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 カリーナはセシルと婚約をし、数か月が過ぎようとしていた。
 素敵で家柄もよく、結婚相手の条件としては十分のはずなのだが……
 カリーナから見れば粗が目立つ。
 いや、粗探しをする彼女だからこそ気になるといった方が正しいのかもしれない。

 セシルは少し傲慢なところがあるようで、そこが鼻につく。
 それにナルシストだし、命令に近い口調で話してくる。

 そして何より問題なのは、自分の母親を大事にしすぎるところだ。
 別にマザコンという程ではなかったが、カリーナはそこが気に入らなかった。
 自分を一番大事にしなければいけないのに、何故母親を大事にする?

 母に気を使うセシルに腹を立てるカリーナ。

「どうしたんだ、カリーナ」
「…………」
「何か言ってくれないと私には分からない。ハッキリ言ってくれ」
「なんでもありませんわ」

 何故自分が腹を立てているのか。
 それに気づかないセシルにまた腹を立てるカリーナ。
 
 セシルの自宅で食事をしていたのだが……そんなことは気にしないカリーナ。
 空気がどれだけ悪くなろうとも自分の気分、自分の感情が一番なのだ。

「どうかしたのかしら、カリーナさん」
「本当になんでもありませんわ。お気になさらず」

 セシルの母親はカリーナのことをずっと気にしているが、カリーナはそんな彼女を見て心の中で嘲わらう。

 ずっとそうやって私の機嫌をうかがっていればいいわ。
 あんたがいる所為でセシル様は私に百%愛情を注げないのだから。

 その日の食事は、とことんまで空気が悪い中終わりを告げる。

 食事が終わるや否や、カリーナはセシルの屋敷を飛び出し帰路に着く。
 馬車の中で憤慨し、大暴れする。

「ああ、もう! なんなのよあの男は! マザコン、気持ち悪いわ! あんな男だとは思ってもみなかった!」

 一つ気にいらない部分が見当たると、男の何もかもが嫌になる。
 カリーナはそんな性格の女である。

 一通り暴れて気が済んだのか落ち着きを取り戻すも、湧き上がる不平不満は抑えきれない。
 こんな時話を聞いてくれる友人がいればいいのだが……友人たちはカリーナを嫌がり彼女を避ける者ばかり。

 そこでカリーナは考える。

「……エリーゼに話を聞いてもらおう。ああは言っていたけれどなんだかんだ言って私たちは友達だしね」

 面倒見の良いエリーゼ。
 彼女の態度はいつしかカリーナを甘えさせる結果となっていた。
 そしてカリーナは今回もいつものように許してくれると考えていたのだ。

 こうしてまたエリーゼの元に向かうカリーナ。
 しかしまさかエリーゼの家でエリックに好意を寄せることになるとは、この時のカリーナは夢にも思っていなかった。
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