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 ジーク様と知り合って、三か月が経過しようとしていた。
 彼は優しいお方だ。
 いつも向こうから出向いて下さり、いつも私のことを気にかけてくれる。
 美形であり優しく、本当に素敵な人。

 両親はジーク様が来る時は、私を普通の扱いをする。
 これまでの態度がジーク様にバレないよう、ちゃんと娘として扱ってくれていた。
 だからジーク様が来るだけで、私はホッとする。

 だけど彼の変化が訪れた。

「君の双子の妹……レイアだったかな?」
「はい。レイアがどうかいたしましたか?」
「いや……」

 ほんのり頬を染めるジーク様。
 嫌な予感がした。
 落ち着かない。
 胸がザワつく。

 レイアの名前を出して、何故そのような反応をするの?

 ジーク様が屋敷を出て行くと、少し時間を空けてレイアも外へと出て行く。

「…………」

 私には真実を確かめる勇気はなかった。
 二人はきっと今外で会っているのだろう。
 けれど、私は自室へと駆けこみ、毛布にくるまるだけで何も出来なかった。

 一睡もできない夜を過ごし、朝からレイアの世話をする。
 顔を合わすなり彼女は勝ち誇ったような表情を私に向けていた。

「サラ。おはよう」
「……おはよう」

 レイアは私に服を着させてもらいながら厭らしい笑みを浮かべている。

「ねえサラ。昨日ジーク様、何と仰っていたと思う?」
「……さぁ」
「私のことが綺麗なんだって。先にサラと出逢ったけれど、明るい私の方が綺麗だって言ってたわよ」
「…………」

 私はその言葉に胸が抉られるような気分だった。
 分かっていたけど……
 レイアの方が魅力的だとは思っていたけれど、ジーク様は私のことを見ていてくれると思っていた。
 だけどそれは間違いだったのだ。
 彼は、レイアに好意を抱いてしまった。

 私の物を欲しがるレイアが誘惑したのだろう。
 あっさりと陥落してしまったようだ。
 嫌な予感は的中してしまった。

 レイアがジーク様を欲しがった時から、この結末は決まっていたのだ。
 私にはどうしようもない。
 まるで運命のようにも思える。

「ま、先にサラと出逢ったのが問題だっただけ。ちょっと順番を間違えただけよ。分かるでしょ?」

 レイアが挑発的にそんな風に言う。
 そしてそれから一週間後。
 ジーク様が屋敷にやって来た。

 いつもの穏やかな顔ではない。
 少し私に対して怒りをも覚えているような表情だった。

 ジーク様の傍らにはレイアがおり、彼の後ろでニヤニヤ笑っている。
 私は苛立ちを覚えるも、それよりジーク様が何を言うのかが気になりそれどころではなかった。

 そしてジーク様は私を睨みつけながら、口を開く。

「サラ・コリンズ。君とは婚約破棄させてもらう」
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