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8.猫が繋ぐ縁……と思いきや元夫が
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そんな私に、急に飛び込んできたスカイラー様からの『問い合わせ』だったのだ。
私は「いったい何事なの」と執事に聞いた。
すると執事は、
「迷いネコを預かっているそうです。こちらの猫ではないかという問い合わせでした」
と端的に答えた。
私は飛び上がった。
「まあっ! リリーが見つかったの? そしてリリーは、スカイラー様に保護していただいたの? 何という偶然なんでしょう! すぐにお迎えに参りますとお伝えして」
私はリリーが見つかってほっとしたと同時に、とんでもない偶然が重なったことに胸が不自然に脈打つのを感じていた。
スカイラー様がリリーを保護……。
しかし、私はそれをどんな気持ちで受け止めてよいのか正直すぐには判断できなかった。
極力心の中から排除していたスカイラー様。
いくら大事なリリーを保護してもらったからといって、私が迎えに行ってスカイラー様に直接会うのは……ちょっと避けたい。
スカイラー様への気持ちは完全に心の奥へしまい込んで蓋をしたのだから。
私は夫に浮気されたバツイチで、憧れの人の前にそんな惨めな姿をさらけ出すなんてしたくない。
あの時の思い出は、どうぞあの時のままに……。
かといって、せっかくリリーが見つかったのに他人任せにはできない気もする。
何かの不手際で、またリリーが行方不明になってしまったら? それはすごく困る!
もう私にはリリーくらいしか慰めてくれるものはいないというのに。
するとその時、部屋の外の方が騒がしくなった。
「何事?」
と私が眉を上げると、下男が勢いよく駆けてきて、状況を把握しようと部屋の外に出た執事に何やら耳打ちするのが見えた。
執事が慌ててパッと対処に向かおうとするので、
「待ちなさい、どうしたの」
と私が少しキツめの口調で執事を呼び止めると、執事は、
「それが、マクギャリティ侯爵様(※元夫のこと)がおみえだそうです!」
と答えた。
私は驚いた。なぜ元夫が? っていうか、これからリリーを迎えにスカイラー様のところを訪ねようと思っていたところだったのに、なんてタイミングで現れるの、あの人は!? うざっ!
私は急に水を差されたような気持ちになり、こんなときに訪ねてくる元夫を煩わしく思った。
「追い返してちょうだい」
と私は執事に短く命じた。
しかし、元夫は頑として帰ろうとしない。
「なぜ帰らないの」
私はスカイラー様のところへ行く準備を始めていたが、元夫が帰ろうとしないという報告を受け、余計にイライラした。
執事は困った顔をしている。
「それが、『リリーちゃんを探しに行くなら自分も同行させろ』と仰っています」
私は呆れ返ってしまった。
どこまでもリリーですのね! それが私の気持ちを逆なでしているとも知らずに!
「断ってくれたんでしょう?」
「もちろんです。でも『人手は一人でも多い方がいいだろう?』とかなんとか仰って居座っています」
私はまた腹立たしく思った。
――ああ、でも、こうして元夫がしゃしゃり出てきたおかげで、スカイラー様への情緒なんかどこかへ吹き飛んでしまいましたわ!
元夫なんかが絡んできたら、しんみりした気持ちになんかなりようがありませんね!
全く私の人生を引っ掻きまわすことにかけちゃ一流なんですから!
今ここで元夫を物理的に強引に追い返したところで、絶対ついてくるんだろうなと思った。
「ああ、もう!」
と私は心の中でぶつくさと文句を百も並べていましたが、ついに観念して元夫の同行を許すことにした。
ええ、ええ!
元夫がスカイラー様のところに同行するなんて、私の人生史上一番の「どういうこと!?」ってヤツですよ。
私の唯一の大事にしたかった思い出の人の元に、私の人生をぶち壊してばっかりの元夫を連れて行くんですからね。
私は思い出の人の前に、3倍増しの惨めな姿をさらすわけです! ああもう、言葉にならないわ。一言で言うなら、カオス!
もう逆に、全てのことにきっぱり諦めがついていいんじゃないかしらね!
私は「いったい何事なの」と執事に聞いた。
すると執事は、
「迷いネコを預かっているそうです。こちらの猫ではないかという問い合わせでした」
と端的に答えた。
私は飛び上がった。
「まあっ! リリーが見つかったの? そしてリリーは、スカイラー様に保護していただいたの? 何という偶然なんでしょう! すぐにお迎えに参りますとお伝えして」
私はリリーが見つかってほっとしたと同時に、とんでもない偶然が重なったことに胸が不自然に脈打つのを感じていた。
スカイラー様がリリーを保護……。
しかし、私はそれをどんな気持ちで受け止めてよいのか正直すぐには判断できなかった。
極力心の中から排除していたスカイラー様。
いくら大事なリリーを保護してもらったからといって、私が迎えに行ってスカイラー様に直接会うのは……ちょっと避けたい。
スカイラー様への気持ちは完全に心の奥へしまい込んで蓋をしたのだから。
私は夫に浮気されたバツイチで、憧れの人の前にそんな惨めな姿をさらけ出すなんてしたくない。
あの時の思い出は、どうぞあの時のままに……。
かといって、せっかくリリーが見つかったのに他人任せにはできない気もする。
何かの不手際で、またリリーが行方不明になってしまったら? それはすごく困る!
もう私にはリリーくらいしか慰めてくれるものはいないというのに。
するとその時、部屋の外の方が騒がしくなった。
「何事?」
と私が眉を上げると、下男が勢いよく駆けてきて、状況を把握しようと部屋の外に出た執事に何やら耳打ちするのが見えた。
執事が慌ててパッと対処に向かおうとするので、
「待ちなさい、どうしたの」
と私が少しキツめの口調で執事を呼び止めると、執事は、
「それが、マクギャリティ侯爵様(※元夫のこと)がおみえだそうです!」
と答えた。
私は驚いた。なぜ元夫が? っていうか、これからリリーを迎えにスカイラー様のところを訪ねようと思っていたところだったのに、なんてタイミングで現れるの、あの人は!? うざっ!
私は急に水を差されたような気持ちになり、こんなときに訪ねてくる元夫を煩わしく思った。
「追い返してちょうだい」
と私は執事に短く命じた。
しかし、元夫は頑として帰ろうとしない。
「なぜ帰らないの」
私はスカイラー様のところへ行く準備を始めていたが、元夫が帰ろうとしないという報告を受け、余計にイライラした。
執事は困った顔をしている。
「それが、『リリーちゃんを探しに行くなら自分も同行させろ』と仰っています」
私は呆れ返ってしまった。
どこまでもリリーですのね! それが私の気持ちを逆なでしているとも知らずに!
「断ってくれたんでしょう?」
「もちろんです。でも『人手は一人でも多い方がいいだろう?』とかなんとか仰って居座っています」
私はまた腹立たしく思った。
――ああ、でも、こうして元夫がしゃしゃり出てきたおかげで、スカイラー様への情緒なんかどこかへ吹き飛んでしまいましたわ!
元夫なんかが絡んできたら、しんみりした気持ちになんかなりようがありませんね!
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今ここで元夫を物理的に強引に追い返したところで、絶対ついてくるんだろうなと思った。
「ああ、もう!」
と私は心の中でぶつくさと文句を百も並べていましたが、ついに観念して元夫の同行を許すことにした。
ええ、ええ!
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私は思い出の人の前に、3倍増しの惨めな姿をさらすわけです! ああもう、言葉にならないわ。一言で言うなら、カオス!
もう逆に、全てのことにきっぱり諦めがついていいんじゃないかしらね!
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