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 ソルディッチを出ると、外には自然豊かな草原が広がっていた。
 あまり町を出たことがなかったけれど、凄くワクワクする。
 まるで解放された気分。

ああ、私はこんなにも、シェイク様と結婚などしたくなかったのだ。
 暮らし自体は素敵なものであったかもしれないが、喪失感よりも解放感の方が優っている。
 
 私は大きくのびをし、自然の空気を肺一杯に吸い込む。

「では参りましょうか」
「聖女様、どちらに向かわれますか?」
「そうね……」

 その時、風が西に向いて吹いた。
 私はそれを導きのような物に感じ、迷わず指を西に指す。

「西に向かいましょう」
「西……と言うことは、アールモンド国の方角ですね」
「アールモンド……」

 アールモンド。
 それは弱く、貧しく、小さい国。
 数ある国の中でも、一番小さく力の無い国だと言われている。

 皆、アールモンドの方角に向かうことに不安を感じ始めている様子。
 だが私は逆に、高揚していた。
 何故だか分からない。
 だけど、アールモンドには何かがある。
 私の運命は、アールモンドに向かうことになっているような気がした。

「皆、自由に、好きに生きればいいのです。わざわざ私について来る必要はありませんよ?」
「……いえ。申し訳ございません。私は聖女様を信じると決めたというのに、なんと情けない……」
「そんなに自分を卑下しないで下さい。誰だって自分の知らない土地へと向かうのは怖いでしょう。それがアールモンドとなると余計に恐怖を感じると思います」
「ありがとうございます。聖女様」

 私に頭を下げる騎士の男性。
 彼に笑みを向け、そして皆の顔を順番に確認していく。

 彼と同じで、皆私を信じているようだ。
 さっきの不安顔はもうそこにはない。
 皆、覚悟がある真っ直ぐした目をしている。

「では行きましょうか」

 用意されていた馬車に私は乗る。
 他に馬車は二つ用意されており、元侍女たちはそちらに乗っていた。
 私の馬車には、他に誰も乗っていない。
 御者をしてくれる人が手綱を握り、馬車はゆっくりと動き出す。
 すると他の馬車、そして馬に乗った男の人たちも動き出した。

 私は窓から外の様子を眺める。
 気持ちのいい草原。
 そして空には暖かい太陽。

 太陽は私の旅立ちを祝福するよう、輝いているように思えた。
 ポカポカとしたいい陽気。
 町を出てすぐだと言うのに眠気がする。

 私は新しい国のこと、そしてこれからの未来に何が起こるのか。
 楽しみを感じながら、眠りにつくのであった。
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