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執着旦那と愛の子作り&子育て編

豊穣祭②

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豊穣祭は全土で行われているが、今年はゲートが出来たため例年よりも全体で人が集まることは予測されておりその体制が出来ている。
来年からの様子も把握して全ての町や村を見るつもりでいる。
ハイシアの中には4つほどの町や村があるがゲートのお陰でそれもかなっているわけだ。

行く様々の所で珍しい物や心惹かれる素敵なものを見つけると購入した。
それは食べ物もありその中にはソフィアにお願いしていたワインもある。
今日は原産地ものを楽しむべきなのだろうが、こればかりは好みなのだから仕方がない。
ハイシア産のお酒についてはガリウスに楽しんでもらうとして沢山の買い物をした。

「シャリオン様!ガリウス様!どうぞこちらをお召し上がりください!」
「お城で出るようなもんじゃないですけれど、きっとおいしいですから!」

皆商売上手に進めてくれる。
味見もしていいと言い一口食べさせてもらって、これが本当においしいから仕方がない。

「おいしい・・・!」

目を輝かせていうシャリオンに店主は嬉しそうにしながら包んでくれる。
行く先々で勧められるのだが、どうもシャリオンにはそれが断れなかった。
そんなことをしている間にいつの間にかゾルのほかに荷物持ちが増えていた。
ゾル達の状態に苦笑を浮かべる。

「あはは・・・ごめん」
「楽しんでいただけているようで我々もうれしく思います」

余所行きのそんな返答をしつつも微笑まし気にこちらを見てきて、荷物を持ってくれている者とともに強く頷いている。
するとガリウスもシャリオンの疲労を思ってのことだろう。

「リングで一度戻りますか?」
「城に戻ったらまた出てくるのが大変になると思うから」

間違いなく夜会であったらとっくに疲れて果てているのだが、今日は気分がよくて疲れも感じなかった。
だが荷物が多いのも事実だ。
そこで考えいいことを思いついた。
ジョージのところで馬車をチャーターし馬車に乗りながら楽しむことにした。
勿論ゲートが出来たのであっという間になるのだが、ゲートがあるところから人里までは多少なりに距離がある事や馬車に乗ることで視線が遮られ休むことも出来る。
ゾルから公爵家の馬車をすぐに手配するといわれたが、ここはやはり頑張っているジョージを応援するつもりでジョージのところに行くことにしたのだ。

シャリオンが来るとは思っていなかったようで、最初驚いていたが喜んで馬車を一台貸してくれた。
ゾルは御者の隣に座り、中はシャリオンとガリウスは2人きりになった。

城に戻って一度でも休んだら根が張ってしまうと思ったのだが、それは馬車に乗っても同じようだ。
街中を歩いているときは気にならなかったが、いつもより歩いているのは間違いなくて足が少し疲れ初めて来た。
それを気付かれない様に背を伸ばして馬車に乗っていたのだがガリウスに引き寄せられた。

「?」

すると馬車の揺れが軽減され、全身から力を抜いてもふらつくことがない事に見上げる。
これは以前もしてもらったことがあるが、ガリウスが魔法でシャリオンへの負担を軽減してくれているのだ。
手入れは行き届いていて綺麗にはしてあるが、公爵家の馬車とは違い揺れやクッションの厚みが違う。
何より走っている道の質も違いどうしても揺れてしまうのは仕方がないことだ。

「ありがとう」
「いいえ。・・・大丈夫ですか?疲れてはいませんか?」
「ううん。ガリィには付き合わせてしまって申し訳ないけれど、とても楽しい」

そう答えると嬉しそうにガリウスが微笑むものだから。
きゅんと心が温かくなる。

「ガリィは・・・?疲れていない?」

今さらになって気遣えばガリウスは相変わらず嬉しそうに微笑むだけだ。

「貴方の傍にいることが癒しですから」

なんてそんなことを言う。
だが、シャリオンが訪ねているのはそんなことではないのだ。
そんな風に思っているのを視線から感じているのか、困ったようにしつつも教えてくれた。

「そうですね。・・・すこし」
「!・・・ごめんっ」

はしゃいで連れまわしてしまった自覚があったが、思っていた以上にしていたらしい。
しかし、しゅんと疲れを見せたはずのガリウスの長い指が、シャリオンに顎をすくうとちゅっと唇を啄んだ。

「はい。これで全回復しました」

頬が急激に熱くなって見上げればガリウスが首をかしげる。
顎をすくっていた手は頬に添えられ何をされるかわかっても逃げられなかった。

「おや。シャリオンはなりませんでしたか?」
「っ」

 今度は唇を吸い上げられ忍び込んでくる舌。
シャリオンに絡ませて、吸って堪能した後。
解放される頃には息を弾ませている。

「足りませんか?」

揺れる馬車はゲートを使っているはずなのに止まる様子は無い。
揺らされる理性の中で、シャリオンはガリウスにだけ聞こえる声で囁いた。

「もう少しだけ・・・」

ガリウス相手に理性が緩くなる事など知っているだろうに。
そんな風に誘うガリウスに応えるのだった。

★★★

荷物が多くなり移動が困難になってきたために馬車をチャーターしたのだが、シャリオンがそうするとその行動をまねる人間も増えてきた。
シャリオン達は予定していた各地のリジェネ・フローラルの予定地を見てくることにすると当然それにもついてくる。
町の人間たちは想定以上の人間が来たことに驚いていたが、それでも盛り上げようと必死に動いている。
ハイシアの人間もいるし、それ以外からの人間も多く民芸品やグルメを楽しんでいる。
この時期はハイシアの城下町に屋台を構えそこで売り出したりしているのだが、今年は直接来る人間もいるようで忙しそうに、だがイキイキしているのを見てほっとした。
町や村を回って最後の村。

その中でハイシアの一番端。
ヴィスタとエリックが籠っていた村に行った。

するとそこには思っても見ない人物とあった。

アンブロシュ・アルカス公爵。
アンジェリーンの実兄だ。

相手もシャリオン達に気付くと少し驚いたようだったが、アンブロシュ達は一般の服を着ているのをみるとお忍びできているらしい。
沢山の人を連れているが、どこか見覚えのある人ばかり。
その中には先日のパーティの際にアンジェリーンに指示されてシャリオンに言いがかりをつけてくる役の男もいた。
シャリオンに気付くとハッとして会釈をしてくるので、こちらもそれに返しつつアンブロシュに挨拶をする。

「「こんにちは」」
「やぁ。こんにちは。
こんな所で会うとは思わなかった」

アンブロッシュもラフな様子でこちらに近寄ってくる。
よく考えてみればアンブロッシュとは公式の場所でしかあったことがない。

「それは僕の方です」
「こんな端まで領主様がくるとは思わないさ。
君も変わった伴侶で大変なことだ」

ゲートがあるとは言えここはハイシアの一番端であり、アンブロシュが何を言いたいかは解るのだが。
ガリウスを憐れむ視線やる公爵にシャリオンは苦笑した。

「本当にね」
「そんな事ありませんよ」

アンブロシュの言っていることは最もでシャリオン自身が肯定したのだが、それを否定するガリウスを思わず見上げる。

「いや。アンブロシュ様の言う通りだと思うよ。
僕は自分が他の人より貴族らしくないとは思ってる」
「手本にならない人などどうでもいいのです。
我々貴族は社会的責任と義務を果たさねばなりません。
それを勘違いした解釈を持っているものが多いですが、貴方は全力でそれをこなしています」
「でも」
「ガリウスの言う通りだ。貴族は夜会に出て相手をひっかけて子供を作ればいいと思っているような人間も少なくはないからな」

あけすけな言い方にシャリオんは困ったように苦笑をする。

「僕的には夜会は出会いの場と思っていました。それに僕は欲だらけだよ」
「貴方が欲だらけなら他の人間は強欲な人間ですよ」

譲らないガリウスのその言葉にシャリオンは首を振って否定をしようとしたところだ。

「はぁ・・・」

深いため息に意識を引き戻される。
話しかけた相手を構わずに話し込んでしまった。
見れば呆れた様子のアンブロッシュ。

「っごめんなさい」
「素直なことだ。・・・その素直さを分けてやっもらいたいものだ」

『誰』とは言わずとも、ここにいる人間には・・・いや。シャリオン以外には誰を指しているか分かった。
するとガリウスがくすくすと笑った。

「とても素直ではありませんか。欲望に」
「誰に分けるの?」

ガリウスはなんのことかわかったようだが、シャリオンが不思議そうにしているとアンブロシュがこたえる。

「俺の弟だ。同じ歳なのにこうも違うとはな」
「!不敬です」

シャリオンがあたりを見回して声を潜めていうと、アンブロッシュは意地悪気に言った。
そういえば、この兄弟は仲が悪いと言っていたのを思い出す。

「実際そうだ。自分の欲望の為に生家がどうなっても良いと見える」
「それは・・・」
「あぁ。シャリオン殿を責めているわけじゃない。
ただ、馬鹿には怒りを覚えている。ただそれだけだ」
「・・・、」

周りには寄ってきていないし、ガリウスがそばにいてくれているということは普段の結界を張ってくれているとお思うのだが、あまり聞いていて心地いいものではない。
かといって、アンブロッシュの言い分も同じ公爵としたらよくわかる。

「そんななら他の家に行ってくれればいいものを。
それ以前に何故勝手にそんなことをするのか。
本当に・・・あいつは俺達アルカス家が嫌いなようだ」

そうなのだろうか?
シャリオンにはよくわからない話だ。
ハイシアが大切だし両親も大切である。
ガリウスが心の機微を拾ってくれ難癖をつけるアンブロッシュに言い返す。

「それは是非、彼に直接言ってください」
「そんなことはとっくに言っている」

ガリウスの指摘にため息交じりで返すアンブロシュ。

「・・・アンジェは・・・確かによくわからないことをするけれど。
でもなんだかんだで優しいです。
・・・もう少し自分の事を考えてくれたらいいのだけれど・・・。
最近の事は、僕のことを思ってそう動いてくれているみたいです。
・・・ごめんなさい」
「言っただろう?シャリオン殿を責めているわけじゃない。
例えシャリオン殿がアイツを叱ったとしても、あれは止まらない」
「シャリオンが止めて止まるならどんなに良かったか」
「・・・」
「愚弟が迷惑をかけているようだ」
「そんなことはっ」
「では君願った通りと言うことか」
「それは!」

シャリオンの謙遜が少々気に障ってしまったらしい。
そんな風に言うアンブロッシュに慌てて訂正しようとするも、ガリウスがそれを止める。

「八つ当たりは止めて頂きたい。
貴方がどうこうできるうちにしっかりと教育しなかった前公爵の所為でしょう。
せめて産まれた時に妾の方をしっかり教育してこなかったのがいけないのをシャリオンのせいだと言うのですか?
あの方の暴走はその都度こちらから止めるように言ってます。
逆に。もう一度尋ねますが、止められる術があるなご教示頂きたい」
「ガリウス。言い過ぎだよ」

そういうとアンブロシュはため息をついた。

「だから、シャリオン殿のせいとはいいっていない。
寧ろ多少まともになった」

そう言いながら可愛くない弟を貶すアンブロシュに不満気に睨んでくるシャリオンにアンブロシュは昔を振り返る。

★★★

【別視点:アンブロシュ・アルカス】

幼い頃から家族の中で弟は異質だった。
王族の血の証である金髪碧眼の容姿を褒め称え大切に育てた。
勉強やマナー何をしても全てそれに結びつけられていた。
父・・・公爵はアンブロシュの産みの親とは政略結婚ではあったが恋仲にまで発展しアンブロシュを授かった。
だから側室は必要としていなかったのだが、アンジェリーンの産みの親は半ば押し付けられる形でアルカス家にやってきた。
形式的に一夜限りのことにするつもりだったのだが、その一夜で出来てしまったアンジェリーン。

金髪碧眼でもなければ不義を疑たのだろうが、アンジェリーンはそれだけでなく父方の親族によく似ていた。
それはアンブロシュ以上にだ。

だから公爵も疎ましく思いつつアンジェリーンを邪険には出来なかった。
金髪碧眼で王族を彷彿とさせる容姿のアンジェリーンを虐げるなどしたら、産みの親がここぞとばかりにでっち上げるのが目に見える。
アンジェリーンの産みの親はそう言う人間なのだ。
近寄るものは徹底的に厳選管理し貴族でも許可のあるものしか近寄らせず、同時に相手を下げる発言をしていた。

王配の座を狙っているのは目に見えていた。

だからシャリオンももれなく中傷する相手に入っていたのだ。
アンジェリーンの兄であるアンブロシュさえ見下す眼差しが、シャリオンにだけ違う視線であったことは気付いていた。それが嫌悪ではないと思っても見なかったが、ある時その中傷がアンジェリーンのキャパシティを超えてしまったことにアンブロシュは気づいていた。

『私は王族の血を引く崇高なる人。
侯爵家の家のでの貴女如きが私のすることにとやかく口出しをするとは。
どう言う躾けをされてきたのでしょう』

父である公爵やアンブロシュ、アンブロシュの産みの父親がいる前ではっきりと嫌悪を含んだ眼差しでそう言われた産みの親が崩れ落ちた。
『崇高なる王族の血筋』それは産みの親が高らかにいつも言っていた言葉であり、その血筋とは関係ないことを言われたら何も言えなかったのである。
アンジェリーンを産んだことを言えば、ただそれだけでなく『血筋』が大事なら王族の血を引く兄のアンブロシュへの態度も不敬であることを言った。
そして、父と自分に自分は王配になる気もないし、公爵になるつもりもない。ただ、産みの親を離れに置くか自分をそうして欲しいと願った時は正直胸が晴れた。

父はアンジェリーンの産みの親を大金をつんで、実家に返すことにした。

それからまともになったと思っていたのだが。

アンジェリーンは王太子の王配は断固拒否し、高齢の貴族に嫁ぎたがった。

本当に。
アンジェリーンは自分をよく分かっていない。

いや、目の前のシャリオンよりも分かっているのだろうが、「男」と言うものをよく分かっていない。
大体、40代前半からそれ以降でと言うが、いくつになっても性欲が薄くなっても消えることはないだろう。
ことさらアンジェリーンには。

アンジェリーンの容姿はとても可愛らしい。
黙っていれば文句なしに可愛い。

へんな家に嫁がせては絶対に悪戯させられるのが目に見えていた。
だから、父とアンブロシュの産みの父、そしてアンブロシュは嫁ぎ先には最大限注意を払っていた。
もう寧ろ本人が相手を連れてくるまで結婚しなくても良いとさえ思っていたのに。

なのに、社交辞令で出してきた王太子殿下側からの上がったお見合い話。
あちら側も時間がないことはわかっているから周りが寄越してきたのだろう。
貰ってきてしまったならば返答しなければならない。
断るのをわかっていながらアンジェリーンに話してみれば、突然してくれて王配への意思表示。
もちろんアンブロシュとて社交辞令でアンジェリーンを勧めたことはあったが本心ではなかった。
拒否というよりも拒絶に近い反応に面倒なのは見えていたからだ。
なのに、結局は結婚して安心できたと思ったらあれだ。
調べたら『子供ができない体』と言うのは検査もしておらず全く確証のない事が分かった。

時間を置いていくにつれて、殿下と悪巧みしてることが見えてきている。
最近はそのことで以前よりも腹の割った話もできるようになったのはいいことなのかもしれないが。

目の前の眉間に皺を寄せるシャリオンに視線をやった。

自分は公爵でシャリオンもそうだ。
だから余程なことが無い限り一緒になると言う思考はなかった。
とくに、ハイシア家は公爵の中でも一番古く大きい。
それ故に秘密が多い。

だが、アンジェリーンは別だ。
前公爵によれば一度ハイシア家に婚約申し込みを出したことがあったそうだが断りの知らせがあったという。

普通なら訝しく思うところだが、アンジェリーンのこれまでのシャリオンへの反応を見れば当然の反応でもあるが、王太子に嫁ぐくらいならシャリオンのところに嫁いでくれならと、心の中で思ってしまうのだった。

★★★

【シャリオン視点】

呆れたためいきを繰り返すアンブロシュ。
感じが悪くじっとりとした眼差しでアンブロシュをみる。
確かに、シャリオンに結果良いことになっているが、アンジェリーンが悪く言われるのは不愉快である。
だが、ふと思った。

「そういうところそっくりです」
「・・・何がだ?」
「勝手に自分の中で結果をだして、ため息をついて終わりにするところ」
「・・・」
「いい気持ちはしません」
「・・・悪かった」
「それと、アンジェはちゃんと色々考えてくれてます。
少し行き過ぎたところがあるけど」

だからと言って褒められることでは無いのは承知している。

「・・・、」
「シャリオン。それを本人に言ってはダメですよ。
つけ上がります」

そう答えるとアンブロッシュは苦笑するのだった。
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