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酒精と層菓
第104話 職人
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次の日。今日は集会室を貸し切った。主の案件のため、ホーミィ―村の代表の村長にも来ていただき、パラケルは今までの経緯の説明をしていた。村長の奥様も増えて参加となった。試食会に参加した面子を呼び出して作成会だ。ローズとフローラ、マリンの親子の女性陣での作業となった。もっぱらどこかのクッキング教室のようだ。お子様の三人は早くも作成会が実現しているのではしゃいでいる。収集がつかなくなることも想定した結果、パラケルも同伴となった。うっすらと妖精の姿も見える。
まずは話だけで試食が済んでいない村長夫妻から進める。
「奥様。これが今回作っていただくものとなります。奥様にはこの生地を作ってもらいます。村長もご賞味ください」
アイテムボックスからクリスプスストラタムの3/4品を出す。すでに一口大にカット済みだ。
「まあ、菓子!?献上品なのよね。私に作れるかしら?」
「作る工程はさほど難しくはありません。子供でも作れます。昨日も作りましたから。これもみんなで作っています」
「そう。みんなでつくったのよ」
奥様は一口食べて驚愕する。なぜか味がわかっている3組の親子も食べる。パラケルも食べる。さらに食べて目を離した隙にきらきらした二人の妖精が1個ずつ確保している。周りは見えていない様子。姿隠しはうまくいっているらしい。
女性陣全体に食べながら話を聞いてもらう。
「作業自体はそれほど大変ではありません。ここに3家族いますから、一家族80枚程焼いてもらいます。全部で230枚から250枚ほど焼く計算です」
すでに作業をしたことがある子供三人はうんうん頷いている。
「レシピと材料はこちら持ちです。魔導コンロは周知の通り各家のものを使用ください。魔石はパラケルさんから提供してもらいます」
「コンロの数に足りない分のフライパンは店の在庫から持ってきたわ」
母親が助け舟を出してくれた。また発注するわね、と母親は鍛治奥様のスキルプラに話す。スキルプラはフローラの母親だ。商売の兼ね合いとマリンと同学年の娘を持つスキルプラと母親は仲が良いらしい。こちらを振り向きニコリとする。
「レッド君昨日のお菓子はありがとね。随分と美味しかったわ。娘も興奮して夜も寝れないくらい楽しかったみたい」
タラリと汗が流れる。それはもしかすると菓子の効果では?とは言わない。気のせいだろう。
「今日はよろしくお願いします。今度専門のクリスプスの器具について相談させてください」
「あら?うちの商品についても考えてくれるの?ありがとね。楽しみにしているわ」
フローラに似た笑みでこちらに返す。スキルプラはまた母親との話に戻っていく。
「試食は終わったみたいだな。それではここからワシが進めていくぞ」
パラケルの出番だ。村の相談役として充分に貫禄がある。皆がピシッとなる。
「レシピはレッドから配布する。これは領主案件の為、できるだけ口外は避けてくれ。知っている者を集めたのはそのせいだ。最も、要なものはこちらで管理している。基本のレシピはそれほど難しくないから流出に注意してくれ。今回は手技がバラバラにならないために治具を用意した。これは村の細工師にも手伝ってもらった、この円形のリングと杓子使用してくれ」
「ウチのパパが作っていたわ。特急料金になって儲かったと言っていたわ」
パラケルから自分の説明に移る。
「杓子で量を。リングで形を均一にします。杓子一杯の量が今回の液量です。リングに沿って広げてください。要領は昨日行った通りです。村長の奥様はベルナル家と一緒にお願いします」
「わかったわ。マリンちゃん。一緒にやりましょう?」
「おばさん、一緒に楽しもうね」
「ふふ。自分の娘の小さい時を思い出すわ」
3家に分かれ生地作りに着手し始めた。子供三人は得意げに、自信を持って各親に説明して作り始める。母親も楽しそうだ。軌道に乗ったのを見計らい、パラケルと違う作業に入る。
「ではパラケル爺さん。こちらもやりますか?」
「ああ、まずはノヴァクリスマからだな」
2組の遠心魔導具と吸引装置を別の位置に出す。
向こうと違ってこちらは職人の製造に近い。2L単位での遠心と吸引を繰り返す。二回繰り返しを行う。さらに再度実施してノヴァクリスマをかき集める。計800mLのノヴァクリスマだ。これを2つに分け、追加の材料を入れる。パラケル爺さんと二手に分かれてクリーマ状にしていく。
「よし、ノヴァクリスマはこれで良いな。絞り袋に入れて完成だ」
「次はパストリクリスマだな」
「そうですね。大きい魔銀のボウルを用意しました。小鍋だときつそうですから」
「ああ、そうだな」
「すみませんが、ここでパストリクリスマはレシピを変えていきます。卵黄だけでなく卵白も使います」
「なんでだ?味が変わるのは嫌がっていただろう?」
「そうなんですけどね。先方はパストリクリスマを味わっていないので問題ないと思います。それとギー油があるのが決め手です。こっそり作ってそれほど変わらないことは確認しました」
「作ったお前が言うならそれで良い」
貴重品の鴨卵を廃棄するのは勿体無いのだ。幸いにも味は濃い。全卵を使用しても問題は無かった。バターに近いギー油があれば、コクも足せることは予習済み。大きいボウルを台座に固定し、慣れた手つきで作成する。当然火魔法を併用しながらパストリクリスマを炊いていく。気分はもうパティシエだ。
「小僧。作る度に段取り上手くなってないか・・・?一端の職人みたいだぞ」
これでも薬師のはずなのですが?そういえば最近は酒、菓子と違う分野の作業だらけだな・・・
まずは話だけで試食が済んでいない村長夫妻から進める。
「奥様。これが今回作っていただくものとなります。奥様にはこの生地を作ってもらいます。村長もご賞味ください」
アイテムボックスからクリスプスストラタムの3/4品を出す。すでに一口大にカット済みだ。
「まあ、菓子!?献上品なのよね。私に作れるかしら?」
「作る工程はさほど難しくはありません。子供でも作れます。昨日も作りましたから。これもみんなで作っています」
「そう。みんなでつくったのよ」
奥様は一口食べて驚愕する。なぜか味がわかっている3組の親子も食べる。パラケルも食べる。さらに食べて目を離した隙にきらきらした二人の妖精が1個ずつ確保している。周りは見えていない様子。姿隠しはうまくいっているらしい。
女性陣全体に食べながら話を聞いてもらう。
「作業自体はそれほど大変ではありません。ここに3家族いますから、一家族80枚程焼いてもらいます。全部で230枚から250枚ほど焼く計算です」
すでに作業をしたことがある子供三人はうんうん頷いている。
「レシピと材料はこちら持ちです。魔導コンロは周知の通り各家のものを使用ください。魔石はパラケルさんから提供してもらいます」
「コンロの数に足りない分のフライパンは店の在庫から持ってきたわ」
母親が助け舟を出してくれた。また発注するわね、と母親は鍛治奥様のスキルプラに話す。スキルプラはフローラの母親だ。商売の兼ね合いとマリンと同学年の娘を持つスキルプラと母親は仲が良いらしい。こちらを振り向きニコリとする。
「レッド君昨日のお菓子はありがとね。随分と美味しかったわ。娘も興奮して夜も寝れないくらい楽しかったみたい」
タラリと汗が流れる。それはもしかすると菓子の効果では?とは言わない。気のせいだろう。
「今日はよろしくお願いします。今度専門のクリスプスの器具について相談させてください」
「あら?うちの商品についても考えてくれるの?ありがとね。楽しみにしているわ」
フローラに似た笑みでこちらに返す。スキルプラはまた母親との話に戻っていく。
「試食は終わったみたいだな。それではここからワシが進めていくぞ」
パラケルの出番だ。村の相談役として充分に貫禄がある。皆がピシッとなる。
「レシピはレッドから配布する。これは領主案件の為、できるだけ口外は避けてくれ。知っている者を集めたのはそのせいだ。最も、要なものはこちらで管理している。基本のレシピはそれほど難しくないから流出に注意してくれ。今回は手技がバラバラにならないために治具を用意した。これは村の細工師にも手伝ってもらった、この円形のリングと杓子使用してくれ」
「ウチのパパが作っていたわ。特急料金になって儲かったと言っていたわ」
パラケルから自分の説明に移る。
「杓子で量を。リングで形を均一にします。杓子一杯の量が今回の液量です。リングに沿って広げてください。要領は昨日行った通りです。村長の奥様はベルナル家と一緒にお願いします」
「わかったわ。マリンちゃん。一緒にやりましょう?」
「おばさん、一緒に楽しもうね」
「ふふ。自分の娘の小さい時を思い出すわ」
3家に分かれ生地作りに着手し始めた。子供三人は得意げに、自信を持って各親に説明して作り始める。母親も楽しそうだ。軌道に乗ったのを見計らい、パラケルと違う作業に入る。
「ではパラケル爺さん。こちらもやりますか?」
「ああ、まずはノヴァクリスマからだな」
2組の遠心魔導具と吸引装置を別の位置に出す。
向こうと違ってこちらは職人の製造に近い。2L単位での遠心と吸引を繰り返す。二回繰り返しを行う。さらに再度実施してノヴァクリスマをかき集める。計800mLのノヴァクリスマだ。これを2つに分け、追加の材料を入れる。パラケル爺さんと二手に分かれてクリーマ状にしていく。
「よし、ノヴァクリスマはこれで良いな。絞り袋に入れて完成だ」
「次はパストリクリスマだな」
「そうですね。大きい魔銀のボウルを用意しました。小鍋だときつそうですから」
「ああ、そうだな」
「すみませんが、ここでパストリクリスマはレシピを変えていきます。卵黄だけでなく卵白も使います」
「なんでだ?味が変わるのは嫌がっていただろう?」
「そうなんですけどね。先方はパストリクリスマを味わっていないので問題ないと思います。それとギー油があるのが決め手です。こっそり作ってそれほど変わらないことは確認しました」
「作ったお前が言うならそれで良い」
貴重品の鴨卵を廃棄するのは勿体無いのだ。幸いにも味は濃い。全卵を使用しても問題は無かった。バターに近いギー油があれば、コクも足せることは予習済み。大きいボウルを台座に固定し、慣れた手つきで作成する。当然火魔法を併用しながらパストリクリスマを炊いていく。気分はもうパティシエだ。
「小僧。作る度に段取り上手くなってないか・・・?一端の職人みたいだぞ」
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