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第二章
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それは突然のことだった。
メロディアの国から兵士の人たちがやって来て、そしてゼロスたちと対面し、彼らは腰を抜かしてしまう。
「な、なんでこんなところに魔族が!?」
「えっと……なんだか仲間が増えちゃって」
「増えたって……魔族ですよ!」
オーガたちはメロディアの兵士たちに敵対心を抱いているらしく、まさに鬼の形相で彼らを睨む付ける。
怯える兵士たちは、オーガから離れ、私の前に膝まつく。
「お、お願いですリナ様……我々を殺さないでください!」
「いや、殺す気なんてないから。なんで殺さないといけないの?」
「リナ殿の命令とあらば、いつでも暗殺いたしますが?」
「ゼロスはちょっと黙ってて……」
ゼロスは私の役に立とうとそんなことを言ってくれたらしいが……迷惑でしかない。
そんなこと望んでないよ、私は。
「とにかく、襲う気も傷つける気も殺す気もないから安心して」
「は、はぁ……」
彼らの中の代表であろう人物が、起き上がって私を見下ろす。
髭を生やした中年の人で……その瞳には敵意が滲んでいるように思えた。
「え……どうかしたの?」
「…………」
踵を返す兵士。
そして他の仲間に「帰るぞ」と一言だけ命令を下す。
その人に従う他の兵士たち。
彼らはそのまま、私たちの前から姿を消してしまった。
「リナ」
「サリア」
兵士たちの姿を遠くから見ていたようで、サリアがこちらに駆けて来る。
どこか安堵した表情を浮かべており、私を握ってきた。
「あの雰囲気……リナが傷つけられるかもって心配してわ」
「ちょっと怖い顔をしてたけど、攻撃するつもりだったのかな?」
「外から見たら、そんな顔にしか見えなかったわよ」
サリアはため息をついて言う。
「ま、戦ったらリナが絶対勝つんだろうけどね」
「最近益々強くなってきたから」
ステータスの上昇だけでなく、【マイホーム】のスキルレベルが上がったことによりさらに恩恵を受けている私。
強さは少し前とは比べ物にならないぐらい常勝していた。
自分で作っておいてなんだが、ダンジョンの効果は素晴らしいと思う。
オーガの皆も、そしてライムもドンドンと実力を向上させている。
「子供たちも結構強くなったみたいね。程度の低いモンスターなら、もう倒せるレベルだって、クマが言ってたわ」
「遊び半分だけど、半分は真剣だし、楽しく成長できてるみたいだね」
「将来はどうなるんだろ? もしかしたら、イドより強くなっちゃったりして」
サリアの言葉に、私は頬を膨らませる。
「イドは誰にも負けないもん。たとえ子供でイドよりは強くなれないよ」
「あはは。さすがに彼より強くなれるとは思っていないわよ、私も」
私とサリアは同時に笑い出す。
「イドより強くなれる可能性がないとは言わないけど、相当訓練が必要になるよね」
「それこそ、人間やめるぐらいまで自分を追いつめられる人じゃないと無理ね」
私たちが話をしていると、クマがふわふわ飛んでこちらに近づいて来る。
「リナ様」
「どうしたの、クマ?」
「いや、さっきの兵士たちは何をしに来たんだろうね?」
「さあ……話をする前に帰っちゃったから」
「……ちょっと嫌な予感がするよ」
「それは私もだわ」
クマの話を聞いていたサリアが言う。
「用事があったはずなのに、何も言わないまま帰ってしまった。それは何故?」
「何故……ゼロスたちがいたから?」
理由としてはそれぐらいしか思いつかない。
だって他には特に変わったことはないし。
「俺たちは何もしていないのですがね」
「何もしていなくても、脅威に感じることはあるだろ? 見た目で判断する人も少なくないしね」
「なるほど……では、無暗に人を傷つけるようなことはしないと、奴らの町まで伝えに行ってこようか」
「それは大問題になるから却下。いいから皆、大人しくしてて」
クマが言ったことに、とんでもない返事をしたゼロス。
私は咄嗟にとめたけれど……そんなことをしたら町がパニックになってしまう。
クマが言っている通り、人は見た目で判断することが多々ある。
ゼロスたちは悪い人たちではない。
無暗に人を傷つけることもないし、気のいい人だって多い。
でも、人間の住む世界に魔族がいて……それを見て人はどう思うか。
残念だけど、いい感情は抱かないだろう。
今、人間と魔族は戦いの真っ最中だ。
それこそ仇だと考える人も少なくないと思う。
だけど、クマが言ったみたいに、何も言わないで帰って行ったことが気になる。
何を考えているのかが分からず、不安が胸に迫る。
「おい、どうした。顔色悪いじゃねえか」
家から出て来たイドが、私の顔色を心配してくれている。
イドは龍族だけど……見た目は普通の人間にしか見えないから、皆勘違いしてたんだろうな。
じゃあ、勘違いをしなかった人はどう思うのか?
それがやはり不安である。
「どうもしないよ。ね、このまま散歩でもしない?」
「ああ良いぜ。魔族の領地だろうが巨人族の領地だろうが、どこでも連れてってやるぜ」
「そこまで遠出するつもりはないよ?」
私の独断と偏見だけれど、天下無双であるイド。
イドぐらい強くて物事を簡単に捉えられたら、楽でいいだろうな。
私は旦那さんの顔を見上げ、笑顔を浮かべる。
イドは片頬を上げ、笑顔に応えてくれた。
メロディアの国から兵士の人たちがやって来て、そしてゼロスたちと対面し、彼らは腰を抜かしてしまう。
「な、なんでこんなところに魔族が!?」
「えっと……なんだか仲間が増えちゃって」
「増えたって……魔族ですよ!」
オーガたちはメロディアの兵士たちに敵対心を抱いているらしく、まさに鬼の形相で彼らを睨む付ける。
怯える兵士たちは、オーガから離れ、私の前に膝まつく。
「お、お願いですリナ様……我々を殺さないでください!」
「いや、殺す気なんてないから。なんで殺さないといけないの?」
「リナ殿の命令とあらば、いつでも暗殺いたしますが?」
「ゼロスはちょっと黙ってて……」
ゼロスは私の役に立とうとそんなことを言ってくれたらしいが……迷惑でしかない。
そんなこと望んでないよ、私は。
「とにかく、襲う気も傷つける気も殺す気もないから安心して」
「は、はぁ……」
彼らの中の代表であろう人物が、起き上がって私を見下ろす。
髭を生やした中年の人で……その瞳には敵意が滲んでいるように思えた。
「え……どうかしたの?」
「…………」
踵を返す兵士。
そして他の仲間に「帰るぞ」と一言だけ命令を下す。
その人に従う他の兵士たち。
彼らはそのまま、私たちの前から姿を消してしまった。
「リナ」
「サリア」
兵士たちの姿を遠くから見ていたようで、サリアがこちらに駆けて来る。
どこか安堵した表情を浮かべており、私を握ってきた。
「あの雰囲気……リナが傷つけられるかもって心配してわ」
「ちょっと怖い顔をしてたけど、攻撃するつもりだったのかな?」
「外から見たら、そんな顔にしか見えなかったわよ」
サリアはため息をついて言う。
「ま、戦ったらリナが絶対勝つんだろうけどね」
「最近益々強くなってきたから」
ステータスの上昇だけでなく、【マイホーム】のスキルレベルが上がったことによりさらに恩恵を受けている私。
強さは少し前とは比べ物にならないぐらい常勝していた。
自分で作っておいてなんだが、ダンジョンの効果は素晴らしいと思う。
オーガの皆も、そしてライムもドンドンと実力を向上させている。
「子供たちも結構強くなったみたいね。程度の低いモンスターなら、もう倒せるレベルだって、クマが言ってたわ」
「遊び半分だけど、半分は真剣だし、楽しく成長できてるみたいだね」
「将来はどうなるんだろ? もしかしたら、イドより強くなっちゃったりして」
サリアの言葉に、私は頬を膨らませる。
「イドは誰にも負けないもん。たとえ子供でイドよりは強くなれないよ」
「あはは。さすがに彼より強くなれるとは思っていないわよ、私も」
私とサリアは同時に笑い出す。
「イドより強くなれる可能性がないとは言わないけど、相当訓練が必要になるよね」
「それこそ、人間やめるぐらいまで自分を追いつめられる人じゃないと無理ね」
私たちが話をしていると、クマがふわふわ飛んでこちらに近づいて来る。
「リナ様」
「どうしたの、クマ?」
「いや、さっきの兵士たちは何をしに来たんだろうね?」
「さあ……話をする前に帰っちゃったから」
「……ちょっと嫌な予感がするよ」
「それは私もだわ」
クマの話を聞いていたサリアが言う。
「用事があったはずなのに、何も言わないまま帰ってしまった。それは何故?」
「何故……ゼロスたちがいたから?」
理由としてはそれぐらいしか思いつかない。
だって他には特に変わったことはないし。
「俺たちは何もしていないのですがね」
「何もしていなくても、脅威に感じることはあるだろ? 見た目で判断する人も少なくないしね」
「なるほど……では、無暗に人を傷つけるようなことはしないと、奴らの町まで伝えに行ってこようか」
「それは大問題になるから却下。いいから皆、大人しくしてて」
クマが言ったことに、とんでもない返事をしたゼロス。
私は咄嗟にとめたけれど……そんなことをしたら町がパニックになってしまう。
クマが言っている通り、人は見た目で判断することが多々ある。
ゼロスたちは悪い人たちではない。
無暗に人を傷つけることもないし、気のいい人だって多い。
でも、人間の住む世界に魔族がいて……それを見て人はどう思うか。
残念だけど、いい感情は抱かないだろう。
今、人間と魔族は戦いの真っ最中だ。
それこそ仇だと考える人も少なくないと思う。
だけど、クマが言ったみたいに、何も言わないで帰って行ったことが気になる。
何を考えているのかが分からず、不安が胸に迫る。
「おい、どうした。顔色悪いじゃねえか」
家から出て来たイドが、私の顔色を心配してくれている。
イドは龍族だけど……見た目は普通の人間にしか見えないから、皆勘違いしてたんだろうな。
じゃあ、勘違いをしなかった人はどう思うのか?
それがやはり不安である。
「どうもしないよ。ね、このまま散歩でもしない?」
「ああ良いぜ。魔族の領地だろうが巨人族の領地だろうが、どこでも連れてってやるぜ」
「そこまで遠出するつもりはないよ?」
私の独断と偏見だけれど、天下無双であるイド。
イドぐらい強くて物事を簡単に捉えられたら、楽でいいだろうな。
私は旦那さんの顔を見上げ、笑顔を浮かべる。
イドは片頬を上げ、笑顔に応えてくれた。
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