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<中都 文乃> 1章 / 先生、私じゃダメなんですか。
#2 先生、どうしてなんですか
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「先生」
「な、中都、さん……」
先生は私が声をかけるとビクッと方を震わせるようになってしまった。
怖がらせるつもりはなかったのだけれど……どうやら結果的にそうなってしまったようだった。
「……先生、ここ……分からなくて。教えてください。」
私は先生にそう訪ね、持っていたノートを広げてここですと指を指す。
先生は少し警戒を解き、私の指が指すその文字列を見た。
その瞬間先生は耳まで真っ赤にして私の方を見てきた。
「なっなななな、中都さん!?なんですか!!これは!!!」
「何と言われましても……先生がみているそのままです。」
先生は、は……と気の抜けた声を出して私のことを見つめた。
私は好きです。と書いてあるノートを先生にみてもらったのだ。
この前は廊下の真ん中で告白してしまったからあんな態度を取られてしまったのだろうという、私が自分の落ち度について研究した結果こうすることとなった。
先生の反応はあまり変わってなさそうな気がするが、この前よりは少し顔の赤みは薄いかもしれない。
「先生、私と付き合ってください。」
私は追い打ちをかけるかのごとく言葉を畳み掛ける。
周りに生徒はいるが、ざわついてこちらの会話なんて聞こえていないだろうから多少はいいだろう。
「先生。私は先生のことが……」
と言いかけた時、先生は私の方をガシッと掴み、私の目をその綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめて私に言った。
「中都さん、あなたには僕なんかよりもっと素敵でいい人がいいます!……なので、僕のことは……」
と先生が言いかけていたが、私の気持ちを踏みにじるようなその言葉に少し嫌悪感を抱き、途中で言葉を遮るように先生の後ろにあった壁に手を付き、先生を逃がさないようにして距離を詰めた。
「先生、私は先生が好きです。……教師は、生徒に向き合ってくれない生き物なんですか。」
「う…………」
先生は困ったような眉を下げてしょんぼりとしてしまった。
……と同時に、周りの生徒が私達を見てざわつき始めた。
なぜざわつき始めたのか分からない。今は何もおかしいことはしてないと思うのだけど……
ちらっと先生の方を見ると先生も周りのざわつきに気づいたのかなにやら困惑している様子で私を見た。
「~っ……!!!なっ、中都さん!!」
「はい、なんですか先生。」
先生が私のことを呼んでくれる。
私は条件反射で先生の声に応えた。
先生は私から顔を背け、少し震えている情けないその声で言葉を続けた。
「そっ、その手を壁から離してください!!」
「……あ、すみません。」
ずっと先生と至近距離になってしまっていたことに気づき、パッと手を離して先生を見上げる。
先生は一瞬ほっとした顔をしたかと思うと、失礼します!とへこたれた声で挨拶をし、そのままどこかへ走り去ってしまった。
私はその先生の後ろ姿を眺めることしか出来ずに1人で突っ立っていた。
……廊下を走るのは禁止なんですよ、先生。
***
私の、私の何がいけないのだろうか。
見出しなみは人並みにちゃんとしている。
勉強も目も当てられないほど酷いという訳では無い。
長所は自分では分からないけど、目立った欠点は無いはずの一体私の何が……
悶々とそんなことを考える日々が続いたが、私はまだ答えを出せずにいた。
もっとテストの点数をあげるべきなのだろうか。
それとも先生好みの見た目になるべきなんだろうか。
……分からない。
…………
………………先生、好み……?
…………あぁ、そうか。気づいてしまった。
私は先生のことがなにもわからない。
何が好きなのか。何が嫌いなのか。
どんな調味料が好みで、どんな音楽が好きか。
……どんな女性がタイプか。
こんなに大切なことを見落としていたなんて、私は全く馬鹿だ。大馬鹿者だ。
早速先生に聞きに行かねば……と思ったが、あいにく今は授業中。
先生は他クラスの授業をしに行っていて私の近くにはいない。
……ずっと、私の近くにいてくれたらいいのに。
なんて傲慢な考えが私の頭によぎる。
先生が誰かの恋人になるなんて耐えられない。
私が……先生の彼女に……!!
「……文乃。ちゃんと授業受けなきゃダメだぞ。」
「!?!?」
人間本当に驚いた時は声が出ないというのは本当だ。
私は突然後ろから降ってきたその声に酷く驚き、声も出せずに固まってしまった。
数秒たって後ろを振り返ってみると……そこには私の兄……中都琉斗がそこに立っていた。
「お兄ちゃん……驚かさないでください……」
「べっつに驚かしてはないだろ。」
中都琉斗……私のお兄。
といっても、血の通った兄妹という訳では無い。
まぁその辺の話はめんどくさいからどうでもいいけど。
お兄は現在、私の学校に教育実習生という立場で滞在している。
兄妹のいる学校は……あまり落ち着かないものだ。
私は周りの生徒になるべくバレないようにお兄ちゃんに囁く。
「何の用ですか……」
「いや別に……なんか上の空だったから。」
……バレてしまっていた。
確かに、最近は先生のことしか頭になくて、あまり授業が頭に入っていないような気がする。それは良くない。
ちゃんと授業に集中せねば……
私は1人で考えを巡らさてピシッと背筋を伸ばし、黒板に焦点を合わせた。
「……そういや、最近文乃と相高先生が付き合ってるって噂をよく耳にするんだけど……それほんと?」
ついでにこっちの方までばれてしまっていたようだ。
……まぁ、隠す気もなかったから別にいいんだけれど。
「……違います。私が先生のことを好いているだけです。」
私はお兄の方を見向きもせずにそう小声で答えた。
後ろめたいものでもないし、ここははっきりと言っておいて大丈夫だろうと思う。
お兄は数秒黙ったあと、私に衝撃の事実を振りかけた。
「……俺聞いちゃったんだけど、相高先生って保健室の先生……滝瀬先生のこと好きらしいぞ」
……へ?
私はその言葉を信じることが出来なかった。
……いや、信じたくなかったのかはか分からないが、とにかく私は動揺した。
私は黒板から思わず視線をお兄の方に向け、口をパクパクと開き、持っていたシャーペンの芯をポキッと折ってしまった。
「な、中都、さん……」
先生は私が声をかけるとビクッと方を震わせるようになってしまった。
怖がらせるつもりはなかったのだけれど……どうやら結果的にそうなってしまったようだった。
「……先生、ここ……分からなくて。教えてください。」
私は先生にそう訪ね、持っていたノートを広げてここですと指を指す。
先生は少し警戒を解き、私の指が指すその文字列を見た。
その瞬間先生は耳まで真っ赤にして私の方を見てきた。
「なっなななな、中都さん!?なんですか!!これは!!!」
「何と言われましても……先生がみているそのままです。」
先生は、は……と気の抜けた声を出して私のことを見つめた。
私は好きです。と書いてあるノートを先生にみてもらったのだ。
この前は廊下の真ん中で告白してしまったからあんな態度を取られてしまったのだろうという、私が自分の落ち度について研究した結果こうすることとなった。
先生の反応はあまり変わってなさそうな気がするが、この前よりは少し顔の赤みは薄いかもしれない。
「先生、私と付き合ってください。」
私は追い打ちをかけるかのごとく言葉を畳み掛ける。
周りに生徒はいるが、ざわついてこちらの会話なんて聞こえていないだろうから多少はいいだろう。
「先生。私は先生のことが……」
と言いかけた時、先生は私の方をガシッと掴み、私の目をその綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめて私に言った。
「中都さん、あなたには僕なんかよりもっと素敵でいい人がいいます!……なので、僕のことは……」
と先生が言いかけていたが、私の気持ちを踏みにじるようなその言葉に少し嫌悪感を抱き、途中で言葉を遮るように先生の後ろにあった壁に手を付き、先生を逃がさないようにして距離を詰めた。
「先生、私は先生が好きです。……教師は、生徒に向き合ってくれない生き物なんですか。」
「う…………」
先生は困ったような眉を下げてしょんぼりとしてしまった。
……と同時に、周りの生徒が私達を見てざわつき始めた。
なぜざわつき始めたのか分からない。今は何もおかしいことはしてないと思うのだけど……
ちらっと先生の方を見ると先生も周りのざわつきに気づいたのかなにやら困惑している様子で私を見た。
「~っ……!!!なっ、中都さん!!」
「はい、なんですか先生。」
先生が私のことを呼んでくれる。
私は条件反射で先生の声に応えた。
先生は私から顔を背け、少し震えている情けないその声で言葉を続けた。
「そっ、その手を壁から離してください!!」
「……あ、すみません。」
ずっと先生と至近距離になってしまっていたことに気づき、パッと手を離して先生を見上げる。
先生は一瞬ほっとした顔をしたかと思うと、失礼します!とへこたれた声で挨拶をし、そのままどこかへ走り去ってしまった。
私はその先生の後ろ姿を眺めることしか出来ずに1人で突っ立っていた。
……廊下を走るのは禁止なんですよ、先生。
***
私の、私の何がいけないのだろうか。
見出しなみは人並みにちゃんとしている。
勉強も目も当てられないほど酷いという訳では無い。
長所は自分では分からないけど、目立った欠点は無いはずの一体私の何が……
悶々とそんなことを考える日々が続いたが、私はまだ答えを出せずにいた。
もっとテストの点数をあげるべきなのだろうか。
それとも先生好みの見た目になるべきなんだろうか。
……分からない。
…………
………………先生、好み……?
…………あぁ、そうか。気づいてしまった。
私は先生のことがなにもわからない。
何が好きなのか。何が嫌いなのか。
どんな調味料が好みで、どんな音楽が好きか。
……どんな女性がタイプか。
こんなに大切なことを見落としていたなんて、私は全く馬鹿だ。大馬鹿者だ。
早速先生に聞きに行かねば……と思ったが、あいにく今は授業中。
先生は他クラスの授業をしに行っていて私の近くにはいない。
……ずっと、私の近くにいてくれたらいいのに。
なんて傲慢な考えが私の頭によぎる。
先生が誰かの恋人になるなんて耐えられない。
私が……先生の彼女に……!!
「……文乃。ちゃんと授業受けなきゃダメだぞ。」
「!?!?」
人間本当に驚いた時は声が出ないというのは本当だ。
私は突然後ろから降ってきたその声に酷く驚き、声も出せずに固まってしまった。
数秒たって後ろを振り返ってみると……そこには私の兄……中都琉斗がそこに立っていた。
「お兄ちゃん……驚かさないでください……」
「べっつに驚かしてはないだろ。」
中都琉斗……私のお兄。
といっても、血の通った兄妹という訳では無い。
まぁその辺の話はめんどくさいからどうでもいいけど。
お兄は現在、私の学校に教育実習生という立場で滞在している。
兄妹のいる学校は……あまり落ち着かないものだ。
私は周りの生徒になるべくバレないようにお兄ちゃんに囁く。
「何の用ですか……」
「いや別に……なんか上の空だったから。」
……バレてしまっていた。
確かに、最近は先生のことしか頭になくて、あまり授業が頭に入っていないような気がする。それは良くない。
ちゃんと授業に集中せねば……
私は1人で考えを巡らさてピシッと背筋を伸ばし、黒板に焦点を合わせた。
「……そういや、最近文乃と相高先生が付き合ってるって噂をよく耳にするんだけど……それほんと?」
ついでにこっちの方までばれてしまっていたようだ。
……まぁ、隠す気もなかったから別にいいんだけれど。
「……違います。私が先生のことを好いているだけです。」
私はお兄の方を見向きもせずにそう小声で答えた。
後ろめたいものでもないし、ここははっきりと言っておいて大丈夫だろうと思う。
お兄は数秒黙ったあと、私に衝撃の事実を振りかけた。
「……俺聞いちゃったんだけど、相高先生って保健室の先生……滝瀬先生のこと好きらしいぞ」
……へ?
私はその言葉を信じることが出来なかった。
……いや、信じたくなかったのかはか分からないが、とにかく私は動揺した。
私は黒板から思わず視線をお兄の方に向け、口をパクパクと開き、持っていたシャーペンの芯をポキッと折ってしまった。
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