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第二章

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「ダンジョン?」
「うん。ダンジョン。おおお……きい大きいダンジョン! 地下にそんなのを創れば外に出なくてもいいし、それに訓練も効率よくできると思うんだ」
「なるほどね……ダンジョンか」

 私は、オーガの皆が訓練できるように、ダンジョンを創る提案をした。
 それを聞いていたレンにサリア、ゼロスたちは皆驚いていた。
 クマは表情が読めないのだけれど、でもわざわざ驚いたようなポーズをとってくれている。
 手を広げて少しのけ反って……何と言うか、可愛い。

「うん。いいと思うよ。ダンジョンを創れば、オーガだけじゃなくて、僕たちも訓練をできるからね」
「そうどすな。そうなれば、これまで以上に強くなるチャンスが増えるってことやなぁ」
「おう!」
「し、しかしリナ殿……あなたはそんなことをできるのですか? 黒い霧を晴らすだけではなく、信じれらないことが可能とは……うむ。イド殿の奥方に相応しいお方だ!」

 ゼロスがイドのことを話し、私は彼が何をしているのかが気になった。
 そう言えば、今日は朝しか見ていないような気がする。

「ねえ、イドはどうしたのかな?」
「いつも通り、映画に夢中どす」
「あはは……本当にハマってるんだね」

 楽しんでるのは良いけど、引きこもりにはならないでね。
 引きこもりにはいい思い出が無いし、これからはもう少し外に出るように誘うことにしよう。

「それで、どんなダンジョンにする?」
「そうだね……チャレンジする人によって、ダンジョンの難易度があがるようにしたいんだ。何もできない素人が入っても攻略できるぐらいの難易度であったり、達人が入ってもそれなりに歯ごたえのあるような……そんなダンジョン」
「うん。それならどんな人がチャレンジしても、いい訓練になりそうだね。僕も賛成だよ」
「うちも賛成どす」

 クマたちも私の提案に賛成してくれているようだった。
 それだけで嬉しい。
 嬉しいうえに、創作物を作るようにワクワクする。
 美術の時間を思い出すな。

「皆も何かいい案があれば、言って欲しいの。私一人で考えるより、皆で考えた方がいいだろうしね」
「それでしたら、死ぬ思いで戦わなければ攻略できないぐらいの相手にしてほしいところです」
「それは却下! 死ぬ思い何て、危ないじゃない。でも、そういう難易度を用意するのはいいかも。ほら、ゲームみたいに、イージーとか、ハードとかさ」
「いいね。人によって難易度を選択できるのは、コンディションの関係で変えることができるし、チャレンジ精神にいい刺激を与えることもできるしね」
「ほな、ボスとか用意せえへん? その時の状況によって、ボスと戦うのもいいし、避けるのもよし。自分で全部選んで、状況を判断する能力も鍛えれるんちゃうやろか」

 皆が次々に提案をしてくれる。
 サリアはどんな物ができあがるのか想像がつかないのか、唖然としたまま私たちの話を聞いていた。
 一体どんなものが完成するのだろうか……
 皆で協力して何かを作るのが、こんなに楽しいことだったなんて。
 全然知らなかったな。

 ◇◇◇◇◇◇◇

 ダンジョンを創ると決めてから三日。
 粗方内容も完成し、私は『クリエイト』の力で地下にダンジョンを創ることにした。

 ダンジョンは家から一キロほど東に行った場所。
 まだ誰も住んでいない場所に決めた。

「じゃあ、これから創るからね」
「…………」

 ゼロスは私の能力がどんな物なのか、ゴクリと固唾を飲んでこちらの様子を眺めていた。
 私は深呼吸をし、スキルを発動する。

「おおっ!? 地震か!」
「違うよ。リナ様の『クリエイト』によって、ダンジョンが形成され始めたのさ」
「な、なんと……もうでき始めているというのか……」

 驚くゼロス。
 しかしクマたちは当然のように見守っている。
 
 と言っても、ダンジョンの完成はすぐだった。
 わずか三分。
 それだけの時間で出来上がってしまうダンジョン。

 私たちの目の前に、大きな魔法陣が出現する。
 人が百人乗っても、まだスペースがあまるほどの大きさ。
 これが入り口だ。

「できたみたいだよ。早速中に入ってみようか」
「で、これはなんだ?」

 ダンジョン創りに参加していなかったイドは、魔法陣を見て首を傾げていた。
 私はイドに説明しながら魔法陣の上に乗る。
 クマたちも私に続き魔法陣に侵入すると、眩い光が私たちを包み込む。

「……す、すごい……本当に迷宮が出来上がってる……」

 ゼロスと、そして何故か一緒に来ていたスライムは仰天するばかり。
 ダンジョンは石造りとなっており、明かりが必要ないように、発光する石が所々で光を放っている。
 足元には魔法陣があり、ここからまた入り口へと帰還することが可能。
 
「あれは何ですか?」

 スライムは入ってすぐにいる、人型の人形を見てそう聞いてきた。
 
 人形は、いわゆるナビゲーター。
 このダンジョンの説明をしてくれる存在だ。

 私たちがダンジョンに侵入したことにより、ナビゲーターが声をかけてくる。

「ご利用ありがとうございます。本日の難易度はどういたしましょうか?」
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