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 屋敷を失ったかと思うと局地的な大雨が降り、バージリアンの町は水に沈んでしまった。
 どうしようもなくコリンズの町に避難していたジークたち。
 町に住んでいた人たちは奇跡的に一人として死なずに済んでいたが、表情を絶望に染めて落ち込んでいる。

「……レイア。どういうことだ? これはどういうことなんだ!?」
「私にも分かりません! こんなの……私には関係ありませんわ!」
「だが君は幸運の女神のはずだ! なのに何故こんなことに……」

 コリンズの屋敷で頭を抱えるジーク。
 レイアも項垂れ、現実に頭を痛めていた。
 
 そんな時である。
 レイアの叔父があることを彼らに伝えた。

「レイア……サラの話は聞いたか?」
「サラ? サラは生きていますの?」
「ああ……エルムルドという村は聞いたことはあるか?」
「エルムルド? ……確か、小さな田舎村でしたわよね」

 叔父は首肯し、信じられないといった表情で話を続ける。

「サラは今あの村にいるらしいんだが……どうもサラが世話になっているエリオという男が常識では考えられないような勢いで金持ちになり、その上貴族にまで成り上がってしまったようだ」
「……ええ?」

 その話にレイアは呆然とし、ジークはハッする。

「まさか……幸運の女神というのは……」
「そんな! そんなわけありません! 幸運の女神は私で、サラは貧乏神のはずです!」
「だが……この現状はどういうことだ? どう考えてもサラが幸運の女神としか思えない……そうとしか考えられない!」

 ジークはまるで詐欺師にでも騙されたような顔をし、レイアを見下ろす。
 
 この女が言っていたことは嘘だったのだ。
 サラが貧乏神と言ったが、本当は幸運の女神だったんだ。
 信じられない……もうこの女のことは信用できない!

「すまないが、もうお前と上手くやっていく自信が無い……」
「そんな……まさか、私を捨てるというのですか!?」
「お、お前といると不幸になるばかりだ! お前は貧乏神……僕から全てを奪った元凶だ!」

 そう言い放つジーク。
 レイアは憤怒の表情でジークを睨み付ける。

「全部私の所為にしないでくださいませ! こうなったのも、あなた自身の運が無かったということじゃありませんか?」
「…………」

 そもそもがレイアを娶ったのが原因ではあるが、そのレイアを選んだ自分自身にも運が無かったのではと悩み始めるジーク。

 二人は黙ってしまい、これからどうするかを考え始める。

「……サラに会いに行こうと思う」
「……サラにですか?」
「ああ。彼女なら、バージリアンに再び繁栄をもたらしてくれると思う。今更遅いかもしれないが、もう一度彼女にかけ合ってみる」
「……なら、私も一緒に行かせてもらいます。私はあなたと別れるつもりはありませんから。繁栄するためにサラが必要、ということだけですよね?」
「…………」

 サラと一緒になりたい。
 今更ながらそう願うジーク。
 
 レイアは沸々と怒りの感情を沸かせていた。

 あいつが幸運の女神だなんて許せない……
 あいつ一人だけ幸せになっているなんて許せない!
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