘い声が聞こえなくなるし、これでいいんだ。

「だめ、だめだ、もう……本当に。恥ずかしいとかじゃなくて、も……っ」
「いいですよ。俺の手でイッてください」
「っ……」
 
 ちょうどいい位置にあったせいかもしれない。秋尋様は俺の頭を抱え込んで、ぎゅうっと抱きしめた。
 目の前に秋尋様の綺麗な鎖骨が見えて、汗ばむ肌を間近で感じて。
 好きな人の、こういう時の匂いは、鮮烈だった。
 
「あっ……ああっ」
「……ッ」
 
 秋尋様が俺の手に熱を吐き出すのと同時、俺もイッしまった。
 ……少しも、触ってないのに。強いていえば、布が擦れる感触くらいで。

 手の中が、秋尋様の精液でヌルヌルする。初めてだからか、かなり濃くてねっとりしてる。
 なんとかバレずに舐めることはできないかな……。

「ば、馬鹿。そんなものジッと見るな」

 秋尋様が真っ赤になって、自分の服でゴシゴシと拭いてしまった。
 ああ……。上等な服と貴重な精液が……。この服、なんとかして持って帰れないかな……。できればパンツも……。

「秋尋様。それで、どうでした? 怖かったですか?」
「お、お前なんか、怖いわけがないだろう」

 そこじゃなかったんだけど、俺のことが怖くなかったら良かった。
 凄い雄の顔でもしてたらどうしようかと、心配してたから。

「秋尋様のこと、気持ちよくできたみたいで嬉しいです!」
「ああ……。これは確かに、お前が損をしてると言ったのもわかる」
「また必要な時は、いつでも言ってください!」
「ひ、必要ない! 次は……じ、自分でできる」
「でも人にシテもらったほうが気持ちいいと思いますし」
「人に……。そういえば、お前はいいのか」
「あっ! お、俺なら大丈夫です。秋尋様のをしながら、自分でしてましたから……」

 まさか触りもせずに出たとか言えない。
 秋尋様が感心したように、器用なんだなとか呟いてて、いたたまれなかった。
 まあ、もうなんか、何度でも勃ちそうなんだけど。この匂いと秋尋様のやらしい表情で。

「秋尋様! 性教育、ありがとうございました!」
「なんだか僕がしてもらったみたいになったが……」
「そんなことありません。俺はただ適当にしていただけで、よくわかってなかったので……。充分勉強になりました」
「そ、そうか。なら良かった……」

 いつか、子づくりの練習も実技でお願いしますね! と明るく言える勇気は、今の俺にはまだなかった。

 ……俺が抱かれる側なら上手いこと言いくるめてなんとかなんないかな。秋尋様、案外ちょろいし……。そんなところも、可愛いんですけどね。たまんないくらい。
 とりあえず、次は自分でできるって言ってるけど、まずはそこから崩していかないと。

 今、触れたばかりなのに、もう貴方に触れたくて心が疼く。
 我慢できないのは俺のほう。
 本当はもっと、とろかすみたいに全身舐めて、快感に震える姿を見たい。深いところで繋がりたい。できれば、心も一緒に。

 この重い愛を、俺はどこまでごまかし続けることができるだろう。

「しかし、お前。こんなことまで尽くしたいとか、本当に変わってるな」

 ……案外いつまでも、気づかれないままかもしれないな。
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