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第一章

42 デゼスポワール島

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此処から先は被告人の末路に関する話となります。やや、ダークな内容となりますので苦手な方や彼等の末路に興味が無い方はUターン推奨です。2、3話続きますので、被告人退場後から読まれる場合は44、45話辺りから御確認下さい。
ダーク系な話が含まれる場合は前書きに記載致します。
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デゼスポワール島



通称、絶望島。



平民から貴族まで老若男女問わず国民全員が知っている。



言うことを聞かない子供がいれば、「閻魔大王が迎えに来る」と同義で「デゼスポワール島に連れて行く」と脅し文句として使われることが多い。


内情を詳しく知っているものは少ない。


しかし、広く知られているのは、デゼスポワール島に送られる者は重犯罪者である事と一度島に踏み入ったら二度と本国へは帰れないと言うこと。


そして、デゼスポワール島に送り込まれた殆どの者が死を望む程に死よりも恐ろしいところだという事が現在国民に公布されている内容だ。


「い、嫌だああああ」
「申し訳ございませんでした!もうしません。だから、許してください」
「デゼスポワール島への流刑以外の罰なら何でも受けます」
「神明裁判を希望します!神の審議を!」
「僕にもどうか神判を行わせて下さい!」
「どうか恩情を!」



処罰の内容に被告人達から口々に再審の申し出がされる。


神明裁判とは、例えば、手足をしばって水中に投げ込む。浮かべば有罪、沈めば無罪。


というように、神の奇跡による裁判。


即ち、神判と呼ばれるものである。


「その口を閉じろ!儂の許可無く発言することを禁じたのをもう忘れたのか」


陛下の重圧に喚いていた被告人達は次々と口を閉ざした。


「これは既に温情ある措置である。被害者、ルナリア嬢の主人であるアネット嬢の進言にて決まった事。本来ならば、重罪を犯し極刑も有り得たお前達に生き長らえる機会が与えられたのだ」



その言葉に被告人達の表情は絶望一色となった。


「こくっ、国王陛下!はちゅ……発言を宜しいでしょうか」
「エゾンか。許可しよう」


エゾン様は真っ青な顔をして声を裏返しながら発言の許可を乞う。


「ど、どうか今一度機会をお与え下さい。必ず、必ずや今日の判決を覆す証拠を提出致します!」
「無駄だな」
「なっ……」
「言っただろう。パトリス、ディオン、エゾン、ジェルマン、エリクの五人には王家の影をつけていたと。お前達が重罪を犯した事実が覆ることは一切無い!」
「そん、な……あ……ああああああ」



エゾン様は膝から崩れ落ちると、頭を抱えて床に蹲った。


後続するように椅子に座ったまま項垂れる者、地面に膝を着きエゾン様と同じように恐怖に蹲る者が続出した。


「おい!お前達それでも男か!男ならそんな情けない姿を晒すんじゃない!」
「な、何なのよデゼスポワール島って。要は島流しって事でしょ、何で皆こんなに狼狽えているのよ」


被告人達が絶望に打ちひしがれる中、未だ現状を理解していない者が二人ほどいた。


それを見た陛下は「ほう」と顎をさすりながら、興味深そうにジェルマン様とアメリーを見つめた。



「陛下、発言を宜しいでしょうか」
「アネット嬢の発言を許可する」
「ありがとうございます。彼等はまだ本当のデゼスポワール島をご存知では無いと推測します。世間では絶望島と呼ばれ死よりも恐ろしい場所として知られてはおりますが、彼等の中にデゼスポワール島の本当の姿を知っているものはいません。ですので、グラニエ領の管轄区域であるデゼスポワール島についてわたくしからご説明をさせて頂いても宜しいでしょうか」
「……ああ。許可しよう」
「ありがとうございます」


陛下は間を空けて許可を下す。


アネット様は陛下からの許可を得ると深々と頭を下げた。



「デゼスポワール島を全くご存知無い愚か者もいるようですのでわたくしから説明をさせて頂きますわ。これから話す内容はあなた方の運命を大きく左右致しますのでしっかりとお聞き下さいませね」


アネット様は可愛らしく小首を傾け被告人達に笑顔を向けた。


「デゼスポワール島。そこは皆様がご存知の通り重犯罪者が送り込まれる監獄のような場所ですわ。デゼスポワール島には外からやって来る野鳥と人間以外の動物は生息していません。あ、昆虫類はおりますので御安心下さいませ。因みに、デゼスポワール島で農作物は一切育ちません。木の実も一切実りません。周りを囲む海には人喰いザメが我が物顔で島を周回しております。利用価値も必要性も無い所謂捨て島。それが、デゼスポワール島でございます」
「何よそれ!そんな場所に彼等を送るなんて酷いわっ!人間生きていけないじゃない!それでも、あんた血が通った人間なの!?」
「あらあら、嫌だわ。何だか人事のように話されているけど貴女もそこに行くのよ、アメリー嬢?」
「何で私が!私は無実よ!私はこの世界のヒロイン何だからそんな所に行くわけないでしょ!」
「有罪判決を受けて尚、愚鈍な発言が出来る根拠と自信が何処から来るのか知りたいくらいだわ。そうね、順を追ってあなた達が歩む運命を教えてあげようと思ったのだけれど……アメリー嬢の運命から教えてあげますわ」
「だから、人の話を聞きなさいよ!このブス!大体何なのよあんた!モブのくせにでしゃばるんじゃないわよ!」



いやいやいやいや



これはやばい。流石にやばい。




アメリーは未だに自分の立場を理解していないようだった。



つい先程、アネット様に謝ったことをもう忘れてしまったのだろうか。


「クロエ」
「御意」


アネット様が後ろに控えるクロエさんの名を呼んだだけで、彼女はアネット様の意図を汲み取り是を示す。


次の瞬間


アメリーの真横をある物が通り過ぎ後ろの壁に突き刺さった。



アメリーは髪を掠めて飛んで来た物体を後ろを振り返って確認する。


アメリーの顔色はみるみるうちに青くなる。


そこには、スローイングナイフ、ないし投げナイフと呼ばれるものが壁に突き刺さっていた。


「また、その教養のなっていない口を開いたら次は外しませんわよ」


うふ、という効果音でも付きそうないい笑顔だ。


「アネット」
「失礼致しましたわ。ですが、口を閉ざして頂くにはこの手が一番だと思いましたの」
「良い。アネット嬢が動かなければ儂が動いただろう。騎士に黙らされるかアネット嬢の従者に黙らされたかの違いだ」


ナゼール様が呆れて注意をするが、陛下が容認したことでアネット様が咎められることは無かった。


「続けます。アメリー嬢よくお聞き下さいませ。結論から言うと、貴女はデゼスポワール島に着いても一番長生きする可能性が高いですわ。ですが、それは同時に死が遠のき地獄が長引くと言うことをご理解下さいませ」
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