1 / 8
1話「普通の生活」
しおりを挟む
七限目の授業の後、今週当番である教室の掃除を終えて雨谷しぐれはホッと一息ついた。
教室にはグラウンドの見える窓辺からオレンジ色の少しまぶしい夕暮れ空が広がっており、あたたかな光がカーテンのように差し込んでいる。
教室にある机は六列あり、しぐれの机は窓辺から最も遠い廊下側の列の最後尾にあった。
廊下からはまだ誰かしらの声がこだまのように次々と聞こえてくるが、この教室にはもう自分以外誰もいない。
鍵閉めの当番は今日はしぐれのようでいくつもの鍵がまとめられた鍵束が、机の上にある横長のカバンの上に雑に置いてある。
とうのしぐれは机に腰を掛け、スマホを片手にぼんやりとしている。
緩やかなウェーブ感のある割に綺麗に纏まったショートヘア。窓側にいたのなら気が付かないであろうくらいの若干青みがかった色をしている。ツンと尖った鼻に負けないくらい鋭く光る紺色の瞳、眉を潜めているから表情は相変わらず不愛想。背は低く黒板を消すのならおそらく苦戦を強いられると言うことは簡単に推測できる。
そんなしぐれのスマホにはウサギのアイコンの誰かからの連絡が来ている。
『放課後はカフェ集合!』
その文字が一言あった。
それに対してしぐれは『今日はパス』と返信しようとした。送信ボタンを押すぎりぎりのところでその一歩先を行くように『パスはもう使えないよ』と着てしまった。
カフェに誘われて一週間目、そのどれもパスを通してきた。しかしそれもそろそろ逃げるのも限界のようだった。
しぐれはため息を零して『今行く』とだけ打ち込み、カバンを背負った。その拍子に鍵束が床に落ちた。
高校から出て自転車置き場に向かった。朝来たときは渋滞のように混んでいた自転車も今になれば祭りの後みたいにまばらで少し寂しい。
なんとなくしぐれはこの雰囲気が好きなのである。だからこそ授業後は少しだけ居残り、時間を稼ぐ。
自転車に乗ってしばらく進むこと一五分でカフェが見えた。
途中五つもある信号を乗り越えていかなくてはならないから普通は二十分くらいかかっても割と仕方がない。今回は運が良かったようで一つも信号には引っ掛からなかった。
しかし、しぐれにとっては全然運がいいことではないのだ。なにせここまで学校の近くになると大抵の学生は流れるようにこのカフェに吸い込まれていく。そうなるとカフェの中は学校と変わらないくらい騒がしくなるのだ。
別に騒がしいことが嫌いなわけではない。しかし、せめて学校終わりくらいは静かな場所にいたいという些細な願望なのである。だからこそしぐれはカフェに行くことを渋っていた。
とは言え今日は行くしかない。
しぐれはやはりため息を一つこぼして入り口の扉を開けた。
木造中心のザ・お洒落なカフェゆえに内装は、やはりと言うべきかキラキラしている。机も椅子もカウンターですら木造で出来ており、そしてそれらを邪魔しすぎない程度に観葉植物が飾られている。壁に掛けられた大きな絵には何が描いてあるのか絵心のないしぐれには皆目見当がつかない。
入ってすぐに店員とは違う視線を感じた。
奥にひっそりと佇む漫画の棚、そのすぐ隣にわさわさとした観葉植物の並びを通りこした先にあるテーブル席。そこで大きく手を振っている一人の女の子を視野に捕らえた。
しぐれはまたため息をして向かう。
「おっそ。マジでおっそ。え、掃除長ない? 残業ですかい?」
その女の子は灰色っぽい色の艶のある綺麗な長い髪を靡かせ、丸みを帯びた鼻に穏やかな瞳でこちらにそう悪戯っぽく語りかけてきた。
「そう。サービス残業。私は優等生だから」
しぐれはカバンを背中からぶら下げて少し気だるげな表情をし大股で歩み寄り、女の子の隣ではなく正面側の席に座った。
「だれかと違ってね」
「——っだから、この前は本当に忘れてたんだって! 掃除当番をする気はあったんだけど、テストのせいでうっかりしてたの!」
「あんたのとこの一人が私んとこ来て、『あいつ逃げたから呼び戻してくれない?』って言われたが?」
「逃げてないって!。どんだけ私人望ないんよ。——とりあえず、お疲れさま。なんか奢るよ? どう?」
「……じゃあなんかおすすめのカフェオレ」
しぐれはさらりと話題をすり替えられてしまったことに気づいていたがわざわざ指摘してあげる気にもならなかった。余計な体力は使うべきではない。
「はい了解——あ、食べ物は自分で買ってね~」
「いらないから」
「え、ダイエット?」
「——さぁね」
とりあえずしぐれはスマホを取り出して弄り始めた。
そんなしぐれに対して特に気にする素振りも見せずに灰色っぽい髪色の女の子が口を開く。彼女も彼女でしぐれのことを見て話しているというわけでもないように見える。
それでもしぐれは彼女の話に頷いたり、首を振ったりして反応している。これが二人の会話の普通なのだろう。
多くの生徒がいるにぎやかな空間が苦手なしぐれだったが特に気にすることもなく店員さんが注文を運びに来るまでの間、灰色っぽい髪色の女の子のする他愛もないありがちな話を聞いている。
「最近は治安いいよね。前はどこに行っても怪人がいたのに」
「うん……」
しぐれは頷いてはいるものの、どうにも聞き流しているように感じるほど素っ気なく興味なさげに返ししている。
「ほら、——魔法少女の活躍もよく耳にするし」
灰色っぽい髪色の女の子はしぐれの表情を観察しながら、少し試すように言った。
しかし、相変わらずしぐれは不愛想な顔のまま「ね……」と相槌を打つ。
「ほら、今をトキメク魔法少女『ナッツ』とかさ。その影響がでかいのかねぇ」
「そうなんじゃない?」
「魔法少女『ナッツ』。最近ここらへんで活動している新人魔法少女。魔力量も魔法技術も才能があるのだけれど、高飛車な性格が少し傷だったり……。かつての『レイニー』には遠く及ばないけれど、それに近い才能があるとかないとか」
「へぇーすごいね」
「……本当に思ってる?」
「——ほんと」
「あ、そうだ。そういえば最近の仕入れたちょっとした怪談話あるんだけど聞く? 聞くよね」
「怪談?」
「そうそう。かの有名な引退したはずの魔法使い『ミセス』の亡霊を見たっていう噂」
「そんなのありえないわ」
しぐれは途端に若干口調が強くなった。
「魔力が尽きた『ミセス』はもう魔法を使うことが出来ないのよ。見間違いかデマに決まっているわ」
「あ——ごめん。まぁそりゃそうだよね」
すると灰色っぽい髪色の女の子は少し申し訳なさそうに言うと目を伏せた。
そんなこんなで数分が経ちようやくカフェオレが到着した。
だがどうにもすぐれの表情はこわばっていた。しぐれはカフェオレと言えば質素なミルクとコーヒーが混ざった飲み物だと考えていたのだが、目の前に運ばれた物は明らかに飲み物と言うよりもパフェだった。
生クリームがソフトクリームのようにどしりと構えており、可愛らしくサクランボなんかを乗せている。しかし見た目が可愛らしくともその実態は全く可愛くないことをしぐれは見た瞬間に理解していた。
絶句した表情をしてしぐれは言った。
「これ……あんた頼んだの?」
「うん。今日までのパスの滞納を考えればこれくらいが妥当かなって」
「妥当なわけないじゃん。何考えてんのよ」
「まぁいいじゃんダイエットのし過ぎは体に毒よ」
確かにし過ぎは毒かもしれない。しかししぐれにしてみればこの生クリームたっぷりのカフェオレの方が毒なのではないか、と感じるのだった。
「まぁまぁ騙されたと思って食ってみーよ」
「はぁ……じゃあ一口だけ」
しぐれは渋々とスプーンを手に取り、生クリームを口に運んだ。その足取りは意外と端的だった。
「ほら食べたかったんでしょ? ……どう?」
「…………別に」
そう言うとしぐれはスプーンを置き、再びスマホに視線をもどしたのだった。
「ふーん」
そんな気だるげな雰囲気を見せるしぐれに対して灰色っぽい髪色の女の子はどこか何とも言えない顔を浮かべる。しかしすぐに笑顔になり気楽そうにスプーンを口にする。
「そういえばこの前のテストどうだった?」
「——特に」
「てことは赤点?」
「悪いけど赤点の取り方なんて知らないわ」
「え、じゃあ教えてあげようか? ——手始めに今度のテスト期間は私んちに集合ね」
「パスするわ」
「何よーもう」
冗談混じった会話を交わしたのだが相変わらずしぐれのポーカーフェイスは依然と変わらない。
灰色っぽい髪色の女の子はそんなしぐれをじっと見ていた。
すると、ハッと何か思いついたように眼をパッと光らせる。そしてテーブルをドン、と鳴らし顔を急接近させ言い出す。
——思いもよらぬ一言を。
「染髪に行かん?」
その言葉で不愛想だったしぐれの表情は驚きに侵食されたかのように眼を見開いてポカーンとした間抜けな顔に変化していた。
「は? 染髪って……髪染めに行くってこと?」
「うんそうそう。気分転換っていうか、イメチェンってやつぅ!」
「——さすがにそれはパス」
「いいじゃん行こ行こ!」
灰色っぽい髪色をした女の子は気持ちに体が動かされると言わんばかりに立ち上がり、しぐれの袖口を引っ張り始めた。
「え、ちょっとまだ食べて——」
露骨に嫌悪を示すしぐれのことなど気にも留めない様子だ。
一向に諦めない女の子にとうとうしぐれは抵抗を辞めて引っ張られるように連れていかれた。食べ残しのカフェオレを残して。
教室にはグラウンドの見える窓辺からオレンジ色の少しまぶしい夕暮れ空が広がっており、あたたかな光がカーテンのように差し込んでいる。
教室にある机は六列あり、しぐれの机は窓辺から最も遠い廊下側の列の最後尾にあった。
廊下からはまだ誰かしらの声がこだまのように次々と聞こえてくるが、この教室にはもう自分以外誰もいない。
鍵閉めの当番は今日はしぐれのようでいくつもの鍵がまとめられた鍵束が、机の上にある横長のカバンの上に雑に置いてある。
とうのしぐれは机に腰を掛け、スマホを片手にぼんやりとしている。
緩やかなウェーブ感のある割に綺麗に纏まったショートヘア。窓側にいたのなら気が付かないであろうくらいの若干青みがかった色をしている。ツンと尖った鼻に負けないくらい鋭く光る紺色の瞳、眉を潜めているから表情は相変わらず不愛想。背は低く黒板を消すのならおそらく苦戦を強いられると言うことは簡単に推測できる。
そんなしぐれのスマホにはウサギのアイコンの誰かからの連絡が来ている。
『放課後はカフェ集合!』
その文字が一言あった。
それに対してしぐれは『今日はパス』と返信しようとした。送信ボタンを押すぎりぎりのところでその一歩先を行くように『パスはもう使えないよ』と着てしまった。
カフェに誘われて一週間目、そのどれもパスを通してきた。しかしそれもそろそろ逃げるのも限界のようだった。
しぐれはため息を零して『今行く』とだけ打ち込み、カバンを背負った。その拍子に鍵束が床に落ちた。
高校から出て自転車置き場に向かった。朝来たときは渋滞のように混んでいた自転車も今になれば祭りの後みたいにまばらで少し寂しい。
なんとなくしぐれはこの雰囲気が好きなのである。だからこそ授業後は少しだけ居残り、時間を稼ぐ。
自転車に乗ってしばらく進むこと一五分でカフェが見えた。
途中五つもある信号を乗り越えていかなくてはならないから普通は二十分くらいかかっても割と仕方がない。今回は運が良かったようで一つも信号には引っ掛からなかった。
しかし、しぐれにとっては全然運がいいことではないのだ。なにせここまで学校の近くになると大抵の学生は流れるようにこのカフェに吸い込まれていく。そうなるとカフェの中は学校と変わらないくらい騒がしくなるのだ。
別に騒がしいことが嫌いなわけではない。しかし、せめて学校終わりくらいは静かな場所にいたいという些細な願望なのである。だからこそしぐれはカフェに行くことを渋っていた。
とは言え今日は行くしかない。
しぐれはやはりため息を一つこぼして入り口の扉を開けた。
木造中心のザ・お洒落なカフェゆえに内装は、やはりと言うべきかキラキラしている。机も椅子もカウンターですら木造で出来ており、そしてそれらを邪魔しすぎない程度に観葉植物が飾られている。壁に掛けられた大きな絵には何が描いてあるのか絵心のないしぐれには皆目見当がつかない。
入ってすぐに店員とは違う視線を感じた。
奥にひっそりと佇む漫画の棚、そのすぐ隣にわさわさとした観葉植物の並びを通りこした先にあるテーブル席。そこで大きく手を振っている一人の女の子を視野に捕らえた。
しぐれはまたため息をして向かう。
「おっそ。マジでおっそ。え、掃除長ない? 残業ですかい?」
その女の子は灰色っぽい色の艶のある綺麗な長い髪を靡かせ、丸みを帯びた鼻に穏やかな瞳でこちらにそう悪戯っぽく語りかけてきた。
「そう。サービス残業。私は優等生だから」
しぐれはカバンを背中からぶら下げて少し気だるげな表情をし大股で歩み寄り、女の子の隣ではなく正面側の席に座った。
「だれかと違ってね」
「——っだから、この前は本当に忘れてたんだって! 掃除当番をする気はあったんだけど、テストのせいでうっかりしてたの!」
「あんたのとこの一人が私んとこ来て、『あいつ逃げたから呼び戻してくれない?』って言われたが?」
「逃げてないって!。どんだけ私人望ないんよ。——とりあえず、お疲れさま。なんか奢るよ? どう?」
「……じゃあなんかおすすめのカフェオレ」
しぐれはさらりと話題をすり替えられてしまったことに気づいていたがわざわざ指摘してあげる気にもならなかった。余計な体力は使うべきではない。
「はい了解——あ、食べ物は自分で買ってね~」
「いらないから」
「え、ダイエット?」
「——さぁね」
とりあえずしぐれはスマホを取り出して弄り始めた。
そんなしぐれに対して特に気にする素振りも見せずに灰色っぽい髪色の女の子が口を開く。彼女も彼女でしぐれのことを見て話しているというわけでもないように見える。
それでもしぐれは彼女の話に頷いたり、首を振ったりして反応している。これが二人の会話の普通なのだろう。
多くの生徒がいるにぎやかな空間が苦手なしぐれだったが特に気にすることもなく店員さんが注文を運びに来るまでの間、灰色っぽい髪色の女の子のする他愛もないありがちな話を聞いている。
「最近は治安いいよね。前はどこに行っても怪人がいたのに」
「うん……」
しぐれは頷いてはいるものの、どうにも聞き流しているように感じるほど素っ気なく興味なさげに返ししている。
「ほら、——魔法少女の活躍もよく耳にするし」
灰色っぽい髪色の女の子はしぐれの表情を観察しながら、少し試すように言った。
しかし、相変わらずしぐれは不愛想な顔のまま「ね……」と相槌を打つ。
「ほら、今をトキメク魔法少女『ナッツ』とかさ。その影響がでかいのかねぇ」
「そうなんじゃない?」
「魔法少女『ナッツ』。最近ここらへんで活動している新人魔法少女。魔力量も魔法技術も才能があるのだけれど、高飛車な性格が少し傷だったり……。かつての『レイニー』には遠く及ばないけれど、それに近い才能があるとかないとか」
「へぇーすごいね」
「……本当に思ってる?」
「——ほんと」
「あ、そうだ。そういえば最近の仕入れたちょっとした怪談話あるんだけど聞く? 聞くよね」
「怪談?」
「そうそう。かの有名な引退したはずの魔法使い『ミセス』の亡霊を見たっていう噂」
「そんなのありえないわ」
しぐれは途端に若干口調が強くなった。
「魔力が尽きた『ミセス』はもう魔法を使うことが出来ないのよ。見間違いかデマに決まっているわ」
「あ——ごめん。まぁそりゃそうだよね」
すると灰色っぽい髪色の女の子は少し申し訳なさそうに言うと目を伏せた。
そんなこんなで数分が経ちようやくカフェオレが到着した。
だがどうにもすぐれの表情はこわばっていた。しぐれはカフェオレと言えば質素なミルクとコーヒーが混ざった飲み物だと考えていたのだが、目の前に運ばれた物は明らかに飲み物と言うよりもパフェだった。
生クリームがソフトクリームのようにどしりと構えており、可愛らしくサクランボなんかを乗せている。しかし見た目が可愛らしくともその実態は全く可愛くないことをしぐれは見た瞬間に理解していた。
絶句した表情をしてしぐれは言った。
「これ……あんた頼んだの?」
「うん。今日までのパスの滞納を考えればこれくらいが妥当かなって」
「妥当なわけないじゃん。何考えてんのよ」
「まぁいいじゃんダイエットのし過ぎは体に毒よ」
確かにし過ぎは毒かもしれない。しかししぐれにしてみればこの生クリームたっぷりのカフェオレの方が毒なのではないか、と感じるのだった。
「まぁまぁ騙されたと思って食ってみーよ」
「はぁ……じゃあ一口だけ」
しぐれは渋々とスプーンを手に取り、生クリームを口に運んだ。その足取りは意外と端的だった。
「ほら食べたかったんでしょ? ……どう?」
「…………別に」
そう言うとしぐれはスプーンを置き、再びスマホに視線をもどしたのだった。
「ふーん」
そんな気だるげな雰囲気を見せるしぐれに対して灰色っぽい髪色の女の子はどこか何とも言えない顔を浮かべる。しかしすぐに笑顔になり気楽そうにスプーンを口にする。
「そういえばこの前のテストどうだった?」
「——特に」
「てことは赤点?」
「悪いけど赤点の取り方なんて知らないわ」
「え、じゃあ教えてあげようか? ——手始めに今度のテスト期間は私んちに集合ね」
「パスするわ」
「何よーもう」
冗談混じった会話を交わしたのだが相変わらずしぐれのポーカーフェイスは依然と変わらない。
灰色っぽい髪色の女の子はそんなしぐれをじっと見ていた。
すると、ハッと何か思いついたように眼をパッと光らせる。そしてテーブルをドン、と鳴らし顔を急接近させ言い出す。
——思いもよらぬ一言を。
「染髪に行かん?」
その言葉で不愛想だったしぐれの表情は驚きに侵食されたかのように眼を見開いてポカーンとした間抜けな顔に変化していた。
「は? 染髪って……髪染めに行くってこと?」
「うんそうそう。気分転換っていうか、イメチェンってやつぅ!」
「——さすがにそれはパス」
「いいじゃん行こ行こ!」
灰色っぽい髪色をした女の子は気持ちに体が動かされると言わんばかりに立ち上がり、しぐれの袖口を引っ張り始めた。
「え、ちょっとまだ食べて——」
露骨に嫌悪を示すしぐれのことなど気にも留めない様子だ。
一向に諦めない女の子にとうとうしぐれは抵抗を辞めて引っ張られるように連れていかれた。食べ残しのカフェオレを残して。
10
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)
たくp
キャラ文芸
1918年、第一次世界大戦終戦前のフランス・ソンム地方の駐屯地で最新兵器『機械人形(マシンドール)』がUE(アンノウンエネミー)によって強奪されてしまう。
それから1年後の1919年、第一次大戦終結後のヴェルサイユ条約締結とは程遠い荒野を、軽装歩兵アラン・バイエルは駆け抜ける。
アラン・バイエル
元ジャン・クロード軽装歩兵小隊の一等兵、右肩の軽傷により戦後に除隊、表向きはマモー商会の商人を務めつつ、裏では軽装歩兵としてUEを追う。
武装は対戦車ライフル、手りゅう弾、ガトリングガン『ジョワユーズ』
デスカ
貴族院出身の情報将校で大佐、アランを雇い、対UE同盟を締結する。
貴族にしては軽いノリの人物で、誰にでも分け隔てなく接する珍しい人物。
エンフィールドリボルバーを携帯している。
Strain:Cavity
Ak!La
キャラ文芸
生まれつき右目のない青年、ルチアーノ。
家族から虐げられる生活を送っていた、そんなある日。薄ら笑いの月夜に、窓から謎の白い男が転がり込んできた。
────それが、全てのはじまりだった。
Strain本編から30年前を舞台にしたスピンオフ、シリーズ4作目。
蛇たちと冥王の物語。
小説家になろうにて2023年1月より連載開始。不定期更新。
https://ncode.syosetu.com/n0074ib/
戦国武将と晩ごはん
戦国さん
キャラ文芸
ある地方都市で暮らす女子高校生・御角 倫(みかど りん)。
彼女の家には、なぜか織田信長を筆頭に、週に一度さまざまな武将が訪れてくる。
織田信長と伊達政宗との出会い。
真田兄弟の時空を超えた絆の強さ。
信長と敗走する明智光秀や関白・豊臣秀吉との邂逅。
時間も時空も超えて訪れる武将たちは、倫が振る舞う美味しい現代飯の虜になっていく。
今日も武将たちと倫の間に起こる日常の『飯』物語。
ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~
415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」
普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。
何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。
死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
【完】あやかしデュエット 〜最強の異世界女王『じゃない』方の半妖女子高生、私のことが好きらしい双子の妹と一緒に人間界を護ることになりました〜
水狐舞楽(すいこ まいら)
キャラ文芸
年上や年下には好かれるのに、同級生には好かれずぼっちな主人公・小林麻里菜。実は、麻里菜の同一人物は異世界と人間界の救世主で異世界の女王様!
人間界が平和になり、麻里菜は妖力と魔力を捨て、普通の人間として暮らしていた。
しかし、麻里菜とそのクラスメイトを人質にした立てこもり事件が発生。妖力と魔力を取り戻して変化した麻里菜と、妖力が目覚めたクラスメイト(双子の妹)の美晴の甲斐あって事件は収束した。
後日その事件を起こした犯人が、異世界から来たテロ組織『ルイナ』と関与しているのが発覚。麻里菜と美晴は、「テロリストから人間を護るように」という指令を同一人物から下される。
美晴の幼なじみでハッカーである蓮斗の助けを借り、麻里菜と美晴は異世界と人間界をかけた戦い(たまに双子の百合百合)を繰り広げることとなった……!
※この作品は過去にも投稿していましたが、ジャンルエラーとして何回も運営にファンタジーへと戻され(長文タイトルのせい?)、結局削除されてしまったものです。ですが投稿し直してからは、一回も戻されたことはないので大丈夫みたいです。
俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~
美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。
母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。
しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。
「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。
果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる