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第一章 百鬼夜行編
#31 地球の最高戦力
しおりを挟む「ボクに戦闘力は皆無だヨ、全く。――ギザ、戻っておいで。お友達を守ってあげなさい」
「はい、メガさん!」
メガに呼ばれ、ギザは美海の元へ。
「バトンタッチだヨ。後はあの王子様方に任せようじゃないか」
後方に控えるはメガを抱きかかえる美海と、それを守護するギザ。
そして――、
「らいたん、行くネ!」
「ああ!」
半神半人の『鎖』使い――来人と、『氷』のガーネ。
「モシャ、暴れるぜ?」
「ここは陸の狩り場だからね、好きにしなよ」
そして、『炎』の陸と『風』のモシャ。
百鬼夜行、『盾』の鬼の軍勢。
それと相対するのは、地球の最高戦力である半神半人とその相棒――来人、ガーネ、陸、モシャ。
ギザが倒した鬼は一匹だけ、軍勢はまだまだ湧いて来る。
ここからは、半神半人の王子たちの出番だ。
「はあああっ!!」
来人の『鎖』が軍勢の“隙間”から生成され、盾を絡め捕る。
そして、盾の甲殻と甲殻の隙間、その守られていない弱点部位を狙って、来人は剣を突き立てる。
盾の防御力が無ければ群れているだけの雑魚だ、『盾』の鬼は脆くも崩れ去る。
しかし、まだまだ数は居る。
ガーネが刀を振るえば『氷』の斬撃が飛ぶ。
それに触れた鬼は凍り付き、そして動きを止めた鬼の群れに、トドメの返しの刃を――、
「貰いっ!」
モシャの『風』の鎌鼬が横から飛んできて、凍り付いた鬼の群れ――ガーネの手柄を掠め盗る。
「おい! モシャ!」
「ふふん、相変わらずガーネはのんびり屋さんだね」
「ぐぬぬ……」
陸は自由に暴れ回る。
『炎』を纏った大鎌を振るい、切り裂いた鬼を燃やし尽くす。
どんなに硬い『盾』の甲殻に覆われていようとも、業火に焼かれてはそれも意味を成さなかった。
勿論後方に控える美海の方にも鬼は襲い掛かって来る。
「きゃっ……」
「させないデス! ワタシのお友達には、指一本触れさせないのデス!」
そこにはギザが割って入り、掌底打ちで鬼を吹き飛ばす。
メガ・ブラックで造られた強靭なサイボーグの肉体には、傷一つ付かない。
しかし、まだまだ鬼の群れは数を減らさない。
「――おかしいな、どいつがこの異界を発生させている主なんだ?」
「まどろっこしい。おい来人、一気にまとめてぶっ飛ばすぜ!」
「分かった、陸。行くぞ!」
陸は大鎌の先に巨大な業火の炎球を作りだす。
そして、来人は両手の剣の先を合わせて、そこに『泡沫』の色で同じく巨大な水球を作り出す。
「はああああーーっ!!!」
「おらあああああっ!!!」
二人は同時に大技を放ち、『盾』の鬼の軍勢はその圧倒的波動の圧に押しつぶされる。
王の血統だからこそ出来る、波動量に物を言わせた荒業。
防御力なんて無視した、圧倒的質量の暴力。
水と炎がぶつかり合い、辺りには白い蒸気が吹き荒れる。
水の飛沫と共に、パラパラと壊滅した鬼たちの核の雨が降る。
異界の膜が、じんわりと降ろされて行く。
辺りの神社だった景色は溶けて消えて行く。
「お疲れ様、来人!」
来人の髪が明るい茶へと戻るのを見て、戦いが終わった事を理解した美海が駆けて来る。
そして、落ちた大量の核を集め終わって一行が落ち着いた頃。
「じゃあ、僕が全部貰って行くねー」
大量の核の詰まった袋を抱えてにこにこの陸がそこには居た。
そういえば、倒した鬼の核は陸に譲る約束だった。
まさかここまで大物だとは思っていなかったし、自分も働く事になると思っていなかった来人は少し損した気分で、ちょっと残念だった。
「それじゃあ、ミミ、ワタシたちはこれで」
「あ、うん。またね、ギザ! それとメガも!」
「わん」
美海は抱き抱えていたメガをギザに渡す。
メガは散々撫でまわされて面倒になったのか、今更の犬の振りをして適当に流していた。
メガを受け取ったギザは、そっと来人に耳打ちする。
「また会いましょうね、先輩?」
そして、くすくすと笑いながら去って行った。
――その後、メガ研究所にて。
メガとギザは研究設備の中で宙に浮く“黒いキューブ状の物体”の前で、二人で作業をしていた。
「流石王の血筋だ、良いデータが取れたネ」
「ええ、そうデスね。これでワタシの武器も完成デス」
ギザがそのキューブを手に取り、指先でとんと軽く叩く。
すると、その黒いキューブは形を変えて、“盾”の形を成す。
もう一度、指先で叩く。
今度は大鎌、更にもう一度叩けば剣。
「メガ・ホワイトは波動を吸収して、記憶する。それをメガ・ブラックで覆えば、中に吸収した記憶を定着させられる。記憶と記録は同義だ。応用すれば、この様に――」
メガは新たな発明に満足気、饒舌に語る。
戦いのデータをキューブ内に記録し、呼び出す事で同じ武器を再現する、新たな発明。
「メガさん、このキューブの名前はどうするのデスか?」
「そうだね、やはり天才の発明に相応しい名前を――そうだな。『メガ・キューブ』としよう」
「流石デス。『メガ・キューブ』――素晴らしいのデス」
「「フフ、フフフフ……」」
そして、ネーミングセンスだけは安直でいまいちな天才科学者とその助手は、また次の企みを始めるのだった。
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