まなざしのおくりもの

葉月百合

文字の大きさ
上 下
1 / 1

まなざしの贈り物

しおりを挟む
まなざしのおくりもの

 

 おおきなやまの ひろいもりのおくに
 動物の子どもたちの病院がありました
 

 こひつじくんは、まいにち、ベッドのうえです。

 おひさまがのぼって、あさがきました。

「おはよう。こひつじくん。」

 りすのかんごしさんが、しょくじをはこんでくれます。

「ママのカレーライスがたべたいなあ。」

 ひとりぼっちの、ごはんです。

 こひつじくんは、むねのおくのほうが、しょんぼりします。

 

「おはよう、こひつじくん。」

 くませんせいの、しんさつのじかんです。

「だいじょうぶだよ。」

 くませんせいは、にこっとほほえんでくれます。

 くませんせいのしんけんでやさしいまなざしをみると、こひつじくんは、むねのおくのほうが、ほっとします。

 

おひるに、ママがおみまいにきてくれました。

 おみやげは、きょうだいやおともだちからのおてがみです。

「ありがとう。」

 うれしいきもちといっしょに、もうひとつのきもちがちょっぴり。

 だいすきなパパがおしごとでいそがしくって、しょんぼり。

 だいすきなママがげんきがなくって、しょんぼり。

 だいすきなきょうだいやおともだちがうらやましくって、しょんぼり。

こひつじくんは、むねのおくのほうが、しょんぼりしてきます。

 

ママがかえったあと、こひつじくんは、おとなりのことらくんに、あいにいきました。

ことらくんは、ねっしんにえをかいています。

「なにしてるの?」

「ママのハンバーグのえをかいてるの。」

 ことらくんは、えがおです。

「どうして?」

「えをまくらのしたにおいてねむると、ゆめにでてくるんだって!こひつじくんも、やってみて。」

 ことらくんのやさしいまなざしをみたら、こひつじくんは、むねのおくのほうが、ほっとしました。

 

 つぎにこひつじくんは、こうさぎちゃんにあいにいきました。

 こうさぎちゃんも、おとなりさんです。

「なにしてるの?」

「ママのにんじんケーキのえをかいてるのよ。」

 こうさぎちゃんは、えがおです。

「このえをまくらのしたにおいてねむると、ゆめににんじんケーキとママがでてくるの。やってみて!」

こうさぎちゃんのやさしいまなざしをみたら、こひつじくんは、むねのおくのほうが、ほっとしました。

 

 こひつじくんは、ママのカレーライスのえをかきました。

 

 おつきさまがのぼって、よるがきました。

 こひつじくんは、えをまくらのしたにおいて、わくわくしながらねむりにつきました。

 

 すやすや、すやすや。

 あっというまに、ゆめのなかです。

 おやおや。あれれ。

 ことらくんが、ハンバーグをもぐもぐ、もぐもぐ。

 おくちにいっぱい、ほおばっています。

「こひつじくんも、たべる?おいしいよ!」

 おやおや。あれれ。

 こうさぎちゃんが、にんじんケーキをもぐもぐ、もぐもぐ。

 おくちにいっぱい、ほおばっています。

「こひつじくんも、たべる?おいしいよ!」

おやおや。あれれ。

くませんせいがカレーライスをもっています。

「さあ、めしあがれ。」

 くませんせいが、にっこりわらいました。

 ママのカレーライスのにおいがします。

「いただきます!」

 もぐもぐ、もぐもぐ。

 おいしい!

 ママのあじだ!

 

 おひさまがのぼって、あさがきました。

 こひつじくんは、かがみをみて、にっこり。

 ゆうべみた、ゆめのごはんをおもいだすと、たのしいきもちになります。

 ゆめのなかで、ことらくんも、こうさぎちゃんも、くませんせいも、にこにこ、にこにこえがおでした。

 こひつじくんは、むねのおくのほうが、ぽかぽかします。

 かがみのなかのこひつじくんも、みんなとおなじ、やさしくてあたたかいまなざしをしていました。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

しろのおめかし

葉月百合
児童書・童話
わたしの名前はしろ。 いまはちょっと、土が付いて茶色がかっているけど。

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

世にも奇妙な日本昔話

佐野絹恵(サノキヌエ)
児童書・童話
昔々ある所に お爺さんと お婆さんが住んでいました お婆さんは川に洗濯物へ お爺さんは山へ竹取りへ 竹取り? お婆さんが川で 洗濯物をしていると 巨大な亀が泳いで来ました ??? ━━━━━━━━━━━━━━━ 貴方の知っている日本昔話とは 異なる話 ミステリーコメディ小説

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

魔王の飼い方説明書

ASOBIVA
児童書・童話
恋愛小説を書く予定でしたが 魔界では魔王様と恐れられていたが ひょんな事から地球に異世界転生して女子高生に拾われてしまうお話を書いています。 短めのクスッと笑えるドタバタこめでぃ。 実際にあるサービスをもじった名称や、魔法なども滑り倒す覚悟でふざけていますがお許しを。 是非空き時間にどうぞ(*^_^*) あなたも魔王を飼ってみませんか? 魔王様と女子高生の365日後もお楽しみに。

小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。 歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。 大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。 愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。 恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。 扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

Dream of a Cradle外伝 導きの牛

叶 望
児童書・童話
牛飼いの少年が住む鈴の丘のふもとの村ではとある異変が起きていた。 買い出しに村へと降りた少年はそこで神隠しが起こっていることを知った。 昔作ったDream of a CradleのGAME内で読むことが出来る外伝。 GAMEに登場する導き牛カウベル君の誕生秘話。 ※ゲーム本編とは関係のない内容になっています。 気軽にお読みいただければ幸いです。 この作品は「小説家になろう」及び「nono&mimiのお部屋」にも掲載しています。

処理中です...