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9.言葉攻めを覚えてみよう

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「言葉攻めはいいんです、でも攻めに使う言葉のチョイスがおかしいです」
「こ、言葉攻め?」

 はぁぁ、と深いため息を吐くと、ビクリと肩を跳ねさせたルミール様が姿勢を正して私の前に座り直す。
 まるで叱られるのを待っている犬のようなその様子に、さっきまでの逆立った心が少し落ち着いた。

「痛いなら痛いと私はちゃんと言います。痛くしないように学んでいるのですから、何度も聞かなくてもいいです!」
「す、すまない」
「質問も構いません、これは本番に向けての練習なのですから」

 ね? とそう言い聞かせるようにそう伝えゆっくりと頷く。
 ほぼ素っ裸で格好つけてる自分がちょっと恥ずかしいが、そこはもう考えるのをやめた。

“というか、しょんぼりされると……”

 やっぱり可愛い。
 母性本能とはこういうものなのか、と思いつつ彼の様子を窺っていると、控えめに片手が上げられる。

「質問をしたい」
「はい」
「言葉攻めとは、なんだ?」
「えっ!」

 まさかそんなレベルの質問が来るとは思っておらず愕然とするが、だが相手は悪徳公爵……の仮面を被った童貞だということを改めて実感した。

「そうですね、わざと相手を辱めるような言葉遣いをして追い詰めて性的興奮を誘う行為のこと……ですかね」

“多分”

 心の中でだけ情けない追記をしつつ、そう説明するがイマイチ理解していないのか不思議そうな顔をするルミール様。
 そんな彼に、私は仕方なく覚悟を決める。
 
 正直自信はない。だがこのまま説明を終えることも出来ない。ならば残された道は、そう、実践だ。

「私がやってみますので、体感してみてください」

 そう宣言するや否や、私は彼の下半身へと手を伸ばす。
 既に固く反り返っているソコを夜着越しに触れると、ルミール様が息を詰めた。

「な、なにを……っ」
「何ってそんなの、実践ですよ。ほら、もう固くしちゃってどんな期待をしていたんですか?」

 ゆっくり竿を扱くように手を動かしながらそんな質問を投げる。
 驚いているルミール様の回答を、もちろん待つつもりなんて最初からない。

「おかしいですね、先端が少し濡れてきましたか? 服に染みていますよ、はしたない」
「なっ、そのっ」
「でも可愛いですね。あ、きゅんとしました? 今震えた気がします」

 くすくすと小さく笑みを溢しながらゆっくりと刺激を与える。
 根元からなぞり雁首の部分を手のひらで包んだ私は、少し強めに刺激を与えた。

「んッ」
「感じましたね。ここがイイんですか? ふふ、ピクピクしちゃって可愛いです。ねぇルミール様、次はどんな刺激が欲しいですか?」
「ど、どんなって」
「このまま指で扱きましょうか。強くして欲しいです? それともこの汁を滴らせる先端がいいですか?」

 人差し指でグリグリと先端を擦り刺激を与えると、彼の夜着のシミがじわりと広がる。

“こ、これが我慢汁ってやつなのかしら”

 言葉攻めとは卑猥な言葉をただ羅列するものではない。
 もちろんルミール様のように、純粋な疑問や不安を解消すべく質問攻めにするものでもない。

 あえてそれらの行為を口にすることでより意識させ、思考を奪うことが必要なのだ。……多分。

“これが言葉攻めよ! お姉様の受け売りだけど!”

 ねちょねちょと彼の我慢汁が染みて私の指先を濡らすが、私は手を止めることなくそのまま刺激を与え続ける。
 もちろん言葉も忘れない。
 
「ふふ、まるでお漏らししたみたいですね」
「なっ! お、俺は漏らしてなど」
「あら、漏らしてもいいんですよ? 想像してください。我慢して耐えたその快感から解放されたくないですか? 全て吐き出しちゃっていいんですよ。ね、どこに出したい……?」

 にこりと微笑みながら小首を傾げそう問うと、じわじわと彼の顔が真っ赤に染まる。

“確かお姉様たちはお口でもしていたわね”

 当然したことのないお口でのご奉仕。
 そしてそれらを初夜でする令嬢がいるのか問題。

“いない、気がするわね”

 ならば慣れないことはしない方がいい。
 そう、思っているのだが――

「……お口で、シてあげますね」

 私はもう既に張り詰め、先走りに濡れた夜着を寛げ、そっと脱がす。
 ぶるんと勢いよく飛び出たソレは、壁越しに何度も見たはずの他の誰かのモノよりも凶悪で、先日彼のモノをはじめて見た時よりもずっしりと大きく見えた。

“こ、こんなに大きいの!?”

 服越しではわからなかったその形状。
 はじめて触れるそこは少ししっとりとしていて、それでいて固いのに弾力があった。

「これが、ナカに挿入るのね」

 思わずポツリとそんな言葉を漏らすと、私のその言葉に反応したのかビクンと揺れる。

“すごい、ここだけ別の生き物みたいだわ!”

 赤黒くグロテスクなのにどうしても目が離せず、指先でつつくと押し返されるように動く。
 初めて見た時とは違い彼も興奮をしているのか、倍以上のサイズになったソレはどう考えても処女の膣に挿入らなさそうに見えるが、私はノースィルで何度も見たので知っている。
 そう、これはちゃんと慣らせば挿入できるものだ。

「これだけ大きくして、いやらしいですね? 早く爆ぜたいかもしれませんが、いいと言うまでダメですよ」
 
 先端には彼の夜着を濡らした原因だろう透明な汁が滲んでいた。

 さっきは服越しだったから、と軽く握って動かしてみる。
 先端から滲むその汁は思ったより粘液質なのか、零れそうで零れず私の興味を引き、私は甘い蜜に誘われるミツバチのようにそっと口付けた。

“甘くはないわね”

 甘いどころかしょっぱく苦い。
 決して美味しくはないその味だが、私の舌が先端へ触れた瞬間に漏れた彼の吐息が私の思考を痺れさせ、もっと味わいたいと本能で感じた。

 ちゅぱちゅぱとわざと音を立てながらしゃぶり、舌を竿に這わせ動かす。
 焦らすように雁首や裏筋を舌と指で刺激すると、ルミール様の呼吸がどんどん荒くなった。

「気持ち、いいですか?」

 必死に声を堪えながら、片手で感じている顔を隠し頷くルミール様。
 隠れ切れていない耳やはだけた首筋が赤く染まり、ズクンと下腹部の奥が熱を孕んだ。
 
「顔、見せてください。拒否は出来ませんよ、だって今私たちは練習しているんです。……ほら、学んでいるところを見せて?」
 
 きっとこれは言葉攻めではないだろう。
 私が目的を忘れてしまった時点できっとそうじゃなくなったのだ。

“でも、もっと見たい”

 感じている彼を見たい。
 もっと感じさせたい。

「んっ、おっき……」

 彼のモノを咥えゆっくり口内へと埋めていく。
 窄めた唇で刺激しながらゆっくりと動かすと、彼の手が私の耳に触れた。

「んっ」

 その手つきにゾクリとし私が声を漏らすと、吐息がくすぐったかったのか彼もピクッと反応する。
 
“今は私のターンなの!”

 謎の対抗心が湧き、じゅぽじゅぽと少し早く顔を動かすと、耳を掠めた彼の手のひらがうなじをなぞり、そっと後頭部を撫でた。
 まるで幼い子をあやすように彼の熱く大きな手のひらで撫でられると、芽生えた対抗心が一気に消えてただ彼にもっと気持ちよくなって欲しいと思っう。

 その単純な自分の思考に苦笑しつつ、口内で舌に力を入れ彼のモノを舐め上げる。

「く、サシャ……っ」

“気持ちよさそう”

 ぐっと眉を寄せて堪える顔が色っぽく、それなのに彼が撫でる手が優しくて心地いい。
 まるで包まれているような、そんな安心感と温かさが私を満たすと、どうしてだろう。目蓋が急激に重くなった。

“ダメ、今になって徹夜の影響が――”

 今はマズい、せめて彼のモノから口を離さなくては。そうわかっているはずなのに。
 
 残念ながらそこで私の意識は途絶えたのだった。
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