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婚約編

はるかに、根に持ってるようですね・・・。

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とある夜会。
正式に婚約者発表をしてから、すでに何件か参加している。

もう、相手も見つかったし出なくても良いじゃないか。と、思うのだがそうもいかないのが貴族で、次期当主の役目だ。

いつもは、ガリウスをシャリオンの都合で付き合って貰っているのだが、今日はガリウスから今宵の夜会に誘われた。
なんでも、知り合いのアーメント伯爵の夜会で挨拶をしたいらしい。
アーメント伯爵は騎士の中でもパラディンで、第二騎士団団長だ。どんな繋がりかと尋ねたところ、学友らしい。

シャリオンはいつもハイシア家の次期当主で領主の顔で付き合わせているので、ガリウスのお願いに2つ返事でOKした。

ニコニコと笑みを浮かべるガリウスにエスコートされる。

初めて2人で出た夜会では、レオンの背中を見て育ってきたので、自分がエスコートされる事に些か不満があったが、体格差はどうしても埋められない。

それに数をこなしていくうち、ガリウスにエスコートされるのが、とても楽な事に気付いた。
そのため、気にしなくなっていた。
そして、今日もガリウスはシャリオンを甲斐甲斐しく世話してくれる。

「シャリオン。あちらで何か飲み物を頂きませんか?」

それは、ちょっと疲れたな。と、言うようなベストタイミングだった。
ただの政略結婚相手なのに良くもそこまで気を回せるものだと、感心しながら実のところのガリウスが相手になってくれた理由がわかってないのは怖いところだ。

「うん。ちょうどそう思っていたところだ」

なんにしても、今この場で出来るのは、ガリウスの顔を潰さず、にこやかに楽しむくらいだろう。

「シャリオン。お待たせしました」

言われた壁側で休んでいると、ガリウスが本日の主催であるアーメント伯爵を連れてきた。

「ガリウス。・・・これは、アーメント伯爵。先ほどぶりです」

シャリオンは片足を引かせ挨拶をすると、
伯爵もそれに返してくれた。

「2人の時間を邪魔して悪いですね」
「いえ。今日の主催でお忙しいのに、お話できて光栄です」
「悪いと思うなら、様子を見て頂いても良かったのですよ」
「ガリウスっ」
「あはは!ハイシア殿、余程好かれておりますね」
「えっ」
「アルベルト。余計なことは言わないでください」
「はいはい。分かった。・・・すまない、ハイシア殿。ただこれだけは言っておくと、ちょっと面倒臭い男だけど悪い奴じゃ無いんだ」

思い当たる節があってクスクスと笑うシャリオン。

「本人目の前に酷いですね。遠慮と言うものが無いのでしょうか」
「ないね!」
「ふふ。随分仲良さそうですね。アーメント伯爵と」
「ハイシア殿。良ければアルベルトとお呼びください。・・・あ。構わないよな?」

そう伺った先はガリウスである。
自ら確認するところ、ガリウスのことをよく分かっているのだろう。
ジト目でガリウスはアルベルトを見たが、渋々と言った感じで頷いた。

「では、僕のこともシャリオンと」
「駄目です」
「「え」」

この流れで普通そうなる所、否定したのはガリウスで、アルベルトもシャリオンもそう返されるとは思ってなくて、そちらを見てしまう。

「・・・、・・・冗談ですよ」
「いやいやいやいや。今お前本気だったでしょ!」

おかしそうに笑いながらアルベルトが言うが、ガリウスはすっとぼけていたままだった。

「では、改めてシャリオン殿。ガリウスとの婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「シャリオン殿に関しては殊更、狭隘な心の持ち主ですが」
「・・・お前は私を貶しにきたのか?・・・シャリオン。これをどうぞ」
「ありがとう」

持ってきてくれた飲み物を受け取ると、いつもと違う雰囲気に楽しくなってまじまじと見ていると、ガリウスと目があった。

「これのことは気にしないでくださいね」

自分より上の爵位にも関わらず、そんな事を言えるほど仲がいいのだろう。

「・・・、はい」
「なぜ、なにか言いたそうなんです?」
「私のことは気になさらないで、いつも通りにして下さい」

ふっと笑うシャリオン。
疑わせたのは悪いとは思うが、男と話すたびにこれで、その度に「浮気ですか?」と聞かれるのは、確かに心が狭い。ガリウスを見れば視線を逸らした。

「もう、なんかやってしまったのかい?ガリウス」

そう尋ねられるも、ニッコリと「思い当たりません」と、首を傾げだけ。

「ガリウスには良くしてもらってますよ。行き遅れた僕に気を使ってかわざわざ相手になってくれていますし」
「シャリオン・・・」
「シャリオン殿なら選り取り見取りだとかおもいましたが。
ところで、2人は仲良さそうですね。
巷では仲が悪いけど、レオン様の運びで2人が婚約したという噂があるんですよ」

少し驚いたようにいうアルベルトに苦笑を浮かべた。

「見ての通りですよ」
「なるほど。やはり噂はあてにならないな」

ガリウスの返答にアルベルトが肩をすくませた。
それからしばらく話し、積もる話はまた今度となった。
しかし、アルベルトが「最後に一つだけ」と、声を掛けてくる。

「そうだ仕事の話になってしまうのだけど、
シャリオン殿に伺いたい事が」
「僕に?」
「えぇ。最近、王都に出入りしている盗賊団が、そちらに頻繁に出入りしているという情報がありまして。何かご存知ないかと」

なんとも嫌な話だった。
シャリオンが思い出す限りないのだが。
領地に一度で戻って調べた方が良いかもしれない

「情報ありがとうございます。今のところないですがあ、盗賊団の名は?」
「赤蜘蛛です。なに、何もないなら良いのですよ。
では、楽しんでいってください」
「「はい」」

これから起きないと良いんけど。


⬛︎⬛︎


アルベルトが離れると、再びひっきりなしに挨拶にくる貴族達に、疲れを感じてきた頃。

最初の方に挨拶をした、殿下達が揃ってこちらにきた。
その途端腰に手を添えられていた手がより引き寄せられた。

「・・・?」

チラリとガリウスを見上げたが笑みを浮かべたままだ。自分が気にしすぎたのかも知れない。

2人に少し座って話そうかと、ソファーへと連れてかれる。
中央から少し離れ、声は抑えれば漏れない。

「まずは婚約おめでとう。シャリオン。ガリウス殿」
「ありがとう存じます。王太子殿下」
「わざわざ人から離れたのだから、言葉どうにかならない?」

チラリとガリウスを見上げればコクリとうなづく。これすら浮気と取られるわけにはいかないからな。
しかし、それを見ていた王太子殿下は驚いたようだった。

「あれ。シャリオンが尻に敷かれてる感じ?」
「どうやら僕は浮気者だと思われてるみたいだからね。ガリウス?」

恨み節を含ませていえば、クスクスと笑うガリウス。

「まだ誓約のことを拗ねているのですか?
魅力的な伴侶を持って心配するパートナーは普通だと思いますけど」

普通のパートナーは監禁だの、浮気相手の子供を処分するだの、脅さないと思うのだが。
・・・いや、処分から後継にしないに変えてはいたが、その子供が不幸になるのは目に見えている。

「誓約?」
「口約束でも婚約が決まったというのに、呼び出されて幼馴染だからとついて行ってしまう、困ったところがあるんですよ」

しかし、王太子殿下はその言葉に驚いたように呟き、こちらを見てきた。

いや、その反応で驚いたのはこちらだ。
軽率について行ったのはシャリオンだが、王命だと聞いて一旦は安心したのだから。

互いに驚いた後、ハッとしてライガー殿下を見た。すると小さくため息をつき、両手を上げた。

「悪かった。・・・あの時は驚きもあったし、連続で悪いの引いてくるから、心配もしていた。
なにより、ガリウスの政治の手腕も知っていたし、無理矢理なのかと勘繰った。
2人で話せば助けを求めやすいかも知れないと思ってそれで」

「なるほど。わかりました。
シャリオン。無理矢理ではなく、合意である事を証明しましょうか」

ライガー殿下の話を途中でぶった斬るガリウスに、不敬だろ・・・と思わず心の中でツッコミを入れていると、とんでもないものが回ってきた。

「は」
「殿下達の前で誓いましょう?」
「は?!」

なんてこと言うのだとガリウスを見る。
頬が熱くなってきた。
ガリウスの誓いと言ったらキスである。

なんで人前てそんなことっ

思わずガリウスの手を握る。

「っ・・・婚約は通ったのだから、わざわざそんなことする必要ないと思う。
それに、僕たち伴侶仲の問題でしょ?」

その言葉にガリウスが嬉しそうにすると、手を握り返してきた。

「えぇそうですね。・・・これで答えになりますか?ライガー殿下」
「・・・。あぁ」
「ご心配かけたようですが、私達は大丈夫ですので、あまりシャリオンにちょっかい出さないでくださいね」

あまりにもストレートとな言い方に、驚き見上げる。

「ちょっ、ガリウス!」
「婚約者に、元婚約者が近寄るのを面白く思わないわけないでしょう」

あの夜を思い浮かべれば、怒っていたのは理解している。だけどこれほどまでとは思わなかった。

「そうだけど」
「誓約書をお忘れですか?」
「・・・忘れてない、けど」

言葉を詰まらせると、2人のやりとりを見ていたルークが苦笑混じりに指摘する。

「これはガリウスが正しいんじゃない?
2人にその気がなくても、他はそうは思わないだろうし。兄上も気を付けないとね」

ルークが視線で謝罪を求めると、意図を汲んだライガーもそれに従う。

「あぁ。・・・すまない。もう2人きりで会うことはないから、ガリウス殿」
「・・・。ええ。その言葉を聞いて安心いたしました」
「でも、私も安心した。シャリオンにちゃんと良い人ができて。
ガリウス殿聞いたかい?
あまりにも婚約者候補に癖がありすぎて、貴族を諦めて平民から選ぼうとしたんだよ」

おかしそうに笑いながら言うルークをジト目でみる。
聞いたも何も、それを父上に提案していたらガリウスが現れたのだから知っているに決まっている。それを思い出し苦い顔をする。

「えぇ」
「公爵家のパートナーが平民なんて聞いたことが無いよ」
「全くです。シャリオンは目を離すと斜め45度ほどの方向に進み始める」
「あはは!それはいえてるね」
「ルー。否定してくれても良いんじゃないの?」
「まぁ蛇行運転くらいはしてると思うけど。まぁでもガリウスが見てくれるなら安心だ。
2人ならちゃんと言いたいことを言い合えてる見たいだし。ね?」

そう言われてハッとした。確かにガリウスにら言いたいことをちゃんと言えている。
見上げればニコリと笑みを浮かべたガリウスと視線が絡む。

「・・・そう、かも」

確かにそうだった。
比較することではないが、ライガー殿下には遠慮してしまう事があった。

そう思うと意外と良い相手だったのかもしれない。

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