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「許さない……絶対に許さないぞ、シルビア!」
夜のアールモンドでシェイクは一人、天を睨みつけながら怒鳴り声をあげていた。
部下の兵士はシェイクを見限り、どこか一人去った後だ。
自分が蒔いた種だというのに、シェイクはシルビアに責任転嫁し怒り狂う。
「そうだ……あいつが表に出た時、後ろから刺し殺してやろうか。それぐらいしなければ、僕の国を崩壊させた罪は償えない。よーし……やってやる。明日やってやるぞ」
醜悪に満ちた笑みを浮かべるシェイク。
するとそんな彼の前に、一人の女性がふらりと姿を現せる。
「……ヒメラルダ!? どうしてここに……」
「…………」
まるで幽霊でも見るかのように、引きつった顔でシェイクは現れたヒメラルダの顔を眺めている。
彼女は一歩一歩、シェイクに近づいて行く。
「シェイク……」
「ヒ、ヒメラルダ……そうか、僕に会いに来てくれたんだね」
「ええ」
彼女の愛を感じたのだろうか、シェイクは涙を浮かべながらヒメラルダに近寄って行く。
そして二人は触れ合える距離まで接近していた。
「嬉しいよ、ヒメラルダ。シルビアに復讐をしたら一緒にソルディッチに帰ろう」
「いいえ。帰らないわ」
「え……?」
「私はあなたに会いに来た……でもそれは、あなたに罰を与えるために」
「ば、罰……? 何を言って……っ!?」
それは突然のことだった。
シェイクの足が、木に変化していく。
変化した部分は徐々に上半身へと上っていき、とうとう腰まで木になってしまう。
「うわああああああああ!? なんだ、何が起きているんだ!?」
「ソルディッチは罪を犯した。私の寵愛を受けた聖女をあなたの父は虐げた。これは赦されることではない。私との約束を破ったのだから」
「は、母上……それに君との約束って……」
ハッとするシェイク。
首元まで木が迫っており、青い顔でヒメラルダの顔を見つめている。
「まさか……神?」
「シルビアをソルディッチから解放するためにお前に近づいた。後はこの地が滅びるまで、この場で生き続けるがいい」
「待って……待って――」
とうとうシェイクの身体は完全に木に飲み込まれてしまう。
そのまま大木へとなり、シェイクが中にいるとは誰も思わない状態となった。
「…………」
ヒメラルダ――シルビアを聖女と選んだ神は、スッとそのまま姿を消してしまった。
◇◇◇◇◇◇◇
「こんな大きな木、ありましたか?」
「どうだろう……記憶にないな」
城の裏手に一本の大木が現れていた。
アレン様は記憶にないらしく、首を傾げている。
絶対になかったと私は思うのだけれど……私の記憶も定かではない。
だけど、木の一本ぐらいどうでもいいか。
だって私はとても幸せなのだから。
「シルビア。今日も美しいよ」
頬を染めて、私のことを褒めてくれるアレン様。
彼のそんなところが凄く愛おしくて、私は目を細めて彼に言う。
「ありがとうございます。これからも一生そう言ってくれますか?」
「たとえ僕が死んでしまったとしても、来世でも言い続けるよ」
私は彼の真摯な愛に胸を弾ませる。
この国には……私たちには神がついてくれているのだ。
きっとこれからも、幸せで穏やかな時間は続いていくのだろう。
私は愛おしい人の手を取り、眩いほどの太陽に目を向ける。
どうか、いつまでも私たちに恵みを与えて下さりますように……
すると、キラッと太陽の輝きが増したような気がした。
おわり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
これからも新作を投稿していきますので、よろしければユーザーお気に入り登録お願いします!
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さようなら。悪いのは浮気をしたあなたですから
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夜のアールモンドでシェイクは一人、天を睨みつけながら怒鳴り声をあげていた。
部下の兵士はシェイクを見限り、どこか一人去った後だ。
自分が蒔いた種だというのに、シェイクはシルビアに責任転嫁し怒り狂う。
「そうだ……あいつが表に出た時、後ろから刺し殺してやろうか。それぐらいしなければ、僕の国を崩壊させた罪は償えない。よーし……やってやる。明日やってやるぞ」
醜悪に満ちた笑みを浮かべるシェイク。
するとそんな彼の前に、一人の女性がふらりと姿を現せる。
「……ヒメラルダ!? どうしてここに……」
「…………」
まるで幽霊でも見るかのように、引きつった顔でシェイクは現れたヒメラルダの顔を眺めている。
彼女は一歩一歩、シェイクに近づいて行く。
「シェイク……」
「ヒ、ヒメラルダ……そうか、僕に会いに来てくれたんだね」
「ええ」
彼女の愛を感じたのだろうか、シェイクは涙を浮かべながらヒメラルダに近寄って行く。
そして二人は触れ合える距離まで接近していた。
「嬉しいよ、ヒメラルダ。シルビアに復讐をしたら一緒にソルディッチに帰ろう」
「いいえ。帰らないわ」
「え……?」
「私はあなたに会いに来た……でもそれは、あなたに罰を与えるために」
「ば、罰……? 何を言って……っ!?」
それは突然のことだった。
シェイクの足が、木に変化していく。
変化した部分は徐々に上半身へと上っていき、とうとう腰まで木になってしまう。
「うわああああああああ!? なんだ、何が起きているんだ!?」
「ソルディッチは罪を犯した。私の寵愛を受けた聖女をあなたの父は虐げた。これは赦されることではない。私との約束を破ったのだから」
「は、母上……それに君との約束って……」
ハッとするシェイク。
首元まで木が迫っており、青い顔でヒメラルダの顔を見つめている。
「まさか……神?」
「シルビアをソルディッチから解放するためにお前に近づいた。後はこの地が滅びるまで、この場で生き続けるがいい」
「待って……待って――」
とうとうシェイクの身体は完全に木に飲み込まれてしまう。
そのまま大木へとなり、シェイクが中にいるとは誰も思わない状態となった。
「…………」
ヒメラルダ――シルビアを聖女と選んだ神は、スッとそのまま姿を消してしまった。
◇◇◇◇◇◇◇
「こんな大きな木、ありましたか?」
「どうだろう……記憶にないな」
城の裏手に一本の大木が現れていた。
アレン様は記憶にないらしく、首を傾げている。
絶対になかったと私は思うのだけれど……私の記憶も定かではない。
だけど、木の一本ぐらいどうでもいいか。
だって私はとても幸せなのだから。
「シルビア。今日も美しいよ」
頬を染めて、私のことを褒めてくれるアレン様。
彼のそんなところが凄く愛おしくて、私は目を細めて彼に言う。
「ありがとうございます。これからも一生そう言ってくれますか?」
「たとえ僕が死んでしまったとしても、来世でも言い続けるよ」
私は彼の真摯な愛に胸を弾ませる。
この国には……私たちには神がついてくれているのだ。
きっとこれからも、幸せで穏やかな時間は続いていくのだろう。
私は愛おしい人の手を取り、眩いほどの太陽に目を向ける。
どうか、いつまでも私たちに恵みを与えて下さりますように……
すると、キラッと太陽の輝きが増したような気がした。
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