51 / 217
執着旦那と愛の子作り&子育て編
びっくりしたー。
しおりを挟む
あれから2週間が過ぎた。
シャリオンはデスクに向かい、ガリウスにいつ言い出そうか悩む。
早く知らせた方が良いんだろうけど、・・・違かったらな
そう思うと中々言い出せなくて小さくため息をついた。
悩みは別に後ろめたいことではない。
領地のことも先日相談を受けた件も順調だ。
アベルやゾイドス家に至っては、政治的な要素が含まれるとのことでガリウスが任せて欲しいというので任せてしまっている。
それなのに、悩んでいるというのは、シャリオンの体調についてだった。
ここ、最近少し体がだるい。
まるで、蛇口から少しずつ流れる水の様に、魔力を吸い取られている気がする。
そのせいで眠くなったり、頭痛がしたりしているのだが、休むほどでもない。
もやもやとするのは何故なのだろうか。
そんなことを思っていると、部屋に入ってきて早々にゾルは眉を顰めた。
そして、額に手を置かれると、小さくため息をつかれたかと思うと、急に抱き上げられる。
「なっ・・・なに!?」
「熱があるのに仕事をするな」
「え?」
「今医者を呼ぶ」
「いや・・・そこまでしなくても」
大げさなゾルにそう言ったのだが、それは却下される。
というか、犬猫の様にひょいひょい抱き上げるのはやめてもらいたいのだが・・・。
そう言って下ろしてもらったのは結局寝室のベッドの上だった。
「それは、あの男に話した上で決めてくれ。
俺の主人はシャリオンだが、あの男も含まれる」
そんなことを言うゾルは『着替えて楽にしていろ』と言って出て行ってしまった。
「うちの人間てなんでこうも過保護なんだろう・・・」
なんて呆れながらも、シャリオンは服を着替え始める。
大人しく従って医者に診てもらえば、ゾルも安心するだろうと思ったからだ。
暫くして・・・というか着替え終わったころに部屋に入ってきたガリウスに呆然としてみる。
まぁ十中八九ゾルが言ったことで心配してやってきたのだろう。
「ゾル。医者は必要ありません」
シャリオンの顔を見るなりそう言うガリウス。
そんなことだろうと思ったのだ。
「だよね?ゾルが大げさなんだよ」
ガリウスはそれに苦笑を浮かべる。
ゾルは眉を顰めたが、ガリウスの方に視線を戻す。
「主治医ではないということか」
「あぁ。専門医を」
ガリウスと2人きりの時は、大抵この口調なのだそうだが、シャリオンがいる時は敬語で話しているのに、
口調が崩れている。
「大丈夫ですよ、シャリオン。心配しなくても平気です」
そう言ってくれるガリウスの方が心配をしている。
ゾルもどことなく焦っているように見えた。
2人のその態度にシャリオンは困惑してしていると、ガリウスは安心させるようにシャリオンの手を握ってくれる。
「・・・大げさだよ、2人とも」
「シャリオンは楽観的過ぎる」
ゾルはそう言うとガリウスの方に目配せすると、そのまま出て行ってしまった。
2人きりになるとガリウスを見上げる。
「・・・、その・・・子供を授かっただけじゃないのか」
「・・・、」
そう言うガリウスがこちらを見て止まられると、そうでは無くて別の悪い病気なのかと感じてしまう。
ヒヤリと背筋に冷たいものが走った瞬間だった。
「気付いていたのですか・・・?」
「・・・なんとなく・・・?」
「・・・」
「えっと・・・、確証持てなかったから、・・・おなか大きくなってからでもいいかなって?」
その言葉にガリウスが珍しくわかりやすく驚いた。
そして、しばらくするとクスクスと笑い出した。
「なるほど。えぇ。わかりました」
「・・・ガリウス・・・?」
「次からもっと注視しておきます」
そういうとにっこりと浮かべる笑みになんだか怒気が含まれているように見えて、思わずたじろぐ。
すいっと視線を逸らした。
「あー・・・祭典までに落ち着けばいいな」
「・・・。出るおつもりで?」
「え?うん。だって僕後継ぎだし」
なんてそれらしいことを言うが実のとことはガリウスを1人で、そういうところに行かせたくないのだ。
そういうと、ガリウスはベッドの淵に掛けると頬を撫でた。
「・・・どうしてもですか?」
「え?」
「初期段階は安定しないと聞きます。子供もですが、・・・シャリオンが心配です」
「ガリウス・・・」
「貴方は無意識に無理をしますから」
「そんなこと、・・・ある?」
納得してはいないが、ガリウスがそういうならそうなのだろうか。
訝し気にしながらそう答えれば、クスリと笑みを浮かべた。
愛おしそうに額に口づけられた。
「あります。貴方だけの体ではないのですから大切に。・・・レオン様がなさるくらいに過保護にしてください」
そう言われてるとおかしくて笑ってしまった。
シャリオンも常々思っているが、やはりレオンが過保護と言うのは誰から見てもそうみえるようだ。
ガリウスがここに来たというなら、レオンもそろそろ来そうだ。
なんて思っていると勢いよく開かれた扉の向こうには噂をしたレオンがたっていた。
「過保護ではない!!」
「っ・・・びっくりした」
「!・・・すまない、大丈夫か?シャリオン」
こちらは息を切らしており、どうやら走ってきたのが分かる。
と言う事はやはり、ガリウスは魔法石を使ったのだろうか?
レオンの問いかけにシャリオンは苦笑を浮かべた。
「大丈夫です。皆して大げさですよ。病気じゃないのですから、今のうちに動いておかないと」
「それで無茶をして、」
声を荒げるレオンに体がびくつくと、ガリウスがシャリオンの肩を抱き寄せた。
覗き込んで来たアメジストが優しくきらめいていて、慰めてくれている様だった。
レオンがそうしたのは心配してくれたのは分かっているが、急な荒い声には体が過剰に反応してしまうようだ。
シャリオンが思っている以上に、体は敏感になっている。
「レオン様。それ以上は私が説明しますので。・・・レオン様をサロンへお連れしろ」
「はい。かしこまりました」
「!ガリウスッ貴様ッ」
「今のシャリオンの前であまり怒鳴らないで下さい。子供に悪影響があったらどうするのです」
「っ」
そういうとレオンは押し黙る。
それでも視線では納得いってないようで、ガリウスを睨んでいた。
「父上。お医者様に見てもらった後で伺いますので、サロンで・・・いえ。お忙しいと思うので執務が終わったら」
「!いや。大丈夫だ。皆がいるし急ぎの件は連絡が来る」
そもそも、2TOPがここに居て良いのだろうか。
シャリオンは気にせず戻る様に言うが、2人とも戻る気は無いようだ。
「私はサロンで待っているが、無理をするんじゃないぞ?」
シャリオンの言葉にレオンはころりと笑みを浮かべると、サロンに向かっていく。
医者に診てもらうのに、何を無理することがあるのだろうか。
「父上は僕をガラス細工か何かだと思っているのかな」
「それ以上に壊れやすいと思っていると思いますよ」
呆れたようにつぶやくシャリオンに、ガリウスはクスクスと笑いながらそう答えた。
「そんな儚いものじゃない」
「ですが、レオン様の言いたいこともわかりますよ。
先ほど言った通り、気を付けてくださいね」
「うん」
「すでに知ってはいると思いますが、我々は核を使うことで子供を授かることができます。
しかし、男女よりも確立が低いこと以外に、体に負担がかかっているのを忘れないで下さいね」
「わかった」
「なので祭典は別室でお待ちいただけますか?」
今の流れで『諦めてくれ』と、言われると思っていた。
しかし、そんな言葉にシャリオンは顔を上げる。
「!・・・行っても、いいの?」
「えぇ。殿下たちにお祝いを言いたいのでしょう?」
そうだ。言われてみればそうだった。
自分の感情が先走っていたのが恥ずかしく頬が熱くなった。
「あー・・・うん」
「・・・」
その様子にガリウスは理由が違うことに気付いたのか、こちらをじっと見てくる。
「大した事じゃ、ないんだ」
「では教えていただけますか?」
「っ・・・」
言いごまかしたら面倒になりそうなのだけは分かる。
「・・・笑わない?」
「はい」
「本当に、つまらないことなんだけど」
「シャリオンのことでつまらないことなど、何一つありません」
それはいかにせ盲目すぎる。
思わず苦笑を浮かべたが、これ以上やきもきさせても仕方がないので、シャリオンは火照った体を冷ますように、手でパタパタと仰いだ。
「はぁ・・・熱い。
その・・・式典とかだと、ガリウスも正装するでしょう?それを他の誰かに見せるの嫌だなって」
「・・・」
「でも、相手が居たら、そんな変な気は起こさないかなって思っただけ。
海外のおk」
「出ましょうか」
シャリオンの『お客様も来る』という、言葉を遮ってガリウスは答えた。
「え?」
「その様に手配します。個室を設けましょう。ただし絶対に無理しては駄目ですよ」
何故急に出て良いと言ったのか分からないが、シャリオンは嬉しそうに頷いた。
「うん!」
「子供が出来たことは安定するまでは黙っておきましょうか」
「そうだね」
そう言いあうとフフっと笑いあった。
まだ平たい状態のおなかあたりをふとみると、そっと撫でた。
ガリウスがその手の上に重ねると、魔力がじんわりと温かくなっていく。
すると、不思議と先ほど感じていた気怠さが薄れていく。
どうやら魔力が流れているような感覚は、子供に流れているからのようだ。
「魔力補充が必要ですね」
「そっか・・・。日中なくなったとき様に、売っているもの買っておくと良いって父様にきいたんだった」
子供が宿ると大量の魔力が必要になる。
それを補うために、魔力だけを込めた魔法石が売られており、それを代用するとシャーリーから教えてもらっている。
シャーリーもシャリオンが出来た時に、その魔法石を持ち魔力切れを防いでいたそうだ。
魔力が切れてしまうと、子供もシャリオンも危なくなるからそれは必須である。
しかし、ガリウスの笑顔がピタリと止まる。
「それは良くないですね」
「え?」
「売られているものは粗悪なものも含まれるのです。なので私の魔力をシャリオンに移します」
「でも」
「大丈夫です。これだけ城から近い距離なのですから容易いですよ。
それにやはり、私の魔力の方が安定しますので」
「だけど」
「それとも市販品の魔力の方がいいと?」
「そんなことはないけど。・・・忙しいじゃないか」
「レオン様の下にいるのですよ?こういうときは有効活用するべきです」
そう言ったガリウスの笑みは少し黒く見えた。
「さぁ。お医者様が見える前に、魔力が切れてしまわないよう、たくさんキスをしましょうか?」
「っ・・・うん」
魔力を体に流されるだけでも魔力は得られるが、やはり体液を交わした方が効率も効果も良い。
昼間からそんなキスをするなんて恥ずかしくも感じたが、そのぬくもりは心地よく夢中になる。
シャリオンは無意識に求めるようにガリウスに強請っていた。
┬┬┬
魔法世界の男性妊娠でありがちな、魔力補充大好きです♥
シャリオンはデスクに向かい、ガリウスにいつ言い出そうか悩む。
早く知らせた方が良いんだろうけど、・・・違かったらな
そう思うと中々言い出せなくて小さくため息をついた。
悩みは別に後ろめたいことではない。
領地のことも先日相談を受けた件も順調だ。
アベルやゾイドス家に至っては、政治的な要素が含まれるとのことでガリウスが任せて欲しいというので任せてしまっている。
それなのに、悩んでいるというのは、シャリオンの体調についてだった。
ここ、最近少し体がだるい。
まるで、蛇口から少しずつ流れる水の様に、魔力を吸い取られている気がする。
そのせいで眠くなったり、頭痛がしたりしているのだが、休むほどでもない。
もやもやとするのは何故なのだろうか。
そんなことを思っていると、部屋に入ってきて早々にゾルは眉を顰めた。
そして、額に手を置かれると、小さくため息をつかれたかと思うと、急に抱き上げられる。
「なっ・・・なに!?」
「熱があるのに仕事をするな」
「え?」
「今医者を呼ぶ」
「いや・・・そこまでしなくても」
大げさなゾルにそう言ったのだが、それは却下される。
というか、犬猫の様にひょいひょい抱き上げるのはやめてもらいたいのだが・・・。
そう言って下ろしてもらったのは結局寝室のベッドの上だった。
「それは、あの男に話した上で決めてくれ。
俺の主人はシャリオンだが、あの男も含まれる」
そんなことを言うゾルは『着替えて楽にしていろ』と言って出て行ってしまった。
「うちの人間てなんでこうも過保護なんだろう・・・」
なんて呆れながらも、シャリオンは服を着替え始める。
大人しく従って医者に診てもらえば、ゾルも安心するだろうと思ったからだ。
暫くして・・・というか着替え終わったころに部屋に入ってきたガリウスに呆然としてみる。
まぁ十中八九ゾルが言ったことで心配してやってきたのだろう。
「ゾル。医者は必要ありません」
シャリオンの顔を見るなりそう言うガリウス。
そんなことだろうと思ったのだ。
「だよね?ゾルが大げさなんだよ」
ガリウスはそれに苦笑を浮かべる。
ゾルは眉を顰めたが、ガリウスの方に視線を戻す。
「主治医ではないということか」
「あぁ。専門医を」
ガリウスと2人きりの時は、大抵この口調なのだそうだが、シャリオンがいる時は敬語で話しているのに、
口調が崩れている。
「大丈夫ですよ、シャリオン。心配しなくても平気です」
そう言ってくれるガリウスの方が心配をしている。
ゾルもどことなく焦っているように見えた。
2人のその態度にシャリオンは困惑してしていると、ガリウスは安心させるようにシャリオンの手を握ってくれる。
「・・・大げさだよ、2人とも」
「シャリオンは楽観的過ぎる」
ゾルはそう言うとガリウスの方に目配せすると、そのまま出て行ってしまった。
2人きりになるとガリウスを見上げる。
「・・・、その・・・子供を授かっただけじゃないのか」
「・・・、」
そう言うガリウスがこちらを見て止まられると、そうでは無くて別の悪い病気なのかと感じてしまう。
ヒヤリと背筋に冷たいものが走った瞬間だった。
「気付いていたのですか・・・?」
「・・・なんとなく・・・?」
「・・・」
「えっと・・・、確証持てなかったから、・・・おなか大きくなってからでもいいかなって?」
その言葉にガリウスが珍しくわかりやすく驚いた。
そして、しばらくするとクスクスと笑い出した。
「なるほど。えぇ。わかりました」
「・・・ガリウス・・・?」
「次からもっと注視しておきます」
そういうとにっこりと浮かべる笑みになんだか怒気が含まれているように見えて、思わずたじろぐ。
すいっと視線を逸らした。
「あー・・・祭典までに落ち着けばいいな」
「・・・。出るおつもりで?」
「え?うん。だって僕後継ぎだし」
なんてそれらしいことを言うが実のとことはガリウスを1人で、そういうところに行かせたくないのだ。
そういうと、ガリウスはベッドの淵に掛けると頬を撫でた。
「・・・どうしてもですか?」
「え?」
「初期段階は安定しないと聞きます。子供もですが、・・・シャリオンが心配です」
「ガリウス・・・」
「貴方は無意識に無理をしますから」
「そんなこと、・・・ある?」
納得してはいないが、ガリウスがそういうならそうなのだろうか。
訝し気にしながらそう答えれば、クスリと笑みを浮かべた。
愛おしそうに額に口づけられた。
「あります。貴方だけの体ではないのですから大切に。・・・レオン様がなさるくらいに過保護にしてください」
そう言われてるとおかしくて笑ってしまった。
シャリオンも常々思っているが、やはりレオンが過保護と言うのは誰から見てもそうみえるようだ。
ガリウスがここに来たというなら、レオンもそろそろ来そうだ。
なんて思っていると勢いよく開かれた扉の向こうには噂をしたレオンがたっていた。
「過保護ではない!!」
「っ・・・びっくりした」
「!・・・すまない、大丈夫か?シャリオン」
こちらは息を切らしており、どうやら走ってきたのが分かる。
と言う事はやはり、ガリウスは魔法石を使ったのだろうか?
レオンの問いかけにシャリオンは苦笑を浮かべた。
「大丈夫です。皆して大げさですよ。病気じゃないのですから、今のうちに動いておかないと」
「それで無茶をして、」
声を荒げるレオンに体がびくつくと、ガリウスがシャリオンの肩を抱き寄せた。
覗き込んで来たアメジストが優しくきらめいていて、慰めてくれている様だった。
レオンがそうしたのは心配してくれたのは分かっているが、急な荒い声には体が過剰に反応してしまうようだ。
シャリオンが思っている以上に、体は敏感になっている。
「レオン様。それ以上は私が説明しますので。・・・レオン様をサロンへお連れしろ」
「はい。かしこまりました」
「!ガリウスッ貴様ッ」
「今のシャリオンの前であまり怒鳴らないで下さい。子供に悪影響があったらどうするのです」
「っ」
そういうとレオンは押し黙る。
それでも視線では納得いってないようで、ガリウスを睨んでいた。
「父上。お医者様に見てもらった後で伺いますので、サロンで・・・いえ。お忙しいと思うので執務が終わったら」
「!いや。大丈夫だ。皆がいるし急ぎの件は連絡が来る」
そもそも、2TOPがここに居て良いのだろうか。
シャリオンは気にせず戻る様に言うが、2人とも戻る気は無いようだ。
「私はサロンで待っているが、無理をするんじゃないぞ?」
シャリオンの言葉にレオンはころりと笑みを浮かべると、サロンに向かっていく。
医者に診てもらうのに、何を無理することがあるのだろうか。
「父上は僕をガラス細工か何かだと思っているのかな」
「それ以上に壊れやすいと思っていると思いますよ」
呆れたようにつぶやくシャリオンに、ガリウスはクスクスと笑いながらそう答えた。
「そんな儚いものじゃない」
「ですが、レオン様の言いたいこともわかりますよ。
先ほど言った通り、気を付けてくださいね」
「うん」
「すでに知ってはいると思いますが、我々は核を使うことで子供を授かることができます。
しかし、男女よりも確立が低いこと以外に、体に負担がかかっているのを忘れないで下さいね」
「わかった」
「なので祭典は別室でお待ちいただけますか?」
今の流れで『諦めてくれ』と、言われると思っていた。
しかし、そんな言葉にシャリオンは顔を上げる。
「!・・・行っても、いいの?」
「えぇ。殿下たちにお祝いを言いたいのでしょう?」
そうだ。言われてみればそうだった。
自分の感情が先走っていたのが恥ずかしく頬が熱くなった。
「あー・・・うん」
「・・・」
その様子にガリウスは理由が違うことに気付いたのか、こちらをじっと見てくる。
「大した事じゃ、ないんだ」
「では教えていただけますか?」
「っ・・・」
言いごまかしたら面倒になりそうなのだけは分かる。
「・・・笑わない?」
「はい」
「本当に、つまらないことなんだけど」
「シャリオンのことでつまらないことなど、何一つありません」
それはいかにせ盲目すぎる。
思わず苦笑を浮かべたが、これ以上やきもきさせても仕方がないので、シャリオンは火照った体を冷ますように、手でパタパタと仰いだ。
「はぁ・・・熱い。
その・・・式典とかだと、ガリウスも正装するでしょう?それを他の誰かに見せるの嫌だなって」
「・・・」
「でも、相手が居たら、そんな変な気は起こさないかなって思っただけ。
海外のおk」
「出ましょうか」
シャリオンの『お客様も来る』という、言葉を遮ってガリウスは答えた。
「え?」
「その様に手配します。個室を設けましょう。ただし絶対に無理しては駄目ですよ」
何故急に出て良いと言ったのか分からないが、シャリオンは嬉しそうに頷いた。
「うん!」
「子供が出来たことは安定するまでは黙っておきましょうか」
「そうだね」
そう言いあうとフフっと笑いあった。
まだ平たい状態のおなかあたりをふとみると、そっと撫でた。
ガリウスがその手の上に重ねると、魔力がじんわりと温かくなっていく。
すると、不思議と先ほど感じていた気怠さが薄れていく。
どうやら魔力が流れているような感覚は、子供に流れているからのようだ。
「魔力補充が必要ですね」
「そっか・・・。日中なくなったとき様に、売っているもの買っておくと良いって父様にきいたんだった」
子供が宿ると大量の魔力が必要になる。
それを補うために、魔力だけを込めた魔法石が売られており、それを代用するとシャーリーから教えてもらっている。
シャーリーもシャリオンが出来た時に、その魔法石を持ち魔力切れを防いでいたそうだ。
魔力が切れてしまうと、子供もシャリオンも危なくなるからそれは必須である。
しかし、ガリウスの笑顔がピタリと止まる。
「それは良くないですね」
「え?」
「売られているものは粗悪なものも含まれるのです。なので私の魔力をシャリオンに移します」
「でも」
「大丈夫です。これだけ城から近い距離なのですから容易いですよ。
それにやはり、私の魔力の方が安定しますので」
「だけど」
「それとも市販品の魔力の方がいいと?」
「そんなことはないけど。・・・忙しいじゃないか」
「レオン様の下にいるのですよ?こういうときは有効活用するべきです」
そう言ったガリウスの笑みは少し黒く見えた。
「さぁ。お医者様が見える前に、魔力が切れてしまわないよう、たくさんキスをしましょうか?」
「っ・・・うん」
魔力を体に流されるだけでも魔力は得られるが、やはり体液を交わした方が効率も効果も良い。
昼間からそんなキスをするなんて恥ずかしくも感じたが、そのぬくもりは心地よく夢中になる。
シャリオンは無意識に求めるようにガリウスに強請っていた。
┬┬┬
魔法世界の男性妊娠でありがちな、魔力補充大好きです♥
0
お気に入りに追加
1,127
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
雌化したぼくらは、雄たちの孕み袋
えい
BL
魔女の呪いにより、女が子供を産めなくなった国で、ある計画が実行される。
男を雌化させ孕み袋とする雌化計画。
魔女狩りを行っていた貴族家は、嫡子以外の適齢期の男を雌化させるように言い渡される。
雌化した男と、雌と交尾することしかできない男たちの物語。
※淫語、幼児化、男母乳…
※受、攻どちらも不特定多数
※群像劇
こちらの作品はpixivにも掲載いたします。
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
皆と仲良くしたい美青年の話
ねこりんご
BL
歩けば十人中十人が振り向く、集団生活をすれば彼を巡って必ず諍いが起きる、騒動の中心にはいつも彼がいる、そんな美貌を持って生まれた紫川鈴(しかわすず)。
しかし彼はある事情から極道の家で育てられている。そのような環境で身についた可憐な見た目とは相反した度胸は、地方トップと評される恐ろしい不良校でも発揮されるのだった。
高校になって再会した幼なじみ、中学の時の元いじめっ子、過保護すぎるお爺様、人外とまで呼ばれる恐怖の裏番…、個性的な人達に囲まれ、トラブルしか起きようが無い不良校で過ごす美青年の、ある恋物語。
中央柳高校一年生 紫川鈴、頑張ります!
━━━━━━━━━━━━━━━
いじめ、暴力表現あり。
R-18も予定しています。
決まり次第、別の話にまとめて投稿したいと思います。
この話自体はR-15で最後まで進んでいきます。
━━━━━━━━━━━━━━━
登場人物たちの別視点の話がいくつかあります。
黒の帳の話のタイトルをつけているので、読む際の参考にしていただければと思います。
黒の帳とあまり交わらない話は、個別のタイトルをつけています。
━━━━━━━━━━━━━━━
〜注意〜
失恋する人物が何人か居ます。
複数カプ、複数相手のカプが登場します。
主人公がかなり酷い目に遭います。
エンドが決まっていないので、タグがあやふやです。
恋愛感情以上のクソデカ感情表現があります。
総受けとの表記がありますが、一部振られます。
━━━━━━━━━━━━━━━
追記
登場人物紹介載せました。
ネタバレにならない程度に書いてみましたが、どうでしょうか。
この小説自体初投稿な上、初めて書いたので死ぬほど読みづらいと思います。
もっとここの紹介書いて!みたいなご意見をくださると、改善に繋がるのでありがたいです。
イラスト載せました。
デジタルに手が出せず、モノクロですが、楽しんで頂けたらと思います。
苦手な人は絶対見ないでください、自衛大事です!
別視点の人物の話を黒の帳に集合させました。
これで読みやすくなれば…と思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる