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第3章
ヴィフ・クルール③
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しばらくの間、重たい沈黙が流れる。
人間ではない生き物に、人体実験。研究所。つまり、その人間たちは、己の理解を超える未知の生物に対して、それを調査するための実験を秘密裏に行っていたということか。クローン家畜産業を営むFC社の、裏の顔ということだ。世間にバレたらただ事では済まない生物だ、ひょっとしたらFC社どころか、裏で手を引いているのは国だったり、もしかすると外国だって絡んでいるかもしれない。
そこで、あの三人組の男を思い出した。
「ねえ、紅を追いかけていた男たちは、その研究所の人たちなのかな?」
これには華が答えた。
「私はそう思ってる。VCの存在を表ざたにはしたくなくて、でもVCを捕まえたい。そう考えるのは、VCを逃がしてしまったFC社の奴らしか考えられないわ。彼らは、VCが特定の人間からしかエネルギーを補充できないことを知っているかもしれない。だからきっと、私たちがVCと繋がりがあると知れたら、私たちを使って彼らを捕えようとするに違いないわ」
「そうか。だからあのとき、他人のふりをしたんだね」
「そうよ。まったく、哲平くんがあんな人通りの多いところで紅ちゃんにエネルギー補給なんてするから、光ってバレたのよ」
「いや、あのときはすでにエネルギー満タンだったから、光らないはずだったんだけど……」
そうだ、その問題もあった。あのとき、ずっと紅と手を繋いでいたのに、あのタイミングでどうして光ってしまったのか。しかしその答えは、紺碧にもわからないようだった。
「俺たちは、ずっとカプセルの中で、強制的にエネルギーのコントロールをされていた。人間からエネルギーを吸収できるなんていうことは、俺は外に出てきて初めて知ったんだ。いろんな色の人間がいる中で、なぜか華だけが、よく目立つ橙色をしていた。吸い寄せられるように近づいたら、こういうことになったんだ」
そこでふと疑問に思う。
「……紺碧は、何色なの?」
すると隣の紅が答えた。
「そのまんま、深い青だよ。紺碧は、深くて澄んだ青。橙の華ちゃんと、とってもお似合い」
「へえ……」
橙と青は、よく似合うのか。……まったくピンと来ない。しかし、今日華と紺碧に出会ったことで、いろいろなことがわかった。紅が帰りたくないなら、なんとなくずっと一緒にいればいいかな、なんて思っていたが、どうやら事態は思っていたより深刻だ。紅を探している連中は本気のようだし、紅がいた環境は、紺碧の話によると予想以上に劣悪だ。
紅を返したくない。だが、相談できる相手もいない。警察などに駆け込んでも、紅のような生き物を保護してくれる気がしない。それどころか、FC社と一緒になって珍しい生命体だと実験対象にしかねない。
「とにかく、あの、黒い作業服の連中、あいつらに見つからないようにしなくちゃね。ほかにもVCはいるかもしれないんだから、お互いに連絡を取り合って、協力しあいましょ」
華の一言は、とても心強かった。
人間ではない生き物に、人体実験。研究所。つまり、その人間たちは、己の理解を超える未知の生物に対して、それを調査するための実験を秘密裏に行っていたということか。クローン家畜産業を営むFC社の、裏の顔ということだ。世間にバレたらただ事では済まない生物だ、ひょっとしたらFC社どころか、裏で手を引いているのは国だったり、もしかすると外国だって絡んでいるかもしれない。
そこで、あの三人組の男を思い出した。
「ねえ、紅を追いかけていた男たちは、その研究所の人たちなのかな?」
これには華が答えた。
「私はそう思ってる。VCの存在を表ざたにはしたくなくて、でもVCを捕まえたい。そう考えるのは、VCを逃がしてしまったFC社の奴らしか考えられないわ。彼らは、VCが特定の人間からしかエネルギーを補充できないことを知っているかもしれない。だからきっと、私たちがVCと繋がりがあると知れたら、私たちを使って彼らを捕えようとするに違いないわ」
「そうか。だからあのとき、他人のふりをしたんだね」
「そうよ。まったく、哲平くんがあんな人通りの多いところで紅ちゃんにエネルギー補給なんてするから、光ってバレたのよ」
「いや、あのときはすでにエネルギー満タンだったから、光らないはずだったんだけど……」
そうだ、その問題もあった。あのとき、ずっと紅と手を繋いでいたのに、あのタイミングでどうして光ってしまったのか。しかしその答えは、紺碧にもわからないようだった。
「俺たちは、ずっとカプセルの中で、強制的にエネルギーのコントロールをされていた。人間からエネルギーを吸収できるなんていうことは、俺は外に出てきて初めて知ったんだ。いろんな色の人間がいる中で、なぜか華だけが、よく目立つ橙色をしていた。吸い寄せられるように近づいたら、こういうことになったんだ」
そこでふと疑問に思う。
「……紺碧は、何色なの?」
すると隣の紅が答えた。
「そのまんま、深い青だよ。紺碧は、深くて澄んだ青。橙の華ちゃんと、とってもお似合い」
「へえ……」
橙と青は、よく似合うのか。……まったくピンと来ない。しかし、今日華と紺碧に出会ったことで、いろいろなことがわかった。紅が帰りたくないなら、なんとなくずっと一緒にいればいいかな、なんて思っていたが、どうやら事態は思っていたより深刻だ。紅を探している連中は本気のようだし、紅がいた環境は、紺碧の話によると予想以上に劣悪だ。
紅を返したくない。だが、相談できる相手もいない。警察などに駆け込んでも、紅のような生き物を保護してくれる気がしない。それどころか、FC社と一緒になって珍しい生命体だと実験対象にしかねない。
「とにかく、あの、黒い作業服の連中、あいつらに見つからないようにしなくちゃね。ほかにもVCはいるかもしれないんだから、お互いに連絡を取り合って、協力しあいましょ」
華の一言は、とても心強かった。
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